すべてはスタッフと長く一緒に過ごすという「わがまま」を実現するため。人との関わりが原動力【美容師 岩本桂弥さん】♯2

2023年にオープンし、技術力の高さと丁寧なカウンセリングで人気を集めるメンズサロン「Skill 渋谷」。今回ご登場いただくのは、代表取締役を務める岩本桂弥さんです。

前編では、新人時代から独立に至るまでの歩みを振り返ってもらいました。SNSを武器に集客力を高め、10年で計画していた独立を5年で達成するなど、岩本さんのキャリアは一見すると順風満帆に映ります。

しかし、「Skill 渋谷」を立ち上げ、経営者としてスタッフを抱えたとき、これまでとは質の異なる壁に直面したといいます。

後編では集客や技術では解決できない「人」にまつわる課題と、岩本さんが経営者として向き合ってきた葛藤、そして大切にしている価値観について伺います。

お話を伺ったのは…

Skill 渋谷

代表取締役

岩本桂弥さん

1998年、福岡県生まれ。美容専門学校在学中からSNS運用に注力し、早くからセルフブランディングを確立。都内有名サロンに入社後、技術習得と並行して全店のSNS運用やYouTube企画にも携わる。

美容師3年目でフリーランスとして独立し、25歳でメンズサロン「Skill 渋谷」をオープン。卓越した技術力と発信力が評価され、「カミカリスマ」を2度受賞。現在はサロン経営に加え、次世代美容師の育成にも力を注いでいる。

インスタグラムフォロワー数は9.8万人を超える。
インスタグラム

経営で初めて直面した、「人の心」という壁

岩本さんが立ち上げた「Skill 渋谷」

――お話を伺っていると本当に順調にここまでこられているのですね。

そういってもらえるとありがたいのですが、「Skill 渋谷」を立ち上げてからは正直、壁だらけでした。

――どんなところに壁を感じたのでしょうか。

一番大きかったのは、スタッフの「心」と向き合う必要が出てきたことです。集客や求人といったビジネス上の課題は僕個人のパワーで解決できても、人の感情や人間関係という壁はそうはいかない。

たとえばスタッフが口では「こうしたい」と言っていても、本音は別のところにあることもあります。本当はどう思っているのか、何に悩んでいるのか。そこを探り、汲み取っていくことの難しさに直面しました。

――「Skill 渋谷」は、スタッフ同士の仲がいい印象なので、意外でした。

自分で言うのもなんですが、仲はいいですし、離職率も低いと思います。ただスタッフの人数が増えれば増えるほど、人と人の相性やバランスの調整が必要になってくるところはありました。

技術教育や集客は仕組み化できても、人間関係だけは仕組みに落とし込めません。なかには部下を育成してその部下にマネジメントを任せるなど人間関係を仕組み化しようとする経営者もいますが、僕にはそれがしっくりこなくて。

結局、難しいと感じながらも、僕は人と接するのが好きなんだと思います。

――スタッフの方の心と向き合うために、意識していることはありますか。

とにかく直接コミュニケーションを取ること。スタッフと1対1でご飯に行くことも多いです。

今の僕にとって、一番大切なのは「人と会う時間」で。寝ている時間や家にいる時間以外、スタッフに限らず、誰かと会ったり連絡を取ったりしています。とくにスタッフとは、代表とスタッフ、年齢差や立場の違いから生まれがちな「言いづらさ」を、できるだけなくしたいと思っていて。

些細な悩みでも話してもらえる関係性でなければ、スタッフの心の変化や本当に実現したいことは見えてこないと思っています。

スタッフと一緒に過ごす幸せ。ベースにあるのは「自分のため」

従業員が口を揃えて「人思い」だと話す岩本さん。一方で本人は、自身を「わがまま」だと振り返る

――今回、スタッフのおふたりにも取材させていただきましたが、おふたりとも美容学生時代に岩本さんに出会い、「一美容学生にも時間を割いてくれたことに感動した」と仰っていました。そこまでする理由は?

特別な理由はないですね。強いて言えば、共同代表であるカワノが、同じ美容専門学校の後輩だった僕に対して丁寧に接してくれた過去があるからかもしれません。

僕は美容学生からDMが来たら、必ず対応します。だって、若い人が勇気を出して僕に対してアクションを起こしてくれたこと自体が、純粋にうれしいから。

僕が1時間ぐうたら過ごすくらいなら、悩み相談をしてきた学生に使った方が喜んでくれるでしょうし、そういう姿を見るのが僕にとってはうれしいことなんです。

――なかなかできることではないと思います。

よくそう言っていただくのですが、人のためにやっているという感覚はほとんどなくて。どちらかというと、完全に自分のためですね。自分が時間を過ごしたい人と、ただ時間を一緒に過ごしている感覚。僕、結構わがままですから。

スタッフともそうで、コミュニケーションを取って壁を作らないようにしていると言いましたが、元をただせば単純に僕が長くスタッフと一緒に働きたいからなんですよね。

――それが今の原動力になっていると。

はい。だからこそ、スタッフ1人ひとりが「こうなりたい」と思う未来を、ちゃんと描ける環境を作らなきゃいけないと思っています。

感覚としては、親心に近いのかもしれません。親が子どもの願いを叶えてあげるのって、親の務めともいえますが、実はただ子どもと一緒にいたい、離れたくないからではないんでしょうか。

10年計画はもう立てない。「今」動ける人が時代を切り拓く

岩本さんの仕事観についても教えてもらった

――10年計画をかなり早く達成されていますよね。今も長期計画は立てているのですか?

ある時期から、やめました。今は時代の変化が早過ぎて、10年先を見据えること自体が、かえって視野を狭めてしまう気がして。

今は「この人だ」と思う経営者に会って、そのときに必要な情報を直接得るようにしています。そうやって目の前の情報をきちんと掴み、今やるべきことを的確に行動に移す。そのほうが、今の時代には合っていると思っています。

――では長期的な今後の目標もない?

正直に言うと、大きな目標はあまりなくて(笑)。スタッフという、自分が好きな人たちと、ちゃんと前に進み続けられたらそれでいいかなと。

以前はメンズ美容室として名前を響かせたいとか、美容師としての名声にこだわっていた時期もありました。でも今は、そんなのどうでもいいやって思う自分もいます。

とはいえスタッフたちと一緒に働き続けるためには、結果も出さなきゃいけない。スタッフのみんなをちゃんと稼がせてあげたいし、休みも取らせたいし、笑顔でいられる環境を作りたい。結局、そこに戻ってくるんですよね。

ある媒体が主催の美容師の日本一を決めるコンテストでも、毎年のようにベスト10にランクインさせてもらっていますが、僕が日本一を目指しているというより、スタッフたちが「桂弥さんを日本一に!」って投票を呼びかけてくれるんです。だから、日本一を目指すことを辞められないんですよ。

――最後に岩本さんにとって働くこととは?

RPGを攻略するような感覚に近いですね。生きている間に、どんな人と出会い、どんな経験や知識を積み重ねるかによって、エンディングが変わるゲームのようなもの。

以前はソロプレイでしたが、今は完全にチームプレイです。仲間が増えることで、より難しい課題にも挑戦できるようになりました。

限られた24時間というリソースを、どこに投資し、誰と一緒に進むのか。その選択を考えること自体が、今の僕にとってとても楽しいことなんです。


スピード感を持って理路整然と動く合理性と、「一緒にいたい人と一緒にいる」というアナログな感覚。その両方を迷いなく行き来する岩本さんの姿が、印象に残りました。

スタッフのだれもが「桂弥さんの元で働き続けたい」と口を揃える「Skill 渋谷」。「個」ではなくチームで、美容業界を席巻していく未来が見えてきました。


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Skill 渋谷
住所:東京都渋谷区神南1-15-8 ひきだしのような家に2F
TEL:03-6844-3851

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