働き方のダイバーシティ部門 GOLD賞受賞企業インタビュー
株式会社Ashanti
働き方のダイバーシティ部門でGOLD賞を受賞した企業のインタビューをご紹介。スタッフの理想のキャリアの実現や、ライフステージに寄り添った柔軟な働き方の整備に取り組む企業に贈る賞です。
Q1. 貴社が「1人ひとりが望む理想のキャリア実現」において取り組まれていることを教えてください。
当社は2025年4月に「イーサロングループ」と共同で、アシスタントの早期スタイリストデビューを目的とした専用育成施設「アシスタントアカデミー心斎橋校」を開校しました。
両社の教育方針をしっかりとすり合わせるために、週1回の合同ミーティングも実施。これまで両社が培ってきた教育ノウハウを融合させた、集中育成型の実践カリキュラムをアカデミー生が受けられる体制を整えています。
その結果、アカデミー出身の若手スタイリストの生産性が上がり、2025年12月の売上合計は前年比約88.6%アップを達成することができました。教育とキャリア支援の両面からサポートをすることで、若手が早い段階から実力を発揮できる環境を整えられたことが、大きな要因だと感じています。
ただ、私たちが本当に大切にしているのは、「早期デビュー」そのものではありません。根底にあるのは、「美容業界に貢献したい」という想いです。そのためには美容師として長く活躍できる人を増やしていく必要があると考えています。だからこそ当社では、「早くデビューすること」よりも「自信を持ってスタイリストデビューすること」にフォーカスしています。
実際、デビューを前に「本当に自分にできるのだろうか」と不安を抱えるアカデミー生も少なくありません。そこで当社では安心して挑戦できる環境を作るために、単に技術を教えるだけではなく「できるまで寄り添うこと」「小さな成功体験をたくさん積ませること」「入客前のチェック体制を細かく設けること」の3つを徹底しています。
Q2. そのような多様なキャリア選択を支援しようと思った背景や想いを教えてください。
美容業界では、アシスタントの離職率が高く、1年目で約30%、3年目には半数以上が離職してしまうという課題があります。当社としても「業界全体で解決策を提示できないか」と以前から考えていました。
そんな中、当社代表とイーサロングループ担当者が偶然、同じ研修の場で出会ったんです。競合関係ではありましたが、価格帯や雇用形態、目指す組織像などに共通点が多く、「一緒に取り組むことで、美容業界の未来をもっとよくすることができるのではないか」と意気投合しました。そこから始まったのが「競争」ではなく「共創」という、新たな挑戦です。
ただ同業他社同士が手を組んで人材育成を行うという取り組みは、業界の中でも極めて異例の試みです。また価値観やカルチャー、大切にしている考え方、仕事の進め方なども異なるため、当初は戸惑う場面も少なくありませんでしたね。
しかし、どちらかの考え方を押し付けるのでは、意味がないと思っていました。お互いが大切にしていることを尊重しながら、いい部分を融合させていく姿勢を何より重視したんです。その結果、これまで見過ごされていた課題の可視化が進み、マネジメント体制や教育設計の見直しにもつながりました。結果として、経営全体の改善にも大きく寄与したと感じています。本当に取り組んでよかったと思っていますね。
またこの取り組みは、単なる人材育成ではなく、「サロン現場から業界の新たな標準をつくる」キャリア支援モデルだと考えています。そのため、他社のサロンオーナーさまや幹部の方々をお招きしてアカデミーを見学していただいたり、アカデミー運営で得た成功事例や教育ノウハウについて講演を行ったりもしています。こうしたアカデミー事業や教育手法が全国へ広がることにより、美容師の離職率低下や人手不足の解消につながり、美容業界全体がより明るくなっていくのではないかと考えています。
Q3. スタッフが「プロとして専門性を磨き、自分らしいキャリアを描ける」環境づくりで、特に意識していることはありますか?
今は多様性が重視される時代ですし、描くビジョンや理想のキャリアも人それぞれ違います。ですので私たちは「否定をしないこと」がスタートだと考えています。1人ひとりの夢や目標、将来の展望にしっかり寄り添いながらサポートしていくことが、これからの時代には必要だと感じていますね。
ただその一方で、当社には「美容業界に貢献する」という大きな目的があります。スタッフに求める基準や姿勢もありますので、まずはゴールを明確にした上で、相手を尊重しながら丁寧に伝えていくことを大切にしています。
また「早期デビュー=技術不足ではないか」という声をいただくこともあります。ただ私自身が20年以上、美容師を続ける中で感じたことは、「年数よりもどれだけ濃い経験を積めるか」が重要だということなんです。
さらに人はどうしても一度学んだことでも忘れてしまうものです。ですから当社では、忘れた知識や技術を繰り返し呼び起こしながら実践を重ね、質を高めていくカリキュラムを構築しています。加えて「実践量がまだ足りない」「教える側のフィードバック精度をもっと高める必要がある」など課題を細かく言語化することも重視しています。
このように細部まで丁寧に向き合い、改善を積み重ねていくことで、スタッフの成長スピードは大きく変わっていくと考えています。
Q4. その取り組みを通じて、実際に理想のキャリアを実現し、現場で活躍されているスタッフのエピソードを教えてください。
たとえば、新卒で入社したあるスタッフが、入社から7ヶ月ほどでスタイリストデビューを果たし、それから店長、マネージャーへと着実にキャリアアップしたケースがあります。
また「美容師としてもっと多くのお客さまからの指名がほしい」「しっかり稼げるようになりたい」といった目標を持って努力を重ね、アカデミー卒業後に、会社全体でもトップクラスに入るぐらいの指名数をつけているスタッフもいるんです。さらにスタイリストを経て、現在はアカデミー講師として活躍しているスタッフもいます。
このように1人ひとりが自分らしいキャリアを描きながら、プロとして成長していける階段を用意できていることに、大きなやりがいと誇りを感じています。
Q5. その取り組みによって感じた職場やスタッフの変化・成果があれば教えてください。
当社が関東で培ったアカデミー運営ノウハウと、イーサロングループが関西で築いてきた店舗運営力・採用基盤を融合したことにより、教育の質と育成スピードの向上を実現することができました。具体的には、アシスタント採用率が目標比108%を達成し、入社1年以内離職率についても、前年と比較して18%改善しています。
教育体制だけでなく、現場の理解や受け入れ、フォロー体制も着実に整ってきており、会社全体のカルチャーそのものが良い方向へ変化していると強く実感しています。
Q6. 今後、さらに挑戦したい育成方針や、新たなキャリア支援制度があれば教えてください。
今後はさらに1人ひとりと深く向き合いながら、育成を強化していきたいと思っています。人によって性格も強みも理想のキャリアも異なるので、全員に同じ教育をするのではなく、その人に合ったキャリア支援を行っていきたいですね。
またこれからも、日本の美容業界に貢献していきたいという想いがあります。そのために自社だけで完結するのではなく、他社とも手を取り合いながら成長していける仕組みづくりを、さらに強化していく必要があると感じています。
Q7. 最後に、これからプロとして、自分の強みを作り理想のキャリアを築きたいと考えている方へメッセージをお願いします。
美容師という仕事は、自分次第でいくらでも可能性を広げていける職業だと思っています。大切なのは、好きなことをとことん追求して成長したいという気持ちです。
また、美容師だけでなく、アイラッシュやアイブロウ、エステなど美容業界の仕事の多くは、AIには代替できない、人間しかできない価値のあるものだと考えています。ですから、目の前のお客さまとしっかりと向き合い、自信を持ってこの仕事を続けてほしいですね。自分の「好き」を磨きながら、自分らしい強みやキャリアを形にしていってもらえたら、とてもうれしく思います。
受賞コメント
(インタビュー対象:川上真道さま)
4年ほど前から「Ashantiのリアルを伝えたい」とこちらの企画に参加させていただいておりました。今回、働き方のダイバーシティ部門キャリアセクションGOLD PRIZEをいただき、ありのままの当社を評価していただけたと、大変嬉しく、感謝しております。