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介護・看護・リハビリ 2025-08-12

複雑な制度を把握し、支援に活かせるように。行政職員として働きながら社会福祉士の資格を取得【介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画  社会福祉士/地下有可里さん】#1

業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載「介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画」。

今回は日野市の健康福祉部セーフティネットコールセンターの副主幹として働く、地下有可里(じげゆかり)さんにお話しを伺います。

大学卒業後、図書館司書として14年のキャリアを積んできた地下さん。お子さんを出産した2014年ごろ、度重なる虐待事件が起こったことに胸を痛め、「自分の子どもだけでなく、周りの子どもたちも幸せにしたい」との思いから日野市役所に入庁します。

その後、配属された高齢福祉課で、複雑な介護保険制度の知識を深めたいと、社会福祉士の資格を取得。コロナ禍で仕事が多忙な時期の資格取得となったそうですが、新しい知識を吸収することが楽しかったと振り返ります。

お話しを伺ったのは…

日野市 健康福祉部

セーフティネットコールセンター 副主幹

社会福祉士

地下有可里さん

大学卒業後、インド放浪を経て企業に就職。しかし利益優先の考え方になじめずに退社。その後、図書館司書の資格を取得し、図書館司書として大学、公共図書館、公共図書館の運営を行う企業の講師として幅広くキャリアを積む。2018年、日野市役所入庁。現在は自身が暮らす三鷹市の地域活動にも力を入れており、PTA副会長として、学校と地域をつなぐ活動や少年野球チームでの活動などを行っている。

虐待事件を目にして。子どもたちを幸せにしたいという思いから行政職員へ

地下さんが2018年に入庁した日野市役所

――まず、地下さんの現在のお仕事から教えてください。

私は今、日野市の健康福祉部、セーフティネットコールセンターという部署に所属しています。「セーフティネットコールセンター」というのは日本語にすると「福祉の初期総合相談窓口」という意味で、行政に寄せられるさまざまな相談ごとを、一旦すべて受け付ける窓口です。この窓口に寄せられた相談ごとはその後、内容に応じて担当部署が振り分けられる仕組みなのですが、私は主にひきこもりと子どもの貧困、それ以外にも被害に遭われた方への支援を担当しています。

私自身も相談業務に立つこともありますが、施策や仕組みを作る仕事が大きなウェイトを占めています。

――行政職員として日野市役所に入った経緯を教えてください。

私は元々、図書館司書として働いていました。大学、公共図書館で司書として働いた後、公共図書館の運営を行う民間企業に所属し講師業を務めたりと、さまざまな経験を14年ほど積んできたため、図書館にかかわる仕事は深めることができた、やり尽くしたという思いがあったんです。

そして同じころ、出産を経験したのですが、子どもを育て始めた当時、全国で子どもの虐待事件が度々起こっていることを目にして。虐待について調べるうちに、自分の子どもだけでなく、周りの子どもたちも幸せに生きられるようなお手伝いをしたいという思いが芽生えたんです

そんなときに夫がたまたま日野市の求人を見つけてきて、勤務経験10年以上、管理職経験3年以上のマネジメント経験のある職員を募集していることを知りました。まさに自分が取り組みたいことに近く、これまでの経験も活かせると思ったんです。2018年に日野市役所に入庁し、地域協働課の主査、高齢福祉課の係長を経て現在に至ります。

複雑な保険制度の知識を深められる。社会福祉士の資格を取得

高齢者支援にあたる部署に所属していた際に、社会福祉士の資格取得を決意したという地下さん

――地下さんが所持している社会福祉士の資格とは、どういったものなのでしょうか。

社会福祉士というのは、日常生活に困難を抱えている方の支援やサポートを行うことができる国家資格になります。私は高齢福祉課に在籍していた2022年に取得しました。

――取得をしようと思ったきっかけは?

高齢福祉課に籍を置いていたときに、介護保険の制度がとても複雑だと感じたことです。高齢者の方への支援は、主に行政と行政から委託を受けた地域包括支援センターが連携をしながら行うのですが、介護領域のプロフェッショナルである職員の方たちと円滑なやりとりをするためには、私もしっかり介護保険の知識を身につけなければいけないと思いました。また知識を身につけることで、私がこれから施策を作ったり、高齢者の方の暮らしを支えることにも役立つと感じたんです。

もうひとつの理由としては知的好奇心が強く、新しい知識を身につけるのが好きだということです。知識が身につけば自分の引き出しも増え、さまざまな場面に応用することもできます。こういった勉強が昔から好きだということもあり、前向きな気持ちで資格取得を決意しました。

――資格はどのようにして取得したのですか?

私の場合、社会福祉士の養成施設、つまり大学や資格取得の専門学校を卒業して国家試験の受験資格を得なければなりませんでした。そこで私は働きながら受験資格を得ることができるように、資格取得の専門学校の通信課程を選びました。

2020年4月に専門学校に入学し、自宅での勉強、レポート提出、数ヶ月に1~2回のスクリーニング、1週間の実習を4回受講し、2021年9月に同校を卒業。2022年2月に国家試験を受けて合格するという約2年の道のりでした。

――仕事をしながらどのように勉強したのですか?

基本的には自宅で教材を使って学ぶ形でしたが、私が専門学校に入学をした2020年4月はコロナ禍で、まだ社会が混乱しているときでした。日々、さまざまな対応をしなければならず、平日は21時や22時まで残業になることもよくあったため、夜や週末に気力と体力を絞り出して勉強をしていましたね。

当時はまだ子どもが小学校1年生で手のかかる時期でもあったのですが、勉強の時間は夫が子どもを見てくれていました。私の応援をしてくれる夫には、今でも感謝しています。勉強に集中できないときはカフェに行って少し気分転換をしたり、ちょっとしたすき間時間を活用したりしながら、なんとか勉強の時間を捻出していました。

ちなみに試験勉強の際に役立ったのが、受験仲間に教えてもらった試験対策用のアプリです。スマホで操作ができるので、通勤などのすきま時間を使って、試験対策ができました。

知識が広がり、地域福祉の重層的な視点を得ることができた

社会福祉士の知識を得たことで、地域福祉の視点がより広がったと話す地下さん

――社会福祉士の資格を取得したことで、その知識や資格が今の仕事にどのように生きていると感じますか?

地域福祉を重層的な視点で考えられるようになったと思います。一例ですが高齢福祉課に所属していたとき、年齢を重ねても地域のなかで暮らし続けることができるように整備を行う、生活支援体制整備事業に力を入れていました。

その一環としてたとえば高齢者の方が集まれる居場所を立ち上げるときにも、高齢者だけではなく、若年層や子育て世代などさまざまな世代も集まれるようにしてみてはどうだろう、というような視点を持てるようになったんです。このように施策など物事を考えるときにはつねに地域全体を広い視野で見て、日野市が持つ地域資源を頭のなかで結び付け、より多くの人にとって有益な施策を考えることができるようになったと思います。

また過去に国や東京都がどのように福祉の制度を作り上げてきたかという経緯や、国内や海外の事例などを学ぶことによって、今の制度とのつながりを知り、制度への理解を深めることに役立っていると感じます。


後編では地下さんが実際に立ち上げた施策や、仕事のやりがいについて伺います。施策や仕組みを作り、それが必要な人に届くこと。そしてその人が自分らしい人生を取り戻し、一歩を踏み出す瞬間を見たときに、地下さんは大きなやりがいを感じるといいます。

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日野市役所
住所:東京都日野市神明1-12-1
電話:042-585-1111

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