介護福祉士の実務経験3年とは? 国家試験の概要を紹介
介護業務に従事する人のなかには、介護福祉士を目指そうと考える人もいるでしょう。介護福祉士は受験条件を満たしたうえで国家試験に臨まなければなりません。
今回は、介護福祉士国家試験の概要にあわせて、受験条件のひとつである「実務経験3年」の詳細について解説します。
介護福祉士国家試験の実務経験3年とは?
介護福祉士の介護福祉国家試験を受けるためには資格条件を満たす必要があります。資格条件を満たすには、養成施設ルート・実務経験ルート・福祉高校系ルート・経済連携協定(EPA)ルートの4つから実務経験を積む必要があり、実務経験を積んで実務者研修などを受けると、実務経験ルートが得られます。
なお、実務経験ルートには「従業期間3年かつ従事日数540日+実務者研修」と「従業期間3年かつ従事日数540日+介護職員基礎研修・喀痰吸引等研修」の2つに分かれていることを押さえておくことが大切です。
ここでは、実務経験ルートの概要を紹介します。
従業期間3年かつ従事日数540日+実務者研修
実務経験ルートは、介護施設などで働きながら実務経験を積んで受験資格を取得し、国家試験を受けて介護福祉士を目指すルート。実務経験ルートでまず必要となるのが、「従業期間3年(1,095日)以上かつ従事日数540日以上」という要件です。
従業期間とは、実務経験の対象となる施設および職種での在職期間のことで、従事日数は雇用契約にもとづき実際に介助等の業務をした日数を指します。なお、この期間が3年(1,095日)以上かつ540日以上必要で、1日の勤務時間については問いません。この従業期間と従事日数の要件は、もうひとつの実務経験ルートと共通です。
こちらのルートでは、この要件に加えて「実務者研修」を修了している必要があります。実務者研修とは、初心者向けの「介護職員初任者研修」よりさらにランクアップした内容です。介護職員初任者研修で学ぶ130時間を含めた450時間の研修を必要とし、その研修を修了しなければなりません。
受験申込みの際は「実務者研修修了証明書」か、まだ研修を修了していない場合は「実務者研修修了見込証明書」の提出が必要です。
引用元
社会福祉振興・試験センター|介護福祉士国家試験
社会福祉振興・試験センター|受験資格:実務者研修(EPA介護福祉士候補者以外の方)
従業期間3年かつ従事日数540日+介護職員基礎研修・喀痰吸引等研修
従業期間と従事日数の要件は同じで、それに加えて「介護職員基礎研修」「喀痰吸引等研修」の両方を修了する必要があります。介護職員基礎研修とは、講義・演習を360時間、施設などでの実習を140時間の合計500時間の履修する研修のことです。ただし、2012年度末に廃止されて、現在は「実務者研修」となっています。
こちらのルートは、すでに介護職員基礎研修を修了している方が喀痰吸引等研修を修了した場合のルートです。どちらhttps://www.sssc.or.jp/kaigo/shikaku/k_08_4.htmlのルートで受験資格を満たしても、実技試験が免除されるほか、受験資格取得までにかかる費用がほかのルートに比べて少なく済みます。
引用元
社会福祉振興・試験センター|介護福祉士国家試験
社会福祉振興・試験センター|受験資格:介護職員基礎研修・喀痰吸引等研修
実務者研修を修了しておこう
介護福祉士の受験資格には「実務者研修」の修了が必須です。同研修は、高齢化社会において高品質な介護サービスを安定的に供給することを目的とした資格制度。そのことから、今では資格保有者は介護福祉業を営む事業者にとって欠かせない存在になっています。
受講条件はとくになく、いつでも誰でも挑戦可能です。実務者研修については下記ページで詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
介護福祉士実務者研修とは? 初任者研修や介護福祉士とはどこが違うの? おすすめ講座6選を紹介
従業期間・従事日数はどう計算するの?
実務経験ルートの要件である従業期間と従事日数は、一体どのように計算するのでしょうか。ここでは、従業期間と従事日数の考え方についてご紹介します。
従業期間とは?
実務経験の対象となる施設および職種での在職期間のことを、従業期間といいます。この期間が3年(1,095日)以上必要となりますが、ひとつの施設で3年(1,095日)以上必要という意味ではありません。
たとえば勤務した対象施設の従業期間が3年未満であっても、いくつかの対象施設で勤務した経験がある場合、それぞれの従業期間を合計して3年(1,095日)以上になればいいという意味です。ただし、重複期間は二重に加算できないため注意が必要です。
いくつかの対象施設で勤務した経験がある場合に、従業期間を計算出来る表が試験センターのホームページに掲載されているので、該当する方は利用してみるとよいでしょう。
社会福祉振興・試験センター|従業期間計算表
社会福祉振興・試験センター|従業期間計算表:重複期間の考え方
従事日数とは? かけもちしていたらどうなるの?
従事日数は、雇用契約にもとづき実際に介護などの業務に従事した日数のことを指します。540日以上必要となりますが、あくまで日数なので1日に何時間勤務したかは問われません。
また、同一期間内に複数の事業所などに所属する、いわゆるかけもちをしていた場合、同じ日に複数の事業所で介護等の業務をおこなった場合は、従業期間・従事日数は1日として扱われます。
「実務経験見込み」とは?
受験申込をするまでに従業期間・従事日数の要件を満たせないという方でも、受験できる場合があります。それは「受験年度の3月31日までに要件を満たせばよい」というもので、これが「実務経験見込み」です。
ただしこの場合は、要件を満たしたあとに再度実務経験証明書を提出する必要があるので、注意しましょう。
夜勤をした時の計算方法は?
夜勤の計算方法は、勤務先である事業所が決めます。2日分の勤務として16時間夜勤した場合は、2日で計算できる可能性があります。
従事日数がわからず不安がある方は、職場に確認しておくのがおすすめです。
前の職場での実務経験証明書が必要になる場合とは?
転職によって現在の職場での実務経験が3年に満たない場合は、前の職場での実務経験証明書が必要です。
実務経験証明書は事業所の代表者が作成するものなので、期日に余裕をもたせて依頼しましょう。
パート・アルバイトでも大丈夫?
パートやアルバイトであっても受験可能です。1日の勤務時間にかかわらず、従業時間・従事日数は正社員と同じように計算されるので問題ありません。
どんなお仕事が実務経験として認められるの?
介護福祉士国家試験の受験資格として認められる実務経験には範囲が定められており、その範囲内の実務経験で要件を満たした場合に限り受験資格が認められます。ここでは、実務経験の範囲について確認しておきましょう。
1. 児童分野
児童分野で実務経験として認められるのは、知的障害児施設や自閉症児施設、児童発達支援センターや保育所等訪問支援などで保育士や看護助手、指導員や訪問支援員などの職種で介護等の業務をおこなっていた場合です。
2. 障害者分野
障害者分野で実務経験として認められるのは、グループホームや地域活動支援センター、居宅介護などで介護職員や生活支援員、ホームヘルパーなどの職種で介護などの業務をおこなっていたことが条件となります。
3. 高齢者分野
高齢者分野で実務経験として認められるのは、老人デイサービスセンターや特別養護老人ホーム、指定訪問介護などで介護職員や介助員、訪問介護員などの職種で介護などに関する業務をおこなっていた場合です。
4. そのほかの分野
そのほかの分野で実務経験として認められるのは、救護施設や更生施設、地域福祉センターや病院などで、介護職員や看護助手などの職種で介護業務をおこなっていた場合となります。
5. 介護などの便宜を供与する事業
介護などの便宜を供与する事業で実務経験として認められるのは、地方公共団体が定める条例・実施要綱などにもとづく事業や障害者総合支援法の基準該当障害福祉サービスなどで介護職員や訪問介護員などの職種で介護等の業務をおこなっていた場合です。
認められない実務経験もあるので注意しよう!
たとえば、児童分野において児童発達支援や放課後等デイサービスなどの施設に介護職員が置かれている場合、その施設に指導員として勤務している方は実務経験として認められないため、注意が必要になります。
なお、上記でご紹介した施設や職種は一例ですので、くわしくは受験資格の実務経験の範囲をよく確認してください。
引用元
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター:[介護福祉士国家試験]受験資格:実務経験の範囲
介護福祉士国家試験の概要を紹介
ここからは第36・37回の情報に基づき、介護福祉士国家試験の概要について紹介します。
なお、介護福祉士試験の試験内容については下記ページで詳しく解説しているのであわせてご覧ください。
【介護福祉士試験】2022年度から試験内容に変更あり!試験科目や難易度などを詳しく紹介
試験日と試験地
第36回介護福祉士国家試験の試験日は、筆記試験が令和6年1月28日(日)、実技試験が令和6年3月3日(日)です。筆記試験は北海道・青森県・岩手県などを含む35試験地で、実技試験は東京都・大阪府の2試験地です。
なお、第37回介護福祉士国家試験の試験日は、筆記試験が令和7年1月下旬を、実技試験が令和7年3月上旬の予定です。詳しい試験地などについては下記ページをご確認ください。
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター:[介護福祉士国家試験]試験概要
筆記試験
筆記試験は全部で13科目あります。
1.人間の尊厳と自立
2.人間関係とコミュニケーション
3.社会の理解
4.介護の基本
5.コミュニケーション技術
6.生活支援技術
7.介護過程
8.こころとからだのしくみ
9.発達と老化の理解
10.認知症の理解
11.障害の理解
12.医療的ケア
13.総合問題
科目ごとの出題基準については、下記ページでご確認ください。
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター:試験科目別出題基準
なお2022年度の試験では、試験科目の追加や出題数の変更、出題順番や時間配分に変更がありました。受験する際は上記ページから変更点の有無を確認しましょう。
引用元
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター:試験科目別出題基準
実技試験
介護福祉士国家試験の実技試験は、実際の介護現場で適切な介護ができるかを見るため、実践的な内容が出題されます。受験者は、状況に適した対応を5分の制限時間内で行い、合格基準は課題総得点の60%ほど。
なお、実技試験は上述した4つのルート別に免除の規定があります。
対象 | 条件 |
福祉系高校卒業ルート | 平成21年度以降に福祉系高校に入学した場合は無条件 |
「特例高校」および「平成20年度以前入学者」 | 「介護技術講習」「介護過程」「介護過程Ⅲ」いずれか1つの修了・履修 |
経済連携協定(EPA)ルート | 3年以上の実務経験かつ「介護技術講習」「介護過程」「介護過程Ⅲ」「実務者研修」いずれか1つの修了・履修 |
引用元
公益財団法人 社会福祉振興・試験センター:[介護福祉士国家試験]受験資格:実技試験免除
受験料
受験料は第36回で1万8,380円でした。金額に変更が出る可能性もあるので、必ずホームページを確認の上準備しましょう。
合格発表|合格率
合格発表日は第36回の場合、令和6年3月25日(月)14時です。毎年概ね3月下旬に行われているようです。
合格率はどれくらい?
最新回の第35回の合格率は8割を超えていますが、7割程度が目安です。介護福祉士国家試験の合格率については下記ページで解説しているのであわせてご覧ください。
介護福祉士の合格率はどれくらい? 過去10年のデータを解説|押さえておきたい試験勉強のコツ
介護福祉士の国家試験に落ちる人は珍しい? 落ちてしまう理由と合格を目指す5つの方法
必要な実務経験を満たして国家試験にチャレンジしよう!
今回はいくつか存在する受験資格取得ルートのなかから、実務経験ルートの要件や概要について紹介しました。実務経験ルートは、ほかの受験資格取得ルートと違い、介護施設などで働きながら受験資格を取得できるルート。
ただし、実務経験ルートであっても、介護福祉士国家試験を受けるには「実務者研修」の修了が必須です。現在介護職に従事する人のなかで、「利用者に対して今以上に安心を提供できる介護福祉士になりたい」と考える人は、必要条件を満たして国家試験に臨んでみてはいかがでしょうか。