介護福祉士国家試験の実務経験ルートを解説|実務経験に認められるお仕事とは?
介護の仕事に従事している人なら、将来的に介護福祉士の資格取得を目指したいと考えている人もいるでしょう。しかし、介護福祉士国家試験には受験資格が必要で、その受験資格を取得するのも容易ではありません。
そんな介護福祉士国家試験の受験資格取得には、いくつかのルートがあるのをご存知でしょうか。今回はいくつか存在する受験資格取得ルートのなかから、実務経験ルートの要件や概要についてくわしくご紹介します。
介護福祉士国家試験を受けるには受験資格が必要!
介護福祉士は国家資格となるため、その資格を取得するためには介護福祉士国家試験に合格しなければなりません。しかし、その試験を受験するためには、まず受験資格が必要です。
そして受験資格を取得するためにも、いくつかのルートが用意されています。そのルートとは養成施設ルート、実務経験ルート、福祉高校系ルート、経済連携協定(EPA)ルートの4つです。つづいては上記のルートのなかから、実務経験を積んで実務者研修などを受けることによって得られる実務経験ルートをご紹介します。
介護福祉士の実務経験ルートとは?
介護福祉士国家試験受験資格を取得するためのルートのひとつである実務経験ルートとはどのようなものなのでしょうか。そもそも実務経験ルートは、そのなかでさらに2つのルートにわかれます。
ひとつは「従業期間3年従事日数540日+実務者研修」で、もうひとつが「従業期間3年従事日数540日+介護職員基礎研修・喀痰吸引等研修」です。ここでは、それぞれのルートについてくわしく確認しておきましょう。
従業期間3年従事日数540日+実務者研修
実務経験ルートというのは、介護施設などで働きながら実務経験を積んで受験資格を取得し、国家試験を受ける、いわば働きながら介護福祉士を目指すルートです。そんな実務経験ルートでまず必要となるのが従業期間3年(1,095日)以上かつ従事日数540日以上という要件になります。
従業期間というのは実務経験の対象となる施設および職種での在職期間のことで、従事日数というのは雇用契約にもとづき実際に介助等の業務をした日数のことです。なお、1日の勤務時間については問われません。この期間が3年(1,095日)以上かつ540日以上必要になります。この従業期間と従事日数の要件は、もうひとつの実務経験ルートと共通です。
こちらのルートでは、この要件に加えて実務者研修を受ける必要があります。実務者研修とは、初心者向けの「介護職員初任者研修」よりさらにランクアップした内容で、介護職員初任者研修で学ぶ130時間を含めた450時間の研修を必要とし、その研修を修了しなければなりません。受験申込みの際は「実務者研修修了証明書」か、まだ研修を修了していない場合は「実務者研修修了見込証明書」の提出が必要です。
従業期間3年従事日数540日+介護職員基礎研修・喀痰吸引等研修
上述したとおり従業期間と従事日数の要件は同じで、それに加えて介護職員基礎研修・喀痰吸引等研修の両方を修了する必要があります。介護職員基礎研修とは、講義・演習を360時間、施設などでの実習を140時間の合計500時間の履修する研修ですが、2012年度末に廃止されているためこれから受講することはできません。
そのため、こちらのルートはすでに介護職員基礎研修を修了している方が喀痰吸引等研修を修了した場合に、受験資格の取得が可能となるルートということです。どちらのルートで取得した受験資格でも実技試験が免除されますし、なにより受験資格取得までにかかる費用がほかのルートに比べて少なく済みます。
従業期間・従事日数はどう計算するの?
上記でご紹介した実務経験ルートの要件である従業期間と従事日数は、一体どのように計算するのでしょうか。ここでは、従業期間と従事日数の考え方についてご紹介します。
従業期間とは?
上記でもご紹介したとおり、実務経験の対象となる施設および職種での在職期間のことを従業期間といいます。この期間が3年(1,095日)以上必要となるわけですが、ひとつの施設で3年(1,095日)以上必要というわけではありません。
たとえば勤務した対象施設の従業期間が3年未満であっても、いくつかの対象施設で勤務した経験がある場合、それぞれの従業期間を合計して3年(1,095日)以上になればいいということです。
いくつかの対象施設で勤務した経験がある場合に従業期間を計算する際、便利な表を掲載しているページがありますので該当する方は利用してみるとよいでしょう。
社会福祉振興・試験センター 従業期間計算表
従事日数とは? かけもちしていたらどうなるの?
つづいて従事日数ですが、こちらも上述したとおり雇用契約にもとづき実際に介護などの業務に従事した日数のことを指します。この日数が540日以上必要となるのですが、あくまでも日数ですので1日に何時間勤務したかは問われません。
また、同一期間内に複数の事業所などに所属する、いわゆるかけもちをしていた場合、同じ日に複数の事業所で介護等の業務をおこなった場合は従業期間・従事日数は1日として扱われます。
「実務経験見込み」とは?
受験申込をするまでに従業期間・従事日数の要件を満たせないという方がいらっしゃるかもしれませんが、そんな方でも受験できる場合があります。それは受験年度の3月31日までに要件を満たせばよいというもので、これが「実務経験見込み」です。
ただし、この場合は要件を満たしたあとに再度実務経験証明書を提出する必要があるので注意しましょう。
どんなお仕事が実務経験として認められるの?
介護福祉士国家試験の受験資格として認められる実務経験には範囲が定められており、その範囲内の実務経験で要件を満たした場合に限り受験資格が認められます。ここでは、実務経験の範囲について確認しておきましょう。
1. 児童分野
児童分野で実務経験として認められるのは、知的障害児施設や自閉症児施設、児童発達支援センターや保育所等訪問支援などで保育士や看護助手、指導員や訪問支援員などの職種で介護等の業務をおこなっていた場合です。
2. 障害者分野
障害者分野で実務経験として認められるのは、グループホームや地域活動支援センター、居宅介護などで介護職員や生活支援員、ホームヘルパーなどの職種で介護などの業務をおこなっていたことが条件となります。
3. 高齢者分野
高齢者分野で実務経験として認められるのは、老人デイサービスセンターや特別養護老人ホーム、指定訪問介護などで介護職員や介助員、訪問介護員などの職種で介護などに関する業務をおこなっていた場合です。
4. そのほかの分野
そのほかの分野で実務経験として認められるのは、救護施設や更生施設、地域福祉センターや病院などで、介護職員や看護助手などの職種で介護業務をおこなっていた場合となります。
5. 介護などの便宜を供与する事業
介護などの便宜を供与する事業で実務経験として認められるのは、地方公共団体が定める条例・実施要綱などにもとづく事業や障害者総合支援法の基準該当障害福祉サービスなどで介護職員や訪問介護員などの職種で介護等の業務をおこなっていた場合です。
認められない実務経験もあるので注意しよう!
たとえば、児童分野において児童発達支援や放課後等デイサービスなどの施設に介護職員が置かれている場合、その施設に指導員として勤務している方は実務経験として認められないため、注意が必要になります。
なお、上記でご紹介した施設や職種は一例ですので、くわしくは受験資格の実務経験の範囲をよく確認してください。
必要な実務経験を満たして国家試験にチャレンジしよう!
今回はいくつか存在する受験資格取得ルートのなかから、実務経験ルートの要件や概要についてご紹介しました。実務経験ルートは、ほかの受験資格取得ルートと違って介護施設などで働きながら受験資格を取得できるルートです。そのため、ほかの受験資格取得ルートにくらべて受験資格取得までの費用が少なくて済むという特徴があります。
実務経験ルートは、今現在介護施設などで働いている人やこれから働きながら介護福祉士の資格取得を目指したいという人にとっても最適なルートのひとつです。これから介護福祉士の資格取得を目指す方は、ぜひ必要な実務経験を満たして国家試験にチャレンジしてみましょう。
引用元サイト
社会福祉振興・試験センター 介護福祉士国家試験 受験資格
社会福祉振興・試験センター 介護福祉士国家試験 試験概要
社会福祉振興・試験センター 介護福祉士国家試験 受験資格 実務経験+実務者研修