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特集・コラム 2023-02-08

介護職員初任者研修とは? ホームヘルパー2級や実務者研修の違い|初任者研修にかかる費用とは?

介護職員初任者研修(旧ヘルパー2級)は、介護職員として働いていく上での基本的な知識やスキルを証明できる資格で、取得することで幅広いメリットがあります。

しかし、初任者研修の概要やそのほかの介護系資格との違いについて、具体的には知らないという方も多いのではないでしょうか?

本記事では、介護職員初任者研修の概要やホームヘルパー2級・介護福祉士実務者研修との違い、資格を取得するメリットや費用感について紹介します。

介護職員初任者研修のカリキュラムや試験の概要について知って、そのほかの介護系の資格と比較した上で資格取得を目指すかどうか考えたい方は、参考にしてみてください。

介護職員初任者研修とは?

介護職員初任者研修とは、一体どのような資格なのでしょうか?この章では、受験資格や資格取得後の将来像、研修のカリキュラム、修了試験について見ていきましょう。

受講資格

介護職員初任者研修は受講に必要な条件はとくになく、介護職の経験がない方でも、問題なく履修できる研修です。講義と実技演習を経て、介護職として勤務する上で必要な基礎的な知識やスキルを学び、自分自身のキャリアに活かすことができるでしょう。

取得するとできること

介護職員初任者研修を取得すると、より幅広い介護業務を担当できるようになります。
介護業務は大きく分けて、食事や入浴、排泄などの介助を行う「身体介護」と、家事や洗濯、買い物代行などの「生活援助」の2つがあります。このうち「身体介護」は介護職員初任者研修を取得した方でなければ、担当することができない業務です。

また、訪問介護を行うには知識や技術が必要なため、介護職員初任者研修などの資格が必要になります。

どんなことを学ぶの? カリキュラムを紹介

介護職員初任者研修では、10科目のべ130時間の養成講座を履修する必要があります。介護の基本知識や利用者とのコミュニケーションのとり方、老化や障がい、認知症などに対する理解を深められるカリキュラムが特徴です。

具体的には、下記のような履修科目と履修時間が定められています。

引用:厚生労働省:介護員養成研修の取扱細則について

修了試験

介護職員初任者研修のカリキュラムを修了したら、最後に修了試験が課されます。ただ、試験自体の難易度は高くなく、ほとんどの方が合格できるレベルです。また、万が一、試験に合格できなくても、追試を受けられるスクールがほとんどなので安心です。

ホームヘルパー2級とはどこが違うの?

ホームヘルパー2級は、2013年4月1日に「介護職員初任者研修」に変更されました。

2013年4月以前は、介護士に関する資格がたくさんあり、キャリアプランが描きにくい状況でした。そこで、介護保険法施行規則改正により介護の資格制度の見直しが行われ、ホームヘルパー2級試験から介護職員初任者研修へと改訂されたのです。

改正により、介護職員初任者研修から介護福祉士実務者研修、介護福祉士という、介護に関するキャリアパスが一本化され、わかりやすくまとめられました。ただし、資格制度の変更によって、変わってしまった点がいくつかあります。

この章では、資格制度の移行にともなう変更点について見ていきましょう。

1. 実習が廃止|スクーリングへと変化

ホームヘルパー2級から介護職員初任者研修に移行するにあたって、指定の施設で5日間(30時間)に及ぶデイサービスや訪問介護に関する実習が廃止されました。ただし、介護現場の実際の様子を体験できる絶好の機会とあって、一部のスクールでは任意で実習が行われています。

また、廃止された実習時間は短縮されるわけではなく、スクーリングの時間に割り当てられ、座学の時間がさらに増えた点が変更点といえるでしょう。

2. 修了試験の実施

ホームヘルパー2級は、カリキュラムを修了するだけで資格を取得できましたが、介護職員初任者研修に移行してからは、修了後に試験が実施されるようになりました。

ただし、難しい内容の試験ではなく、あくまでもカリキュラムで学んだ知識を確認するためのものなので、学習した内容をきちんと振り返れば合格できるでしょう。

3. カリキュラムの追加|認知症ケア

ホームヘルパー2級から介護職員初任者研修に移行し、高齢化にともなうニーズの増大にともない、認知症ケアの科目が追加されました。

内閣府が平成29年度に公表した『高齢社会白書』によれば、2025年には65歳以上の高齢者の20%(5人に1人の割合)、2040年には24.6%(約4人に1人の割合)が、認知症を発症するだろうと推定されています。

引用:内閣府:65 歳以上の認知症患者の推定者と推定有病率

このような社会的な背景の中で、認知症ケアに関する理解や知識を深める目的で、資格制度に移行するタイミングに、認知症ケアの科目が新たに追加されたのでしょう。

介護福祉士実務者研修とはどこが違うの?

介護職員初任者研修は、介護福祉士実務者研修と比べて、どのような点が異なるのでしょうか?ここでは、介護福祉士実務者研修との違いについて確認しましょう。

1. 科目数・受講時間数

介護福祉士実務者研修と比較すると、履修する科目数や受講時間数が大きく異なります。

※医療的ケアは50時間の研修のほか、演習を修了する必要がある

出典:厚生労働省:実務者研修における「他研修等の修了認定」の留意点について

介護職員初任者研修が10科目で130時間で修了できるカリキュラムであるのに対して、介護福祉士実務者研修は20科目で450時間も履修しなければならず、より多くの科目を時間をかけて履修しなければならないというのが相違点です。

2. 介護福祉士の受験資格

介護福祉士実務者研修の取得は、介護福祉士国家試験を受ける際の必須条件です。その一方で、介護職員初任者研修は介護福祉士国家試験の受験資格にはなりません。

介護福祉士の概要やキャリアパスについては、下記の記事を参考にしてみてください。

介護福祉士になるには?|国家試験の難易度やおすすめの勉強法を紹介

3. サービス提供責任者の資格要件

介護福祉士実務者研修を取得すると、介護現場におけるサービス提供責任者になれます。ただ、介護職員初任者研修だけでは、サービス提供責任者にはなれない点に注意です。

サービス提供責任者の仕事や資格要件は、下記の記事を参考にしてみてください。

サービス提供責任者の仕事内容とは?|サービス提供責任者の資格要件を紹介

4. 医療的ケアの学習

介護福祉士実務者研修のカリキュラムは、たん吸引や経管栄養などの医療的ケアについて履修できますが、介護職員初任者研修では履修できません。

高齢者が増えつつある中で、これらの医療的ケアのニーズに対応するために、より高度な介護サポートとして、介護福祉士実務者研修に設けられた履修科目だといえます。

介護職員初任者研修を取得するメリット

介護士として活躍するために求められる資格である介護職員初任者研修は取得することで何かメリットがあるのでしょうか。この章では、介護職員初任者研修を取得するメリットについて解説します。

仕事の幅が広がり就職・転職・キャリアアップに役立つ

介護の仕事自体は、介護職員初任者研修を取得していなくても就くことが可能です。ただし、この資格を取得していないと、利用者さんの身体介護をすることはできませんので、できる仕事の範囲が限られてきます。

介護職員初任者研修を取得することで、即戦力として身体介護に入れることをアピールできるため、就職や転職の際に有利となるでしょう。また、介護職員初任者研修を取得後にさらなる介護の資格を受験できるので、仕事の幅が広がるというメリットもあります。

このような理由から介護職員初任者研修を取得すると介護士として仕事の幅や選べる求人の幅も広がるといえるでしょう。

介護業界のキャリアパスモデルとは?

介護業界の一般的なキャリアパスモデルは、下記のような流れになります。

①介護職員初任者研修:まずはこの資格から。介護の基礎的な知識・スキルを知る
②介護福祉士実務者研修:同資格と実務経験3年以上で介護福祉士国家試験を受験
③介護福祉士:幅広い介護の業務・情報に精通。現場をマネジメントする立場に
④認定介護福祉士:介護現場における中心的な役割を担う

介護職員初任者研修から実務者研修、介護福祉士を目指すのがキャリアパスのモデルコースです。最終的には、上位資格である認定介護福祉士の取得も目指すのもいいでしょう。

知識とスキルが向上し給料も上がりやすい

介護職員初任者研修では、130時間かけて介護の知識を学びます。この知識を習得することで、介護に関する知識とスキルが上がり、仕事の中で生かして働くことができるでしょう。

多くの介護施設では、介護や医療関係の資格を取得していると「資格手当」が支給されるところがあります。介護職員初任者研修を取得していれば、そのぶんの資格手当がつきますので、収入UPが見込めるでしょう。

介護福祉士実務者研修を取得しやすくなる

介護職員初任者研修を取得するメリットは、介護福祉士実務者研修におけるいくつかの科目の履修が免除され、履修時間が450時間から320時間に少なくなる点です。320時間分の研修と医療的ケアの実習に参加するだけで、介護福祉士実務者研修を修了できます。

介護業界以外でも活かせる|家族の介護にも

介護職員初任者研修で得た知識やスキルは、ほかの業界でも活かせるのが特徴です。高齢になった家族の介護や高齢者がよく利用するスーパー、ボランティアなどの他、家族に介護が必要になった時にも介護職員初任者研修の知識やスキルを活かせるので、幅広く活用できる資格だといえます。

介護職員初任者研修にかかる費用とは?

介護職員初任者研修にかかる費用は、約4万円〜10万円と幅広く、スクールやコースの種類、スクールのある場所によって費用は大きく変わるのが特徴です。

この章では、介護職員初任者研修のコースの負担をへらすための方法を紹介します。

ハローワークの職業訓練なら無料に

ハローワークの職業訓練制度を活用すれば、テキスト代をのぞけば無料で介護職員初任者研修を履修できます(求職者支援制度)。

ただし、労働の意思があるかどうかや雇用保険の適用の有無、一定収入以下でパートタイムとして働いている方など、支援制度を受けるために、いくつかの条件を満たさなければならない点には注意しなければなりません。

介護初任者研修をハローワークで受講する条件とは?受講の流れや書類選考に向けたコツについて紹介

自治体の支援事業や補助金制度が利用できることも

自治体によっては、支援事業や補助金制度を利用できるところもあります。

たとえば、東京都では、介護人材確保対策事業の一環として「介護職員資格取得支援事業」を実施しており、無料で介護職員初任者研修を開講しています。

また、埼玉県では、介護職員資格取得支援事業の対象になると、介護職員初任者研修にかかる費用を、半分まで補助してくれる制度があります。

介護職員初任者研修に合格し介護のプロフェッショナルになろう

介護職員初任者研修は、ホームヘルパー2級から名称が変わり、講習の内容や修了試験を受験し合格する必要があるなど、変更点がいくつかあるとわかりました。

介護職員初任者研修の資格は、介護の現場やその他の業種でも活用できる知識が身に付き、介護職の就職の際にも役に立つでしょう。また、介護福祉士実務者研修を履修する際には、130時間分の研修が免除されるというメリットがあります。

資格取得には数万円程度の受講料がかかりますが、ハローワークや各自治体の支援制度・補助金制度を有効活用すれば、お得に受講することが可能です。

介護について興味のある方であれば、誰でも受けられる資格なので、介護職員初任者研修の試験に合格し、さらには介護福祉士実務者研修や介護福祉士などの上位資格への挑戦も視野に入れて、介護のプロフェッショナルとして活躍しましょう。

引用元
厚生労働省:介護員養成研修の取扱細則について
厚生労働省:実務者研修における「他研修等の修了認定」の留意点について
厚生労働省:求職者支援制度のご案内
東京都福祉保健局:介護人材確保対策事業
埼玉県:令和4年度埼玉県介護職員資格取得支援事業(初任者研修受講料)補助金について

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