ひとりの利用者さんにゆっくり寄り添えるのが訪問看護の魅力【介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画 訪問看護師・薬膳漢方講師・整体師 松根亜裕美さん】#1
業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載「介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画」。今回は、訪問看護師で薬膳漢方講師・整体師としても活動する松根亜裕美さんにお話を伺います。
中学生のときに看護師になろうと決めていた松根さんは、衛生看護学校に進み、総合病院に入職。3年後、看護師すべての仕事を経験したくて派遣スタッフに。1週間毎日違う職場を体験する中、いちばんやりがいを感じたのは訪問入浴だったそう。前編では、現在の訪問看護のお仕事内容について詳しく伺います。
お話を伺ったのは
訪問看護師・薬膳漢方講師・整体師
松根亜裕美さん

衛生看護学校卒業後、総合病院の外科病棟看護師として勤務。病院以外の働き方も見たい、看護師のすべてを経験したいと派遣登録し、クリニックや検診クリニック、訪問入浴などさまざまな職場を経験。産後は訪問看護師として勤務しながら、薬膳漢方講師や整体師としても活動中。小学生と保育園児3人のママ。
看護師のすべてを経験したくて派遣スタッフに

1週間違う職場に勤務する派遣スタッフは性に合っていたという松根さん。
――看護師になろうと思ったきっかけを教えてください。
中学生の頃から手に職を持ちたいという思いがすごく強かったんです。当時は看護師か保育士か。最初は保育士がいいかなと思っていたんですが、まわりの大人に相談すると少子化で仕事がなくなるのではと。だったら小児科の看護師になろうと高校から衛生看護学校に進みました。
――衛生看護学校とは?
看護師と普通科の内容を並行して勉強します。高校卒業時に準看護師に合格し、その後同じ学校の看護専攻科で2年間学び、国家試験に合格することができました。
――忙しい学生時代だったんですね。
本当に遊べない高校時代を過ごしました。でも看護師になってから遊べたのでよかったです(笑)。
――新卒での就職先は?
総合病院に入職しました。小児科を希望しましたが、配属されたのは外科病棟でした。そこで3年間働いて、その後別の外科病院に転職したんですが、わたしには病院そのものが合わなかったみたいです。
――病院が合わないとは?
外科自体はそんなに辛くはなかったんですが、夜になると眠くなってしまうので夜勤が辛くて。病院で働くには夜勤は避けて通れないと思ったので、一旦病院を辞めて派遣会社に登録しました。看護師のすべてを経験するために派遣スタッフという形を選びました。
――派遣ではどんな働き方をしたのですか。
月曜 高齢者施設
火曜 内科クリニック
水曜 健診クリニック
木曜 訪問入浴
金曜 内科クリニック(火曜と同じ)
土日 巡回検診などが入れば勤務
――そんな働き方が可能なんですね。1週間分、ひとつの派遣会社で賄えるんですか。
はい、大丈夫でした。24才から5年間このスタイルでしたが、わたしにはすごく合ってました。火曜日はここに行ける、来週も楽しみと日々を楽しめる感覚がすごく好きでした。看護師のすべてを見たいという野心を満たしてくれたんですよね。
――特に印象深い職場はありますか。
訪問入浴はすごく面白かったです。ひとりで入浴できない方がお家で寝たままお風呂に入れる。私自身お風呂が大好きなので、利用者さんの嬉しそうな顔を見ると、こちらも幸せな気持ちになれて、看護師としてのやりがいも感じることができました。
担当制じゃないからひとりで悩まずにすむ

利用者さんにはご家族がいる方もひとり暮らしの方も。
――訪問看護師はいつから始めたんですか。
8年前です。子供が生まれた後の働き方の選択肢として行き着いたという感じです。
――訪問看護師のお仕事はいかがですか。
派遣時代、訪問入浴の仕事が楽しかったこともあり、まずお宅にお邪魔することに抵抗がなかったんですね。ひとりで動ける自由さも自分に合っていると思います。
――ひとりで動くんですね。
はい。多いと午前中3件、午後3件。わたしはパートで勤務時間が短いので、午後は2件のことが多いです。
――1件あたりどれくらいの時間?
基本的に60分です。
――60分の中でどんなお仕事をするのですか。
介護が必要な方には、床ずれの処置や食事の内容確認、おむつ交換、シャワーのお手伝いなど。医療分野で点滴が必要な方にはその処置を。精神的なケアが必要な場合は、お話を聞いて終わることも結構あります。
――訪問するお宅は担当制ですか。
現在の職場、さざなみ訪問看護ステーションでは、スタッフみんなでひとりの利用者さんをみます。
――担当制でないことのメリットはありますか。
いろんな人の視点が交じり合うところが魅力だなとわたしは思っています。ひとりの利用者さんをわたしだけが担当していたら、なにか相談したいことがあっても他のスタッフは利用者さんを知らないので、言葉だけの相談になってしまいます。でも「わたしが訪問したときはこうだった。わたしはこう思う」と意見交換できるんですよね。複数の看護師が担当することで関わった人数分の看護感が反映される。自分の知識不足も補えるし、ひとりで悩まずに済むこともありがたいです。
ひとりにゆっくり寄り添える訪問看護が好き

松根さんが週に2回勤務するさざなみ訪問看護ステーションは神奈川に3拠点。小田原「さてらいと」は現在3名のスタッフで運営。
――訪問看護のやりがいはどんなところですか。
1対1なので、ひとりの利用者さんにゆっくり寄り添えることです。病院では、携帯で呼ばれたら対応しないといけないのであっちもこっちもになりますが、訪問看護ではひとりに集中できる。そういうところが自分に合ってるのかなと思います。
――逆に大変なところは?
仕事内容より、季節に左右されるところですかね。車に乗って移動するので、夏場は暑いし、冬は寒い。雨が降っていると傘をさして荷物を背負って。
――現在の職場は働きやすいですか。
わたしたちが利用者さんといい関係を築けるように、代表が利用者さんと日常的にコミュニケーションをとってくれています。それが本当にありがたいなと思います。
看護師をやりながら薬膳漢方講師や整体師としても活動しているんですが、わたしの働き方をすごく尊重してくれているのも働きやすいです。会社の福利厚生として漢方茶を置いてくださったり、整体を取り入れてくれたり。無理に自分を抑えることなく、やりたいことができる環境が本当にありがたいです。
後編では、薬膳漢方講師や整体師としての活動について詳しくお伺いします。
撮影/森末美穂
取材・文/永瀬紀子












