【子育て応援メソッド】個人ではなくチームで仕事を受けるからピンチに強い ヘア&メイクアップアーティスト 陶山恵実さん #1
美容業界で働くワーママ・ワーパパに、仕事と育児の両立法をお伺いする「子育て応援メソッド」。今回は、ヘア&メイクアップアーティストの陶山恵実さんにインタビューさせていただきました。
陶山さんは、STORYなど多くの雑誌や有名タレントさんを手がける人気ヘア&メイクアップアーティスト。不規則になりがちなお仕事と育児をどのように両立されているのでしょうか?
陶山さんの所属されている事務所は、個人ではなくチームで仕事を受ける意識が強いため、ママになっても仕事を続けてこられたとおっしゃいます。ご自身のお母さんにも、幼稚園のお迎えや夕食づくりなど全面的に育児をフォローしてもらっているそうです。
お話を伺ったのは…
ヘア&メイクアップアーティスト
陶山恵実さん
付属高校から大学に進学するも、ヘアメイクへの道をあきらめきれず、大学を中退してヘアメイクの専門学校へ。専門学校に通学しながら美容室に勤務し、美容師免許を取得。その後、ヘア&メイクアップアーティスト森ユキオ氏に師事。現在も森さんのヘア&メイク事務所ROIに所属し、STORY・VERY・美STなどの雑誌や有名タレント・モデル、WEB、カタログなどでご活躍。8才の女の子と5才の男の子のママ。
母と二人三脚で育児をしています
――お子さんは現在おいくつですか?
8才(小3)の女の子と5才(年長)の男の子がいます。
――現在どんなお仕事をされていますか?
テレビ、雑誌、WEB、カタログ関係です。以前はほとんど雑誌の仕事でしたが、最近はタレントさんやモデルさんに呼んでいただくテレビなどのお仕事も増えました。雑誌はSTORYや美ST、VERYなどにお世話になっています。
――お仕事はお子さんの学校や幼稚園の時間内で収まっていますか?
ぜんぜん収まらないので、わたしの母と二人三脚で育児をしています。夫は時間が不規則な仕事をしていて、平日の帰宅は夕食の時間を過ぎますし、土日どちらかは仕事をしています。夫が担当する家事育児は、息子の幼稚園の送りと休日の洗濯物干し。娘がなかなか洗わない上履きをしびれを切らして洗ってくれることもあります。
――娘さんの上履きを洗ってくれるパパってなかなかいないのでは?
子どもたちには甘いパパでなんです。でも、平日はまったく育児に参加できないので、実家の母に泊まりこんでもらって子供たちの面倒をみてもらっています。長男の幼稚園のお迎えから、夕食の準備、お風呂も入れてくれるのでとても助かっています。わたしの仕事が立てこんでいると6連泊してもらうことも。普段は、一週間のうち3泊くらいしてもらうことが多いです。でも、母も年々体力的にきつくなっているので、あまり無理をさせないように仕事量を調節することもあります。
――一日のタイムスケジュールを教えてください。
――朝がとても早いですね。
夜は疲れてしまって家事ができないので、朝早く起きて家の片付けをしています。仕事柄、体が完全に朝型になっているので、撮影が入っていなくても朝は早い時間に目が覚めます。だから、朝がいちばん動けますね。
――お子さんが寝た後は、なにをされていますか?
翌日の仕事の準備をします。いまコロナ禍なので、メイク道具の消毒に時間がかかりますし、あとは撮影のための資料集めをすることが多いです。
メンバー全員で仕事のクオリティを上げていく
――仕事量を調整しているということですが、クライアントとの関係で難しかったりすることはありませんか?
例えば、わたしにお仕事のお問い合わせをいただいたけれど、残念ながらスケジュールが合わなかった場合、クライアントさんがOKであれば、ROIの他のメンバーにお願いすることがあります。
ROIのスタッフは、チームでお仕事をいただいている意識が高いのだと思います。メンバー全員でクオリティを上げて、みんなでいい仕事をしていこうというスタンスです。このみんなの意識のおかげで、育児中のわたしも心に余裕ができ、ここまでやってこられたのだと思います。
――他のヘア&メイク事務所にもそのようなスタイルはあるのでしょうか?
わたしの知る限り、あまりないと思います。同じ事務所に所属されていても、個々でお仕事を受ける方が多いのではないでしょうか。
――例えば、当日の朝、「子どもの体調が悪いから変わってください」ということもできるのですか?
その日突然は無理ですね。子どもの具合が悪いときは、母や他の人に子どもをみてもらって仕事に行きます。例えば、過去にわたしがぎっくり腰になってしまったときに、他のメンバーが現場にヘルプに来てくれたことがありました。雑誌のビューティ企画で、10パターンほどのメイクを提案する撮影だったのですが、ぎっくり腰じゃなくてもわりとハードな内容でした。
その現場に、「前の仕事が終わったから手伝いにきました」とメンバーが駆けつけてくれたんです。しかも3人も! あまりのしんどさにそのときの記憶がないのですが、すでにアシスタントからひとり立ちしているメンバーが、メイクルームから撮影現場に道具を運んでくれたり、ちょっとしたメイクの直しとか髪の乱れなども直してくれていたと思います。
このときは、本当に助かりました。この環境がなかったら、いまのようにヘア&メイクの仕事を続けられなかったと思います。
――メンバーの方たちは、そういった教育を受けているのですか?
そうですね。教育とROIの気風があるのだと思います。そのときも、森が「陶山がぎっくり腰になったから応援に行ける人?」と他のメンバーにラインを送ってくれたのだと思います。とても助けられたので、今後メンバーに何かあったときには、わたしも力になりたいと思っています。
筋膜リリースボールでぎっくり腰が遠のいた
――ヘア&メイクさんは体が資本のお仕事だと思いますが、メンテナンスはどのようにされていますか?
骨盤の高さが左右ズレているせいか、ぎっくり腰を年に3回やった年もあり、膝にもきているんです。ぎっくり腰でヘルプしてもらったときは本当に申し訳ないなと思って、その後、村田友美子先生の本を参考にストレッチをしています。友美子先生が本を出版される際にメイクを担当させていただいたのがきっかけなのですが、話を伺うと筋肉をほぐすことが大事なのだそうです。
友美子先生が開発した「Hoggsy」という筋膜リリースボールを使って筋肉をほぐします。きょうはちょっと紛失していて、トリガーポイントを持ってきました(笑)。仰向けになった状態で腰のつらい部分にこのボールを当てて、深呼吸しながら体重をかけていきます。
このストレッチをやるようになってから、しばらくぎっくり腰になっていないんです。マッサージや整体にも行かなくなりました。ゴッドハンドと言われる整体の先生に通ったこともありますが、このストレッチのほうが効き目があるかもしれません。隙間時間に自宅でできて、最高です。
――そんなにいいんですね。
筋肉を鍛えると骨の形も変わってくるそうなので、本気でやったら変わるんじゃないかなと期待しています。でも、ふだんトレーニングしていないので、ちょっとやると翌日体が痛くなってしまって。メイク中に、ブラシを持ったまま「痛たたたっ」ていうヘア&メイクって嫌じゃないですか? 動きの悪いヘア&メイクも嫌じゃないですか? それもあってなかなか覚悟ができずにいますが、来年こそはレッスンに通ってみたいです。
陶山さんが仕事と育児を両立させるためのコツは
人気ヘア&メイク、そしてふたりのお子さんのママでもある陶山さん。陶山さんが仕事と育児を両立させるためのコツは以下の3つでした。
1.日々の育児は母と二人三脚で
2.ピンチのときはチームのメンバーに助けてもらう
3.筋膜リリースボールでボディメンテナンス
後編では、忙しいヘア&メイクの仕事を抱えつつ、ひとりの人間として、ママとして、お子さんたちと向き合うための工夫や、家族で愛用されているスキンケアなどについて伺います。
▽後編はこちら▽
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撮影/古谷利幸(F-REXon)
取材・文/永瀬紀子