お互いの大変さが分かるから文句と愚痴は封印。月1の夫婦デートで絆を深める suiトップスタイリスト 中村育美さん #2
2015年表参道にオープンして以来、幅広い年代層からファンを増やしているヘアサロンsui。中村さんはここでトップスタイリストとして勤務しながら、6歳の長男と3歳の長女の子育てをしています。前編ではアシスタント時代に出会ったパートナーとのこと、子育てをしている先輩スタイリストからの「働き方」のアドバイスについてご紹介しました。
後編では、子育てと仕事で溜まったストレスをどうやって発散しているのか、忙しいパートナーとお子さんとの時間のやりくりなどを伺います。
お話を伺ったのは…
suiトップスタイリスト 中村育美さん
山野美容専門学校を卒業後、都内の有名サロンに勤務。ここで修行を積み、スタイリストに。第一子を出産後、2016年7月よりsuiにトップスタイリストとして勤務。サロンワークや雑誌の撮影をこなしながら育児に奮闘している。
子どもとは毎日のお風呂タイム、夫とは月1のランチデートで絆を深める
――家族全員そろうのが朝食なんですね。
夫に早朝ロケなどの仕事がなければ、4人で朝食をとります。サロンの終わりが遅いので帰宅は22時を過ぎることが多いですね。その後に打ち合わせや研修があれば24時を回ることもあります。その時間には子どもたちはもう寝ているので、朝しかないですね。
――中村さんご自身はお子さんとの時間はどうやって工面していますか。
家事の合間にちょくちょく話をしますが、私がいちばん楽しみにしているのはお風呂タイムですね。3人でおしゃべりしているとあっという間に時間が経ってしまいます。大切にしているのは、子どもたちが眠るまでのゴロゴロタイムです。本を読んだり、スキンシップをしたり。子どもがいちばん素直な時間だと思います。
――パートナーとお子さんが一緒に過ごす時間はどうしていますか。
夫は忙しくてなかなか休みが取れないので、父と子の時間をつくるのが本当に悩ましい。息子がキャッチボールをしたいと言ったときは、あえて夫と二人っきりになれようにしています。夫と子どもたちに近所のスーパーへの買い物をお願いすることもあります。母と子の時間も大切ですが、父と子の時間も同じように大切。なんとか工面したいですね。
――パートナーが休日のときはどんな風に過ごしていますか。
私はディズニーランドへ行くとか、ちょっと遠出をして特別な休日にしたいと思っているのに、子どもたちはまだ幼いせいかあまり興味がないんですね。「明日はパパもお休みだよ。どこへ行きたい?」って聞くと「公園で虫取りしたい」とか、いつもの過ごし方と同じ。子どもたちにとって「パパがいる」だけで特別なんです。
――中村さんとパートナーとの時間はどうやってつくっていますか。
夫の休みの日に子どもたちを保育園に預けてランチしたり買い物をしたりして楽しんでいます。だいたい月に1回のペースでしょうか。このときの話題は「保育園で泣いちゃったんだよ」とか「あの子は気が強いよね。誰に似たのかしらね」とか、ほとんど子どものことですね。
イライラはため込まず、「買い物」「里帰り」「筋トレ」で必ず発散!
――仕事でも子育てでもストレスは溜まりますよね。
今はだいぶ落ち着きましたが、長男のイヤイヤ期が辛かったですね。その当時はマンションに住んでいて、下のフロアに住む方から「子どもの足音がうるさい!」って苦情がきてしまったんです。「静かに歩いて」と注意をしても、子どもはイヤイヤ期ですからよけいにドスンドスンと歩くし。ストレスなんて感じないタイプだと思っていましたが、このときばかりは円形脱毛症になってしまったんですよ。
夫も見かねたのでしょう。マンションを売って、一軒家を買うことに決めました。ストレスがなくなったら脱毛症は治りました。
――ストレスはため込むのがいけないんですね。
イライラが溜まってきたな…と思ったら、ネットで買い物をします(笑)。夫も「それ新しいね~」とは言いますけれど、文句は言いません。私が家事をいっさい担当しているので、「申し訳ない」という気持ちがあるのかもしれませんね。
連休を利用して子どもと3人で実家に帰ることもあります。このときも夫は「いつ帰ってくるの?」とは聞きますが、イヤな顔をしたり文句を言ったりしません。夫の仕事の大変さは分かっていますから、「もっと早く帰ってきて」とか、「仕事量をセーブして」とは言えません。夫も私に対して同じような気持ちなんだと思います。
――仕事と子育てを両立する難しさは何でしょうか。
仕事のイライラを家に持って帰ってしまうことですね。スイッチの切り替えがなかなか難しい。最近、嬉しいことに子どもが私の仕事に興味を持ってくれるようになりました。「今日はお客さん何人だったの?」とか聞いてくるんですよ。人数が多いと「今日は頑張ったね。すごいじゃん!」って褒めてくれることもあります。
両親の働く姿を見て「美容師になりたい」と言われたら嬉しい!
――子育てでいちばん気をつけていることは何ですか。
私の両親はいろいろな所に連れて行ってくれたんです。だから子どもたちにも同じように思い出を作ってあげたいと思っていました。でも、夫と私の仕事では、そう思うようにはいきません。前は出かけた場所の数を気にしていましたが、大事なのは「そこで何をしたか」という質なんですよね。みんなで一緒に過ごすことを大事にしたいと思っています。
――どんな大人に育ってほしいですか。
優しくて芯のある大人に育ってほしいですね。今はよく口ゲンカしていますが、大人になっても、仲のいいきょうだいでいてくれたら嬉しいですね。
将来、美容師になってほしいとは思いませんが、私たちの働く姿を見て「美容師をやってみたい」と言われたら、私たちが頑張っている姿を認めてもらえたようで、ちょっと嬉しいかも。とにかく、美容師に限らず、何か打ち込めることを見つけてほしいですね。
中村さん流ストレスをため込まない「発散ポイント」
1. 任天堂switchなど楽しく体を動かせるものを見つける
2. 育児の相談ができる環境を身の回りに整えておくこと
3. 出かける回数ではなく、家族で過ごせる時間を大切にすること
体を動かすことは心と体の健康に欠かせません。とは言えジムに通う時間を作ったり、長く続ける根気を保つのは大変。楽しみながら体を動かせられれば、ストレス発散もスタイルキープも叶います。育児の相談をしたいときに同じ環境にある友人がいればよいのですが、中村さんの平日はサロンでの仕事があるため、ママ友を作る機会がありません。そこで利用しているのがFACE TIME。実家のご両親とのテレビ電話を通じて育児の相談や愚痴を聞いてもらっているとか。
発散ポイントの3つ目は、考え方を変えたことにあります。家族で外出する回数の少なさがストレスになっていたのを、見方を変えて「質」に切り替えました。できないことを数えるより、できることを楽しむ方がずっと健康的。いつまでも悩み事やストレスを引きずらない中村さんの強さがこの発散ポイントからも感じられました。