「タラソテラピー」は健康維持から美容までかなえてくれる海の恵みの治療法
「海は生命の源」とよく言われます。その海を利用して治療を行う方法が「タラソテラピー」です。日本ではあまりなじみのないタラソテラピーですが、海外では盛んに行われており、その効果も確認されています。この記事では、そんなタラソテラピーについてご紹介します。
海の力を使って健康になる「タラソテラピー」
「タラソ(THALASSA)」はギリシャ語で、日本語に訳すと「海」を意味します。これにフランス語で「療法」を意味する「テラピー」をプラスして作られた言葉が「タラソテラピー」です。日本語では「海洋療法」と言い、言葉の通り海を使った治療法を指します。
治療だけでなく、健康維持や病気予防にも取り入れられている他、美容でタラソテラピーを行うこともあり、医療分野以外でも活躍しています。
タラソテラピーの歴史
タラソテラピーは、すでに紀元前には行われていました。古代ギリシャの医師であるヒポクラテスが海水での入浴や海水を飲料水として飲む治療法を提案した他、兵士の傷の治療にも海水を使用していました。1700年代には、イギリスの医師が腺疾患やがんの治療に海水が効果的であるという内容の論文を発表しています。
その後フランスの科学者であるルネ・カントンが、海水と人の血液が非常に似ていることを発見。これが医学史におけるタラソテラピーの地盤とされています。以降、タラソテラピーはフランスを中心に栄え、1986年には「タラソテラピー国際連盟」が創立。日本でもタラソテラピーを取り入れた治療を行う施設が増えてきました。
世界のタラソテラピー
タラソテラピーは、現在日本を含めた多くの国で実践されていますが、発祥の地であるフランスで特に盛んです。フランス初のタラソテラピーセンターである「ロスコフ・タラソ」や、19世紀に作られた「テルム・マラン・サン・マロ」など、歴史あるタラソテラピーの施設も多くあります。特にタラソテラピーが生まれたブルターニュ地方は、タラソテラピーに適した海水や海泥が豊富にある地域です。
医療としてはもちろん、美容としてのタラソテラピーにも力を入れており、海水を利用した化粧品などもあります。
また、ドイツもタラソテラピーが盛んなところです。ドイツは自然を使った病気の治療法が積極的に取り入れられており、健康保養地(クアオルト)として、374カ所(2007年度)が指定を受けています。この中には海岸沿いの地域も含まれており、それらではタラソテラピーを使った治療が行われています。
ニーダーザクセン州にある「ノルデナイ」では、1884年からタラソテラピーを開始。フランスとは違い、美容ではなく医療や療養のために使われることが多いようです。
タラソテラピーを体験できる場所
タラソテラピーを体験するには、タラソテラピーを体験できる施設を利用することがおすすめです。施設は海沿いにあることが多く、プールや宿泊施設なども完備しています。
日本ではスパと混同されがちですが、フランスではスパよりも医療的な方法を求めてタラソテラピーを利用する人が多いようです。
中には専任のセラピストが、個々の健康状態に合わせてプログラムの提案やアドバイスをしてくれるなど、かなり本格的なタラソテラピーを体験できるところもあります。
トリートメントや海水入浴。タラソテラピーの方法
タラソテラピーの方法は、1つではありません。ここからは具体的なタラソテラピーの方法について、ご紹介します。
海水に入浴する
海水に入浴する方法は、温泉療法とも呼ばれています。ミネラルが豊富に含まれた海水に漬かることで、自律神経を整えたり新陳代謝を高めたりする効果があると言われています。
また海水には浮力があるため、足に負担をかけずに運動ができます。そのため、リハビリや健康増進にも効果的です。
海の力を含んだトリートメント
タラソテラピーでは、海藻や海泥といった海の成分が含まれたパックなどでトリートメントを行うこともあります。この方法は、体から老廃物を排出する他、血行を良くするなどの効果も期待できます。
海辺で療養する
タラソテラピーの中には、上記のような施術を受けながら、海辺に滞在するという方法もあります。海辺の美しい風景を眺めながら過ごすことで、リラックス効果が得られるためです。
さらに日光浴や大気浴は、肺を強くしたり喉を殺菌したりすることもできます。加えて、歩きにくい砂浜を歩くことで、多くのカロリーを消費できるだけでなく、足の裏が刺激されて体温の調整機能が良くなるとされています。
代表的なタラソテラピーの種類
タラソテラピーには、いくつかの種類があります。今回はその中から特に多くの施設で取り入れられている3つをご紹介します。
ファンゴテラピー(海泥療法)
ファンゴテラピーは海泥療法と呼ばれ、海泥のパックを肌に塗る方法です。泥を全身に塗って、20分から30分ほど待った後、シャワーで洗い流します。使用する海泥は、死海やフランス・ブルターニュ地方のもの、沖縄のものなどで、それぞれ含まれている成分が違います。
海泥には海のミネラル成分が多く含まれており、直接肌に塗ることで保湿効果や毒素の排出効果が得られることが特徴です。また、血行が良くなって代謝も高まります。さらに、泥が古い角質を吸収するため、毛穴の汚れが落ちて肌のトーンがアップするといった美肌効果も期待できます。
アルゴテラピー(海藻療法)
海藻療法とも呼ばれるアルゴテラピーは、海藻のパックを全身に塗るタラソテラピーの方法です。ラミナリアやリトタンリウムなどの海藻をパウダー状にし、海水を混ぜて海藻パックを作ります。使われる海藻は、主にフランス・ブルターニュ地方のものです。
施術方法はファンゴテラピーと同じで、パックを塗った後、20分~30分待機してパックを洗い流します。
アルゴテラピーは、毒素の排出や代謝の促進などを行ってくれるため、ダイエットにも効果的と言われています。また代謝が上がることで、肌にツヤやハリも出てきます。
ハイドロテラピー(水治療法)
ハイドロテラピーは、水治療法と呼ばれるタラソテラピーの方法です。もともとは冷たい水を浴びることで気の巡りを良くするための方法でしたが、現在では水の力を利用して運動したり、ジェットバスなどで特定の場所を刺激したりする方法を言います。
水は浮力を持っているため、下半身に負担をかけずにエクササイズができます。一方で、手足を素早く動かすには空気中の12倍以上の力が必要と、筋肉に負荷がかかることも特徴です。そのため、陸上でエクササイズをするよりも効果的に筋肉をつけられます。また水圧によって腹式呼吸になることで、血の巡りも良くなります。
なおハイドロテラピーは、犬の健康を保つものとして愛犬家の間で人気です。
タラソテラピーにはこの他にも、大気によるアエロゾロテラピー、日光によるヘリオテラピー、食事によるアリマンタシオンなどの方法があります。
日本におけるタラソテラピーと効能
フランスでは一般的に行われているタラソテラピーですが、日本での認知度はあまり高くありません。またフランスやドイツでは治療の一環として使われることも多いタラソテラピーですが、日本ではリラクゼーションや美容として行っていることが多いようです。
日本でのタラソテラピー
日本で初めてタラソテラピーの施設ができたのは、1992年。三重県の伊勢志摩湾を望む場所に、ホテルを併設したリラクゼーション施設としてオープンしました。2010年代に一度タラソテラピーブームが起こりましたが、広く認知されたとは言えない状況です。そのため、日本国内には広くタラソテラピー施設が分布していますが、その存在はあまり知られていません。
またタラソテラピーは、長期滞在してその効果を実感できる方法でもあります。しかし忙しい日本人は、まとまった時間をつくることが難しい上、タラソテラピーは決して安くはありません。こうした面が、日本でのタラソテラピーの普及を妨げているとも言えます。
しかし、高齢化社会に突入した日本において、健康は非常に重要視されています。タラソテラピーを「病気の予防」や「疲れた心と体をリセットするもの」と考えれば、今後広まっていく可能性は十分にあります。中にはタラソテラピーを専門に行う「タラソテラピスト」の求人を出している会社もあります。
では、タラソテラピーには、具体的にどのような効能があるのでしょうか。タラソテラピーには主に以下3つのような効能があります。
タラソテラピーの効能1・栄養効果
前述したように、海水には多くの栄養素が含まれています。タラソテラピーの大きなメリットは、トリートメントや入浴で海の栄養素を自分の体に取り込めることです。それによって体の中の毒素を外に排出したり、代謝を高めたりと、体の基本的な機能の回復や維持に役立ちます。
タラソテラピーの効能2・運動効果
タラソテラピーでは、海水の浮力を利用して運動を行います。これによって筋肉が柔らかくなり、関節の痛みなども緩和されると言われています。また体のゆがみを治すこともできるため、背骨や骨盤がゆがんで姿勢や体調が悪くなっている方にも効果的です。
タラソテラピーの効能3・休養効果
タラソテラピー施設には、ラグジュアリーで非日常を感じさせるところも多いです。これは、普段とは違う場所で過ごすことにより、休養効果を得るためとされています。
タラソテラピーの一種であるクリマセラピー(気候療法)では、潮風を吸い込んで殺菌や自律神経の調整を行います。海辺の自宅ではない空間で、ただゆったりと過ごすだけでも、タラソテラピーの効能が得られます。
おわりに
タラソテラピーは、日本ではあまり知られていません。しかし、多くの効果が見込める方法で、老若男女が幅広く利用できます。今後、タラソテラピーの効能が知られれば、広まる可能性があると言えるでしょう。
参考元:
タラソテラピー|WELD
タラソって何?|トータルエステティックサロン ラ・セーヌ
タラソテラピー|Beauty総研
タラソテラピーの発祥の地|ブルターニュ観光局公式サイト
自然療法と健康保養地(クアオルト)のすすめ|健康保養地医学研究機構
海の恵みで気持ちよく健康になる! タラソセラピーの方法|美プロPLUS
施設紹介|タルゴラグーナ
ウェルネスタラソ|ザ・テラスクラブ アット ブセナ
出雲市タラソテラピー施設「マリンタラソ出雲」
“タラソテラピー”体験のできる人気ホテルランキング|マイトリップ
タラソテラピーとは|LYOMER(リヨメール)
ファンゴテラピー|エステ・人気ランキング
アルゴテラピー|エステ・人気ランキング
ハイドロセラピー|Animal Care-Hospital ALOHA
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日本のタラソセラピー施設について①(海洋療法施設)|ウェルネス研究分野
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