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特集・コラム 2022-12-07

介護タクシーを開業するためには?必要な資格や条件、流れについて詳しく解説

介護タクシーは、要介護認定を受けている方や身体的な障害で移動が困難な方の移動手段です。高齢化の影響で介護の需要が増えつつある中で、介護者向けの移動手段である介護タクシーの開業が注目されています。

介護タクシーを開業するためには、普通自動車二種免許の取得が必須です。そして、開業するためには、定められた各種の要件を満たす必要があります。

この記事では、介護タクシーの特徴や開業に必要な資格、満たすべき要件について順を追って解説します。介護タクシーを開業するのに必要な資格や条件について知りたい方は、参考にしてみてください。

介護タクシーとは?必要な資格


介護タクシーとは、自力での移動が困難な要介護者や身体的な障害で公共交通機関を利用するのが難しい方の、外出や目的地までの移動をサポートするタクシーサービスです。

この章では、介護保険タクシーと福祉タクシーの違い、必要な免許や従事する業務によっては必要となる介護職員初任者研修について紹介します。

福祉タクシーとの違い

介護タクシーには、介護保険タクシーと福祉タクシーの2種類があります。介護保険タクシーは、移動介助や訪問先でのサポートなど、介護サポートもおこなうタクシーです。

その一方で、福祉タクシーは、要介護者を目的地まで移動させるサポートにのみ従事するタクシーです。介護保険タクシーの場合は、以下で紹介している介護職員初任者研修の資格取得が求められています。

福祉タクシーについての詳しい情報は、以下の記事も参考にしてみてください。

福祉タクシーとは?仕事内容や介護タクシーとの違い、働き方についてご紹介!

普通自動車第二種免許

まず、普通自動車二種免許とは乗客(旅客)を運ぶ目的で、旅客自動車を運転するときに必要となる免許。旅客自動車とはバス・タクシー・ハイヤー・民間救急などが含まれます。
介護タクシーを開業するには利用者を乗せる必要があるので、普通自動車二種免許を取得しなければなりません。
取得するには、普通免許取得後3年以上経過し、視力が片眼0.5以上・両眼0.8以上であり、識別として、信号機の燈火の色が判断できるなどの条件があります。免許を取得する講習は、特定教習(取得時講習)1日と 、学科教習、技能教習(最短3日間)の3つ。合格すると免許取得となります。

介護保険タクシーの場合|介護職員初任者研修

介護保険タクシーの場合、乗車の際の移乗や乗り降りの介助をおこなう可能性があるので、介護職員初任者研修が必要となります。この資格は旧ホームヘルパー2級に相当する資格です。
介護職員初任者研修では、9科目130時間の講義を受けて介護の基本を学びます。カリキュラム達成後に実施される試験に合格すると修了です。

介護タクシーを開業するまでの流れを解説!


介護タクシーを開業するまでには、以下の手順を踏む必要があります。

1.法人を設立する
2.介護保険事業所の指定を受ける
3.介護タクシーの開業許可を取得する
4.運輸支局へ許可申請書を提出する
5.法令試験と事情聴取を受ける
6.許可証の発行を受ける
7.登録免許税を納付し届出をおこなう
8.運賃と約款の認可申請をおこなう
9.開業後に運輸開始届を提出

必要な要件と流れを確認して、介護タクシーの開業に備えていきましょう。

1. 法人を設立する

はじめにご説明しましたが、介護保険タクシーとは訪問介護のサービスのひとつです。訪問介護事業所を設立する場合、「営利法人」と「非営利法人」というどちらかの法人を設立する必要があります。
「営利法人」とは、株式会社を筆頭に、株主や社員などの構成員の経済的な利益を追求し、かつ団体・グループの利益をそれらに分配する法人のことをいいます。株式会社とは種類が異なりますが、合同会社などもここに含まれるのが特徴です。
一方の「非営利法人」とは、構成員に対しての利益の見返りを意図としない法人のことをいいます。つまり、「営利法人」と「非営利法人」では「利益目的か、そうではないか」という点が大きく異なるのです。この非営利法人は、「NPO法人」「一般社団法人」「一般財団法人」「公益社団法人」「社会福祉法人」などが相当します。
このふたつは設立費用や税金が異なり、それぞれにメリット、デメリットがあるので、自身の事業形態にあった法人を設立しましょう。

2. 介護保険事業所(訪問介護事業所など)の指定を受ける

介護保険事業所に指定されると、国から介護保険の適用を受けられます。指定を受けるためには、以下のような基準とプロセスを踏む必要があります。

・設備基準
・人員基準
・運営基準
・審査を受ける

ここでは、介護保険事業所の認定基準について確認していきましょう。

設備基準

介護保険事業所の指定を受けるためには、所定の居室面積を満たし、事業所の運営に必要な事務スペース、相談室、トイレなどの設備が配置されていなければなりません。

居住者の生活の場となるスペースを想定しなければいけないので、一般的な病院などよりも、広い空間の設置が基準とされています。

人員基準

提供される介護・福祉サービスの種類や施設のタイプによって、必要とされるスタッフの職業と人数の基準が定められています。

・訪問介護タイプ:身体介護に介護職員初任者研修や介護福祉士が必要
・通所タイプ:医療サービスが伴う場合は、看護師が同伴する必要がある
・施設タイプ:利用者の介護・福祉サポートをする生活相談員やケアマネジャー

施設・通所タイプの事業所では、利用者3人につき1名以上の介護職員や看護師を、訪問介護タイプの事業所では、利用者1名につき1名以上の職員を配置するのが原則です。

ただし、介護保険事業所で必要とされる人数は、地方自治体によって基準が異なるので、各自治体のホームページで人員基準について確認しましょう。

運営基準

介護保険事業所を運営するにあたっての留意点を満たさなければなりません。この留意点は各自治体によって異なります。たとえば、サービスの提供を拒否されたり、サービスの提供が難しかったりする場合は、利用者に対して他の事業者を紹介しなければならないなどの規定が定められています。

自治体のホームページでどのような基準が求めらるのかを確認しましょう。

事業所の運営にあたっては、専門的なサービスの内容や料金、重要事項について正確に伝えて、きちんと同意を得られるような説明体制を整えることが大切です。

運営基準の内容をきちんと確認し、事業所の仕組みを考えましょう。

審査を受ける

申請書が受理されたのち、要件を満たしていれば指定事業者として決定されます。指定事業者として決定されると管理者を対象として研修がおこなわれ、研修終了後に指定書が交付される流れです。

こちらも自治体により内容が異なりますので、自治体のHPなどで確認しましょう。

3. 介護タクシーの開業許可を取得する

介護タクシーの開業許可を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。

・資格要件
・人員要件
・欠格要件
・車両要件
・車庫要件
・営業所要件
・休憩仮眠施設要件
・任意保険加盟の要件

これらの基準について確認して、開業許可の取得に向けて準備しましょう。

資格要件

前述した通り、普通自動車二種免許が必要不可欠です。そのほか、介護タクシーの種類によって、配置しなければいけない人員要件は変わります。

人員要件

介護タクシーを開業するには、普通自動車二種免許保有者・運行管理者・整備管理者・指導主任者・苦情処理責任者の人員が必要です。具体的には、以下の業務に従事します。
・二種免許:介護タクシーの運転を担当。スタッフの誰かが保有していればOK
・運行管理責任者:運転手の指導やシフト管理・休憩施設の管理などを担当
・整備管理者:タクシーとして使用する車両の整備・点検・管理などを担当
・指導主任者:事故防止と教育、事故後の処理を担当
・苦情処理責任者:クレームに対応するのが担当
普通自動車二種免許の保持者は必須ですが、その他にも車両の整備・管理、事故防止・クレームなどを担当する人員を配置しなければならない点を確認しておきましょう。

欠格要件

欠格要件とは、介護タクシーの安定的な運営のために、前歴や前科がある場合に営業の許可を与えない要件です。たとえば、過去2年以内に免停になっている場合は、この欠格要件に該当し、事業所の役員として開業許可の申請をすることはできません。

また、過去に運輸関係の会社を経営していて、営業停止になった経験のある方に関しても、介護タクシーの開業には携われないことを覚えておきましょう。

車両要件

申請者が使用権限を持っている福祉車両、または一般車両を1両以上保有している必要があります。福祉車両を使用する場合は、有資格者がいなくても許可を得ることが可能です。ただし、介護業務に関わるので、介護系の資格を取得する努力義務は課されます。
介護職員初任者研修など、無資格から目指せる資格取得を目指すか、すでに介護系の資格を取得しているスタッフがいると安心でしょう。
一般車両を使用する場合は、介護福祉士・訪問介護員・居宅介護従業員・ケア輸送サービス授業者研修などの有資格者が必須となりますのでご注意ください。

車庫要件

原則として、営業所に併設していることが必須条件です。併設できない場合は、営業所から直線で2km以内に設置されている必要があります。
ほかにも、車両の長さ・幅+1m以上のスペースがある介護タクシー専用のスペースが車庫にあり、かつ使用権限が3年以上あること、土地・建物が建築基準法・都市計画法・消防法・農地計画法などに抵触しないことなど、さまざまな条件に注意しましょう。
車両点検をするための器具とそれを実現できる充分なスペースがあることも重要です。

営業所要件

土地・建物の使用権限が3年以上あることや建築基準法・都市計画法・消防法・農地計画法などに抵触しないこと、事務室および休憩室があるという要件があります。

また、営業区域内に営業所が立地している必要があり、さらに適切な事業規模かどうかといった点も判断基準になることも覚えておきましょう。

休憩仮眠施設要件

休憩仮眠施設にも要件があり、原則として営業所または自動車車庫と併設されている必要があります。
併設できない場合は、営業所および自動車車庫のいずれからも直線2kmの範囲内であることや、ほかの用途に使用される部分と明確に区画されているもの、マンションやアパートなどでも問題ありません。
休憩室と事務所は別の部屋であり、利用者が入ってこれない独立した部屋である必要があります。仮眠用の布団やベッドなどを用意しておきましょう。
また、申請者が土地・建物について3年以上の使用権限を有することなどがあげられます。営業所や車庫と同じように、使用権限が必要となる点は覚えておきましょう。

任意保険加盟の要件

介護タクシーの開業をするなら、任意保険への加入が必須です。最低でも対人1人につき8,000万円以上、200万円以上の対物補償に加盟する必要があります。

ただし、一般的には補償額無制限の対人・対物に加入するのが一般的。さらに事故のリスクを考えると、同乗者にも保険をかけるのが望ましいでしょう。

4. 運輸支局へ許可申請書を提出する

運輸支局へ許可申請を提出し、申請が受理される必要があります。申請書に関してもサイズや枚数、必要部数が明示されているので、HPなどで確認しましょう。

5. 法令試験と事情聴取を受ける

法令試験と事情聴取は申請が受理された日以降、適宜おこなわれます。開催日に関しては、各自確認しましょう。これに合格すると許可証が発行されます。

6.許可証の発行を受ける

合格後、申請書を提出した運輸支局によって許可証が発行されます。その後、正式に登録されるという流れです。

7.登録免許税を納付し届出をおこなう

この登録する際には、登録免許税を納付する必要があります。登録納付税を納付し、届け出をおこないましょう。

8.運賃と約款の認可申請をおこなう

登録納付税を納付し、届け出をおこなったあとは、運賃と約款の認可申請をおこないます。このとき、基準に適合しない場合は却下の対象になってしまいますので注意しましょう。

9.開業後に運輸開始届を提出

開業後は、6カ月以内に運輸開始届を提出する必要があります。運輸開始届の表紙・任意保険証書の写し・許可を受けた車検証の写し・事業用施設の写真などです。複雑な書類の対応が多いため、行政書士に依頼するのもよいでしょう。

介護タクシーの開業に必要な資格や条件をおさえて開業に向けて準備しよう!


この記事では、介護タクシーの特徴や必要な資格、開業するまでの流れについて求められる要件ごとに詳しく解説しました。

介護タクシーの営業には普通自動車二種免許が必須で、介護保険タクシーのような利用者の介護もおこなうタクシーは、介護職員初任者研修や介護福祉士などの介護系の資格保有者が同乗している必要があります。

介護タクシーの開業許可を得るためには、クリアしなければならない要件について把握することが必要不可欠です。介護タクシーの開業に必要な資格や要件、具体的な流れを知って、ニーズが大きい介護タクシーを開業に向けて準備しましょう。

引用元
東京都公安委員会届出教習所:新宿自動車学校 二種免許取得
神奈川県警察:大型二種・中型二種・普通二種免許(指定校卒業)の試験手続について
東京都福祉保健局:1訪問介護(新規に指定を受けたい方へ)
東京都福祉保健局:介護保険 事業者指定のガイドブック
国土交通省 中部運輸局:介護タクシー事業の経営許可までの流れ

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