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特集・コラム 2021-06-29

コロナ禍での採用動向2021 新卒採用にもSNS強化が必須

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に振り回された2020年、わたしたちの取り巻く生活環境や対人関係は大きく変化しました。

経済の打撃は新社会人にも影響を与え、内定取り消しや新卒採用の中止を決定する企業が相次ぎ、日本全体で就職活動が厳しい見通しとなっています。

そのような中で、整骨院をはじめとしたヘルスケア業界の採用状況はどう変化したのでしょうか。

withコロナといわれる現在の状況とこれからを、2021年のトレンド要素や経営の先読みをふまえ、株式会社船井総合研究所でヘルスケア業界のコンサルタントとして活躍する、竹留将聖(たけどめ・まさと)さんにお話を伺ってきました。

お話を伺ったのは…

株式会社船井総合研究所
ヘルスケア支援部 リーダー
竹留 将聖

船井総研でトレーニングジム業界コンサルティングの責任者を務め、トレーニングジム、整骨院、エステの業種のコンサルティングを行っている。全国で新規事業としてセミパーソナルトレーニングジムの立ち上げを推進し、WEB集客におけるHPの分析やカウンセリングでの契約率向上について定評がある。また、過去に治療院で4年間勤務していた経験もあり、対顧客という現場主義の提案を行う。『経営者の夢を叶える』をモットーにし、日々のコンサルテイングに務める。

ヘルスケア業界全体ではコロナの打撃少なめ 応募数は拡大傾向

まず、ヘルスケア業界全体で見ると、業界内自体は思いのほか新型コロナのあおりを受けてはいないようです。

「ヘルスケア業界の業績自体は上がっており、時代の流れとしては健康ブームで業界としては追い風です。そこに新型コロナが出現したことで、ますます人々の健康管理の意識は高まったといえます。」

日本におけるヘルスケア産業の市場規模は、経済産業省「次世代ヘルスケア産業協議会の今後の方向性について」によると2016年の約25兆円から2025年度には約33兆円に拡大すると推定されています。従来は健康保険を中心とした医療サービスがメインでしたが、現在国をあげて健康増進や生活習慣病予防サービスなどの、健康サポートの事業化をすすめています。

そういった動きの中で今回の新型コロナの影響もうけ、いわゆる「予防医学」としての健康管理の必要性がフォーカスされるようになりました。

そういった背景から市場自体は活性しており、新卒採用についても他の業界と比べておおむね好調な状況といえます。

「個人店レベルでは採用を中止したところも一部ありますが、新卒採用は継続して積極採用をしている企業が多い傾向です。ちょうど2021年の国家試験も終わったタイミングなので、今年度の採用が活発に動きだしました。新卒学生からの応募も多くあります。

整骨院の場合は、職人の業界になるので治療スキルありきで採用をおこなっています。院長が考える治療方針がベースになることが多いので、業務委託やフリーランスといった外部から入ってくる方はまだ少なく、社員としての採用が多いです。
働き方の自由度としては同じヘルスケア業界の中でも、スポーツジムやリラクゼーションサロンの方が進んでいるといえるでしょう。
そのため社員の中途採用で応募する40~50代も多くなっているので、応募自体は多い状況が続いています。

ちなみに2021年度の国家試験はまだ試験自体が終わったばかりですが、2020年の国家資格合格者としては、柔道整復師3,401名、はり師3,263名、きゅう師3,201名でした。いずれも、人数でいうと2019年度よりもわずかに減少傾向です。

2020年度は新卒採用の対象となる、専門学校の教育環境も大きく変わった年でした。

2020年は授業の多くをオンラインでおこなう必要があり、本来であれば実技指導が必要な場面をオンラインでフォローするために様々な取り組みを実施しています。

たとえば東京メディカル・スポーツ専門学校では、zoomを使い多面的な動きを複数カメラで確認可能にしたり、繰り返し動画視聴できるようオンデマンド型の授業を組み合わせたり、グループワークを取り入れて受け身な授業にならないよう取り組むなど、オンラインでも充実した講義が受けられるように工夫されていました。

2021年もコロナの影響は続くため、専門学校でのオンライン講義や、就活の際のオンライン面接はまだまだ続くものと思われます。

そのため、オンラインの活用や対策は受ける側も採用側も強化する必要があります。

SNSは採用&新規顧客開拓の両刀使いができる


オンラインでの取り組みを意識した場合、切っても切り離せないのがSNSです。

実は、今SNSで採用活動をする企業がとても増えています。

「最近では整骨院もSNSをしっかり使っています。FacebookやTwitterも活用されていますが、とくにInstagramをメインで運用されるところが多いです。
大手の整骨院で、採用担当者が専任でいるような企業の場合、Instagramで企業アカウントとは別にリクルートアカウントを運用しています。写真付きでアップしていくと、店舗やスタッフの雰囲気がより伝わりやすくなるので、SNSは採用兼広報のイメージです。
実は20代の若い世代の中には、Instagramで整骨院を探し、来院される方が増えています。SNSでの企業や店舗の紹介は、認知度アップだけでなく、集客につながるケースもあるようです。」

下記の表であらわしたスマホ・ケータイ所有者のインスタグラム利用率調査によると、Instagramは男女とも10代・20代の利用率が非常に高いため、新卒採用の場合、まさにアプローチしたい年齢層となります。

出典元:NTTドコモ モバイル社会研究所 スマホ・ケータイ所有者のインスタグラム利用率調査[調査対象:全国・15~79歳男女・単一回答]

たとえば採用アカウントの場合は、先輩の声といった感じで現場で働くスタッフの紹介をしていくのもよいでしょう。ホームページの場合、載せても2~3人程度の場合が多いですが、SNSの場合は極端な話、スタッフ全員紹介しても問題はありません。

また、研修や店舗勉強会の様子をSNSでとりあげることも有効です。

WEBでの採用ページの場合一般の方の目にとまる機会はなかなかありませんが、SNSの場合はより多くの方に見ていただけるので、就職活動中の学生さんだけでなく、一般の方の目に留まる機会もでてきます。勉強会などの様子は、企業のイメージアップ戦略としても良い効果をもたらしてくれるでしょう。

専任の採用や広報担当がいない場合、まずはお店のアカウントとしてSNSの運用を始めてみてください。

採用にしろ集客にしろ、まずはこの会社・店舗は雰囲気がいいな、行ってみたいなと思わせるところがスタートラインです。

教育で強化すべきは接遇力とカウンセリング力

新卒採用の場合、入社後の店舗の方針によってそのスタッフのカラーが決まってしまうので、どのように育てていくかというのは非常に重要な問題です。

まず、どの店舗でも最優先で教育をおこなうのは技術面であることに変わりはありませんが、この数年で整骨院の中で重要視されるものが少しずつ変わってきました。

それは「接遇力」です。

もともと人のケアをするというホスピタリティの高い仕事ではあるものの、従来の鍼灸師や柔道整復師といった職業は、どうしても職人の世界なので、接遇力はそこまで求められていませんでした。

しかし、現在の整骨院は競合との差別化や安定収益確保のために、顧客の囲い込みや物販の強化が大きな課題となっています。そこで必要とされるのが、質の高いカウンセリングができる人材です。

そのため大手の整骨院では、利用者の悩みを正確にくみとり治療方針を提案していくための、カウンセリング教育に力をいれるところが増えています。

物販に関してもカウンセリング力は非常に重要で、利用者のニーズを把握した上で「物販は治療の一部である」という思考を施術者が持つことができれば、モノを売ることに対しての苦手意識が芽生えにくくなります。

もちろん高い技術力をもったスタッフがそろっていれば店舗は運営できますが、安定した経営という視点でいくと高い技術力だけでは他店との差別化はできません。

カウンセリング教育は、顧客ニーズを引き出すヒアリング力と顧客の囲い込みに必要な提案力という2つの力を伸ばすことにつながるので、今後の新人教育の際に不可欠な教育となりそうです。

出典元:
経済産業省 次世代ヘルスケア産業協議会の 今後の方向性について
厚生労働省 第28回柔道整復師国家試験の合格発表について
新型コロナウイルス感染症対応に係る専修学校における遠隔授業の取組事例
NTTドコモ モバイル社会研究所 スマホ・ケータイ所有者のインスタグラム利用率調査

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