介護での臥床の意味とは?概要や介護を行う上でのポイントなど紹介!
介護現場では、「臥床」という言葉がたびたび使われます。介護での臥床とは一体どんな意味があるのでしょうか?また、他の介助と何が違うのでしょうか?
多くの専門用語が飛び交う介護現場。意味を知らずにいると、誤った対応をしてしまうリスクがあります。基礎知識として、「臥床」の意味をしっかりと知っておきましょう。ここでは、用語の意味や他の介助との違い、臥床介助を行うときのポイントなどを紹介していきます。
介護での臥床とは
「臥床」は、ベッドや布団などで寝ることをいいます。読み方は「がしょう」です。よく使われる言葉に「臥床介助」があり、体が起きている状態の利用者を横にさせる手伝いのことをいいます。
利用者を休憩させるために、布団に横になってもらう場合は、「臥床介助」をします。寝たきり状態の方を、浴室からベッドに移すときも「臥床介助」です。おむつの交換や就寝時にも行われ、介護に携わる人にとって、「臥床介助」は欠かせない技術といえるでしょう。
臥床介助と他の介助との違いについて
介護には、臥床介助以外にもいろいろな種類の介助があり、用語を理解していないと、その意味を取り違えがちです。それぞれの介助の違いとはなんなのでしょうか?ここで解説していきますので、しっかりと知識を身につけ、現場で活用しましょう。
1.離床介助
「離床介助」では、利用者がベッドや布団から離れる手伝いをします。寝ている状態から起き上がらせる身体介助になるため、臥床とは反対の意味になります。
食事を取るために起き上がらせたり、トイレや入浴のために起き上がらせたりする行為は、すべて「離床介助」です。起床するとき、利用者を起き上がらせるのも、「離床介助」になります。
2.就寝介助
「就寝介助」では、就寝前に行う歯磨き・服薬・排泄・パジャマへの着替えなどの動作を手伝います。
「臥床介助」と「就寝介助」は、意味が混同されがちですが、就寝時の「臥床介助」は、就寝のサポートになるため、「就寝介助」の一部として考えましょう。
3.起床介助
「起床介助」では、利用者が朝起きて、活動を開始するための動作を手伝います。
具体的には、利用者に目を覚ましてもらうための声がけから始まり、体調の確認をして離床介助をします。また、朝の洗顔や排泄・パジャマから服への着替えも起床介助の一部です。
臥床の状態が続くことへの弊害
転倒による骨折や脳卒中の後遺症などで、臥床による安静が必要なことがあります。しかし、長い間にわたって臥床状態が続くと、心身の機能が弱まっていき、廃用症候群を引き起こすことがあります。
廃用症候群とは、生活の活動が低下したことにより、全身のあらゆる機能が弱まっていくことを指します。症状として、手足の関節が曲がったまま固まる関節拘縮、筋力・心肺・消化機能の低下、うつ状態、自律神経の不安定などが挙げられます。
廃用症候群になってしまうと、動くことが面倒になり、徐々に自力で生活する力が無くなって、やがて寝たきり状態になる恐れがあります。
臥床状態が長く続くことの弊害を防ぐために、利用者に離床をうながすことが大切です。車椅子で外に出たり、少しでも長く歩いてみたり、できるだけ活動ができるようにサポートします。
また、臥床介助では、利用者に自発的に動いてもらうことや、体位交換を行うことで、必要以上の安静状態をなくし、寝たきりの予防につなげていくことができます。
臥床介助を行う上でのポイント
臥床介助は、日に何度も行う介助であり、利用者が安心して体をあずけられるようにすることが大切になってきます。
また、高齢になり、体を自由に動かせなくなった場合、寝返りが上手くできなくなります。寝返りができなくなると、血栓や手足のむくみ、床ずれといわれる褥瘡になる可能性が高くなります。こういった事態を予防するためにも、臥床介助は重要です。
臥床介助のポイントは、以下になります。
・利用者の体にそった臥位にする
・定期的に体位交換を行う
・なるべく利用者に自力で体を動かしてもらう
・腕力に頼らず、体全体で利用者を支える
・無理な体勢から利用者を介助しない
介助する側は、筋力や体力が必要になる仕事になります。介助で無理をして、体を壊さないように注意が必要です。体をひねったような体勢から利用者の体を上げようとすると、腰や膝に負担がかかります。なるべく、背中をまっすぐに保った姿勢で、利用者への介助を行うように心がけましょう。
介護で使われる臥床の体位
種類が多岐にわたる臥床の体位である「臥位」は、介護の現場でよく飛び交う用語でもあります。現場で専門用語に戸惑わないようにするためにも、ここで基礎知識を知っておきましょう。
「仰臥位」・「背臥位」
「仰臥位」・「背臥位」は、どちらも仰向けに横たわることを意味します。読み方は、「ぎょうがい」・「はいがい」です。この「仰臥位」・「背臥位」が、基本的な体位となります。
長時間にわたる「仰臥位」・「背臥位」は、横隔膜が動きにくい姿勢といわれ、呼吸機能が低下する可能性があります。また、背中側の肺の下に痰がたまりやすいともいわれており、一定時間での体位交換が大切になります。
「側臥位」
「側臥位」は体を横向きに寝かせる体位のことをいいます。読み方は、「そくがい」です。介護現場では、服を着せるときやおむつ交換のために「側臥位」になることがあります。
「側臥位」では、体の下にある腕が圧迫しないように、前に出すことが必要です。また、体がベッドに接している部分が少なく不安定なため、クッションで背中を支えたり、体の上側にある腕の下にクッションをいれたりして、安静にできるように心がけましょう。
「半側臥位」
「半側臥位」は、仰臥位から左右のどちらかに体幹を45度程度ひねった体位のことをいいます。読み方は、「はんそくがい」です。仰臥位と側臥位の中間にあたる姿勢になります。
特に褥瘡のできやすい仙骨のあたりや背中の圧迫を避けられるため、褥瘡の予防として「半側臥位」を活用することがあります。不安定な姿勢になるため、腹部や背中、足にクッションをいれて安静状態がとれるようにしてあげましょう。
「腹臥位」
「腹臥位」は、お腹を下に向けたうつ伏せの状態のことをいいます。「ふくがい」と読みます。「腹臥位」のとき、顔は自然な形になるよう横に向けます。
緊張感の少ない姿勢といわれており、呼吸状態の改善や溜まった痰などの分泌物を出すため、「腹臥位」を活用することがあります。また、「腹臥位」は胸部や腹部が必要以上に圧迫される恐れがあるため、注意が必要な体位ともいわれています。
「半腹臥位」
「半腹臥位」は、側臥位の姿勢から、うつ伏せに近い状態にした体位のことです。読み方は、「はんふくがい」です。側臥位と腹臥位の中間にあたる姿勢で、腹臥位よりも胸部や腹部の圧迫が少ないことが特徴です。体にねじれが起きやすく不安定なため、腹部あたりに抱き枕やクッションをいれることで、安定した体勢になります。
「背殿位」
「背殿位」は、体を仰向けにした状態で、膝を立てた姿勢のことをいいます。「はいでんい」と読みます。腰痛を防ぐ効果があるといわれており、腹部の緊張をゆるめる目的もあります。膝の間にクッションをいれると、よりリラックスした姿勢になります。
屈曲側臥位
「屈曲側臥位」は、側臥位を行ったあとに、頭から首、背中にかけて屈曲させ、胎児のように体を丸める姿勢のことをいいます。読み方は、「くっきょくそくがい」です。
側臥位と比べて、ベッドと接する部分が広いため、自然な形で安静を保てます。
介護で使う言葉の意味を理解しておこう
介護現場では、専門的な用語が飛び交うことがよくあります。特に、臥床に関わる用語は多岐にわたっているため、意味を混同しないようにすることが大切です。
臥床介助は、介護現場で欠かせない技術の一つであり、利用者によっては、日に何度も臥床介助をして、体位交換をすることがあります。そのようなときに万が一、指示された臥位の意味を取り違えてしまえば、介護事故につながりかねません。
介護で使う言葉の意味をしっかりと理解して、戸惑うことなく実践・活用できるようにしましょう。
引用元
厚生労働省資料:生活不活発病 (廃用症候群) と 「生活機能低下の悪循環」