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特集・コラム 2019-07-26

介護職員はどんな医療行為ができる? 喀痰吸引や服薬介助はOK? インスリン注射はNG?

介護職員が一部医療行為を行なうことができるようになった、というニュースが以前話題になりました。喀痰吸引や服薬介助など条件付きで実施できる行為が認められ、利用者の方々の安全が守られる環境は整いつつあるでしょう。しかし、医療行為の範囲については細かい規定があります。

今回は厚生労働省の文献をもとに、介護職員ができるようになった医療行為の範囲について、わかりやすくご紹介していきたいと思います。

ナゼ? 介護職員が医療行為をできるようになったわけ


2005年に厚生労働省が示した「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」により、介護職員が行なう医療行為が一部認められるようになりました。高齢化が進み、医療的なケアが必要な利用者が増えたこと、医療技術の進歩によって医療機器をつけたまま生活できる人が増えたことが背景にあります。

それ以前は医師や看護師が常駐していない介護施設が多く、誰が医療行為を行なうのかが問題になっていました。そこで、利用者の安全を守ることを目的に、介護職員でも一部医療行為を認める見解が示されたのです。

できる医療行為① 原則として医療行為でないと考えられるもの


ここでは医療行為でないと考えられるものについて、ご説明しましょう。

体温計測をする

水銀体温計や腋窩での測定、耳式電子体温計での測定を指します。

血圧測定をする

自動血圧測定器での測定を指します。

動脈血酸素飽和度を測定する

新生児以外の入院治療の必要がない人に対して、パルスオキシメータを装着することを指します。

軽微な切り傷、擦り傷、やけど等の処置をする

軽微な切り傷や擦り傷、やけど等について、専門的な判断や技術を必要としない処置をすることができます。

医薬品使用の介助を行なう

介護職員に許可されている医薬品使用の介助内容について、見ていきましょう。

介助できる条件をチェック

患者の状態が以下の3つの条件を満たしているかが前提であり、条件を満たしているか、医師や歯科医師、看護師が確認します。
① 患者の容態が安定し、治療の必要がない
② 投薬量の調整や副作用の危険がなく、経過観察が必要でないこと
③ 内用薬の誤嚥、坐薬については肛門からの出血などの可能性がなく、当該医薬品の使用方法について、専門的な配慮が必要でないこと

条件を満たせば介助できる行為

条件を満たしたうえで介助できる行為は次のとおりです。

  • ・皮膚に軟膏を塗布
  • ・皮膚に湿布を貼付
  • ・点眼薬の点眼
  • ・一包化されている内用薬の内服
  • ・肛門へ坐薬挿入
  • ・鼻腔粘膜に薬剤噴霧を介助すること

 

できる医療行為② 原則として医行為の規制の対象とする必要がないと考えられるもの


原則として医行為の規制の対象とする必要がない医療行為について、詳しくご紹介しましょう。

爪を爪切りで切る、爪ヤスリでやすりがけをする

爪や周囲の皮膚に化膿や炎症など異常がなく、糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合、爪切りややすりがけが可能です。

歯や口腔粘膜、舌に付着している汚れを取り除いて清潔にする

重度の歯周病等がない場合、歯、口腔粘膜、舌に付着している汚れを取り除き、清潔にします。

耳垢を除去する

耳を耳垢が完全にふさいでいる場合を除いて、耳垢を除去することが可能です。

ストマ装具の排泄物を捨てる

肌に接着したパウチの取り替えを除いて、ストマ装具の排泄物を捨てることができます。

自己導尿を補助する

自己導尿を補助するため、カテーテルの準備や体位の保持を行なうことは、法律上許可されている行為です。

市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器を用いて浣腸する

市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器を用いて浣腸することが許可されています。ただし使用する薬剤に関しては、利用者の年齢によって細かく規定があるので確認が必要です。

注意して! OKでも医行為になる場合もある


法律上、介護職員が行えると許可されている行為でも、状況によって医行為とみなされる場合があります。注意点を詳しくご説明します。

医行為になる基準とは? 医師・歯科医師・看護職員を必要とするもの

利用者の病状が不安定であり専門的な管理が必要と判断された場合、医行為となる場合があります。そのため医師や歯科医師、看護職員に専門的管理が必要な状態かを確認することが大切です。

また投薬や測定値に関して医学的な判断を行なうことは、医行為に該当します。異常値が測定された場合は、医師や歯科医師、看護職員に報告することが大切です。

利用者へのケアをスムーズに行なうためには?

スムーズなケアを行なうためには、スタッフに対する一定の研修や訓練が実施されることがのぞましいでしょう。行為が安全に行なわれるよう、介護サービスの事業者による監督が必要です。

喀痰吸引は条件つきでできる医療行為に


2011年の「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」により、喀痰吸引は2012年4月から条件つきで行えるようになりました。将来的により安全なケアを利用者に提供することを目的として、法律化に至ったのです。

対象となる行為は? 喀痰吸引・経管栄養

それで対象となる行為について、見ていきましょう。

喀痰吸引について

唾や鼻水、肺や気管からの老廃物や小さな外気のゴミを含んだ粘液などを総称し、「喀痰」と呼んでいます。喀痰は定期的に吸引する必要があり、「鼻腔内吸引」「口腔内吸引」「気管カニューレ内吸引」の3つは条件つきで実施可能です。

経管栄養について

経管栄養は、誤嚥による肺炎のリスクが高かったり、さまざまな理由で食べ物や飲み物を経口摂取できなかったりする場合に、チューブやカテーテルをとおして胃腸に栄養を直接送り込む方法になります。「胃ろう」「腸ろう」「経鼻経管栄養」に関しては、介助を行なうことが可能です。

誰ができるようになる? 介護職員・介護福祉士

これらの技術を実施できるのは、介護福祉士の免許を持つ人と介護職員ですが、医師の指示、看護師との連携のもと実施する必要があります。

どこでできるようになる? 特別老人ホームなどの施設や在宅

これらの行為は、特別養護老人ホームなどの施設や訪問介護事業所が訪問する在宅現場で行なわれますが、介護福祉士や介護職員がいる介護事業者であることが条件です。

どうすればできるようになる? 喀痰吸引等研修を受けよう

介護福祉士の場合は、養成課程において喀痰吸引の技術について学びます。介護職員は「喀痰吸引等研修」を受けましょう。たんの吸引等に関する知識や技術を習得することが条件です。

どんな研修を受けるの?

登録機関で実施される喀痰吸引等研修には3つの過程があります。1つは対象となったすべての行為を行なうもの、2つめは気管カニューレ内吸引、経鼻経管栄養を除いたもの、3つめは特定の人へ行なうため実地研修を重視した内容のもの(ALSなどの重度障害者等)です。

研修後は認定証を申請しよう!

現在介護職員として事業所や施設で働いている場合は、研修終了後、都道府県に「修了証明書証」を添付して認定証の申請を行います。

インスリン注射は介護職員でも打てる?


インスリン注射は介護職員でも打てるのでしょうか?インスリン注射について、ご説明しましょう。

インスリン注射を打つのはNG! 支援は可能に

介護職員がインスリン注射を打つ行為は、認められていません。ただし利用者の方が確実にインスリンを打つことができるよう、支援を行なうことは認められています。

介護者ができるようになった支援とは?

介護職員ができる支援とは、次のとおりです。血糖測定器の準備ができない方の場合、代わりに職員がセットを行います。

  • ・利用者の方がインスリン注射を忘れないように事前に声をかける
  • ・利用者がスムーズに血糖測定をできるよう声かけや見守りを行なう
  • ・血糖値やインスリンのメモリを利用者と一緒に確認をする

 

介護職員のできる医療行為は現場に合わせて広がっている


介護職員が行なうことのできる医療行為は、実情に合わせて増えてきています。どのような行為をする場合でも、医療行為であることは決して忘れないようにしましょう。自己判断はせずに、医師の指示や看護師との連携を前提として、慎重に行なう必要があります。

出典元
・野村論文
https://tachibana.repo.nii.ac.jp/
・介護施設における医療と問題点
https://www.tokyo.med.or.jp/
・医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について
https://www.mhlw.go.jp/
・介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/
・サービス利用者がインスリンの自己注射を行う際の具体的な手順
https://www.mhlw.go.jp/
・医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について
https://www.mhlw.go.jp/
・介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律
http://www.shugiin.go.jp/

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