カリスマはいない。どんな人でも誰かのためになれる!【もっと知りたい!「ヘルスケア」のお仕事Vol.138/マークスボディデザイン セラピスト 江口麻衣さん】#2
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。
ヘルスケア業界のさまざまな働き方をご紹介する本企画。前編に続いてマークスボディデザインのセラピスト、江口麻衣さんにお話しを伺います。
前編では、ご自身の肌荒れを機に自然療法の奥深さに目覚めた江口さんが、フェイシャルリフレクソロジーの奇蹟の症例を語っていただきました。後編では仕事と育児の両立について、子育て研究会を立ち上げたいきさつなどをご紹介します。
お話しを伺ったのは…
マークスボディデザイン セラピスト
江口麻衣さん
美容メディカルスパ、クリニックを経て現在は講師、セラピストとして活動。大人だけでなく障がいを持つ子どもたちへのセラピー活動も行っている。スペインIR認定フェイシャルリフレクソロジスト、英国IFPA認定アロマセラピスト、英国AoR認定リフレクソロジスト、米国Edu-K財団認定ブレインジムコース修了、J-EAT日本統合セラピスト教育協会認定 分子栄養学アドバイザーなどの資格を持つ。
障がいを持つ子どもと親のためのセラピーをスタート
――フェイシャルリフレクソロジーの創設者、ロネ・ソレンセンさんと海外研修を行った後は?
国際総合学院で講師を務めながら、自閉症や発達障がいのある子どもたちのセラピーを行うようになりました。
フェイシャルリフレクソロジーという技術と効果を知ってしまった以上、困っている家族に伝えたい!という想いが強かったですね。
――そのセラピーはどこで行ったんですか?
お子さんがいちばん落ち着ける場所が望ましいので、お家にお邪魔することもありました。私がセラピーを行えるのは1か月に1回か2週間に1回。次にセラピーを行うまでの間、お母さまに施術してほしいので、セラピーの方法を覚えていただきました。
最初は何もかもが初めてだったので、戸惑うことが多かったですね。
――お子さんの場合、言葉が通じないケースもありますよね。いかがでしたか?
障がいによっては、話さないお子さんもいます。でも、よく分かるんです。触れられたくなかったら嫌がりますし、気持ちよかったら「もっとやって」というメッセージを身体を使って送ってきます。セラピーを続けるうちに心を開いてくれる瞬間もあるんですよ。言葉を持たない子どもたちの方が正直かもしれません。
――それはどういう意味ですか?
例えば、食事や運動のことなどセラピー前にいろいろ質問をします。「便通は?」とか「生理痛は?」という質問に、「問題ありません」とお答えになる方が多いんです。でも話をじっくり伺うと、便通が何日もないのが当たり前になっていたり、生理のたびに痛みがあったり。
ご自身の中で不調や痛みが「普通」のことになっていると、「問題ありません」という返答になってしまうんですね。ご自身が思っていることと身体の反応が異なるケースは意外に多い。本当の意味で問題のない状態なのか、すごく考えるようになりました。
出産を機に講師を辞め、マークスボディデザインへ
――江口さんは現在、マークスボディデザインのセラピストをなさっていますが、きっかけは?
結婚と同時に必然的に(笑)。夫がもともと開いていたカイロプラクティックの治療院が「マークスボディデザイン」なんです。結婚後は国際総合学院で講師を務めながら、夫の治療院でもセラピストとして活動していました。
講師を続けたかったのですが、子どもを身ごもった状態で通うのが辛くなって、セラピストの仕事に専念することにしたんです。
――子育てと仕事の両立は大変でしたか?
セラピストの仕事は依頼があればやる程度で、ほぼ子育て中心の生活でした。人によってはブランクと言いますが、私にとってはものすごく充実した良い時間でした。子どもが発達していく姿を見られるのは、何ものにも代えがたいですね。働かなければお金は入ってきませんが、貧乏をしてでもその価値がある期間だと思っています。
――お母さんを対象にしたホームケアを開催しています。それはなぜ?
クライアントにとっていちばん安心できる人のセラピーが、もっとも効果を発揮します。お子さんにとって、それが家族でありお母さん。私がいちばんになることはありません。カリスマセラピストではなく、誰かのサポートができるようになりたいという想いから、お母さま向けのセミナーを始めました。
――セミナーにはお子さんも一緒に参加するんですか?
特にルールはありません。子どもが学校や幼稚園に行っている間に参加する方も、お子さん同伴の方もいらっしゃいます。私は場を取り仕切るだけで、子育ての不安や疑問などみなさん自由に話をしています。
私はフェイシャルリフレクソロジーのセラピーを教えて、「気持ちよかったな」という想いをお家に持って帰ってもらえばいい。ママの手でセラピーをしてもらうと、お子さんはママの真似をしたくなるものです。ママがお子さんの手で癒やされている姿は本当に感動的。これ以上の癒やしはありません。
――江口さんが今、目指していることは何ですか?
私が実践している補完代替療法をもっと家庭に根づかせることです。補完代替療法は西洋医療を補完するセラピーで、海外では積極的に取り入れられています。薬や手術によるアプローチに加えて、もともと備わっている回復力を高めるために補うのが補完代替療法。総合医療という言葉で表すこともあります。
日常的に起こる身体の不調はもちろん、子どもの発達や感情のコントロール、人間関係から生まれる日々のストレスなど、幅広く使えます。障がいのないお子さんを子育てしている方々にも伝えていきたいです。海外に向けての発信もしていきたいですね。
江口さん流! セラピストとして長く続けるための極意
1.技術の習得だけで終わらせず、深く学び続けること。
2.一流のセラピストに出会うこと。
3.自分が知らない世界や情報に積極的に触れること。
フェイシャルリフレクソロジーの創設者、ロネ・ソレンセンさんとの出会いから補完代替療法の重要性を解くようになった江口さん。セラピストという職業を通して「人体の不思議と奥深さに気づき、手だけを使って身体が変化していく感動」を味わったとか。お話しを伺っているだけで、セラピストという職業のとてもまぶしく感じられました。
撮影/森 浩司