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ヘルスケア 2024-05-23

お客様と「おかげさまで」と感謝し合える関係を築きたい【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.140/整体師・田中千哉さん】#2

「ヘルスケア業界」のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロに、お仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。

今回お話を伺ったのは、
整体師・田中千哉さん

東京・墨田区で「for.R整体院」の院長を務める田中さん。不調の根本改善を目指した幅広い施術メニューが人気です。
前編では、整体師になったきっかけや、「for.R整体院」に込めた想いを伺いました。
後編では、たくさんの施術メニューがある理由や、整体師のやりがいや魅力、これから整体師を目指す人へのアドバイスを伺います。

さまざまなアプローチ手段で
ベストな反応を導き出す

――こちらの整体院はたくさんの施術メニューがありますが、その理由は?

体の不調を整えるためには、いろいろな入り口があると思うんです。
例えば体が緊張状態にあって、力を抜いてリラックスできないストレスフルな人は頭を触って緩めてあげることで体の力が抜けやすくなります。これが「ヘッドマッサージ」ですね。リラックスする副交感神経の働きを高める効果が期待できます。

また、デスクワークが多くあまり運動する時間を取れていないという人は、腸の働きが悪く便秘がちな人が多いんですよ。そういった人には「リメイク腸セラピー」でお腹まわりの調整をして全身のバランスを整えていくと、肩や腰の不調や全身のだるさなどに対してもいい反応が出やすくなります

というように、お客様の症状をみた時にどの入り口からアプローチしていくのがベストかと追求していった結果、メニューの数が増えていきました。そもそも整体で体を整えてもその状態を保つ筋力がなかったり、日常的な体の使い方自体を間違えていることもあります。そういう人には「姿勢改善メソッド」というトレーニングのコースがおすすめ。このコースと整体のセットコースが一番人気ですね。

――どうやって、それらの手技を身につけていったんですか?

実際に施術を受けたりセミナーに行ったりして、スタッフ同士で教え合っています。スタッフごとに持っている強みもあるので、お互い学び合って切磋琢磨していますよ。

――田中さんが施術時に大切にしていることはなんですか?

お客様に今の体の状態を理解していただくことですね。この整体院のコンセプトのところでもお話ししましたが、昨今自分の体の状態を理解していない人がすごく多いんです。なかには疲れていることにすら気づかず、「どんなトレーニングをしたらいいでしょう?」と聞かれることもあって……。疲労が溜まっているなら、まず休むことが先決ですよね。

それを伝えるためにも、私たちは正確にお客様の体を把握しなくてはいけません。お話を聞いて体の状態や姿勢をチェックするのはもちろん、日常生活や癖、考え方など、バックグラウンドにも注目します。ポジティブ思考なのか、ネガティブ思考なのか、そういうメンタル的な部分も体に影響するんですよ。

――理解してもらって意識まで変えてもらうのって、なかなか難しそうですね。

コミュニケーションも重要になりますね。信頼関係が築けないと、どんなに説明や提案をしても受け入れてもらえませんから。

お互いに「おかげさまで」と感謝しあえる
関係性を築いていきたい

――田中さんが思う、整体師のやりがいや魅力ってなんですか?

アスリートに専属トレーナーがいるように、全ての人にそのような存在がいるべきだと思っています。今はインターネットに情報が溢れていて、いろいろな「いい」「悪い」がありますが、そもそも自分に何が合っているかまでは教えてくれないんですよね。「体にいい」とされていることでも、やってみたら自分には合わなかった、逆に悪くなってしまった、ということもよくあります。

だから「その人にとっていいこと」を一緒に探して導いてあげるトレーナーが必要なんです。我々が施術するにしても、ご本人でセルフケアをしてもらうにしても、どの段階でどういったケアやトレーニングをするのが適切かを伝えるトレーナー。そういったパーソナルな導きができるのはこの仕事ならではだと思うので、すごくやりがいを感じます。

また、そうやっていい信頼関係が築けると、お互い感謝し合えるような関係性になります。私たちは人生の先輩やいろいろな職種の方と知り合えて学ぶことも多いですし、お客様は専門的な施術を受けられる。お互い「おかげさまで」と感謝し合える関係性が築けるのも魅力だなと思います。

なかには20年くらいお付き合いしているお客様もいますよ。20年もあると結婚して子どもができたり、定年退職したり、人生の節目にも寄り添うことになります。そのときに「おかげさまで」という言葉を聞くと、すごく嬉しいですね。

――素敵です。

また、整体師はお客様と病院をつなぐ役割も担っていると考えています。というのも、長年通ってくださるお客様には、「最近〇〇の調子がよくないから、ひとまず『for.R整体院』にいってみよう」という人もいらして、私の方でチェックして「すぐ病院に行ってください」というケースもあるんです。

病院で自分の症状を伝えるのって難しいんですよね。なかには病院自体に苦手意識を持っている人もいます。でもそういう時に「〇〇科で、こういう風に症状を伝えてください」って教えてもらえたら、親切だと思うんです。そういうサポートも私たちの仕事の一つなんじゃないでしょうか。

――確かに。今後力を入れてきたいことや新たな目標などはありますか?

ずっと現役で施術を続けていきたいというのが一番の目標なのですが、人生のテーマとして、健康寿命を延ばすためにできることをやっていきたいと考えています。

昨今、寿命は延びているけど健康でいられる期間が短いというのが問題になっていますが、それって病気や寝たきりになってから何かをするのではやっぱり遅いんですよね。できるだけ若いうちから、健康なうちから適切にケアや体操をして、それを積み重ねることで体は強くなっていく。そのための企業セミナーだったり、地域の健康体操教室だったりするのですが、そういう仕事は積極的に増やしていきたいと思っています。

「頼られる人間」でいられるように
知識を持って誠実に向き合う

――これから整体師を目指す人にアドバイスをお願いします。

整体師は、直接人と触れ合いながらサポートする仕事です。体を触らせていただく以上は責任も伴うので、学び続けることが大切。そして何より信頼される人間である必要があります。それだけ聞くと、「大変そう」と思うかもしれませんが、お客様の不調に対して自分の手技でサポートできるというのはすごくやりがいがありますし、「おかげさまで」と感謝の気持ちを直接伝えていただけるのは、何ものにも変えがたい喜びがあります。ぜひ頑張ってください。

――ありがとうございました。最後に「整体師の三箇条」を教えてください。

・生涯学び続ける
学びに終わりはありません。体のことは奥が深く、日々新たな研究が進んでいます。それは整体の技術だけでなく、栄養学だったり、トレーニング方法だったり、多岐にわたります。いろいろなアプローチ法を探り、知見を広げ、引き出しを増やしておくことはとても重要です。

・人を診る
私たち施術家がみているのは機械ではなく人間です。同じような症状であっても、その不調が現れている原因や過程というのは人によって違うんです。それを知るには適切なコミュニケーションを取りながら一人ひとりと向き合っていくことが大切だと思います。

・信頼される人であること
どんな仕事でも同じだと思いますが、仕事に対して誠実に向き合う姿勢は大切。ましてや整体師は体を触る仕事です。信頼できない人に体を触られたくないですよね。これは僕の恩師にも散々言われたことですが、「頼られる人間」でありましょう。相手にとってベストな提案ができるよう、知識を持って誠実に向き合う。私も常に「自分は信頼に値する人間か」というのを自問自答しながら仕事と向き合っています。

取材・文/児玉知子
撮影/喜多二三雄

information

for.R整体院
住所:東京都墨田区錦糸1-7-16グリシーヌ1F
電話:03-3623-3232

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