「感情は内臓に宿る」チネイザンの施術法をレクチャー!【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.37 たまよろ庵 Yukiさん #3】
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
これまで2回に渡り、気内臓療法「チネイザン」普及に努める「たまよろ庵」のYukiさんにお話しを伺ってきました。「自分で自分を癒す方法をたくさんの人に伝えたい」と、チネイザンを取り入れたセラピストの育成、セルフチネイザンの普及に尽力してきたYukiさん。セラピストは「人生を変えるお手伝いができる」仕事であると語り、セラピスト自身の幸せがお客様のためにもなることを教えてくださいました。
後編となる今回は、Yukiさんが取り入れている「チネイザン」の施術にフォーカス。施術のなかで大切にしていること、詳しい施術の流れを教えていただきます。
お話を伺ったのは…
「たまよろ庵」主宰 Yukiさん
一般社団法人「内臓マッサージ協会」代表理事。早稲田大学政治経済学部卒業後、外資系コンサルティング、外国州政府機関、PR代理店、中米大使館、大手IT通信企業などに勤めながら、自分自身を模索するなかで世界を旅する。多くの伝統療法を学び、チネイザンをベースにしたオリジナルのYuki式チネイザンを開発。セラピストの育成、セルフチネイザンの普及に励む。著書『タオの伝統療法チネイザン入門DVD』など。
Instagram:@yukichandra
内蔵から感情の状態まで把握する「チネイザン」とは
―改めて、Yukiさんが取り入れている「チネイザン」について教えてください。
チネイザンとは、古代中国の道教(タオ)に伝わってきた腹部マッサージに、現代解剖学などを融合して作られたものです。「氣内臓療法」とも呼ばれます。この「氣」は東洋医学の「気」と同じ概念で、体表から内臓深くまで全身に分布し、生命活動を維持するもの。チネイザンでは特に、内臓の中に蓄積されている気に注目します。
チネイザンの特徴的な考え方に、「内臓と感情は結びついている」というものがあります。過度な感情やストレス、不健康な生活などによって内臓の中を流れる気の循環が乱れると、内臓だけでなく心身の健康まで損なうことをタオの修行者たちは発見しました。
負の感情が過多になると、その感情が宿る内臓に不調が出る。内臓の中でエネルギーが上手く流れないと、しこりやもつれが発生するんです。そうして滞った内臓の「気」の状態を、内臓を揉むことによって整えていくのが、チネイザンの技術です。
―Yukiさんが提唱している「Yuki式チネイザン」の特徴は?
基本的な考え方はもちろん同じです。本場のチネイザンをベースに、日本人の性格や身体的な特徴に合わせ、より日本人の体に合うように改良、開発したものがYuki式チネイザンです。
チェンマイでチネイザンを学んだ時、周りは体格がよく肌の強い欧米人ばかりでした。その相手から施術を受けると圧が強過ぎると感じたんです。それで、「このまま日本人に同じように施術して、きちんと効果が得られるのか」という疑問を持ちました。
日本人は世界の人に比べ、肌質が敏感で筋肉量が少なく、感情を抱え込みやすいという特徴があります。そういった特徴を鑑みて効果を発揮できるように、ヨガ、アーユルヴェーダ、マクロビオテック、カウンセリング心理学、アロマテラピー、バリニーズエステ、タイ古式マッサージ、温泉療法などの手法を融合させてYuki式チネイザンを開発していきました。
チネイザンの施術をすればするほど、現代日本人に必須のマッサージだと思います。これまでいろんな国の人と触れ合ってきましたが、日本人ほどお腹に感情を溜め込む国民はいませんから。
チネイザンを取り入れて「選ばれるセラピスト」に
―施術にチネイザンを取り入れるメリットは何ですか?
チネイザンは、お客様との信頼関係を作るのに、とてもメリットが高い施術だと思います。チネイザンの施術はほぼ仰向けで行い、お腹を中心に触れていきます。すると「腹の内を明かす」という言葉どおり、お客様が何でも話してくれるんです。だから、お客様とセラピストの信頼関係を3秒くらいで築けます。
そうなると、「選ばれるセラピスト」になりやすいですよね。とくにお店の規模や価格帯で勝負していない小規模なお店や個人のセラピストにとっては、カウンセリング力や技術力、人間性が選ばれるポイントになると思います。そういう意味でも、価格ではなく中身で勝負できる技術だと思います。
―Yukiさんはセルフチネイザンも普及しています。セルフチネイザンのメリットは何でしょう?
セルフチネイザンは、今の日本人には必須だと感じます。東日本大震災の時も感じましたが、今回コロナ禍になって、より強く感じますね。なかなか整体や治療院などに行けなくなった今、自分で健康を維持できる方法を知っているのは、とても大切なことです。
チネイザンを取り入れることで、自分で自分のお腹を触るだけで、ほぼすべての健康状態がわかります。ガスがたまっているから便秘になる、張りがあるからもうすぐ生理がくる、今私は精神的につらいんだな…とか。そうするとスケジュールを調整したり、自分の体調管理がしやすくなりますよね。
東洋医学の「未病」の考えと同じで、病気になる前に日常生活から整えていくことが大切。そんなセルフケアの一環として、ぜひ学んでいただけたらなと思います。
「Yuki式チネイザン」の流れをレクチャー!
―施術の流れとポイントを教えてください。
まずはタイ古式マッサージで全身をほぐし、とくに脚の流れを良くします。下水道の流れをキレイにしておくイメージです。その後、上水道となるお腹の施術に入っていきます。お腹はまず全体をキャットウォークで触れて、硬いところがないか確認していきます。次に指先でトントンと叩いてガスが残っていないかチェック。お腹全体をゆすってから、オイルを塗布して、お腹を耕していきます。お腹全体が柔らかくなり、指先が差し込めるようになったら各内臓にアプローチします。胃、肝臓、腎臓、子宮など、すべての内臓に触れながら、硬いところ、冷たいところ、ごつごつしている部分がないか、注意深く見ていきます。何か症状がある臓器は、優しくほぐして柔らかくしていきます。息を吸い、吐くのと同時に指先をグーッと入れていきます。その後、おへそ周りを8カ所押して邪気を出したら、腸腰筋を引き上げて内臓の位置を戻していきます。小腸の下に手を置いて、グーッと引き上げます。
その後、脚のマッサージをしてリンパを流し、肋骨、胸骨のマッサージをしてリンパを流したら、ヘッドマッサージ。最後にお腹に戻って、小腸を締めたら、邪気を払って終了です。
その人の症状によって、頭にカッサを使ったりと、いろいろ組み合わせています。チネイザンには感情のデトックスなど人生が変わるパワーがありますが、美容面でもすごくオススメなんです。とくにウエスト周りのシェイプアップや便秘改善なども期待できるので、若い女性にはそちらを目的にいらっしゃる方も多いですよ。
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感情と内臓のつながりを提唱した「チネイザン」は、東洋医学がベースにあるため気功療法に近い施術です。Yukiさんのお話を聞けば聞くほど、「内臓と感情がつながっている」という視点のおもしろさを感じ、腑に落ちる感覚がありました。考え方のおもしろさだけでなく、セラピストにとってもメリットが多いとYukiさんが語る「チネイザン」。ぜひ注目してみてください。
▽#1はこちら▽
感情をお腹に溜めがちな日本人を救う「チネイザン」を広めたい!【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.37 たまよろ庵 Yukiさん #1】>>
取材・文/山本二季
撮影/片岡 祥