学年ビリから特待生に。建設会社社長が39歳で資格を取り、介護の道へ進むまで【介護リレーインタビュー Vol.46/あづま家デイサービス亀戸】#1
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。
今回お話を伺ったのは、
あづま家デイサービスの機能訓練指導員であり、オーナーである和田龍吉さん。
前編では、建築に携わる会社の三代目だった和田さんが、なぜ39歳で柔道整復師の資格をとり、介護の道に進んだかを伺います。
家業に経営の柱を増やすため、柔道整復師を目指す
――元々は、建築に携わる会社の三代目として会社を経営されていたと伺いました。なぜデイサービスを経営することになったのですか?
今でも建築関係の会社経営がメインで、その一事業としてデイサービスの経営をしています。
デイサービスを立ち上げたきっかけは、家業に建築業だけでなく、柱を増やしたいという思いからでした。私が経営しているのは山留工事と呼ばれる、建築物を建てる際、土を留めるための構造物を専門に扱う会社です。私が三代目ということもあって機械が老朽化してきていますし、人材確保がなかなか難しい業界であること、さらに法律の改正などがあり、建築の事業だけで会社を維持するのは、なかなか難しいと考えていました。
そこで考えたのが、国家資格を活かした事業を新たに起こすことでした。安直な考えですが、国家資格=安定しているというイメージがあったからです。
――それで介護の道に進もうと思ったのですか?
当初は介護の道に進もうと思っていたわけではありません。僕の当時の年齢が35歳だったのですが、こんなおじさんの僕が会社を経営しながら夜学に通い、目指せる資格は柔道整復師しかなかったんです。そこで専門学校に入って柔道整復師の資格を取り、将来的には接骨院経営を目指そうと考えていました。
壁が高いほど燃える。学年ビリの成績から特待生に
――資格の取得は順調でしたか?
いえ。入学当時は勉強についていけず、学年でビリの成績でした。授業も全くわからなかったですし、骨なんて体に5、6個しかないと言うイメージだったので、300以上の骨の名前を覚えろと言われて、気が遠くなるような思いでしたね(笑)。
僕と同じように専門学校に通っている人のなかには、鍼灸師の人などもいて、そういう人たちはすでに知識のベースがあるわけです。そうするとマウントを取られることも多くて(笑)。悔しい気持ちから、心に火がついて、がむしゃらに勉強しました。その結果、1年生の後半にはほとんどの試験で良い成績を収めることができるようになり、特待生に選ばれ、奨学金をもらえるようになりました。
――すごいですね。しかも仕事をしながらということですよね?
そうですね。平日は毎日、朝から夕方まで仕事をして、18時から21時まで学校、家に帰ってからも勉強漬けの毎日でした。
ただ2年生になると、授業を受け持つのがすべて医師になり、授業のレベルがぐんと高くなります。このままの生活では勉強について行くのが難しいと思ったのと、コロナ禍になって対面での授業がなくなってしまうと聞いたので、1年間の休学を選択しました。休学した期間にみっちり勉強を重ね、2年生でも特待生を取ることができました。
――なぜそこまでできたのでしょうか?
体について学ぶのが楽しかったのと、壁が立ちはだかると燃えてしまう性格なんですよね(笑)。同級生にマウントを取られるのも嫌だったし、もうひとつ僕の心に火をつけたのが、2年生当時の担当の先生でした。その先生はテストに医師の国家試験から何問も問題を出してきて、しかもそれがすべて記述式、つまり本当に分かっていないと答えられない、難易度の高い問題を出してくるんです。そうすることで生徒に赤点を取らせ、絶対に特待生を取らせないと噂されていました。
そのときも絶対に特待生を取ると決めて、その先生の自著を読んだり、勉強をしたりして、徹底的に攻略しました。結果、歴代1位ぐらいの成績をとって、特待生となることができました。
――素晴らしいですね。
1、2年生でしっかり勉強したので、柔道整復師の国家資格を取得するのも難しくありませんでした。3年生のときはほとんど勉強をせず、独立の準備を進めることにしました。
法律改正により、接骨院経営が白紙に。選んだのは苦手だった介護事業
――当初は接骨院経営を目指していたとのことですが、それがなぜデイサービスになったのですか?
僕が専門学校に在籍している最中に法律が変わってしまって、接骨院を立ち上げるためには、3年以上の柔道整復師の実務経験が必要になってしまったんです。もう資格を取得するために学校に通っているのに、やられた・・・と思いましたね。
――どこかの接骨院で3年経験を積むということは、考えなかったのですか?
それは無理だと思ったんです。普通に考えて、年齢も40代に近く、他にも仕事をしている未経験の僕を雇ってくれる接骨院はどこにもないと思いました。そこで何かいい方法がないか考えてたときに、フランチャイズで「あづま家デイサービス」の経営を行いながら、接骨院も経営している方とお知り合いになり、「あづま家デイサービス」の見学に行くことにしたんです。
――デイサービスで柔道整復師の資格が活かせるんですね?
はい。柔道整復師の資格があれば機能訓練指導員として、デイサービスで働くことも可能です。
ただ当時の僕は介護に対してあまり良いイメージを持っていなかったんです。デイサービスというと利用者さんと折り紙をしたり、みんなで歌を歌ったり、職員さんが仮装していたり。言い方は少し悪いですが利用者さん子ども扱いしてるように見えたので、苦手な印象がありました。見学に行くのもあまり乗り気ではなかったのですが、「あづま家デイサービス」の形式を見たときに、この形ならやってみたいと思ったんです。
後編では、「あづま家デイサービス」の特徴や、異業種から介護業界に飛び込んだ和田さんだからこそ感じる介護の仕事のやりがいについて伺います。