活動を通じて子供のころの運動の重要性と、障がい者施設をもっと社会に認知してもらうことが目標【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.114 就労支援施設管理者・アスレティックトレーナー 東(あずま) 達也さん】#2
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』。
今回は、スポーツ選手やキッズスポーツのトレーナーとして活躍する傍ら、障がいのある方が働ける就労支援施設(※就労継続支援A型)の管理者を担っている東 達也さんにインタビュー。なんと子供向けの運動を発信しているインスタグラムのアカウント数は9万人超え! 東さんが多くの人々から求められている理由を探ります。
※就労継続支援A型とは…障がいがあり、一般企業への就職が困難な方を対象に、一定の支援がある職場で雇用契約を結び、働くことができる障がい福祉サービス。
前編では、東さんが理学療法士からトレーナーを志した経歴を伺いました。後編では、トレーナーをしながら福祉業界で働くことになったきっかけ、今後の目標などをお聞きします。
お話を伺ったのは…
就労支援施設管理者・アスレティックトレーナー 東 達也さん
高校卒業後は理学療法士を目指し、地元・福岡県北九州市にある専門学校に進学。資格習得後は、兵庫県神戸市にある病院に理学療法士として勤務。4年勤めたあと、大阪市にある履正社医療スポーツ専門学校へ入学し、2年でアスレティックトレーナーの資格を習得。整形外科クリニックでの勤務を経て、現在は就労支援施設の管理者とトレーナーの二足のわらじで、幅広い年齢層のトレーニングを行っている。
instagram:@sports_kids_trainer
「キッズトレーナー」の肩書きでSNSで話題
――子ども向けに運動指導をするようになった経緯をお聞かせください。
今でこそ運動は好きですが、自分が子どもの頃は運動に対しての苦手意識がありました。周りと同じような動きができず、輪からはみ出てしまうこともあって。その経験から、運動のせいで自信を無くす子どもたちを一人でも減らせたら、と思って始めました。
また、子どものうちに将来の基盤となる体の土台があるだけで、スポーツ中のケガが発生する可能性を減らすことができるんです。正しい体の動かし方を身につけておくことが、その子の将来の可能性を拡げることのつながると思い活動しています。
――運動や体つくりの内容は?
基本的には『自分の体をきちんと支える』ことを第一に考え、展開しています。
体の構造や発育発達に沿った動きを取り入れて、全身を大きく動かしたり、関節の柔軟性を高めてしなやかな動きができる体つくりを目指しています。子どもと大人の体は全然違うので、今から成長していく体に合った運動のメニューを年代やそれぞれの子どもたちの動きに合わせてアレンジしておこなっています。
――インスタグラムのフォロワーが9万人と伺いましたが、人気の秘訣は何だと思いますか?
ストレッチやトレーニングのメニューを、分かりやすく発信できているからだと思います。
僕は、理学療法士・アスレティックトレーナーとして学んできた経験や知識、全国レベルの様々な競技の選手を見てきた経験から、小さいときに必要な動きを理解しています。そのことを加味したうえで、子どもが楽しく取り組めるメニューを考え、「家でもやれる」という点も考慮し、紹介しています。
「運動させたいけど何させたらいいか分からない」という親御さんの力になれるような内容を目指しているので、その点が多くの方に見ていただけているのだと感じますね。
――指導するうえで心がけていることは?
必ず子ども目線に立ち、楽しいと感じてもらえるように心がけています。
失敗したら「もうだめ」と思わせるのではなく、「もう一回チャレンジしよう!」とポジティブな方向に導きます。一番は、運動って楽しいと思ってもらえる気持ちが重要。それぞれ得意・不得意な点はあると思いますが、諦めずに前に進むことを運動を通じて体感してほしいです。
就労支援施設の管理者をすることになった経緯
――トレーナーの仕事以外に、就労支援施設の管理者もしているとか…? 現在の仕事内容をお聞かせください。
平日は夕方頃まで就労支援施設の管理業務をしつつ、地域の方々に向けた運動教室をやってます。それ以降は、子供たちへのオンラインレッスンや、スポーツチームのトレーニング指導などトレーナーとしての仕事をやってますね。
――就労支援施設とは、どんな施設なのでしょうか?
主に、一般企業では働けない障がいのある方を雇用してこちらで準備した仕事や作業を実施してもらう就労支援(就労継続支援A型)の施設です。
――では、就労施設にて管理者をするに至った経緯をお聞かせください。
整形外科のクリニックで働いていた4年目の頃、独立を考えていたんです。でも、今までセラピストとしてでしか働いてこなかったので経営には不安がありました。ちょうど悩んでいたときに、以前より仲良くしていた社長から障がい者の方が働ける施設を作る話をいただいて。福祉業界に対して知識も学びもない状態でしたが、当時欲していた経営について学べるメリットや自身のスキルアップの可能性を感じて、一緒に立ち上げに参加したんです。単純にオーナーとは気心がしれた仲だったので一緒に仕事するのが面白そうっていう軽いノリもありました(笑)。
昨今は複業するのが普通な時代。このご時世で複数の収入源を作っておく必要性は感じていましたし、それが今の代表と一緒にこの事業をしていく中で形にできそうだなと思ったのが理由です。
――東さんが行っている業務について具体的に教えてください。
僕が行っている業務は、施設の管理業務や利用者の方々のための仕事をつくること。施設の事を知ってもらうために地域の団体や企業、行政に出向いて連携をとれるように営業活動などもしています。そういうとき、インスタグラムの発信力が役に立っていたり(笑)。また自社で物作りもしているので、代表と共に自社の商品販売の仕組み作りをしています。
また、施設内にて運動スタジオも作って、地域の高齢者や子供たちの教室も開いています。
――違う業種ですが、併設している理由は?
「障がい者施設」というと、暗い印象を持っていらっしゃる方は一定数いますよね。そうした印象を取り除きたいと。併設にすればいろいろな方々に出入りしてもらえるので、施設で働く人たちのことを身近に感じてもらえるんじゃないかと思ったんです。
今後は就労支援施設をもっとポピュラーな立ち位置にしていきたい
――管理者になってみて嬉しいことは何ですか?
利用者の方や地域の方々に頼ってもらえることでしょうか。喜んでいただけるとやりがいも感じますし、何よりも自分の成長にも繋がっていると感じます。管理職の仕事は、他の施設の管理者の方や企業の方などさまざまな人と関わる機会があり、常に刺激や発見があるところも身になっていると思います。
――今後の目標は?
就労支援施設の管理者として、今の事業を大きくしていくことです。地域の方や企業の方にも就労支援施設がどんなところで、どういう人たちが働き、どんなことができるのかという可能性を知ってほしいです。「障がい」という言葉だけで判断するのではなく、個々の能力をきちんと見てもらい、「障がい」の壁を「0(ZERO)」にしていきたいと思っています。
そして何より施設で働いてくれている利用者さんやスタッフに、もっと働きやすい環境づくりを実現できるようにと思っています。
東さんが就労支援施設・トレーナーの仕事を両立するためにしている3つのこと
1.常に様々な状況を想定して考えて行動をする。
2.新しい・未知のことでも、挑戦する気持ちを持つ。
3.しんどい時にもポジティブに物事をとらえるようにする。
取材・文/東 菜々(レ・キャトル)