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ヘルスケア 2024-10-28

自分で考えたスペシャリティな活動で出会えた人に感謝されるのは格別な喜び【もっと知りたいヘルスケアのお仕事Vol.163 ケアビューティ・まつりか 新郷ひとみさん】#2

ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載「もっと知りたいヘルスケアのお仕事」。前編に引き続き、作業療法士・ケアビューティストの二足の草鞋を履く新郷ひとみさんにお話を伺います。

外出が難しい人たちの生活に心安らぐ瞬間を届けたい。そんな思いで訪問スタイルの介護美容をスタートした新郷さん。「自分で考えたスペシャリティな活動を通じて出会えた人に感謝されることは、格別な喜び。その中で自分らしさが見えてくるのもすごく楽しい」と語ってくれました。

お話を伺ったのは…
作業療法士
ケアビューティスト
新郷ひとみさん

2014年より作業療法士として介護老人保健施設や訪問看護ステーションに勤務。訪問リハビリの経験が長かったことからケガや病気のため外出が難しい人がたくさんいることを知る。自宅での生活にワクワクできる時間を届けたいという思いが募り、ケアビューティストの資格を取得。その後「ケアビューティ・まつりか」を創設。作業療法士として勤務する傍ら、自宅に出向いてネイルやフェイシャル・フットトリートメントなどを行う介護美容とハンドメイドを教える活動を行う。トータル・ケアビューティー協会・埼玉支部

新郷ひとみさんのインスタグラム:@sungomango_carebeauty

ストーリーが生まれるのがハンドメイドのいいところ

介護美容の利用者の方とピアス作りをする1コマ。

――ケアビューティ・まつりかでは介護美容のほかにハンドメイドの活動もされているそうですね。

はい。ハンドメイドの活動はどんなスタイルがいいのかいま検討中で、ご自宅を訪問するスタイルと場所を準備して利用者の方に通っていただく形の両輪がいいのかなと考えているところなんです。

利用者の方のお宅を訪問して分かったことは、お出かけする能力はまだまだあるのに普段はほとんどテレビを見て過ごしている方が多いこと。それは、お出かけしたくなるような場所が少ないからじゃないかなと思ったんです。利用者の方がアクセサリーやファッション小物作りを楽しめて、ついつい出かけたくなるような場をつくれればいいなと考えています。

――ハンドメイドを楽しむことは、利用者さんにどんな効果があるのですか。

集中して作業することで心が軽くなり、元気になります。そして作ったものを使う楽しみもありますよね。例えばアクセサリーを作ったら、今度あそこに出かけるときにつけていこうとか、この人が来るときにつけてみようと考える楽しみが生まれます。インテリア小物を作ったらどこに飾ろう、誰にあげようかなと考えることでストーリーが生まれるのがハンドメイドのすごくいいところだなと感じていいます。

――手を動かすことで身体への作用もあるのでしょうか。

ハンドメイド活動されている別の方から、利用者さんが以前より細かいものがつまめるようになったと聞いたことがあります。全部ご自分でできなくても必要なところはお手伝いしつつ、自分で作ったという体験をしてもらえたらいいなと思っています。

体がよくならなかったとしても楽しいと思える環境づくりを

「利用者さんが生き生きしているのを実感できる瞬間が嬉しい」と新郷さん。

――作業療法士×ケアビューティスト、ダブルワークのやりがいはどんなところですか。

作業療法士の仕事は、利用者さんや患者さんの体の動きや生活の動作がよくなるようにアプローチすることがメインです。それはすごくやりがいがあるし、必要な仕事だから今後も続けていきたいなと思っています。でもそれだけで関わった方が幸せになれるとは言えない気がするんですよね。体がよくなった先で楽しめる場所、体がよくならなかったとしても楽しいと思える環境をつくりたい。利用者さん自身へのアプローチと、その周辺の環境へのアプローチがうまくマッチするとすごく幸せな社会が作れるんじゃないかなと思っているんです

ケアビューティ・まつりかでの活動は後者。ネイルやトリートメント、ハンドメイドのイベント開催など周辺環境へのアプローチで目の前の人が幸せそうにしている瞬間を目の当たりにできます。病院や施設勤務の仕事だけではなかなかできなかったことが、二足の草鞋を履くことで両方経験できていることにとてもやりがいを感じています。

――逆にダブルワークの大変なところは?

時間に追われることですね。ときどきフ~ってなることがあります。

――そんなときのストレス発散法は?

わりと直近でそうだったんですが、まずこの日は休むと決めます。基本何もしないでのんびりしていることが多いですが、余力があれば登山やデイキャンプに出かけたり、景色がいいカフェで夫とぼーっとしたりしています。

――お仕事する上で大切にしていることは?

個人で活動するようになってから人と人との繋がりの重要性をより実感するようになりました。人との繋がりが仕事を生むなと感じています

ケアビューティストとして所属しているトータルケアビューティー協会の活動はチームで動くことが多いのですが、例えばメンバーがナイスプレーをしてくれたらちゃんと感謝を伝えるようにしています。LINEやZOOMなど手段はいろいろですが、いま関わっている人と気持ちのいい関係を築くために。相手が嫌な気持ちにならないような言動をとるとか、相手が困っていたらちょっと助けてあげたり、そういったところも気をつけるようにしています。

スペシャリティな活動で出会えた人に感謝されるのは格別な喜び

介護美容を全国に広げるためチームを作って活動中。

――今後力を入れていきたいことはありますか。

介護美容を学んだけどどうやって活動していいか分からないというDMをもらうことがあるので、そういう方が活動しやすくなる環境を作りたいなと思っています。そのために自分自身の実績をもっと作りたい。それも、自分が活動してきてちょっと顔が見える関係ができているエリアではなく、私のことを知っている人などいないまっさらなエリアでやりたいと思っています。

――なぜまっさらなエリアで?

自分の力でどれだけ広げられるかチャレンジしたいんです。いままでは上尾・桶川エリアで私のことを知ってくれている人に「こういう活動します」とお知らせして「じゃあお願い」みたいな感じで仕事をいただいていたんですね。もちろんそういう土台も広げていきたいんですが、それとはまた別にゼロから自分の実績を築いていきたいと思っています。

――ゼロベースから実績を上げるための方法はもう決まっているのですか。

ケアビューティ・まつりかのリーフレットを作り直したので、それを持ってひたすら居宅やケアマネさんの事業所をまわろうと思っています。まわりきれなかったところは郵送して、この作業を最低月1回はやりたい。その成果が出れば、介護美容を広げたいと思っている人たちにノウハウを伝えることができると考えています。

それから、在宅介護分野に携わっている看護師、ケアマネさん、ドクター、薬剤師の方などいろんな職種の人と繋がる機会をつくりたいと思っています。そのためにオンラインのイベントや事例発表会などを企画しているところなんです。

――日本全国に介護美容が広がるといいですね。最後に新郷さんのように介護業界でダブルワークを考えている人にアドバイスをお願いします。

う~ん、大変なのは確実なんですよね(笑)。病院や施設に雇われていればお客様や患者さんも自動的に存在して安定収入も保険もある。それプラス、オリジナルでスペシャリティな活動をすることは、スタートアップも続けるのも正直大変。でも、自分で考えたスペシャリティな活動を通じて出会えた人に感謝されるって、雇われてる身では味わえない格別な喜びなんですよね。その中で自分らしさが見えてくるのもすごく楽しいです

――新郷さんの自分らしさはどんなところ?

やっぱり介護美容の施術やハンドメイドですよね。自分自身が楽しい、もっと極めたいと思っていることで目の前の人も喜んでくれるなんて最高です。

――ダブルワークを目指す人には、新郷さんの介護美容とハンドメイドにあたるスペシャリティを探してほしいですね。

はい。誰にでも絶対何かしらスペシャリティな部分ってあると思うんですよね。まわりにもヨガのインストラクターやウィメンズヘルスケアとか自分のスペシャリティを見つけて歩み出しキラキラ輝いている人がたくさんいます。

――へこたれそうになったこともありましたか。

ん~、そんなにないかも。週4で作業療法士、週1~2でケアビューティストとして活動しているので、個人の仕事がうまくいかなくてもまあ食べてはいける。それが安心材料になってポジティブに動ける。メンタル激強ではないし、好きなことを好きでい続けたい気持ちもあるので、いまのわたしにはベストなスタイルだと思っています。

新郷さんが二足の草鞋をうまく履きこなす秘訣は

1.自分らしく活動できることをダブルワークに選ぶ

2.利用者の方の幸せを第一に考える

3.人との繋がりを大事にする

介護美容を日本全国に広めるために、まっさらなエリアに新規集客をかけるという新郷さん。優しい表情からは想像もつかないバイタリティに満ち溢れる女性でした。

撮影/山田真由美
取材・文/永瀬紀子

 

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