ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
ヘルスケア 2024-12-29

家族を支えるために、アニメや映画で大好きになった日本へ【介護リレーインタビューvol.51/介護ヘルパー トゥーン レ シュエ イー ウーさん】#1

介護業界に携わる皆さまのインタビューを通して、業界の魅力や多様な働き方をご紹介する本連載。

お話しを伺ったのは…
介護老人福祉施設 ラペ二子玉川
介護ヘルパーのトゥーン レ シュエ イー ウーさん

母国ミャンマーで日本語と介護の基本を勉強し、2023年に来日。同年11月に社会福祉法人 緑樹会に技能実習生として入社。現在はラペ二子玉川で介護ヘルパーとして勤務している。

前編ではトゥーンさんが日本語が堪能な理由、ミャンマーを離れて来日を決めたいきさつ、来日までに勉強したことなどについて伺います。

大学2年生のとき父が他界。学びながらアルバイトで家計を支える日々

――トゥーンさんは日本語だけじゃなくて英語も上手ですね。

大学3年のときに独学で英語と日本語を勉強して、週末に英会話を教えるアルバイトをしていたせかもしれません。

――独学ですか!?

大学2年生のときに父が亡くなってから母が家計を支えていたのですが、私も助けになりたいと思ってアルバイトを始めました。

――日本語を勉強しようと思ったのはなぜですか?

日本のアニメや映画が大好きで、もっと詳しく内容を知りたいと思ったからです。日本人は真面目で親切という印象があったので、学生の時から日本にすごく興味がありました。

――大学を卒業してからは?

知り合いの紹介で日本企業に勤めることができました。日本で出版された雑誌の記事をミャンマー語に翻訳する仕事です。インタビューの記事があったり、ファッションの記事もあったり、すごく楽しかったです。

――充実していたんですね。その会社では何年くらい働いていたんですか?

3年くらいです。ずっと働きたかったのに内戦が起こって、仕事ができなくなってしまったんです。ずっと前から日本のことが好きでしたから、ミャンマーを出て日本で働きたいと考えるようになりました。日本で働けば母の助けにもなると思ったんです。

介護の基本を学び、日本語検定試験をパスしていよいよ日本へ

ミャンマーで介護の基本と日本語を学ぶ機関KTCで、同級生たち(トゥーンさんは左奥)とお好み焼きを試食。

――介護の仕事には興味があったんですか?

母と祖父母と一緒に生活をしていたので、お年寄りのお世話には慣れていました。日本でもこの経験は役に立つと思いました。でも、専門的なことは分からなかったので、ミャンマーにあるKTC(Kaigo Training Center)で介護の専門用語や、敬語の使い方を勉強しました。

――KTCではどのくらい勉強したんですか?

7か月間は日本語を勉強して、日本語能力試験の3級を取りました。そのあと5か月かけて介護の専門用語と敬語を勉強しました。

――介護の言葉は難しいですか?

ひらがなやカタカナはすぐに覚えられましたが漢字は難しいです。特に「移動」など漢字が重なる言葉は、最初は何のことだか分かりませんでした。あと「介護」と「介助」は意味が違いますが、発音が似ているので分かりづらかったですね。

――KTCで勉強した後、緑樹会にはどうやって?

面接を受けて、合格をいただいたので来日しました。ミャンマーはベトナムやインドネシアなど他の国に比べると面接を受けるまでの期間が長いので、「いつ日本へいけるのか」少し不安でしたが、夢が叶って嬉しかったです。

母国を離れて日本での生活がいよいよスタート

トゥーンさんのお母さま。ミャンマーからトーンさんを励ましてくれているそう。

――日本に来たのはいつですか?

2023年の10月です。今年でちょうど1年になります。10月の終わりにはラペ二子玉川で働き始めました。

――日本に来て、困ったことは何ですか?

やっぱり言葉ですね。ミャンマーで日本語を勉強しましたが、実際に人が話しているのを聞くと、何を言っているのかさっぱり分かりませんでした。

――話し言葉は早いし、方言や言い方のクセもあるので分かりにくいですよね。

方言は本当に分からないですね(笑)。「大阪の言葉は外国語のようだ」って、聞いたことがあります。でも、利用者さんが言いたいことはちゃんと聞き取らなくてはならないので、聞き直しています。利用者さんも私が日本人ではないことが分かっているので、分かりやすく言い直してくださるので助かっています。

――ミャンマーにはお母さまとおじいさま、おばあさまがいらっしゃるんですよね?

そうです。私は一人っ子なので、家には母と祖父母しかいません。母は一人で祖父母の世話をしながら働いています。忙しくて大変な母を少しでもラクをさせてあげたくて、お給料から仕送りしています。

――親孝行ですね。ミャンマーから離れて寂しくなりませんか?

KTCで一緒に勉強したミャンマー人と同じ寮に住んでいるので、いつも賑やかで寂しくないです。でも家族に会いたい気持ちはあります。そんなときは電話で母と話をします。施設であったことや遊びに行ったことなどを話していると、何となく心が落ち着きます。

お母さまを支えるためにミャンマーから来日したトゥーンさん。後編では、施設で働き始めてとまどったこと、介護にあたっての心づもり、日本語がうまくなるために心がけていることなどについて、ご紹介します。

撮影/松原敬子

information

ラペ二子玉川
住所:東京都世田谷区瀬田4-5-5
電話:03-6805-6678

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事