心と体をゆるめ、自分に優しい選択ができる人が増えるように【もっと知りたい!「ヘルスケア」のお仕事 Vol.167 /ヨガ講師 Maiさん】#2
ヘルスケア業界のさまざまな職業にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載企画「もっと知りたい! ヘルスケアのお仕事」。
今回はヨガ講師、ヨガライターとして活躍するMaiさんにお話しを伺います。前編では、Maiさんがヨガ講師として活動を始めたきっかけや、活動の場を広げた経緯について伺いました。
異業種からの転職でも、外部とのコラボレーションを自ら仕掛けていくなどの方法で、活動の場を広げてきたMaiさん。後編ではMaiさんがヨガ講師として心がけてきたこと、これまでぶつかった壁などについて伺います。
ヨガ講師として充実にキャリアアップしていたものの、自主開催の席が埋まらないことが続くと心が折れそうになることもあったといいます。しかし段々と気持ちの持ち方を工夫することで、立ち止まらずに進めることができるようになったそうです。
お話しを伺ったのは…
ヨガ講師、ヨガライター
Maiさん
介護福祉士として働いていたが、体調を崩して退職し、仕事を休んでいた時期にヨガと出会う。1年ほど経った35歳のときに、ヨガ講師となることを決意。スクールに通いながら、ヨガ講師の資格を取得。現在はヨガスタジオ、外部の飲食店やお寺などとコラボした自主レッスンイベントの開催、オンラインでの個人レッスンを中心に活動している。またWEB媒体「ヨガジャーナル」でのライター業や動画の編集業、タイヨガセラピストとしても活動中。
自分の心をなだらかに。嫌な出来事にもしなやかに対応
――これまでヨガ講師を続けてきて、辛かったことはありますか?
自主開催しているイベントに人が集まらなかったときは、落ち込むことがありましたね。人が来ないときはイベントを閉じてしまうのですが、何回か続いて心が折れてしまいそうになったことはあります。
――そういうときは、どのようにして乗り越えてきましたか?
最初のころは「なんて人気がないんだ」、「私に力がないからだ」と全部自分につなげてしまっていたのですが、最近は年齢を重ねていろいろ穏やかになってきたこともあって、「みんな忙しいんだな」、「この時期は仕方ないな」とか、自分の気持ちをなだらかにする方法を見つけていくことができたと思います。「こういうときもある。でもすごく人が集まったときもある」と自分の視野を広げつつ、ひとつの結果に対して、一喜一憂しないように切り替えて次に進むようになりました。
私は日常がヨガだと思っているので、ヨガとの関わり方は変わっていくかもしれませんが、ヨガは一生続いていくものだと思っています。ヨガを続けていても日々気持ちは揺らぐし、毎日が心の鍛錬です。
せめてこの1時間だけは、自分に優しい選択をしてほしい
――ヨガ講師のやりがいは?
参加してくださった方の心や体の緊張がほどけた瞬間を見たときに、大きなやりがいを感じます。というのも私がヨガ講師として一番大切にしているのが、ヨガを通して心や体をゆるめることなんです。私が元々、運動経験がほとんどなかったこともあって、初めての方でも安心して受けられる優しいヨガで、心や体がゆるんでいく体験を大切にしています。
レッスンに参加してくださった方の緊張感がほどけた瞬間というのは、見ていてとてもよく分かるんです。顔がふとやわらかくなったり、レッスンが終わったあとの表情が大きく変わっていたり。あとはレッスン中にぽろりと涙を流される方もいて、それも気持ちがゆるんだ瞬間だと思っています。そういった変化が目に見える瞬間というのは何にも変えられません。心や身体の重りが取れたのを感じると、こちらがとても幸せな気持ちになって、逆に感謝をしたくなるくらいです。
――参加する人の心や体をゆるめるために、レッスン中に意識していることはありますか。
自分に優しい選択をしようという声がけを必ずしています。日常生活のなかでは無理をしなければいけないときもあるとは思うのですが、この1時間のレッスン中だけは絶対に自分に優しい選択をしましょうと。
たとえばポーズをとっているときに体がきついと思ったら、そこでがんばりすぎないで一歩手前の段階にしてもらう、前屈する際にがんばってもう少し頭を下げようなんて考えずに、むしろ頭を少し戻してもらうというような形で、優しい選択をする練習をしてもらうんです。その練習を続けていたら、「オフザマット」といって、ヨガをしていないときにも自分に優しい選択がとれるようになると思います。
実際、受講している方から「先生の声かけで無理をしなくてもいいんだって思えました」、「日常でがんばりすぎていたことに気づきました」と言っていただくこともあり、それもとてもうれしい瞬間ですね。
いつかはヨガ講師を育てられるように
――今はヨガライターとしても活躍されているとのことですが、どのようなきっかけで始めたのですか?
子どもが段々大きくなって、小学校高学年になったので、レッスンだけではない何か違う仕事をもうひとつ増やしたいという思いがあって、知り合いのヨガ講師の方が開いていた、ヨガライターの講座を受講させていただいたんです。その方に「ヨガジャーナル」さんを紹介していただいたのがきっかけですね。
「ヨガジャーナル」さんのライターとなるために、何度か練習記事の添削をしていただき、無事にデビューすることができたのです。今は月に6本くらい書かせてもらっています。
また最近は「ヨガジャーナル」さんの編集のお手伝いもしていて、YouTubeの動画をアップしたりもしています。ライターや編集の仕事は家でできるので、子どもがいる身としてはとてもありがたくて。これからも続けていきたいと思っています。
――今後の目標は?
ヨガ講師となってから2年目くらいからずっと掲げてきた目標として、いつかヨガ講師を育てる講師になりたいという思いがあります。まだまだ勉強や経験が足りないので、これからも少しずつ学び続けて、いつかはできたらと思っています。
あとは最近タイヨガボディワークという施術を行う、タイヨガセラピストとしても活動を始めたんです。ヨガを始めるのはハードルが高いという人でも、施術を受けるだけならやってみたいという方がいるので、そういう方に癒しを提供しつつ、ヨガを知る入口になったらいいなと思っています。
根本にあるのは、やはりもっとヨガを広めていきたいという思いです。ちょっと前まで、ヨガというとフィットネス感が強かったと思いますが、今はマインドフルネスや呼吸法など、ヨガのヘルスケアの側面に目が向きつつあると思うんです。ヨガは体を動かすだけではないということを、もう少し広めていきたいと思っています。
ヨガを知って人生が変わったというMaiさん。そのヨガをもっと多くの人に知ってほしいという純粋な思いが感じられる取材となりました。これからもっと活躍したい方は、参考にしてみてくださいね。