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特集・コラム 2023-12-15

医療事務の国家資格はない!資格取得の3つのメリットやメジャーな資格5選をご紹介

医療事務は、病院やクリニックの受付・事務業務に従事する仕事です。医療機関で医療事務として働きたいと考えている方の中には、医療事務に求められる資格や、資格を取得するメリットはなにか知りたいという方も多いのではないでしょうか?

今回は、医療事務の資格の必要性や資格を取得する3つのメリット、メジャーな医療事務資格、資格取得に向けた勉強方法、資格選びのポイントについてご紹介します。

医療事務としての就職を考えている方は、是非参考にしてみてください。

医療事務の資格に国家資格はない

前提として、医療事務に国家資格はありません。医療事務資格は民間資格のみとなっています。また、医師や看護師のように特定の資格を取得しなければ働けない、という法律がある訳でもありません。

ただし、職場によっては専門知識が求められる場合もあります。

働きたい職場で求められる専門知識やスキルを獲得するために、医療事務の資格を自主的に取得しようと考える方は少なくありません。

医療事務資格を取得する3つのメリット

医療事務資格を取得すると、就職・転職に活かせたり、待遇面で優遇される可能性がアップしたりします。ここでは、医療事務資格を取得するメリットを確認しましょう。

1.就職に活かせる

医療事務資格を保有していれば、特定の医療事務の知識やスキルを証明できます。即戦力として活躍することが期待できるので、採用される可能性も高まります。

医療機関は多忙で、教える側の時間が十分ではないことも考えられるでしょう。

しかし、職場で求められている医療事務資格を保有している人材を採用すれば教育コストがかからないので、採用率がアップする可能性がアップするのです。

また、資格試験に合格できる計画性と勤勉さがあることもアピールできるでしょう。

2.給与面で有利になる

医療機関によっては、特定の資格を保有していることで資格手当を支給されたり、職場での昇進に役立ったりする可能性があり、給与アップにつながることが期待できます。

働きながら資格を取得した方に対して、報奨金を支給する職場もあります。

3.希望する勤務形態で働きやすくなる

「経験不問」の求人を出している職場がありますが、即戦力として働ける有資格者を優遇して採用している職場も多いです。より幅広い勤務形態や勤務地、勤務時間の選択肢の中から希望する仕事を見つけたいなら、医療事務資格の取得を目指すのがいいでしょう。

医療事務資格のメジャーな資格5選

医療事務に関する資格はたくさんありますが、その中でもメジャーなものの方が就職活動の際に、よりインパクトを与えやすい傾向にあります。ここでは数ある医療事務資格の中でも比較的メジャーなものを5種類紹介します。

1.医療事務管理士技能認定試験

医療事務管理士技能認定試験は医療事務に関する日本初の資格で、昭和49年から実施されています。受験資格がないため誰でも受験でき、受付や会計の業務、カルテの管理など基本的なスキルが身に付けられます。

毎月第4週の土曜日と日曜日に実施。会場での試験は団体契約法人のみ可能。また、在宅試験やインターネット受験もできます。

【学科試験の内容】
・法律関係 :医療保険制度について など
・医学に関する一般知識 :各臓器の組織や構造・生理機能 ・傷病の種類 など
・保険請求事務:診療報酬点数の計算・診療報酬明細書の作成・点検 など

【実技試験】
学科試験とは別に、実技試験が課されます。実技試験の内容はレセプトの作成と点検です。

【問題数】
・学科試験:全10問
・実技試験:全3問
いずれもマークシート方式です。

【試験時間】
・在宅試験の場合:自宅で試験問題を受け取り、試験翌日の月曜消印有効で返送する形となります
・会場試験の場合:学科試験60分、実技試験120分

【合格基準】
・学科試験:学科試験:80%以上
・実技試験:各問で60%以上、かつ3問の合計が80%以上

学科試験、実技試験の両方とも合格基準に達した場合に合格となります。

引用元
JSMA 技能認定振興協会:医科 医療事務管理士®​ 技能認定試験

2.医療事務技能審査試験(メディカルクラーク®️)

医療事務技能審査試験は、一般財団法人日本医療教育財団が実施している試験です。合格者には「メディカルクラーク®️」という称号が与えられます。メディカルクラーク®️を取得すると受付や診療報酬請求業務などの仕事に関する知識が身に付きます。

「医科」と「歯科」に分けられており、いずれも受験資格はなく、誰でも受験可能です。

【試験日程】
・医科:毎月実施
・歯科:奇数月に実施

すべての試験を在宅で受けられます

【受験料】
7,700円(税込)

【試験内容】
学科試験と実技試験が行われます。また実技試験には1と2があります。それぞれの試験の主な内容は以下の通りです。

・学科:医療事務知識
・実技Ⅰ :患者接遇
・実技 Ⅱ:診療報酬請求事務・診療報酬明細書点検

【問題数および試験時間】
・学科:全25問 60分
・実技Ⅰ :全2問 50分
・実技 Ⅱ:全4問 70分

【合格基準】
学科試験・実技試験Ⅰ・Ⅱ、すべての得点率が70%以上で合格です。

引用元
一般財団法人 日本医療教育財団:技能審査認定 医療事務技能審査試験(メディカルクラーク®)

3.医療事務検定試験

医療事務検定試験は医療事務の業務全般にわたる、基本的な知識や技術を測るための試験です。医療保険制度や医療費計算、請求事務の知識・スキルを証明できます。受験資格の制限はありません。

【試験日程】
毎月第4日曜日に実施されています。

【試験会場】
全国にある、指定された会場にて受験できます。指定会場は開催月によって異なるため、受験前に必ずお問い合わせください。

【受験料】
7,700円(税込)

【試験内容】
学科試験と実技試験の両方が行われます。学科試験では法規と保険請求事務に関する知識が問われます。

【問題数および試験時間】
・学科試験:正誤問題 全20問、記述問題 全5問
・実技試験:医療費の計算 全2問
・試験時間は計120分

【合格基準】
満点のうち、70%以上取れていれば合格です。

引用元
学校法人 三幸学園グループ:日本医療事務協会:医療事務検定試験

医療事務検定の概要や受験するメリットについては、以下の記事で紹介しています。
医療事務検定とは?独学でも取得できる?メリットや試験の概要・学習方法を紹介

4.医事コンピュータ技能検定試験

医事コンピュータ技能検定試験は平成8年度にできた新しい試験です。他の資格と比べて、コンピュータを使用した計算や業務に特化しています。3級から準1級までの3階級制です。受験資格の制限はありません。

【試験の日程と会場】
・年2回、6月と11月に実施
・全国に173ある会員校のうち、一般会場一覧から希望の会場を選択

【受験料】
・準1級:8,600円(税込)
・2級 :7,500円(税込)
・3級 :6,400円(税込)

【試験内容】
学科試験と実技試験が行われます。学科試験には2つの、実技試験には1つの領域があります。

・領域Ⅰ:医療事務
・領域Ⅱ:コンピュータ関連の知識
・領域Ⅲ:実技試験

【問題数と試験時間】
・領域Ⅰ:全20問
・領域Ⅱ:全30問
・領域Ⅲ:レセプト作成2問・点数問題20問

試験時間は、領域Ⅰ・Ⅱ合わせて60分、領域Ⅲは60分

【合格基準】
それぞれの領域で60%以上の正解率で合格です。

引用元
一般社団法人 医療秘書教育全国協議会:医事コンピュータ技能検定試験

5.医療情報実務能力検定試験(医療事務実務士)

医療情報実務能力検定試験は、診療報酬請求事務業務を行う人のスキルアップを目的とした試験です。試験に合格すると「医療事務実務士」の資格が与えられます。1級と2級があり、1級は2級に合格していないと受験できません。

【試験の日程と会場】
年4回、3月・7月・9月・12月に実施。このうち3月と9月は2級のみの実施となります。

いずれの日程でも在宅受験が可能です。在宅受験のみのため制限時間はありませんが、試験問題が送られてきた翌日までに投函する必要があります。

【受験料】
・1級:8,700円(税込)
・2級:7,700円(税込)

【試験内容】
学科試験と実技試験の両方が行われます。法規や医学に関する知識、保険請求事務に関する知識が問われます。

【問題】
・1級:学科 全20問・実技(レセプト作成)全3問
・2級:学科 全20問・実技(レセプト作成)全3問

【合格基準】
受験した回における、受験者の偏差値が55以上、または正答率80%以上で合格です。

引用元
特定非営利活動法人 医療福祉情報実務能力協会:医療情報実務能力檢定試驗

医療事務資格を受験するための学び方

医療事務に関する資格は数多くあり、取得の難易度は一概には示せません。主催する企業や団体によって、試験を実施する目的や試験内容、採点基準などが異なるためです。

しかし、比較的メジャーな資格だけに限ると、平均的な合格率は50〜60%程度になります。

1.通信講座

通信講座は送られてきたテキストやCD、DVDなどを使って自宅で勉強する方法です。ZOOMでのセミナーや模擬試験の採点・添削などをしているサービスもあります。

【メリット】
・費用が比較的安い
・在宅で勉強でき、自分のペースで進められる
・模擬試験の採点・添削などを受けられる
・合格後の就職活動や転職などのサービス(アフターフォロー)がある場合も多い

【デメリット】
・試験日までの学習スケジュールの計画、モチベーション管理や進捗状況の把握などを自分でしなくてはならない

2.独学

特定のカリキュラムを受けるわけではなく、参考書や問題集を購入し、自分一人で進めていく方法もあります。

【メリット】
・在宅で勉強できる
・自分のペースで進められる
・費用を安く抑えられる

【デメリット】
・通信講座以上にセルフコントロールスキルが求められる
・テキストや問題集を選ぶところから始まる

3.通学

企業が運営しているスクールや専門学校に通い、専門的、体系的に学ぶという方法もあります。他の方法と比べると受講料がやや高めですが、その分充実した教育サービスが受けられます。

【メリット】
・同じ資格取得を目指す仲間やライバルがいる
・独学や通信講座よりもモチベーションを維持しやすい

【デメリット】
・費用がかかる
・ある程度まとまった時間が必要
・通学に時間がかかる
・合格までしか見てもらえないことが多い

医療事務資格はどれがいい?選ぶときのポイントとは

一口に医療事務といっても、関係する資格は数多くあります。主催している団体や試験の実施目的によって内容は変わってきます。

ここでは、それらの資格の中からどの資格にするか選ぶ際に見るべきポイントを紹介していきます。

1.どの分野の医療事務に就きたいか

クリニックや病院、歯科医院、調剤薬局など、働く場所によって求められる知識やスキルは異なります。そのため、自分がどこで働きたいのかをあらかじめ考えておくことが大切です。

2.就職で有利になるか

もしも資格を取得した後に医療事務職に就職することを考えているのであれば、就職活動で有利になるかどうかも確認しておきましょう。資格手当が受けられるかどうかなども併せて確認しておくとさらに選びやすくなります。

3.資格取得までの期間

資格を取得するまでにかかる期間も資格を選ぶ際のポイントの1つになります。比較的短期間で取得できるもので3〜4か月、最難関の診療報酬請求事務能力認定試験などでは9か月ほどかかるといわれています。

いつまでに取得したいのかも考えておくとよいでしょう。

4.講座は学びやすいか

医療事務資格の講座の学び方には独学や通学コースだけでなく、通信コースや通学・通信の併用コースなどの、いくつもの方法があります。また受講する時間帯が日中なのか、夜間なのかによっても、講座の学びやすさは変わってくるでしょう。

自分が学びやすいスタイルやカリキュラムの講座はどれかを比較検討してから、受講する講座を決めるのがおすすめです。

5.給付金の対象になっているか

医療事務資格の講座を選ぶ際には、厚生労働省が定める「一般教育訓練」の対象となる講座かどうかをチェックしてみましょう。対象講座であれば、受講費用の20%(上限10万円)が受講後に支給されます。金銭的な負担を減らせる魅力的な制度です。

また、学校や教育機関が給付金や貸付金制度を提供している場合もあります。講座を選ぶ際には、どのような支援制度が利用できるのかもチェックしてみましょう。

引用元
厚生労働省:教育訓練給付制度

6.資格手当の対象になっているか

受験する医療事務資格を選ぶ際には、就職する職場で資格手当の対象になっている資格を取得すれば資格手当が得られるだけでなく、職場における業務の幅が広がります。

希望する職場で特定の医療事務資格の保有が条件になっていたり、保有していると優遇されたりする等の資格を狙えば、金銭面や業務の幅といった面で有利になるでしょう。

自分に合った医療事務資格を取得して、キャリアアップを目指そう!

この記事では、医療事務資格の中でおすすめの資格や資格を取得するメリット、学習方法ごとのメリット・デメリット、医療事務資格の選び方についてご紹介しました。

医療事務資格に国家資格はなく、資格取得は義務ではありません。ただし、資格を保有していると希望の職場に就職できたり、待遇を改善できたりする可能性がアップします。

講座ごとにメリット・デメリットは異なるので、自分に合った学習方法やカリキュラム・資格取得の目的・費用感・給付金の有無を確認して講座を選ぶのがおすすめです。

自分に合った医療事務の資格を取得して、キャリアアップを目指しましょう。

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