埼玉から全国へ。夢は日本一のヘッドスパチームを作ること【プーラ式ヘッドスパ 辻敦哉さん】#2
地方でヘルスケア事業に携わっている方に、集客や売上アップのための取り組みについてインタビュー。前回に続き、埼玉県で開業したヘッドスパプロデューサー 辻敦哉さんにお話を伺います。
前回は辻さんが埼玉県で開業した経緯と、オープンから半年で予約の取れないヘッドスパ専門店となった取り組みについてお聞きしました。
後編となる今回は、辻さんが取り組んでいる後進の育成について。プーラ式ヘッドスパの技術を受け継いだヘッドスパ専門店が、各地方に出店しています。そんな取り組みに込めた想いと売上アップ効果についてお聞きします。
お話を伺ったのは…
ヘッドスパプロデューサー 辻敦哉さん
理美容師の経験を積んだ後、トータルエステサロンに入社。ヘッドスパのゴッドハンドとして話題に。2011年独立、埼玉県にヘッドスパ専門店プーラをオープン。半年で人気店となる。2016年より、セミナーでの後進の育成、ヘッドスパ専門店のプロデュースの他、「辻式脱毛症研究所」を立ち上げ、脱毛症の研究にも尽力している。近著『髪が増えるしくみ」から考案 頭皮が蘇るすごいマッサージ』(アスコム)、他多数。
Facebook:ヘッドスパ専門店プーラ
娘の看護のため、在宅で働ける環境作りが必要に
――辻さんはセミナーなどでヘッドスパ技術を広めています。そういった活動を始めたきっかけを教えてください。
僕は開業してから、日本で一番のヘッドスパ専門店を作ることを、大々的に目標にしていました。しかし2015年に生まれた長女が、100万人に1人の難病だったんです。24時間看護が必ず必要になるし、おそらく短命になることが多いと言われました。起業してから順調だった中で、初めて問題に直面したんです。
その時期はもうフルパワーで仕事をしまくって、お見舞いに行ける時間を作る状態。これは在宅を中心に働き方を変えなければいけないと思いました。数年かけて取り組もうと思っていたサロンケアの書籍化、サロンプロダクトの大量生産と通信販売、そして僕が考えた技術を同じ志を持つ人たちに伝え、僕の代わりにやってもらうというビジネスモデルを早急に進めることにしたんです。
仕事をしながら、お見舞いに行ったり看護したり、それと同時にすべて進めて…。そのときは本当に呂律が回らなくなるくらい、これが過労なんだなとわかるくらいやりました。
――そんな背景があったんですね。同じ志を持つ人を集めるというのは?
実は僕、1店舗目ですごく利己的な人を入れてしまって(笑)。同級生に無料で技術を教えてしまったんですが、僕の家族が大変な状況なのに仇で返されるようなことばかりされたんです。そのときに最悪なパターンはわかったので、そういう人を入れないようにしたくって。倫理観をちゃんと確認して、何かあったときにきちんと対処できる契約書に作りかえたりしました。
本気の人だけに僕の技術を伝えたい。そのために、こういったセミナーでは高額の金額設定にもしています。僕も外部に学びに行っていた人間なので、どのぐらいの金額だと「もう絶対に失敗できない」と感じるかわかりましたから。
実際、僕のセミナーに来られる方は、僕の技術を持ち帰ったら確かな武器になると感じて、真剣に考えて来てくれています。それに応えるためにも、半年から1年ぐらいしっかりと時間をかけて独立を目指し、サロン開業後もチームとして知識の共有やサポートをしています。
プロデュースを通して働き方を変えることに成功
――サロンプロデュースにも携わっているんですね。
そうですね。経営に関してはほとんど素人という方が来られるので、効果がないことも手探りで手を出したりする。そこを僕の経験上、絶対効果があるとわかっていることを伝えて役立ててもらっています。また僕がプロデュースしたヘッドスパ専門店はチームとして動いているんです。だから例えば、各々たかが知れている広告費でも、チームとしてそれを動かしたら、より大きな効果を生み出すことができます。
その証拠に、僕がプロデュースさせてもらったサロンは地方出店が多いですが、すごく広い範囲からヘッドスパのために来店いただけている。それこそ前編でお話した「来たくなる集客」が成立しているんじゃないかと思います。
――この活動が辻さん個人の売上アップに与える影響は?
私個人で言うと、各プロデュースサロンでは私が作った商品を使ってくれているので、各店舗の物販や通販売上として、プロダクトの販売をしている法人の利益にはつながっています。
でもプロデュース料自体は基本的に、チーム全体のために使うようにしているんです。例えば著名な方に講義を依頼してみんなで受けたり、プーラ式ヘッドスパの本の広告費に当てたり、高性能なカメラや検査機器を購入しエビデンス作りや技術向上に当てたりと、より武器を強くするために活用しています。そうしたら生きたお金になりますから。
――実際、辻さんの働き方は変わりましたか?
今は、脱毛症に悩まれている方や紹介で「僕がみたほうがいいな」という方など、極限られた方々だけ施術しています。主な活動はセミナーとプロデュースしている人たちのサポート、専門知識の研究です。
僕が学んで、みんなに伝える。そう役割がきちっと分かれています。技術を伝えることで、僕の働き方も変わり、安定してきました。娘も小学生になりました。変わらず24時間看護は必要ですが、在宅でみられるようになったので、やってきてよかったなと感じています。
個々の武器を見出し日本一のヘッドスパチームに
――今後の展望、取り組みたいことはありますか?
日本で一番のヘッドスパ専門店を作るという夢は、日本で一番のヘッドスパチームを作ろうという夢に変わりました。僕だけがピラミッドの上にいるのではなく、それぞれスター性があるようなチームを作っていきたい。そしてそれぞれの経験も、しっかりチームメンバーで共有できるようにしたい。そのためにも、個々のカラーを僕がちゃんと見出していきたいです。そしてゆくゆくは、ヘッドスパと言えばプーラ式と言われるように、全国に展開していけたらと思っています。
――最後に、地方で事業展開を目指す方にアドバイスをお願いします。
一番大切なのは武器を作ること。そして自分自身の武器を理解することだと思います。自分自身がわからないことを、お客様にわかってもらおうというのは、すごく難しいですから。
そして突出した1つのものを作ること。例えば、私はヘッドスパ専門店というかたちでスタートしましたが、元々持っていたフェイシャルやシェービングと言った施術も取り入れていました。でもそこで「トータルビューティーサロン」としてしまうと、お客様がお店を知ってから何をしたらいいのかまた探さないといけません。
だから一番自信のあるものを店舗名にするなど、「これです!」というものをわかってもらう。お客様は「これ、すごかった」となれば、必ず他の施術にも興味を持ってくれます。まずはお客様に迷わせないお店作りをするのがおすすめです。
地方でヘルスケア事業者が全国展開を目指すための3か条
1.自分の武器を理解し、掘り下げる
2.突出した1つを店名などで大々的に伝える
3.利己的にならず同じ志を持つチームを作る
家族のため、働き方を変えるしかない状況で奮起した辻さん。その働き方は地方から全国展開を叶えるビジネスモデルでもありました。地方で売上アップを目指したい方は、ぜに参考にしてみてくださいね。
取材・文/山本二季