【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.19】スポーツトレーナー 和田拓巳さんが教える「スポーツトレーナーの仕事に大切なこと」
ヘルスケア業界のさまざまな職種にフォーカスし、その道で働くプロにお仕事の魅力や経 験談を語っていただく『もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事』の企画。
今回はフリーのスポーツトレーナー、和田拓巳さんにフィーチャー。前回は、和田さんがスポーツトレーナーの道を目指したきっかけや、フリーで活躍されている現在に至るまでの経緯をお聞きしました。今回は、アスリートたちの指導にあたる際にスポーツトレーナーが求められることや、これから同じ道を目指す人たちへのアドバイスをお届けします。
相手を納得させられる話術と、常に新しい情報のインプットが求められます
―和田さんが思う、スポーツトレーナーのお仕事の魅力を教えてください。
「目標の身体に持っていくことができた」「試合に勝てた」など、指導を担当している方たちが、ご自身で掲げられていた目標を達成することができたときは、僕自身もすごく嬉しいですし、やりがいを感じられます。それらの目標や目的は、指導にあたらせていただく最初の段階でお伺いし、それをクリアするために僕ができるサポートを全力で行っています。
―和田さんはこれまでにプロのアスリートの方たちへの指導も多数経験されていらっしゃいますよね。プロの指導にあたる際に必要なテクニックなどはあるんですか?
教える内容自体は一般の方と変わりありませんが、プロの選手は昔からたくさんの方から指導を受けてきているので、カラダの仕組みやトレーニング、マッサージに関する知識も豊富です。そうなると、僕たちスポーツトレーナーの知識が浅かったり、分からないことがあったりすると、すぐに見破られてしまいます。だからこそ、常に選手よりもたくさんの知識を習得し、聞かれたことに対してしっかり受け答えできることが求められます。
そして、選手に説明して納得してもらうためには、コミュニケーション力がとても重要になります。選手の中には自分よりも年齢が上の方もいれば、下の方もいらっしゃいます。どんな相手であっても上から目線で意見を言ってしまったり、萎縮してしまい物事をしっかり伝えられなかったりすると、円滑なコミュニケーションを図ることは難しくなってしまうので、常に意見を交換できるような対等な関係を意識することがとても大切なんです。トレーナーは、選手との距離が近くなりすぎてしまう立場でもあるので、ときには情が出てしまって対等な関係を築くことが難しくなってしまうという話もよく耳にします。けれど、それは結果的に選手のためにならないので、僕は常にある程度の距離感を保って接するようにしています。
―豊富な知識量が必要なことに加え、相手への伝え方も大切になってくるんですね。
はい。それこそ選手のケアや指導にあたる際も、まずは選手と話をしないことには状態を把握することができないので、コミュニケーション力はとても重要になります。
また、プロの選手は自分の身体が資本になるので、トレーニングに関しても僕たちトレーナーの意見やアドバイスを熱心に聞きに来てくださることも多いです。同時に、我々が教えたアドバイスに関しても情報の取捨選択ができる方ばかりなので、いいなと思ってもらえたら、教えたことを実践し続けてくださいますし、反対に合わないなと感じた場合は、続けてくれません。だからこそスポーツトレーナーは、常に相手の身体の状態を見極め、適切なアドバイスを送ることが求められます。
身体の基礎知識の習得と、常に新しい情報へのアンテナを張っておくことが大切
―これまでの経験で、スポーツトレーナーの仕事に活きたことはありましたか?
専門学生のときに、実習の一環として、とある高校のサッカーチームのトレーナーとして一定期間ついて回ったことがあるんですが、それが今でもいい経験になったと思っています。当時は持っている知識は少ないながらも、選手の痛みやパフォーマンスを良くするためにはどうしたら良いのかを空いた時間を使って図書館で調べたりと、選手のためにできることを自分なりに考えて必死に行動していました。そのときの経験は、かなり勉強になりましたし、今となっても活かされていることも多いので、本当に貴重な経験をさせてもらえたと感謝の気持ちでいっぱいです。
だからこそ、今後トレーナーとして活動していきたいという方には、学生のころから積極的に現場に出てみることをおすすめします。僕は通っていた学校に実習の話が来たことがきっかけで参加させてもらいましたが、そのような機会がない方でも、自分の母校や地元近辺の学校などにアプローチしてみたら受け入れてくださる場合もあると思うので、まずは行動力を持って一歩踏み出してもらいたいです。
―これからスポーツトレーナーを目指す人たちへのアドバイスをお願いします!
トレーナーは人の身体を正したり良くしたりするのが仕事なので、基本的な知識が曖昧なまま業務に当たってしまうと、返って怪我をさせてしまう危険性も。それでは仕事を全うできているとは言えないので、まずは最低限の身体の知識をしっかり身につけておくことが何より大切になります。
加えて、トレーニング方法も時代とともに変わってくるので、常に新しい情報を習得し、指導に取り入れるべきかどうかを自ら判断する力を養うことも大切です。僕自身も日頃から本を読んだり、トレーナーの方たちから情報収集を行ったり、講習会に参加したりと、さまざまな方法で情報をインプットするようにしています。
相手を思いやりながら指導にあたることに加え、時代とともに移り変わる情報を常にキャッチし、指導に取り入れるべきかどうかを判断することも大切になるんですね。和田さんのお話を伺って「スポーツトレーナー」の仕事の奥深さをしみじみ感じました! 次回は和田さんの手技・技術にフォーカスしてお届けします。
▽#3はこちら▽
【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事 Vol.19】スポーツトレーナー 和田拓巳さんの手技・技術>>
取材・文/小沼奈央(レ・キャトル)
撮影/石原麻里絵(fort)
教えてくれたのは…
スポーツトレーナー 和田拓巳さん
スポーツトレーナー。一般の方はもちろん、アーティストやプロスポーツ選手といった著名人への指導経験も多数あり。加えて、ヘルスケア媒体のライターや、トレーニングに関する講演講師、トレーニング用品の商品開発も手がけるなど、活躍は多岐に渡る。