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特集・コラム 2019-08-28

私の手にしかできない仕事 Work.1/株式会社un.代表・湯浅一也、訪問美容師・若菜香織(後編)

「スタッフ100人体制で、日本全国に訪問美容を浸透させていく」

——若菜さんの一日のタイムスケジュールは、どのような流れになるのでしょうか?

若菜さん 私は子どもが2人いますので、まずは保育園に子どもを送ってから、現場(施設)へ向かいます。始業は、朝9時からですね。1件目の人数が多ければ、午後までかかります。少ない場合は、お昼休憩を挟んで2件目の施設や在宅へ……といった感じでしょうか。終業は16時になります。

湯浅さん スタッフさんたちには、必ず16時までに施設から退所してもらうようにしています。これは、マストですね。もし16時以降も施設に残る場合は、残業代を支給しています。

若菜さん 16時以降は、私が保育園へ直行する日もあれば、主人に迎えを依頼する日もあります。ちなみに、会社には保育園までの移動時間が1時間ほどの場所にある施設を割り当ててもらうよう配慮いただいていますが、どうしても16時より前に施設を出なければならない日も出てくるので、そういった場合はメンバーたちに協力してもらった上で、対応しています。帰宅時間は大体17時過ぎですね。

とはいえ、朝に子どもたちを送り、夕方には迎えをして17時過ぎから家事をするのは、やはり楽ではありません。ただ、徐々に慣れてきて、今では「負担を最小限に抑えるリズム」というかちょっとした負担を減らすコツのようなものがつかめています。

食事の用意を例にとると、朝のうちに夕飯をちょっと作っておいたり、前日の夜に作ったおかずをその日の夜にも食べたりとか。他には生協(生活協同組合。コープ)を活用したり、ときにはスーパーで惣菜を買ったりしています。あまり力を入れすぎないことがポイントですね。

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——若菜さんの休日(土曜日・日曜日)の過ごし方を教えてください。

若菜さん 保育園のお友達が遊びにきたり家族で出かけたりと、やっぱり子ども中心の過ごし方になりますが、企画書をつくるときも、休日の時間を少し使います。

——お話しできる範囲で、若菜さんがつくった企画書の内容について、聞かせてください。

若菜さん 私が訪問美容の世界に飛び込んだきっかけは(前編にあった)湯浅のメッセージも大きかったのですが、ママと乳幼児を訪ねて美容サービスを提供したい気持ちが強かったことも理由の一つです。

子育てをすると、自分に使える時間が圧倒的に減るんですよね。ヘアサロンに行く時間をつくるのも、簡単ではありません。だから、訪問美容を通じて、子育てをする前は当たり前に実現できていた美容の時間を、世の中のママたちに提供したいと思っています。入社するときに湯浅から「会社に提案してください。一緒に実現していきましょう」と言われたこともあり、「成し遂げよう」と決心しました。

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——訪問美容のサービスをお客さまに提供したときに感じるやりがいは、どんなものがあるのでしょうか?

若菜さん すごく小さいことなのかもしれませんが、花柄のロングスカートを履いていくと、おばあちゃんがとても喜んでくれるんです。訪問美容はおしゃれをしちゃいけない、かちっとした制服を着ているようなイメージを抱いていたのですが、un.は一般常識的に問題がないきれいな服装であれば基本は何でもOKなので、自分が好きなファッションを取り入れています。とりわけモノトーンの花柄のスカートを履いていくと、おばあちゃんたちに「今日のスカート、いいわねえ」ってすごい褒めていただく機会が多くて。

喜んでもらえる。褒めてもらえる。それら一つ一つは小さな出来事なんですが、とても幸せに感じますね。

——お客さまの対応で苦労することは、ありますか?

若菜さん カットやシャンプーのとき「この姿勢はお客さまに負担をかけてしまっているかもしれない……」と思ったり、乗られている車いすの形状が異なることから操作性の違いが把握できなかったりと、心配になってしまう部分はあります。しかし、un.にはそういった「予想される問題」に対応するための社内カリキュラムが整備されているので、受講を重ねていくうちに、改善できました。

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——最後に、今後の会社の展望や、お二人が訪問美容の世界で実現したい未来について、聞かせてください。

湯浅さん 日本全国に訪問美容を浸透させていくために、向こう2年間でスタッフを全国規模で100人体制にすることを目指しています。あとは、海外展開ですね。現在アジアでは訪問美容が少しずつ注目されているようなので、un.がつくりあげた訪問美容のカルチャーを少しずつ紹介して、広めていきたいと考えています。シャンプーなどの備品や設備もまだまだ改善できるので、お客さまにとって安心・安全で本当の意味で使いやすい商品にしていきたいですね。

若菜さん 訪問美容が十分に認知されているとはいえない現状なので、今年は一人でも多くのママさんや妊婦さん、身障がいのあるお客さまに、訪問美容の素晴らしさを伝えていきます。その上で、今会社に提案しているママと乳児の訪問美容を実現したいですね。

厚生労働省が美容業の動向をまとめた『○美容業の実態と経営改善の方策(抄)』(2018年10月)に、次の一文がありました。

「高齢化が進展する中で、在宅や老人福祉施設等で美容店に来店することが困難な高齢者が増加していくことが予想されることから、これらの者に対する訪問美容サービスや送迎を推進していくことが期待される。美容サービスによって身だしなみを整えることは高齢者の気持ちを若返らせ、心身をリフレッシュさせる上でも重要である。」(出典:厚生労働省『○美容業の実態と経営改善の方策(抄)』)

国からその拡大を要請されているといっても過言ではない、訪問美容の仕事。湯浅さんと若菜さんの活躍に、これからも注目していきます。

>>私の手にしかできない仕事 Work.1/株式会社un.代表・湯浅一也、訪問美容師・若菜香織(前編)

Information

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訪問美容サロン trip salon un.

2012年8月に開業。病気やケガで満足に動けない方や高齢者や妊婦といった外出が困難な方にヘアカット、カラー、パーマ、ネイルアートなどの訪問美容サービスを提供している。業界全体のサービスや技術の向上を目的に、全国展開も推進。代表取締役社長の湯浅一也さんは講演会やテレビ東京系列の番組『ワールドビジネスサテライト』をはじめとするメディア出演でも注目を集めている。

URL:http://c-b-un.com/

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