実力派貧困セラピストを救え!  第三章「タイムリミットは30分」

「涼花がライターではない」ということを、酒居が気付いた時点で逃げないといけない。涼花は脇のカバンをしっかり掴み、さりげなく酒居の電話の声に耳を傾けた。


セラピストを救え

「はい、はい……ああ、そうなんですか……30分後でしたらなんとか……はい、失礼します」

酒居が電話を切ると、涼花の口元は緩んだ。酒居の電話に対して特に怪しい空気を感じなかったからだ。そして酒居は口を開いた。

「申し訳ないのですが、30分後に次の仕事が入ってしまって……」

「か、かしこまりました。では、急いで次の質問に参りますね」

30分だとできる質問が限られている。しかし、涼花はそのことよりも自分の正体がバレなかったことを嬉しく感じていた。そして次の質問をした。

「先ほどの質問とは逆で、人気サロンの共通点ってありますか?」

「んー、活気があることですかね――」

「活気……それは、スタッフにですか? お客さんにですか?」

「どちらもですが、どちらかと言えば特にお客様ですね。お客様が『じゃあねー♪』って手を振って、笑顔で帰るところは人気サロンの特徴ですね」

「なるほど……どうすればお客さんが『じゃあねー♪』って手を振って、笑顔で帰るようなサロンになるんでしょうね?」

「んー、スタッフの活気っていうのもありますが……サロンのマメな努力かな」

「マメな努力……ですか」

セラピストを救え

「ええ、例えばサロンのディスプレイを定期的に変えたり、一生懸命描いたと思われる手描きのポスターが貼ってあったり。そういう一生懸命の空気ってお客様に伝わるんですよね。実際、秋だからという理由で棚に“きのこ”を置いただけで、サロンの空気が良くなってお客様との会話が増えたっていうサロンもありましたよ」

「き……きのこですか……」

涼花のやるべきことがまたひとつ増えた。断崖絶壁に囲まれていた状態の彼女の周囲に、無風の安全な道が数本現れたのだ。

そして、インタビューは順調に進んで行った。最初の涼花とは違い、彼女には安心感があった。「もう、バレる心配はない」と。その油断が原因で、涼花に波乱が訪れることも知らずに。


最終章「じゃあねー♪」につづく(6/27リリース予定)につづく

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実力派貧困セラピストを救え!  最終章「じゃあねー♪」

未だに、涼花の正体が貧困セラピストだということは酒居にはバレていない。そしてバレる様子もない。偽インタビューは滞りなく進んでいた。涼花が質問をする、酒居が答える。このルーティーンとも言える流れが、涼花の油断を誘っていた。

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セラピストを救え

実力派貧困セラピストを救え!  第三章「タイムリミットは30分」

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