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介護・看護・リハビリ 2025-03-03

子どもの心のスイッチを探して。末永く、切れ目のない支援を目指す【介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画 寿優和会 児童指導員、施設管理者 阿部智子さん】#2

業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載「介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画」。

今回は社会福祉法人 寿優和会の阿部智子(トップ写真右側。左側は取材に同席した同法人理事長の本多正博さん)さんにお話しを伺います。阿部さんは児童指導員であり、同法人が日野市より受託し運営する子どもの学習・生活支援事業、自立相談支援事業(くらしの自立相談窓口)を担う施設の管理者です。

前編では、前職で学童の指導員をしていた阿部さんが、寿優和会に入るまでのお話しを伺いました。

後編では転職した阿部さんが、仕事のやりがいをどのように感じているかを伺います。

それを「子どもの心のスイッチを探して、押すこと」だと表現した阿部さん。子どもたちが未来を見据えて自分で行動を始めたときが、たまらなくうれしいといいます。

お話しを伺ったのは…
社会福祉士法人 寿優和会
児童指導員/子どもの学習・生活支援事業、くらしの自立相談窓口施設管理者
阿部智子さん

40代から12年ほど学童指導員として勤めたあと、支援が必要な子どもたちにもっと深く関わりたいとの思いから、退職。その後、寿優和会関連グループが運営する「生活介護事業所とちのみ」に入職する。同法人が子どもの学習・生活支援事業とくらしの自立相談窓口を併設した施設を立ち上げることになり、管理者として立ち上げに携わる。いつも全力で子ども達と接し、さまざまな変化を起こしてきた。

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子ども達のスイッチが入る瞬間が、何よりもうれしい

仕事のやりがいは、子ども達が変わっていくことだと話す阿部さん

――生活介護事業所に転職されたとのことですが、そこからどのような流れで今の仕事に?

私の勤めている法人では元々、子どもの学習・生活支援事業を運営していたのですが、その担当者が辞めることになり、後任として声がかかったんです

当時は法人が運営する老人介護施設のなかに子どもの学習・生活支援事業が併設されていましたが、私が後任となったタイミングで、別に建物を構え、くらしの自立相談窓口を併設することになりました。その立ち上げから携わることになったんです。

――そのような経緯があったのですね。今の仕事のなかでやりがいを感じたエピソードはありますか。

子ども達が変わり、自立に向けて行動をし始めたときに、本当にやりがいを感じます。ここに来ている子のなかには、家庭に問題を抱えている子も多くいます。すべての子どもが必ずそうなるわけではありませんが、そういう子たちの多くが学校にも行かずに、何もしていない状態になってしまうんです

ですが、そういう子たちが突然、「自分の人生はこのままではいけない」と気づいて行動をし始めることがあるんです

親のことはもうどうにもできないからと、アルバイトでお金を貯めて通信高校に行った子もいます。

――それは素晴らしいですね。

本当にうれしいですね。今も学校に行っていない子が何人かこの施設に通って来ていますが、今の時代の考え方としては、無理をしてまでもかならず学校に行かなくてはいけないということではないと思います。それよりも、その子の特性をいい形で伸ばしてあげて、生きていく力を身につけることの方が大事だと、私は思うんです。

私たちの仕事は言い換えるなら、そういう子たちの心のスイッチを探して、入れてあげる仕事。そして将来に対して何らかの希望を持ち、自分で生きていく力をつけてもらう仕事です。スイッチはいつ入るか分からないので、末永く切れ目のない支援をしていくこと大切だと思っています。

――どうすれば、その「スイッチ」は入るものなのでしょうか。

自分の考えをありのままにぶつけるしかないのかなと思って、私はそうしてきました。今の社会というのは、支援が必要な子どもに対して思うところがあったとしても踏み込んでいかないし、みんなトラブルになることを恐れて、介入をしないですよね。でも私は未来ある子ども達に少し先のことも考えてもらいたいと思い、学習の重要性、将来を考えることについて踏み込んで話しています

これは私の固定観念かもしれませんが、社会に出ていくときにやっぱりある程度の学力は必要だと思うんです。連立方程式を解く力は必要ないけれど、字の読み書き、単純な足し算や、引き算、九九など最低限の部分ができなければ、仕事に就くのも難しいでしょう。だからそのことは伝えます。

そしてそういった思いをあまり重々しく伝えても子どもには響かないと思うので、あまり堅苦しくしないで、フレンドリーに接することも大切にしています。私は学童時代から子ども達に「あべっち」と呼ばれているのですが、それくらいの距離感がちょうどいいのかなと思っています。

思いが届かないときは仕事のことを忘れてリフレッシュ。切り替えることも大切

うまくいかないときは、仕事のことについて考えるのを止めるという阿部さん

――学習の大事さなどを伝えても響かないこともあるかと思いますが、いかがでしょうか。

ありますね。ここは出席をとるわけでもないし、来る義務があるわけでもないので、子ども達は口うるさいことを言われて嫌だと感じたら、ここに来なくなります。ここに来なくなれば、私にできることはそれ以上なくなってしまいますね。

この仕事をしていて難しいと感じるのは、人との関わりです。こちらがその子に対して何かをしてあげたいという気持ちがあっても、相手が求めていることや、感情とマッチしないときは、とくに難しさを感じます。

こちらが良かれと思っても、いらないと言われることもあるし、逆に相手から多くのものを求められて対応ができずに、クレームになってしまったことも。

――やるせなさを感じることはありますか?

もちろんあります。正直、その瞬間は「もういいや」と思ってしまいますよね。投げやりな気持ちになることはあります。

でもそういうときは、仕事のことを一切考えずに、休みの日にリフレッシュすることにしています。私は人と関わる仕事をする人には、こういった時間が絶対に必要だと思っています。相談の事業は真面目な人ほど長く続かない傾向があるんです。それはこちらがどんなにがんばっても、思い通りにならないことが多いからです。

もちろん相手に対して真摯に向き合うことが必要ですが、やるだけやってだめなら切り替える。そういう心構えも大切だと思っています。

――課題を抱える子ども達と接することは簡単なことではないとも思います。モチベーションはどんなところにあるのでしょうか。

母心ですかね(笑)。出会った子ども達は私たちにとっては、実の子どもとか孫とあまり変わりがないような感じです。いつも卒業生には「20歳になったら一緒にお酒を飲もうね」と伝えているのですが、この場所を通して切れ目がない形でつながっていければと思っています。

思いに共感してくれる仲間とともに、もっと前進したい

大変なことがあっても、やりがいも大きい子ども達の支援。携わる人をもっと増やしていきたいと話す阿部さん

――今後の目標は?

同じ方向を向いて、一緒に働いていける仲間を増やしていきたいと思っています。行政もとてもがんばってくれていますが、グレーゾーンの子ども達など本当に支援が必要な人がこぼれ落ちていってしまうことがあります。そういう子たちに必要な支援を届けていくには、もっと仲間が必要です。

子ども達が前向きな一歩を踏み出せるように支援をすることには、本当にやりがいがあると思っているので、興味がある人はぜひ一度連絡をもらえたらと思います。


取材後、取材に同席した、寿優和会 理事長の本多さんにもお話しを伺うことができ、これまでの慣例にとらわれず、常に利用者さんのことを第一に考えている法人の姿勢が伺えました。阿部さんが自分の思うように仕事ができているのは、この法人の姿勢があるからかもしれません。

また支援が必要な子ども達に寄り添うことは大変なことも多いはずですが、阿部さんはとてもエネルギッシュで、それでいて温かく、こちらまで元気になるような取材の時間となりました。この阿部さんの空気に、多くの子ども達が救われているのでしょう。

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