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介護・看護・リハビリ 2020-03-16

精神保健福祉士になるには?受験資格や過去問を解説

精神的障害を持つ人が円滑な日常生活を送れるように支援を行う「精神保健福祉士」。今回は国家資格にフォーカスし、受験資格や過去問、勉強方法などを詳しくご紹介します。

精神保健福祉士とは

精神保健福祉士は、平成9年(1997年)制定の「精神保健福祉法」に基づいて生まれた精神科ソーシャルワーカー(PSW)と称される国家資格で、社会福祉士、介護福祉士と併せて、福祉系三大国家資格に位置づけられています。

医療施設で精神障害の医療を受けている人や、精神障害者の社会復帰の促進を図ることを目的とする施設の利用者の相談に応じ、助言、指導、日常生活への適応のために必要な訓練、その他の援助を行います。

精神上の障害がある人たちの生活支援を行うため、精神障害者の保健・福祉に関する専門知識や技術の他、冷静さや包容力、柔軟性、忍耐力など、精神面の資質も必要とします。

精神保健福祉士国家試験の受験資格

受験資格を得る方法は様々です。早い方法は、福祉系の大学もしくは短大・専門学校に入学することです。福祉系の4年制大学で指定科目を履修した上で卒業すると、同時に国家試験の受験資格を得ることができます。2年制の福祉系短大を卒業した場合は2年の実務(相談援助)、3年制の場合は1年の実務(相談援助)を経験することで受験資格を得ることができます。

福祉系の大学で指定科目を履修せずに、基礎科目を履修した場合でも、短期養成施設を6か月以上通学することにより受験資格を得ることができます。短大の場合も1~2年の実務(相談援助)を経験した後、短期養成施設を6か月以上通学することにより受験資格を得ることができます。

また、社会福祉士の資格所持者も、短期養成施設を6か月以上通学することにより受験資格を得ることができます。福祉系以外の大学、短大の卒業、または高卒の場合でも受験資格を得ることはできます。一般の4年制の大学を卒業した場合は一般養成施設に1年以上通学します。一般の短大を卒業した場合も1~2年の実務(相談援助)を経験した後、一般養成施設に1年以上通学することで受験資格を得ることができます。高卒の場合は実務(相談援助)を4年以上経験し、一般養成施設に1年以上通学すると受験資格が得られます。

専門学校によっては、通信や夜間の精神保健福祉士養成課程がある学校もあります。通信は学費が比較的安い学校が多く、通うのが難しい人にとっては良い手段かもしれません。しかし通信の場合、通常の養成期間よりも長くなる場合がほとんどのためご注意ください。

精神保健福祉士国家試験の受験資格を取得する方法をわかりやすく記したので、下の表でご確認ください。

精神保健福祉士国家試験

試験問題は5択のマークシート方式です。毎年1月下旬に実施され、3月中旬に合格発表が行われます。試験場所は介護福祉士や社会福祉士の国家試験場所に比べて少なく、北海道・宮城県・東京都・愛知県・大阪府・広島県・福岡県のみで実施されています。

受験の申し込みは、「公益財団法人社会福祉振興・試験センター」に対してウェブサイト、もしくは郵便はがきで『受験の手引』を請求した後、受験手続を取ることができます。詳細や問い合わせ先は公益財団法人社会福祉振興・試験センターのウェブサイトで確認できます(クリックするとページにジャンプします)。

合格率:61.3%(第17回試験[平成27年1月実施]受験者数7,183人、合格者数4,402人)
合格基準:問題の総得点の60%程度を獲得した者のうち、試験科目16科目群の各科目群すべてにおいて得点があった者
受験料金:16,400円

※精神保健福祉士と社会福祉士を同時に受験する場合は20,020円、精神保健福祉士の共通項目を免除して受験する場合は13,120円です。
(2016年1月現在)

精神保健福祉士国家試験の試験概要

ここでは、第19回(平成28年度)精神保健福祉士国家試験についての概要を紹介します。

項目 内容
試験日 ※毎年1月下旬~2月上旬に実施
試験時間 専門科目:2時間20分 共通科目:1時間15分
受付期間 ※毎年9月上旬~10月上旬
試験会場 北海道、宮城県、東京都、愛知県、大阪府、広島県、福岡県(7試験地)
受験料 精神保健福祉士のみ受験する場合:16,400円
精神保健福祉士と社会福祉士を同時に受験する場合:20,020円(精神13,190円 社会6,830円)
精神保健福祉士の共通科目免除により受験する場合: 13,120円
合格発表 3月中旬

精神保健福祉士国家試験の過去問例

これまでどのような試験問題が出題されたのか、過去問題を確認してみましょう。

[精神疾患とその治療]

【問題1】脳の部位とその損傷による症状に関する次の組み合わせのうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 前頭葉―――――抑制が欠如して反社会的な行為を行う。
2 側頭葉―――――計画を立て行動することができなくなる。
3 頭頂葉―――――自発性が低下して周囲に無関心になる。
4 後頭葉―――――運動麻輝がないのに目的の動作ができなくなる。
5 小脳 ―――――手が震え、四肢の筋が硬直する。
(第16回 精神保健福祉士国家試験)

[精神保健の課題と支援]

【問題2】次のうち、女性よりも男性に多く認められるメンタルヘルスの問題として、正しいものを1つ選びなさい。

1 注意欠陥多動性障害
2 神経性大食症
3 アルツハイマー病
4 選択性緘黙
5 うつ病
(第17回 精神保健福祉士国家試験)

[精神保健福祉相談援助の基盤]

【問題3】 次のうち、2007 年(平成 19 年)に改正された社会福祉士及び介護福祉士法 において、新たに追加された社会福祉士の義務等として、正しいものを2つ選びなさい。

1 誠実義務
2 信用失墜行為の禁止
3 資質向上の責務
4 秘密保持義務
5 名称の使用制限
(第18回 精神保健福祉士国家試験)

[精神保健福祉の理論と相談援助の展開]

【問題4】精神科医療機関の精神保健福祉士が行う支援に関する次の記述のうち、適切なものを1つ選びなさい。

1 支援は、医師や看護師の指示により開始する。
2 インテークでは、関係づくりを基軸とした情報収集を心がける。
3 アセスメントは、診断・治療に役立つ疾病や障害の現状把握を目的にする。
4 支援計画は、精神保健福祉士があらかじめ設定した支援課題に基づき立案する。
5 介入では、家族や社会資源との関係を調整するために、ジェノグラムを用いる。
(第16回 精神保健福祉士国家試験)

[精神保健福祉に関する制度とサービス]

【問題5】次のうち、精神障害者保健福祉手帳2級を取得していることによって、経済的負担を軽減できる制度として、正しいものを1つ選びなさい。

1 JR旅客運賃の割引
2 所得税の障害者控除
3 有料道路(高速自動車国道)の通行料金の割引
4 贈与税の非課税
5 自動車取得税の減免
(第18回 精神保健福祉士国家試験)

[精神障害者の生活支援システム]

【問題6】「障害者総合支援法」に基づく市町村が設置する協議会(市町村協議会)に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。

1 障害支援区分の審査、判定を行う。
2 インフォーマルな社会支援も含めた支援体制の整備を検討する。
3 個別事例の支援のあり方について協議する。
4 地域移行支援の対象者を決定する。
5 総合的・専門的な相談支援を実施する。
(第17回 精神保健福祉士国家試験)

[人体の構造と機能及び疾病]

【問題7】認知症に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。

1 アルツハイマー型認知症の治療に用いられる薬物は、現在、存在しない。
2 レビー小体型認知症、パーキンソン症状を生じることはまれである。
3 脳血管性認知症は、生活習慣病(糖尿病、脂質異常症、高血圧など)が原因となっていることが多い。
4 正常圧水頭症による認知症は、外科手術で回復することがある。
5 認知症に伴うせん妄は、夜間よりも昼間の方が多い。
(第16回 精神保健福祉士国家試験)

[心理学理論と心理的支援]

【問題8】遺伝と環境に関する学説として、正しいものを1つ選びなさい。

1 成熟優位説では、学習を成立させるために必要なレディネスを重視する。
2 環境優位説では、周囲への働きかけや環境及び出生前の経験を重視する。
3 輻輳説では、発達は遺伝的要因と環境的要因の引き算的な影響によるとした。
4 環境閾値説では、心理的諸特性が顕在化するには固有の人格特性があるとした。
5 行動遺伝学では、遺伝と環境の関係を地域環境の側面から統計的手法で見積もる。
(第18回 精神保健福祉士国家試験)

[社会理論と社会システム]

【問題9】「平成23年国民生活基礎調査」(厚生労働省)による世帯状況に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 全世帯の世帯人員別世帯数では、2人世帯より3人世帯の方が多い。
2 全世帯の世帯人員別世帯数では、父子世帯が母子世帯よりも多い。
3 15歳以上の者の仕事ありの割合を年齢階級別にみると、男性では「30~34歳」を底とするM字型となっている。
4 65歳以上の者のいる世帯では、夫婦のみの世帯より単独世帯の方が多い。
5 65歳以上の者で子どもと同居する者のうち、配偶者のいない子と同居する者が、子夫婦と同居するものより多い。
(第16回 精神保健福祉士国家試験)

[現代社会と福祉]

【問題10】社会的リスクに関する次の記述のうち、「ベヴァリッジ報告」で想定されていなかったものを1つ選びなさい。

1 疾病により労働者の収入が途絶えるおそれ
2 勤務先の倒産や解雇により生計の維持が困難になるおそれ
3 老齢による退職のために稼働収入が途絶えるおそれ
4 保育や介護の社会化が不充分なため、仕事と家庭の両立が困難になるおそれ
5 稼得者の退職や死亡により被扶養者の生活が困窮するおそれ
(第17回 精神保健福祉士国家試験)

[地域福祉の理論と方法]

【問題11】地域福祉に関する理念や概念に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 ローカルガバナンスとは、地方自治体における議会による統治を意味する概念である。
2 ソーシャルインクルージョンとは、全ての人々を排除せず、包摂し、共に生きることができる社会を目指す考え方である。
3 地域福祉における住民主体の原則とは、サービス利用者としての地域住民の主体性を重視した考え方である。
4 脱施設化とは、児童と高齢者が福祉施設から地域生活に移行していくための取組を指す。
5 社会的起業とは、企業による収益拡大を目的とした新規事業開発のことを指す概念である。
(第18回 精神保健福祉士国家試験)

[福祉行財政と福祉計画]

【問題12】費税に関する次の記述のうち、正しいものを 1つ選びなさい。

1 消費税は、消費一般に広く公平に課税される直接税である。
2 消費税の納税義務者は消費者である。
3 現行の消費税の収入は、地方交付税の財源の中には含まれていない。
4 現行の消費税率5%は、国税の消費税4%と地方税の消費税1%を合わせた税率である。
5 一般会計に占める税収の割合をみると、所得税より消費税の方が高い。
(第16回 精神保健福祉士国家試験)

[社会保障]

【問題13】次のうち、国民年金の第三号被保険者になる者として、正しいものを1 つ選びなさい。

1 厚生年金の適用事業所で、正社員として1日8時間、週40時間働いている夫(63歳)の被扶養配偶者である妻(61歳)
2 国民年金の第一号被保険者である夫(40歳)の被扶養配偶者である妻(37歳)
3 厚生年金の適用事業所で、正社員として1日8時間、週40時間働いている妻(25歳)の被扶養配偶者であり、大学生である夫(22歳)
4 国民年金の第一号被保険者である夫(40歳)の妻で、正規雇用の公務員として働いている者(35歳)
5 学生納付特例制度の適用を受けている妻(22歳)の夫で学生である者(22歳)
(第18回 精神保健福祉士国家試験)

[障害者に対する支援と障害者自立支援制度]

【問題14】児童福祉法における障害児支援に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 児童発達支援は、肢体不自由のある児童を通わせ、医療などのサービスを提供することをいう。
2 保育所等訪問支援の目的は、障害が疑われる児童の早期発見である。
3 放課後等デイサービスは、障害児の生活能力の向上のために必要な訓練、社会との交流の促進などを図るためのサービスを提供することをいう。
4 福祉型障害児入所施設は、医療の提供が必要な障害児を対象としている。
5 児童発達支援センターには、福祉型児童発達支援センター、医療型児童発達支援センター、発達障害者支援センターの三つがある。
(第17回 精神保健福祉士国家試験)

[低所得者に対する支援と生活保護制度]

【問題15】生活保護における扶助の種類とその内容に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 光熱費・家具什器等の世帯単位の経費は、生活扶助の第1類費に含まれる。
2 被保護者が、入退院、通院をした場合に要した交通費は、生活扶助に含まれる。
3 介護施設に入所している被保護者の基本的な日常生活に要する費用は、介護扶助に含まれる。
4 小・中学校の入学準備金は、生活扶助に含まれる。
5 介護保険の保険料は、介護扶助に含まれる。
(第16回 精神保健福祉士国家試験)

[保健医療サービス]

【問題16】高齢者に対する医療保険制度における給付と負担に関する次の記述のうち、正しいものを1つ選びなさい。

1 65歳以上の加入者の療養病床での食事・室料は、入院時生活療養費として全額支給対象である。
2 70歳以上の加入者の埋葬料・埋葬費は、家族療養費として支給される。
3 70歳から74歳までの加入者の一部負担金は、加入者が現役並み所得者である場合には、療養の給付に要した費用の2割の額である。
4 75歳以上の加入者の一部負担金は、加入者が現役並み所得者である場合には、療養の給付に要した費用の3割の額である。
5 75 歳以上の加入者が選定した特別の病室の室料は、保険外併用療養費として全額支給対象である。
(第18回 精神保健福祉士国家試験)

[権利擁護と成年後見制度]

【問題17】親権者の行為に関する次の記述のうち、正しいものを2つ選びなさい。

1 子どもの監護教育に必要な範囲内で、その子どもを懲戒することができる。
2 未成年の子どもの携帯電話サービス契約を取り消すことはできない。
3 未成年者が結婚すると、居所を指定することはできない。
4 未成年者に代わって、労働契約を締結できる。
5 子どもと利益が相反する法律行為であっても、自ら子どもを代理して行うことができる。
(第17回 精神保健福祉士国家試験)

【解答1】1 【解答2】1 【解答3】1・3 【解答4】2 【解答5】2 【解答6】2・3 【解答7】3・4 【解答8】1 【解答9】5 【解答10】4 【解答11】2 【解答12】4 【解答13】3 【解答14】3 【解答15】4 【解答16】4 【解答17】1・3

精神保健福祉士国家試験に向けた勉強法

精神保健福祉士の国家試験も、他の試験と同様に傾向と対策が存在します。では、精神保健福祉士の国家試験に適した勉強法とはどのようなものなのでしょうか。

[試験での目標点数を定める]

過去の5回の試験を見ると、合格基準点の最高は91点であり、共通科目免除の場合の最高点は44点です。

合格基準点
点数(満点) 共通科目免除の場合
第18回 86点(163点満点中) 52.8% 42点(80点満点中) 52.5%
第17回 91点(163点満点中) 55.8% 44点(80点満点中) 55.0%
第16回 81点(163点満点中) 49.7% 38点(80点満点中) 47.5%
第15回 72点(163点満点中) 44.1% 33点(80点満点中) 41.3%
第14回 73点(156点満点中) 46.8% 35点(80点満点中) 43.8%

このことから、91点以上を獲得すると合格できると言えますが、余裕を持って、95点~110点、共通科目免除の場合は50点~65点の間で目標点数を設定することをおすすめします。

[勉強計画を立てる]

精神保健福祉士国家試験は、毎年1月の下旬または2月上旬の土曜日・日曜日に実施されます。まず、その試験日を目標に勉強の計画を立てましょう。勉強の進捗が良いペースなのか、遅れているのかを判断する材料となります。

[予想問題や模擬問題を解いて自分の実力を知る]

ある程度勉強が進んだら、予想問題集や模擬試験を利用して自分の実力を確かめましょう。
理想としては「勉強する → 模擬試験を受ける → (不得意な箇所を特に)勉強する → 模擬試験を受ける……」の繰り返しが良いでしょう。模擬試験を受ける度に得点数が上がることによって、やる気も上がるからです。もし、得点が下がった場合でも、「自分の勉強方法が間違っていたのかもしれない」と考えるヒントになります。
模擬試験を受けるメリットは、自分の実力を確かめるためだけではなく、「マークシート方式の試験に慣れる」「回答する時間配分が上手くなる」などの効果があります。

精神保健福祉士国家試験の難易度

精神保健福祉士の国家試験のここ数年の平均合格率は約60%です。合格率30%を切る社会福祉士と比べると難易度はそう高くないと言えます。精神保健福祉士の合格率が高い理由としては、社会福祉士と比べて精神分野に出題範囲が狭められていることや、社会福祉士の資格をもつ方が共通科目免除を受けて受験するケースも多いことなどが考えられます。

しかし、試験に際しては精神保健のさまざまな制度やサービスなどの専門知識を求められますので、福祉分野の基礎知識がある方でも一定の勉強の努力は必要と言えます。

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