【もっと知りたい「ヘルスケア」のお仕事Vol.1】UCT鍼灸院・糸賀 裕さんに聞く「柔道整復師・鍼灸師に求められる素質」とは#2
「ヘルスケア業界」の多様な働き方を紹介する「もっと知りたい!ヘルスケアのお仕事」の企画。今回は「柔道整復師」と「鍼灸師」の職業に焦点を当ててお届け。
自ら開業した「UCT鍼灸院」で柔道整復師・鍼灸師として働く糸賀 裕さん。前回は、その道を目指したきっかけや、開業に至った経緯を伺いました。今回は糸賀さんが感じるお仕事の魅力や、未来の柔道整復師・鍼灸師に向けたアドバイスをご紹介します。
お客様と喜びを共有できることが大きなやりがいです
―柔道整復師と鍼灸師は、お客様や患者様の体の状態を見極めて適切な処置をすることが求められますよね。
それらにきちんと応えらえるよう、糸賀さんが日々心がけていることはありますか?
世間話などをしながらお客様の不調の原因や悩みをくみ取ることを心がけています。僕の院には体に不調を感じてお越しになられるお客様がほとんどですが、その不調の原因は、お客様の生活習慣の積み重ねによって引き起こされているものがほとんどなので、まずはその人の普段の生活を知らないことには処置を施すことができないんです。そこで重要になってくるのが日々の様子を伺うための世間話です。何でもない話こそが、実はとっても大切になるんです。
―コミュニケーションをしっかり取ることが適切な処置に繋げる秘訣なんですね。
では、糸賀さんはどんなときにこの仕事に魅力ややりがいを感じますか?
「人」の繋がりを感じられたときですね。僕の施術は「治療完了=院に通うのを卒業」ではなく、「安全確認」に近い感覚で定期的にお客様の体の状態を診ています。なので、長期的に通ってくださるお客様も多く、深い関わり合いができるんです。以前、「膝が曲がらなくて正座ができない」と言って来院された方が、僕の施術を受けて症状が改善し、後日「膝が曲がるようになった!」と携帯にメッセージをくださったときは、その人の人生を後押しすることができたような気がして嬉しかったですね。また、「今まではバス停まで歩いて10分だったのが、ここに通うようになって8分になった」と言ってくださったお客様もいらっしゃいました。些細なことかもしれませんが、その人にとってはきっと大きな進歩だと思うので、そういった喜びを互いに共感できるのは、この仕事の大きな魅力だと思っています。
―お客様と喜びを共感できる、素敵なお仕事ですね。
では、お仕事を通じて糸賀さんご自身の成長にもつながったことはあるのでしょうか?
この仕事を通じて実行力が身についたと思います。実は僕、元々は勉強が嫌いなんです(笑)。以前は本を読んだり、調べものをすることもほとんどなかったのですが、この仕事を始めたことで、お客様により有益な情報を提供できるようになりたいと思うようになり、自分から意欲的に行動するようになりました。
コミュニケーション力を磨くことが未来への第一歩に
―柔道整復師・鍼灸師になるために必要な能力や適性は何だと思われますか?
人を立体的にイメージすることができる想像力や連想力が長けている人が向いていると僕は思います。学校の教科書で見る人間の体は平面ですが、リアルな体は立体ですよね。実は卒業後に「教科書で見ていた体と違う」と、平面と立体とのギャップに苦戦する人も少なくないので、体を3Dでイメージすることができる立体認知能力は大事だなと僕は思います。
あとは判断力も大切ですね。現場に出ると、いくつかの施術を受けたお客様に「どっちの施術がいいですか?」と判断を求められるときもあります。そのときにお客様を不安にさせることなく、「それはこうしましょう」ときちんと答えてあげられる判断力はものすごく大切です。
―では、これから柔道整復師・鍼灸師を目指す人が、今のうちから意識しておくべきことはありますか?
人とのコミュニケーションをきちんと取れる練習をしておくことが、一番ためになると僕は思います。例え技術がどれだけ優れていても、コミュニケーションの部分で相手に不安を抱かせてしまうと、お客様は通い続けてはくれません。僕は学生時代にトレーニングジムでアルバイトをして、1日に何人ものお客様と接することでコミュニケーション力を培いました。もちろん、はじめはものすごく緊張しましたが、今ではそれがいい経験になったと思っています。
あと、仕事のオン・オフの切り替えを意識しておくことも大切ですね。この仕事をしていると、ときにはお客様やスタッフとの人間関係に悩むことも避けては通れません。そのときにきちんと気持ちの切り替えができる「趣味」を持っておくといいと思います。この業界では「人を幸せにしたい」と思って働くことも大切ですが、そのためにまずは自分が幸せでないと務まらない仕事だとも思うので、「自分を幸せにする」ことも実はすごく重要になります。
―大変参考になるアドバイスをありがとうございます!
最後に、糸賀さんの今後の展望を教えてください。
女性には目で見て分かる体の変化も大事だなと感じているので、今後は「美容」のジャンルを強化していきたいと考えています。具体的には女性の施術者によるフェイシャルケアなどを行っていきたいですね。
また、体に不調を感じつつも行動に至ってない人たちも今後は呼び込んでいきたいですね。そのためにも、UCT鍼灸院では1日の予約人数を5人程度にとどめ、空いた時間をブログやSNSなどを発信する事務作業の時間に充てて、体への関心が高まるような健康に関する情報を発信しています。
「UCT鍼灸院」糸賀さん流!一流の柔道整体師&鍼灸師を目指すための3つの極意
1.立体認知能力&判断力を身につける
2.コミュニケーション能力を身につける
3.自分を幸せにすることを考える
取材中、真摯に柔道整体師・鍼灸師の魅力を語ってくださった糸賀さん。多くのお客様から信頼を得られている理由がすごく分かりました! 次回は糸賀さんの手技にフォーカスした内容をお届けします。
取材・文:小沼奈央(レ・キャトル)
撮影:石原麻里絵(fort)
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教えてくれたのは…
UCT鍼灸院代表 糸賀 裕さん
柔道整復師。鍼灸師。都内フィットネスクラブでトレーナーとして10年間指導、スイミングインストラクターとして3年間指導を経験後、「UCT鍼灸院」を開業。双方の資格とトレーナーとして働いてきた経験を生かして独自のスタイルを展開。ダイエット指導だけなく、サッカー・水泳・マラソンなどのさまざまなスポーツ選手をはじめ、歌手、役者などの体のコンディショニングも担当。