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介護・看護・リハビリ 2020-09-22

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本 vol.12】よく物をなくしては「盗まれた!」と騒ぐEさんへの対応は?

人と深くかかわる介護のお仕事。利用者への言葉かけや接し方次第でトラブルを回避できることも多く、さまざまな場面で柔軟に対応できる力やコミュニケーション力は、介護職にとっては身につけておきたいスキルのひとつ。当企画では、よくある現場での困りごとの例とともに、そのスキルをご紹介します。今回は、居住型施設での一例です。

物が見つからず、「このホームには泥棒がいる!」と度々騒ぐEさん。どう対処するのがいい?

今回は、老人ホームに入居しているEさんの話。

日頃から「服を盗まれた」「千円札が一枚足りない」など、周りの入居者を泥棒呼ばわりで騒ぐことがあります。

「ここには泥棒がいるのかしら」と言うEさんに、スタッフが「泥棒なんていませんよ」と声をかけると、「なんでいないって言い切れるの? あなたたちもグルなんじゃないの!?」とさらにヒートアップしてしまいました。

Eさんのように、自分の持ち物が見当たらず、興奮状態にある利用者にはどのように接するのがよいのでしょうか? ポイントを抑えながら、見ていきましょう。

ポイント1:『物盗られ妄想』がさまざまな問題につながることも

自分が置いた場所を忘れてしまい、探しているうちに「盗まれた!」となってしまう『物盗られ妄想』。周りにいる人たちが泥棒呼ばわりされることで、入居者同士はもちろん介護者までも心を深く傷つけられますし、妄想にかられた当人にも、周囲からの信用を失うなどの不利益が生じてしまいます。さらには、これが引き金となって共同生活がぎくしゃくしたり、別のトラブルを引き起こしたりすることも考えられます。

問題の波紋を広げないためにも、まずは、Eさんを落ち着かせることを最優先に考えていきましょう。

ポイント2:『否定』ではなく『不安への共感』を

介護現場でのトラブルは、「利用者の思いや立場」が否定されたことが根本的な原因になっていることがあります。「ここには泥棒がいるのかしら」というEさんの言葉を「泥棒はいませんよ」と否定するよりも、自分のものが見つからない『不安』や『心配』に「大事な〇〇が見つからないなんて心配ですね」と共感してあげる方が、Eさんの心を落ち着かせやすいでしょう。

「利用者の心に寄り添って、ありのままを聞く」ということはとても単純ですが、トラブル回避にとってはもとより、介護のお仕事での重要なポイントです。

ポイント3:『一緒に探す』という共同作業で勘違いに気づかせる

そもそもの『泥棒発言』も、もとをたどれば悪気があったわけではありません。「見つからない」→「盗まれた」→「被害にあった」と熱くなってしまっているだけ。『不安』や『心配』に共感しながら「一緒に探す」という共同作業で、Eさんの気持ちに寄り添い、クールダウンへ導けるといいですね。

探し物を見つけたら、Eさん自身が見つけだせるように「〇〇に落ちていたりしないですかねぇ…」などとさりげなく誘導するのもいいでしょう。

『物盗られ妄想』の利用者を落ち着かせる2つのこと

1.『不安』や『心配』に共感する
2.『一緒に探す』共同作業で寄り添う

『物盗られ妄想』にかられがちな人は、常に不安や寂しさを抱えていることも考えられます。共感し寄り添うことで、心を少しでも落ち着かせることを優先させましょう。また、ことが起きてからではなく普段から、関わりの中で『何か心の隙間などがないか』などを見つめていくことにチャレンジしてみるのも大切なポイントです。

物を置いた場所を覚えていられないことが続くようであれば、医師や家族への相談と並行して、置き場所を決めてラベルを貼るなどの生活の工夫を取り入れてみるのもいいでしょう。

文:細川光恵
参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい?介護の言葉かけタブー集」誠文堂新光社、「介護現場の「困りごと」解決マニュアル」中央法規

監修

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

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