ヘルスケア&介護・看護・リハビリ業界の応援メディア
特集・コラム 2021-06-17

2021年トレンド予測!コロナ禍でも打ち勝つ経営メソッドとは

2020年からの1年、私たちをとりまく環境は新型コロナウィルス感染症(COVID-19)によって、大きく様変わりしてしまいました。対人関係のあり方が変わり、接客メインで仕事をしてきた企業は売上に打撃を受けたところも多くありましたが、ヘルスケア業界は実際コロナ禍でどのような影響をうけてきたのでしょうか。

2021年をうまく勝ち残るためには、2020年の経験や反省をきちんと生かすことが非常に大切です。withコロナといわれる現在の状況とこれからを、2021年のトレンド要素や経営の先読みをふまえ、株式会社船井総合研究所でヘルスケア業界のコンサルタントとして活躍する、竹留将聖(たけどめ・まさと)さんにお話を伺ってきました。

お話を伺ったのは…

株式会社船井総合研究所
ヘルスケア支援部 リーダー
竹留 将聖

船井総研でトレーニングジム業界コンサルティングの責任者を務め、トレーニングジム、整骨院、エステの業種のコンサルティングを行っている。全国で新規事業としてセミパーソナルトレーニングジムの立ち上げを推進し、WEB集客におけるHPの分析やカウンセリングでの契約率向上について定評がある。また、過去に治療院で4年間勤務していた経験もあり、対顧客という現場主義の提案を行う。『経営者の夢を叶える』をモットーにし、日々のコンサルテイングに務める。

コロナ不調と健康ブームでヘルスケア市場は拡大傾向

まず、コロナ禍で世界経済が全体的に大きく打撃をうけていますが、実はヘルスケア業界に限っていうと、景気は追い風になっている企業様もいます。緊急事態宣言下にもかかわらず、売上をキープしている店舗も多くありました。

まず、立地別の売上状況でいうと、都心中心部のオフィス街サラリーマンをターゲットにしている店舗はリモートワークにともない物理的に人の出が少なくなってしまったので業績が落ちています。逆に、郊外店は出社7割減の恩恵をうけ、収益が上がっている傾向にあります。

実際に全国男女2000人以上の新型コロナ感染症の影響を受けての行動変化を6月末と9月末の2段階で追った調査によると、移動手段の利用ではコロナ前と比べて私的手段の利用が増える一方、公共交通機関の利用は減ったという結果がでました。

利用増加層は「自家用車」で17.4%、「自転車」 10.2%、利用減少層は「電車やバス」で 36.2%、 「飛行機」 21.0%、「タクシー」 15.4%を占めています。6月末と9月末での比較でも、withコロナにおいて、公共交通機関の利用は、わずかに回復傾向ではありますが、継続して避けるという方が多くみられました。逆に私的手段の利用は一層増加しています。

整骨院やリラクゼーションサロン自体に行かないという選択ではなく、自宅から徒歩や自転車など、公共交通機関を使わずに通えるという点もポイントになったようです。

出典元:ニッセイ基礎研究所 2020年度特別調査 「第2回 新型コロナによる 暮らしの変化に関する調査」

この状況はしばらく続くと思われるので、駐車場、駐輪場のアナウンスがきちんとできていない店舗については、近隣の駐車場などを確認し、店舗情報の中にそのあたりも盛り込んでおきましょう。

次に、売上好調な店舗についての要因ですが、健康に対する意識の底上げがもっとも大きいようです。

「今、時代の流れとしては健康ブームがきています。そのためヘルスケア業界の業績は上がっている傾向です。
たとえば、新型コロナの影響で神経系のニーズについては増加傾向に。自律神経の乱れや精神的に不安定になるといった方が多く、ボディケアを意識する利用者が増えています。」

もともとの健康ブームに加えて新型コロナや免疫に対する不安が大きくなり、2つの相乗効果で健康へのニーズが高まっているというところでしょう。

売上の明暗を分けたのは新型コロナ対策の可視化

売上キープのふたつめの理由については、新型コロナの対策をどのように取り組んでいるか、そしてそれをどのように伝えたかが大きなカギとなったようです。

「まず大前提として、店舗内の新型コロナ対策をスピード感をもってやりきれたかというところで店舗の信頼度がかなり変わりました。
来店率をあげるためには、新型コロナ対策は欠かせません。地道な作業ですが、感染対策についての情報をHPをはじめとした店舗すべての媒体に載せていくことが重要です。」

たとえばスタッフの出勤時の検温や、消毒についてなど、一見細かい内容でも、どんな風に取り組んでいるかが可視化されることで、来店される方の安心感は変わります。

営業時間の変更なども、リアルタイムで更新がされていればお客様は営業しているかどうかの問い合わせをせずに来店の予約ができます。とくに新規の場合、わざわざ店舗に問い合わせをするよりも、いくつか見比べた中でそのままネット予約に進む方も少なくありません。そのため、ネット上ですべて情報が拾えるというのは非常に大事なポイントになります。

ちょっとしたことですが、これをやっているか否かで来店率に影響がでてしまうので、しっかりと取り組めていない店舗は、意識して新型コロナウィルス対策について掲載していくようにしましょう。

注目はサブスク 安定収入を作るプログラム型治療とは

簡単にできる取り組みから話をしましたが、売上をキープするための施策としては受け身の接客をやめて提案型の営業体制をとるということもひとつの方法です。

とくに整骨院などの健康領域の場合は、来院された人を治療するという職人気質のところがいまだに多くあります。利用者に治療計画を共有することで、来院の頻度や回数のイメージを持たせ、定期的に通う必要のあるものだと認識させることも大切です。

「これからの整骨院に求められるのは、『プログラム型治療』です。パーソナルトレーニングのトレーナーさんがお客様に指導するイメージで、利用者に今日の目的と次回の目的を共有することが重要となってきます。
鍼灸師や柔道整復師は治療の際に、どういう段階を踏んでケアをするかという構想は持たれているはずですが、頭の中で組み立てたことをきちんと利用者に伝える工夫が大切になります。
そして、来店頻度も利用者任せにせず、ホームケアのフォローや次回の来院日指定で、プログラム化しましょう。」

もちろん、どのくらいのペースでの通院になるかは症状などによって計画は変わってきます。

普段あまり顧客の来店頻度や単価を管理されていない場合、趣味に使うお金がおおよそ2万円程度の方が多いので、そこを目安にしましょう。ヘルスケアもあくまで健康への投資であることが多いので、利用者側も無理のない範囲の出費となれば、長く続きやすくなります。

単価が1万円のサロンであれば最低月に2回以上、単価が5,000円であれば週1回を目安に来店頻度を提案していきましょう。

物販とWEB対策の強化が必須の1年になる

客単価の引き上げも売上アップのためには大事な要素です。そのためには施術だけではなく、ホームケアについても言及していかなくてはいけません。

「物販の場合、商品の客単価としては10,000~15,000円ほどになる場合もあります。
たとえば月間300名の来院がある整骨院だった場合、そのうちの4割が商品を購入したとすると、120万円以上の売上になります。
これは整骨院だけの話でなく、スポーツジムでも物販を伸ばし、このコロナ禍で過去最高売上を叩き出したところもあります。
整骨院の場合、治療行為が優先となりますが、治療で症状を治す以外に、症状を『どうやって治していくのか』という利用者の疑問にきちんとハマる解答をだせるかが重要です。
物販もあらためて利用者のためだということが腑に落ちていると、売り色が強調されず、スムーズに購入していただけるようになります。」

職人気質の業界であるため、物販に抵抗があるオーナーさんもよく聞きます。しかし、ものを売るのではなく、物販も治療の一部だと考えるとどうでしょうか?

たとえばコリやゆがみのケアは外からできますが、腸内環境など内臓へのケアは内側からのアプローチが必要になってきます。

内側からのアプローチが加わるとより改善しやすくなるといえば、それは利用者にとっては必要な情報といえるでしょう。とらえ方を変えると、物販の必要性も高まってきます。

リスティング広告で若年層に狙い撃ちするWEBマーケティング


最後に、集客のトレンドについてですが、お客様の集客や囲い込みをするにあたり、もっとも強化すべきはWEB周りです。

先述した、「新型コロナ対策 取り組みの発信」でわかるように、きちんと伝えることがとても重要になります。また、どのようなケアを得意とするのか、どんな利用者にきてほしいのか、できることをしっかりと打ち出していくことが大切です。

たとえば具体的な例でいうと、コロナ禍だと「自律神経ケア」「デスクワーク腰痛ケア」など、ニッチなワードで検索される方も結構います。このあたりの検索に反応できるようリスティング広告を設定すると、ピンポイントで新規顧客の一本釣りができるようになります。

全国の20~40代の男女1,800人を対象に行った、「2021年不調予想ランキング」調査(2020年の心身の不調を振り返り、2021年の不調を予想してもらう)によると、コロナ禍で、身体面・精神面での不調を感じたかという質問に対し、57.2%が「感じた」と答え、頻度としては15.3%が「ほぼ毎日」でした。男性(50.2%)より女性(64.2%)の方が体調を崩しやすい傾向にあり、30代(66.7%)・40代(67.7%)女性の約7割が不調を抱えていることがわかりました。

出典元:ツムラ 「2021年不調予想ランキング」

このアンケートからわかるように、リモートワークが増えたことによる眼精疲労や肩こりはもちろん、体の疲れだけでなく精神的な疲れがでている方も多いようです。今まで以上にメンタルケアの需要が高まっているともいえます。

このような集客のキーワードを拾い上げていくというのも有効な手段でしょう。

また、コロナ禍では、どうしても年齢層が高いほど外出を控える傾向にあり、それは当面続くと思われます。そうすると、高齢者メインでやっていた治療院や健康施設の場合、売上をあげることが今までより難しくなります。

50代以下の方がWEB検索で来店するケースが多いため、若年層の獲得もふまえて、強化していく必要があるでしょう。

WEBだけではなく、SNSの対策も有効です。特に若年層の集客についてはInstagramやTwitterでの発信から誘導できるケースも多くあります。今まであまり若年層に向けて集客を強化してこなかった店舗の場合、リスクヘッジとして若年層も集客できる環境作りをするというのは今後必要になってくるということです。

2021年は、WEBやSNSを基軸とした発信や集客を強化して差別化をはかれるかどうかが、1年後の店舗のあり方に影響するといえます。

出典元:
ニッセイ基礎研究所 2020年度特別調査 「第2回 新型コロナによる 暮らしの変化に関する調査」
ツムラ 「2021年不調予想ランキング」

この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事