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介護・看護・リハビリ 2021-12-09

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.49】「お正月は家に帰りたい」入居者と拒むご家族…どう立ち回る?

盆、暮れ、正月くらい我が家で家族と過ごしたい。介護の現場で働く人なら、こんな思いを抱えている入居者さんと、ホームで過ごして欲しいご家族との間に立たされたこともあるのでは? 年の瀬も迫る今日この頃。今回取り上げるのは、年末年始に起こりがちな板挟みのケーススタディです。

年越しは家で家族と過ごしたい入居者。だけど、ご家族が難色を示している。そんな時、介護職にできることとは?

老人ホームに入居しているNさん。認知症の症状は見られませんが、トイレや入浴の際には手助けが必要です。そんなNさんは「お正月は家に帰りたい」と希望しています。そこで担当スタッフがご家族へその旨を連絡したところ、「うちは無理です」「戻られても困ります」「そっちで面倒見てください」との返答が…。Nさんの気持ちを考えると、お正月は家へ帰らせてあげたいけど、ご家族が拒否されたのであれば諦めてもらうしかないのでしょうか。

お話を伺ったのは…

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

 

入居型施設に限ったことではありませんが、利用者・入居者の家庭の事情はさまざまです。帰宅を拒むご家族もなかにはいるので、<住み慣れたわが家で過ごしたい>と希望される入居者の考えと合わないことも少なからず起こります。こういった場合の対応について、ポイントを押さえながら見ていきましょう。

ポイント1:入居者の肩を持ちすぎない

介護職もひとりの人間。毎日のように施設内でともに過ごす入居者に情が移ってしまうのは当然です。しかし、ご家族と入居者の間に入るときは、入居者の肩ばかりを持たないように気を付けましょう。「帰りたい」という利用者の希望を押し付けられているようにご家族が感じてしまったら、かえって話がまとまらなくなってしまうことも。あくまでも中立な立場で、双方にとってよい方法を見つけるサポートを意識しましょう。

ポイント2:ご家族と話し合う

入居者の帰宅をご家族が拒むケースの場合、まずは「拒む理由」を明らかにすることが大切です。「世話をするのは大変」という漠然としたイメージではなく、「なぜそう思うのか」をできるだけ具体的に聞いていきたいところです。例えばトイレが…、お風呂が…、食事が…など、「できない」と思っていることを丁寧に見つけていきましょう。

ポイント3:ご家族が「拒む理由」に寄り添う

ご家族が「できない」と思っていることが分かったら、それに寄り添い、解決法を提案しましょう。介護職にとっては当たり前で簡単なことでも、ご家族にとっては非日常です。できるだけ負担の少ない方法を提案できるといいですね。夜中のトイレ介助に難色を示しているのであれば、その日だけポータブルトイレやリハビリパンツを使用する、お風呂の心配をしているのであれば、訪問入浴サービスを利用する、食事であれば、事前に宅配食を手配するなど、ご家族と入居者双方が受け入れられる方法を探しましょう。

利用者家族とのコミュニケーションで注意したい2つのこと

1.マイナス感情は相手に伝わる
2.「悩みを話しやすい人」を目指そう

ご家族にとって介護は、配偶者や子どもが一人で介護する「おんぶ型」か、兄妹などがいて複数人で介護する「騎馬戦型」のどちらかでしょう。前者は「自分ができなかったら…」という不安を、後者は「誰かが協力してくれなかったら…」といったチームワークの難しさを抱えています。介護職として利用者に寄り添うということは、こういったさまざまな問題を抱えている家族と向き合い、問題を軽減・解決していくことから始まります。利用者本人のためにも、ご家族との話し合いの際には、上記の2点に注意しておきましょう。

コミュニケーションの9割は言い方や態度、声のトーン、表情などの非言語で占めると言われています。マイナスな感情は知らず知らずのうちに伝わってしまい、相手の気持ちを硬化させてしまうので、ご家族と話す前には自分の感情をチェックしてプラスな心持ちにしておくといいですね。それだけでも“想いを尊重してくれる”「悩みを話しやすい人」に近づけます。ご家族が悩みを話してくれるようになれば、双方にとっていい方法がきっとみつかるはずですよ。

監修・中浜さんの「実際にこんなことありました!」

私自身も入居型の施設で働いている時に今回のようなケースを経験しました。本人は帰りたいが、家族は受け入れが難しいというケースですね。一番の課題はご自宅に介護をする環境がないことと、段差が多くご本人が乗り越えられないというものでした。

福祉用具があれば可能なところだったりするものの、施設に入ってしまうと自宅での用具レンタルは難しいですし、購入するにしても、必要なのは数日だけと考えるとなかなか手が出しにくい金額になってしまいます。

その時は、ご家族とお話しして、「ご家族に面会に来ていただき施設でみんな揃って食事をしてもらう」「別の日に介護タクシーなどを活用して一緒に外食に行く」など、帰宅に代わる別の方法でできることを見つけていきました。

いろんな環境や家族関係があると思うので、こういったケースでは難しいことも多いのが現実かなと思います。しかし、小さくてもいいので、できることを見つけることが大事だと思いますよ。

文:細川光恵
参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい? 介護の言葉かけタブー集」誠文堂新光社

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