【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本 vol.10】他の利用者への暴言が止まらないCさん。施設内の雰囲気も悪く…。解決法は?
介護の現場で起こりがちな困りごとの対処法を、具体例とともにお届けする当企画。介護技術だけでなく、コミュニケーション力や対応力などの幅広い知識が必要とされる介護職の方たちの忘備録的コラムになれれば。今回は、利用者同士のトラブルにもなりかねない、デイサービスでの出来事です。
他の利用者へ罵声を浴びせるCさん。声かけしても止まず、異様な雰囲気に…。
軽度の認知症と診断され、約1年前から週2回のデイケアを利用しているCさん。最近、他の利用者と一緒にテレビを観たり、プログラムに参加したりしているときなどに、暴言を吐くようになりました。「いつも黙っているけど何だ! 出ていけ!」「臭い! こっちに来るな!」などの罵声に、他の利用者は黙り込んでしまい、施設内は異様な雰囲気に…。担当の介護職が「Cさん、どうしましたか? 何か困ったことでもあるんですか? 相談にのりますよ」などの声かけをして、場を和ませようとしますがおさまりません。
根本的な解決に向けて、どう動いていけばいいのか、ポイントを抑えながら見ていきましょう。
ポイント1: この場合は、Cさんの意向を優先させることはできない
利用者の思いや立場を最優先するのが、介護の大原則です。ですがこの場合、Cさんの意向を認めてしまうと、他の利用者の尊厳やQOLが損なわれてしまいます。また、このような行動をとり続けることは、周囲との関係性を悪くしかねず、結果、Cさん自身の尊厳やQOLが損なわれることにもつながります。よって、解決するためには、まずはCさんの行動の原因を把握することが重要です。
ポイント2:認知症の症状の進行が原因である可能性を検討する
Cさんは軽度の認知症の診断を受けています。認知症の症状として、頭がモヤモヤしたり、周囲の人の言動が十分理解できなかったりということがあります。Cさんの言動は、このような症状からくる自信喪失や不快・不満な気持ちの現れで、八つ当たり的行動の可能性も考えられます。自宅での様子や食事、水分の摂取状況なども把握が必要なので、担当の介護職、主治医、家族の三者間でCさんの様子を共有し、対応を話し合いましょう。必要があれば検査をすることになるので、原因を理解しやすくなるでしょう。
ポイント3: Cさんの自信と元気を取り戻す役割を考える
認知症が原因に限らず、他者を攻撃するような「問題行動」の根底には、自信の喪失や不満、不快や不安な気持ちが隠れています。原因を把握するのと並行して、自信を持ってもらったり、不安の解消につながるような役割をCさんへ提案してみるのもいいでしょう。Cさんが得意そうなことであれば、例えば昼食時や誕生会でのあいさつなどでいいんです。役割によっては、他の利用者がCさんを見直すきっかけにもつながります。
「問題行為」を見せる利用者へやってはいけない2つのこと
1.本人の意向だとあきらめて、放任する
2.やめさせようと抑制する
「問題行動」と一言でいっても、Cさんのように病気が関わるケースも多くあります。まずは、家族や主治医、他の専門職と話し合い、原因を見つける努力をしましょう。必ず原因があり、そこには利用者本人の思いがあります。
何よりも、一番困ってるのは当の本人です。決して問題行動という一言で終わらせてはいけません。介護職として大切なのは、利用者が自身で解決できないことを、本人の代わりに、適切な手順に従って解決に向けて支援することです。その気持ちと努力を忘れないようにしたいですね。
文:細川光恵
参考:「介護現場の「困りごと」解決マニュアル」中央法規
監修
中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役
1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。