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特集・コラム 2023-09-21

栄養士と管理栄養士の違いを解説|学習内容や取得方法とあわせて資格のメリットもチェック

食や栄養に関するプロである栄養士と管理栄養士。どちらも、人々の健康を食事や栄養などの面からサポートする仕事です。

病院・給食施設・介護福祉施設など、活躍する場所も同じであることが多いのですが、取得方法・学習内容・仕事内容など明確な違いがあります。

この記事では、栄養士と管理栄養士の違いやそれぞれの資格を取得するメリットを紹介します。

資格取得方法の違い

栄養士と管理栄養士では、資格の取得方法が異なります。まず、栄養士は指定された栄養士養成施設を卒業したあとに、都道府県知事より免許を受けることが可能です。

一方で管理栄養士は、上記の栄養士の資格を取得したのち、国家資格試験を受けることで取得できます。栄養士の上級資格が管理栄養士なので、栄養士より管理栄養士のほうが資格の難易度が高くなっているのが特徴です。

それぞれの取得方法について詳しく見ていきましょう。

栄養士|栄養士養成施設を卒業

栄養士になるには、厚生労働大臣が認めた養成施設で2年間以上学んで、卒業する必要があります。養成施設は全国にあり、短期大学や専門学校などで学ぶことが可能です。調理実習や実験、課外学習などが多いので夜間や通信講座はなく、昼間部のみとなります。

養成施設は、2~4年制です。養成施設によって特色には違いがあり、食品やスポーツ栄養など専門分野の知識と技術を深く学べる学校や、献立作成・調理など実践的な技術の習得に力を入れている学校などがあります。

また、2年次に選択コースがある養成施設も。自分が目指したい分野に合ったコースを選ぶことができます。

実際の学習内容について見てみましょう。

栄養士養成校では栄養・食品衛生・調理などを体系的に学習

栄養士養成校の科目は、栄養や食に関する基礎となる「栄養」、食品の安全性・成分・加工法や衛生面に関する「食品・衛生」、日ごろ口にする食事の科学的分析や校外実習をおこなう「給食管理」、医学的な内容となる「人体」について、体系的に学習します。

具体的な学習内容は、次表のとおりです。

科目 学習内容
栄養 ・栄養素のはたらき

・国内外の食に関する歴史や文化

・生活習慣病予防や運動不足解消

・栄養指導

・食事療法

など

食品衛生 ・食品の安全性や栄養成分

・食品の加工法

・食中毒や農薬

・予防接種

・環境衛生や保険医療制度

・学校保健

など

給食管理 ・献立作成

・栄養管理

・衛生管理

・食材選定

・調理実習

・原価計算

・作業管理

など

人体 ・生化学

・解剖生理学

・運動生理学

管理栄養士|管理栄養士養成施設卒業+国家試験合格など

管理栄養士になるための条件は、栄養士の資格を取得していることと、管理栄養士国家試験に合格することの2つです。国家試験を受験するためには、次表のいずれかのルートを選ぶ必要があります。

ルート 特徴
4年制の管理栄養士養成施設へ入学 卒業と同時に、栄養士の資格と国家試験の受験資格が得られる
2~4年制の養成施設へ入学

(栄養士養成課程のある

専門学校・短大・大学)

・いずれも必要単位数を満たして栄養士の資格を取得する必要がある

・2年制の養成施設の場合、栄養士の資格取得後実務経験3年以上で国家試験の受験資格が得られる

・3年制の養成施設の場合、栄養士の資格取得後実務経験2年以上で国家試験の受験資格が得られる

・4年制の養成施設の場合、栄養士の資格取得後実務経験1年以上で国家試験の受験資格が得られる

・養成施設によっては、2年生の栄養士課程修了後、管理栄養士養成課程への転科を認めているところもある

 

実務経験として認められるのは、厚生労働省で定める施設での栄養指導です。寄宿舎・学校・食品製造・食品加工・保健所などがあります。

引用元
厚生労働省:管理栄養士国家試験

管理栄養士養成校では専門理論や専門分野を実験・臨地実習を通じて学習

管理栄養士養成校では、栄養学の基礎を網羅する「専門基礎科目」、専門分野をより深める「専門科目」などを学習します。専門理論や専門分野の講義を受けたうえで、実験や臨地実習を通じて理解を深めるのが特徴です。

養成施設によっては、ほかにも一般教養として、外国語や社会科学などを学習するところもあります。

具体的な学習内容は次表のとおりです。

科目 学習内容
専門基礎科目

※国家試験科目にかかわる

・栄養生理学

・食品学

・食品衛生

・公衆衛生

・生化学

・解剖生理学

・健康運動理論

・調理学

・調理実習

・病理学

・臨床医学概論

など

専門科目

※国家試験科目に関わる

・基礎栄養学

・応用栄養学

・栄養教育論

・給食経営理論

・臨床栄養学概論

・公衆栄養学

一般教養 ・外国語

・情報処理

・心理学

・人文科学

・体育

など

管理栄養士国家試験内容の概要

管理栄養士国家試験は、年に1回実施されます。出題形式は、5つの選択肢から1つの正答を選び回答するのを原則とした、マークシート方式です。出題数は200問。合格基準は過去2回を見てみると、200点満点中120点以上の正答で合格となっています。

試験科目と出題数の配分は次表のとおりです。

科目 出題数
社会・環境と健康 16問
人体の構造と機能および疾病の成り立ち 26問
食べ物と健康 25問
基礎栄養学 14問
応用栄養学 16問
栄養教育論 13問
臨床栄養学 26問
公衆栄養学 16問
給食経営管理論 18問
応用力試験 30問

令和5年2月に実施された第37回管理栄養士国家試験では、16,351人が受験し、合格者は9,254人。受験者全体の合格率は56.6%になっています。

しかし、学校区分によって合格率には大きな違いがあり、管理栄養士養成課程(新卒)の合格率は87.2%、管理栄養士養成課程(既卒)の合格率は9.9%、栄養士養成課程(新卒)の合格率は16.0%です。

引用元
厚生労働省:管理栄養士国家試験
厚生労働省:令和4年度 管理栄養士国家試験 出題基準(ガイドライン)改定検討会 報 告 書
厚生労働省:1. 第36回管理栄養士国家試験の結果について
厚生労働省:1. 第37回管理栄養士国家試験の結果について

給与の違い

令和4年賃金構造基本統計調査によると栄養士(管理栄養士含む)の平均年収は379.1万円です。基本的には、国家資格である管理栄養士のほうが高くなります。

介護・看護・リハビリの求人サイト「リジョブ」に掲載されている求人では、施設形態や地域によって月給は15~28万円と差が大きくなっていますが、資格手当の違いは明白で、管理栄養士のほうが高く設定されています。

栄養士・管理栄養士の求人は、こちらのサイトから確認できます。気になる方はチェックしてみてください。

リジョブ:介護・看護・リハビリの求人・転職・募集

引用元
e-Stat:賃金構造基本統計調査 / 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種

栄養士の資格手当は5,000~1万5,000円

栄養士の資格手当は給与と同様に、施設形態や地域によって違いがありますが、手当がつく場合の相場は5,000~1万5,000円です。また、募集している施設によっても資格手当がつく場合とそうでない場合があります。

管理栄養士の資格手当は10,000~30,000円

管理栄養士の資格手当は1万~3万円が相場です。栄養士と同様に、手当がつく場合とそうでない場合があります。また、施設形態や地域によってさまざまです。

仕事内容の違い

栄養士と管理栄養士は、食と栄養の面から健康をサポートすることには変わりなく、病院や施設など活躍の場は共通しているのですが、2つの資格で仕事内容が異なります。

管理栄養士のほうが栄養士より資格の難易度が高いため、より高度な知識と技術が求められるのが特徴です。ここでは、2つの資格の仕事内容を解説します。

栄養士|給食の献立作成・調理や栄養指導で活躍

栄養士の仕事は、給食の献立作成・食材の発注や管理・調理・健康な人に対する栄養指導などがあります。年齢やアレルギーなど、食事を口にする人にあわせたメニューを考え、食事へ意欲を持たせるような工夫が求められる仕事です。

安心・安全な食事ができるよう、調理方法にも配慮が不可欠。乳幼児には月齢にあわせた離乳食の提供、介護福祉施設の利用者には身体の状況にあわせた減塩食やミキサー食などの提供をおこないます。

活躍する場所はさまざまですが、ここでは4つを取り上げ、業務内容を紹介します。

活躍する場所 業務内容
医療機関 ・食材の発注や管理

・調理

など

保育園・幼稚園・小学校・

中学校などの給食施設

・献立作成

・食材の発注や管理

・調理

・衛生管理

・食育指導(企画から食事に関する授業まで)

など

介護福祉施設 ・献立作成

・調理

など

行政機関 ・栄養指導

・栄養相談

・衛生管理指導

など

管理栄養士|高度な専門知識と技能で専門的な栄養指導をおこなう

管理栄養士は、栄養士よりもさらに高度な専門知識と技術が求められ、とくに医療機関では患者に対し、食事の管理や専門的な栄養指導を任されます。

栄養士が任される業務に加えて、就業先の労務管理などを任されることも。学校で働く場合は、栄養教諭として配置されます。責任の重い役割を担うことが多くなるのが特徴です。

栄養士と重なる部分もありますが、活躍する場所と業務内容について紹介します。

活躍する場所 業務内容
医療機関 ・医師やほかの医療スタッフと連携し患者の健康をサポート

・献立作成

・栄養指導

保育園・幼稚園・小学校・

中学校などの給食施設

・献立作成

・衛生管理

・食育指導(企画から食事に関する授業まで)

養護老人施設

特別養護老人ホーム

障がい者支援施設

・献立作成

・栄養指導

・食事のサポート

など

行政機関 ・地域住民の健康に関する施策の企画

・栄養指導

・栄養相談

・衛生管理指導

など

自分に向くのはどちら? 2つの資格のメリットと注意点をチェック

栄養士と管理栄養士の仕事内容や給与の違いをご紹介してきましたが、自身に向いているのはどちらか気になっているのではないのでしょうか。管理栄養士は高度な知識が求められ活躍の場が広い一方で、栄養士と比べて資格の取得がむずかしいという注意点があるようです。

ここでは、資格の取得方法や活躍の場の違いから2つの資格のメリットや注意点を解説します。

栄養士のメリットと注意点

養成施設を卒業したのちに資格を取得できる栄養士。人々の健康や栄養をサポートするために欠かせない職業です。管理栄養士と同様に、施設や病院、一般企業など、さまざまな場所で活躍できます。

しかし、管理栄養士と比べると給与が少ないことや業務内容に制限があるなどの注意点もあるようです。ここでは、栄養士のメリットと注意点をご紹介します。

栄養士のメリット|国家試験に合格しなくてもなれる

管理栄養士になるには国家試験に合格する必要がありますが、栄養士は養成学校を卒業すれば資格を取得できます。つまり、国家試験に合格する必要がないことがメリットです。

また、養成学校の在籍年数と実務経験年数の合計が5年以上になれば、管理栄養士の国家試験を受けられます。たとえば2年制の養成学校を卒業したのであれば、卒業後に3年間実務経験を積めば、管理栄養士を目指せるということです。

栄養士の注意点|活躍できる場が少なめ

管理栄養士と比べると、活躍できる場が少なくなります。管理栄養士は病院などで、健康な人だけでなく病気の方や食事がとりにくい高齢者などにも栄養指導ができますが、栄養士は基本的に健康な人への栄養指導がメインです。

管理栄養士と栄養士が混在する職場の場合には、管理栄養士が全体のマネジメント、栄養士は調理や献立を考える役割といったように、分担される傾向にあります。

管理栄養士のメリットと注意点

栄養士よりも、より専門的な知識が求められる管理栄養士。施設や病院だけでなく、美容関係やスポーツ栄養など、さまざまな場所で活躍できる職種です。そのぶん、資格の難易度が栄養士よりも高く設定されています。

ここでは、管理栄養士になるメリットと注意点をご紹介します。

管理栄養士のメリット|希少性が高く活躍の場が広い

国家試験に合格する必要があり、専門性の高い知識があるので希少性が高く、栄養士に比べ活躍の場が広いです。病院や施設、工場だけでなく、トップアスリートやモデル、芸能人などの専属管理栄養士として活躍する人も。

また、医療現場であれば、病気の人や食事がむずかしい方への栄養指導をおこなえます。食や健康への意識が高まっているなかで、さらに需要が増してくる資格といえるでしょう。

管理栄養士の注意点|資格取得までに時間とお金が掛かる

幅広い栄養や食の知識が必要となる管理栄養士ですが、栄養士と比べて資格取得に時間とお金がかかることが注意点です。

栄養士は最短2年で資格を取得できるのに対して、管理栄養士は最短4年かかってしまいます。さらに国家試験に合格する必要があるので、栄養士よりもハードルが高くなってしまうでしょう。

どちらも人々にとって大切な役割を持つ仕事|自分に合った資格の取得を目指そう

栄養士と管理栄養士は、どちらも食や栄養の面から、人々の健康をサポートするという大切な役割を持つ仕事です。栄養士は養成施設を卒業することで資格が取得でき、管理栄養士は栄養士の資格をとったうえで、国家試験に合格することで取得することができます。

健康な人への栄養指導・献立作成などは栄養士でもおこなうことが可能ですが、病気や食事に配慮が必要な人への栄養指導・献立作成は管理栄養士しかおこなうことができません。

両方のメリットや注意点、業務範囲などをしっかりおさえ、自分に合った資格の取得を目指しましょう。

引用元
厚生労働省:管理栄養士国家試験
厚生労働省:令和4年度 管理栄養士国家試験 出題基準(ガイドライン)改定検討会 報 告 書
厚生労働省:1. 第36回管理栄養士国家試験の結果について
厚生労働省:1. 第37回管理栄養士国家試験の結果について
e-Stat:賃金構造基本統計調査 / 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種

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