看取り介護とは?大切なことや介護する場所・流れを紹介
介護職として働いていると、利用者の人生の最終段階に寄り添う「看取り介護」に携わる場面も少なくありません。とはいえ、実際にどのように利用者をケアしていけばよいか、戸惑いを感じる場合も多いのではないでしょうか。
この記事では、看取り介護の基本的な考え方から、ケアを行ううえで大切にしたいポイントまでわかりやすく解説します。高齢化社会のなかで、今後さらにニーズが高まる分野だからこそ知識を深め、現場での対応に備えておきましょう。
看取り介護とは?

看取り介護とは、末期の病気や老化によって最期を迎える間際に立ち会い、利用者が満足して最期を迎えるお手伝いをすることです。身体的・精神的な苦痛を可能な限り和らげ、利用者本人が望む形で最期を迎えられるように介護サービスを提供します。
以前は死期をいかに伸ばせるかが重視されて、本人の意思を尊重した介護サービスを提供する看取り介護の考え方は、あまり主流ではありませんでした。
しかし、平均寿命が長くなっている近年においては、自分の寿命を伸ばすことから、満足した最期を迎えることを重要視する風潮が広がりつつあるのです。
ターミナルケアとの違い
看取り介護とよく混同されがちな言葉に「ターミナルケア」という医療ケアがあります。
病気の末期患者など終末期に対して行われる、点滴や投薬などの看護・医療ケアのことをターミナルケアといいます。
終末が近づいている方に対する介護・介助行為は「看取り介護」、看護・医療ケアのことを「ターミナルケア」と区別して呼ぶこともあると覚えておきましょう。
終末期の定義とは
日本老年医学会の発表によれば、看取り介護をはじめる「終末期」は、以下のように定義されています。
「病状が不可逆的かつ進行性で、その時代に可能な限りの治療によっても病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり、近い将来の死が不可避となった状態」
引用元
日本老年医学会:「高齢者の終末期の医療およびケア」に関する日本老年医学会の「立場表明」
病気が末期ステージになり、治療による回復の見込みが立たなくなった場合が「終末期」と定義されています。明確な終末期の定義がないのは、高齢者は複数の病気の合併症や心理的・社会的な影響で、終末期は前後する可能性が高いと考えられているからです。
看取り介護で大切な6つのこと

看取り介護で大切なことは、以下の6つのポイントにまとめられます。
・栄養と水分補給をする
・清潔な環境を維持する
・精神的に安心できる状況を作る
・痛みや不快感を緩和させる
・利用者の家族に対応する
・危篤時や死後に連絡をとる
この章では、これらの大切なポイントについて確認しましょう。
1. 栄養と水分補給をする
看取り介護においては、利用者に対して積極的に水分補給や食事をさせようとしてしまいがちですが、あくまでも本人の意思を尊重することが大切です。
病気の進行具合やその日の体調に合わせて、適切な量の水分や形態の食事を与え、利用者にとってベストな介護を提供するように心がけましょう。
2. 清潔な環境を維持する
病気が進行していたり、自力での歩行が難しい段階になってしまうと、自分で身体をきれいにすることも難しいでしょう。しかし、利用者の身体を清潔に保つことは、衛生環境の悪化による症状の悪化を防ぎ、利用者の人間としての尊厳を守るために非常に重要です。
可能な限り利用者を入浴させ、それが難しいようであれば、足浴やタオルなどで身体を拭いてあげるなどして、つねに清潔な環境を保つ努力をしましょう。
3. 精神的に安心できる状況を作る
看取り介護では、利用者が精神的に安心して過ごせる環境を整えることが重要です。死期が近づくと、多くの方が不安や孤独を抱えやすくなります。心の安定を支えるために、以下のような精神的ケアが有効です。
・継続的な対話や声かけ
・心の落ち着く音楽を聴かせる
・本の読み聞かせ
・適度なスキンシップ
こうした関わりによって「ここは安心できる場所だ」と感じてもらうことができ、利用者が穏やかに最期を迎える支えになれます。
4. 痛みや不快感を緩和させる
看取り介護では、痛みや不快感を和らげる身体的ケアが欠かせません。医療行為は行えないものの、以下のようなケアによって快適さを向上させられます。
・室温・照明の調節
・体位交換
・足先の保温
・皮膚観察
また、痛みを言葉で訴えられない方もいるため、「表情のこわばり」や「うめき声」といった非言語的サインに敏感になることも重要です。
5. 利用者の家族に対応する
利用者への介護・介助の内容や変化を家族に逐一報告し、看取り介護に必要なことはなにかを一緒に考え、家族からの希望があれば介護サービスに順次対応していきます。
利用者にとって幸せな臨終を迎えるためには、利用者の家族の意見を取り入れ、一緒に看取り介護の内容について検討して、実行していくことが大切です。
また、担当者とコミュニケーションをとって、自分たちのアドバイスが看取り介護に活用されていたら、家族もうれしいと思う可能性が高いでしょう。
6. 危篤時や死後に連絡をとる
看取り介護を行っている利用者の危篤時や死後には迅速に連絡をとり、家族に状況について的確に伝えなければなりません。危篤の際に、知らせが家族に伝わらずに利用者が死を迎えてしまったら、死に目に立ち会えなかったことを後悔する可能性が高いです。
危篤時には迅速で的確な連絡を心がけ、死後にも素早く連絡するようにしましょう。
看取り介護はどこで行うの?

看取り介護は、医療機関・介護施設・自宅などさまざまな場所で行われています。以前は医療機関での看取りが一般的でしたが、高齢化にともない病棟のベッド数が減少するなか、死亡場所の傾向も変化しています。
以下は、厚生労働省が発表した死亡場所の割合を示すデータです。
| 年度 | 医療機関 | 介護施設 | 自宅 |
| 2023年 | 65.7% | 16.6% | 17.0% |
| 2005年 | 82.4% | 2.8% | 12.2% |
このように、介護施設や自宅で亡くなる割合が増加しており、介護職員が看取りケアに携わる機会が増えています。ここではそれぞれの場所で介護職員がどのように看取り介護に関わっているかについて解説します。
1. 介護施設|特別養護老人ホームなど
看取り介護は、特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・介護老人保健施設などの介護施設でも広く実施されており、介護職員が最期まで寄り添うケアを担っています。
医療機関と比べると看護師の常駐人数が限られるため、利用者のわずかな変化に気づく観察力が求められる環境です。
一方、近年は看取り介護加算の導入や研修体制の整備が進み、介護職員の待遇も改善傾向にあります。体力的・精神的な負担が大きい現場ではありますが、充実した待遇を受けながら、終末期のケアを実践的に学びやすい環境です。
2. 医療機関
療養型病院では、医師や看護師と連携しながら、介護職員も看取りケアに関わることが可能です。多くの場合、看護助手として勤務し、オムツ交換や入浴介助などを通じて、医療従事者の業務を補助する形で患者を支えます。
患者の多くは慢性期や看取り期にある方ですが、病状が安定すれば退院するケースもあります。医療処置は看護師が担当し、介護職員は生活支援を担います。業務は比較的ルーティン化されており、残業も少なめです。ただし夜勤があるため、長く働くには生活リズムの調整力が求められます。
3. 自宅
自宅は、利用者本人にとって最も安心できる場所として選ばれることが多く、訪問介護のニーズも増加しています。訪問介護職員は自宅を定期的に訪れ、利用者の生活を支えたり、家族の精神面をサポートしたりします。
訪問中に死が迫っている場面や、実際に亡くなる瞬間に立ち会う可能性もあるため、どのような行動をとるべきかを、事前に介護支援専門員(ケアマネジャー)や医師・訪問看護師など関係各所と確認しておかねばなりません。円滑なコミュニケーションスキルが求められる環境です。
【4ステップ】看取り介護の流れ

看取り介護は、以下の4つのステップごとに介護の仕方が異なります。
・入所期・適応期
・安定期
・不安定期
・終末期
ステップごとの介護内容について知って、勤務中のイメージを思い描いてみましょう。
ステップ1:入所期・適応期
利用者が施設に入所したり、看取り介護に移行するために部屋を変更したりする時期。利用者にとっては、環境の変化と周囲の対応の変化によって、不安に駆られやすい状況です。
担当するスタッフが利用者とその家族に状況を説明して、その後の介護サービスのあり方や利用者の希望について聞いていくなかで、不安を取り除いてあげる必要があります。
ステップ2:安定期
利用者が施設での生活に適応して、心に余裕を感じはじめる時期です。利用者が希望する最期を迎えるための準備や、介護サービスに対する希望のすり合わせを行います。
ステップ3:不安定期
病状のステージが進行すると、心身に異変が見られるようになることも。体重の減少や顔つきの変化があったり、精神的に不安定な時期が増えたりなど、利用者が自分自身の変化に動揺しがちな時期なので、スタッフがそばに寄り添ってフォローする必要があります。
ステップ4:終末期
衰弱が進み、心身が弱りきった状態が終末期です。この段階になると回復が完全に見込めないので、どのような最期を迎えたいのかを利用者・家族と一緒に確認しながら、利用者が満足して最期を迎えられるように、最大限のフォローをしていきましょう。
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看取り介護の現場では、利用者と真摯に向き合い、穏やかな最期を支えるためのきめ細やかなケアが求められます。介護職に従事するうえで学べる点は多く、成長につながる環境です。
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看取り介護で大切なことをおさえて、後悔のないサービスを提供していこう

看取り介護は、最期までその人らしい時間を支える重要な仕事です。身体的・精神的ケアを通じて、本人と家族が納得できる別れを迎えられるようにサポートする役割を担います。
高齢化の進展にともない、今後も多くの現場で看取り介護に関する知識や実践力が求められるでしょう。そのため看取り介護に力を入れている職場で経験を積むことは、将来のキャリアプランを考えるうえでも有意義です。
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