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特集・コラム 2023-01-06

看取り介護で大切な5つのこと|業務内容や介護の流れについても解説

介護の仕事に従事していると、利用者の死の淵と向き合い満足の行く最期をサポートする「看取り看護」について聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

しかし、具体的な仕事内容や仕事の流れについて、くわしく知らない方もいるでしょう。

この記事では、看取り介護の仕事内容や大切な5つのこと、看取り介護の実際の流れについて順を追って解説します。

看取り介護の具体的な業務内容や流れ、大切なポイントを知って業務に備えましょう。

看取り介護とは?

看取り介護とは、末期の病気や老化によって最期を迎える間際に立ち会い、患者が満足して最期を迎えるお手伝いをすることです。身体的・精神的な苦痛を可能な限り和らげ、利用者本人が望む形で最期を迎えられるように介護サービスを提供します。

以前は死期をいかに伸ばせるかが重視されて、本人の意思を尊重した介護サービスを提供する看取り介護の考え方は、あまり主流ではありませんでした。

しかし、平均寿命が長くなっている近年においては、自分の寿命を伸ばすことから、満足した最期を迎えることを重要視する風潮が広がりつつあるのです。

ターミナルケアとの違い

看取り介護とよく混同されがちな言葉に「ターミナルケア」という医療ケアがあります。

病気の末期患者などの死が確定的な患者に対して行われる、点滴や投薬などの看護・医療ケアのことをターミナルケアといいます。

終末が近づいている方に対する介護・介助行為は「看取り介護」、看護・医療ケアのことを「ターミナルケア」と区別して呼ぶこともあると覚えておきましょう。

終末期の定義とは

日本老年医学会の発表によれば、看取り介護をはじめる「終末期」は、以下のように定義されています。

“病状が不可逆的かつ進行性で、その時代に可能な限りの治療によっても病状の好転や進行の阻止が期待できなくなり、近い将来の死が不可避となった状態”

引用元:日本老年医学会:「高齢者の終末期の医療およびケア」に関する日本老年医学会の「立場表明」

病気が末期ステージになり、治療による回復の見込みが立たなくなった場合が「終末期」と定義されています。明確な終末期の定義がないのは、高齢者は複数の病気の合併症や心理的・社会的な影響で、終末期は前後する可能性が高いと考えられているからです。

看取り介護で大切な5つのこと

看取り介護で大切なことは、以下の5つのポイントにまとめられます。

・栄養と水分補給をする
・清潔な環境を維持する
・苦痛を緩和する
・患者の家族に対応する
・危篤時や死後に連絡をとる

この章では、これらの大切なポイントについて確認しましょう。

1.栄養と水分補給をする

看取り介護においては、患者に対して積極的に水分補給や食事をさせようとしてしまいがちですが、あくまでも本人の意思を尊重することが大切です。

病気の進行具合やその日の体調に合わせて、適切な量の水分や形態の食事を与え、患者にとってベストな介護を提供するように心がけましょう。

2.清潔な環境を維持する

病気が進行していたり、自力での歩行が難しい段階になってしまうと、自分で身体をきれいにすることも難しいでしょう。しかし、患者の身体を清潔に保つことは、衛生環境の悪化による症状の悪化を防ぎ、利用者の人間としての尊厳を守るために非常に重要です。

可能な限り患者を入浴させ、それが難しいようであれば、足浴やタオルなどで身体を拭いてあげるなどして、常に清潔な環境を保つ努力をしましょう。

3.苦痛を緩和する

終末期の患者は、病気の侵食による痛みや精神的な苦痛を抱えている場合が多いです。患者1人ひとりの状況に寄り添って、身体的・精神的な苦痛をやわらげてあげられるようにしっかりと話を聞いて、最適な処置は何かを考えていきましょう。

4.患者の家族に対応する

患者への介護・介助の内容や変化を家族に逐一報告し、看取り介護に必要なことは何かを一緒に考え、家族からの希望があれば介護サービスに順次対応していきます。

患者にとって幸せな臨終を迎えるためには、患者の家族の意見を取り入れ、一緒に看取り介護の内容について検討して、実行していくことが大切です。

また、担当者とコミュニケーションをとって、自分たちのアドバイスが看取り介護に活用されていたら、家族も嬉しいと思う可能性が高いでしょう。

5.危篤時や死後に連絡をとる

看取り介護を行っている患者の危篤時や死後には迅速に連絡をとり、家族に状況について的確に伝えなければなりません。危篤の際に、知らせが家族に伝わらずに患者が死を迎えてしまったら、死に目に立ち会えなかったことを後悔する可能性が高いです。

危篤時には迅速で的確な連絡を心がけ、死後にも素早く連絡するようにしましょう。

【4ステップ】看取り介護の流れ

看取り介護は、以下の4つのステップごとに介護の仕方が異なります。

・入所機・適応機
・安定期
・不安定期
・終末期

ステップごとの介護内容について知って、勤務中のイメージを思い描いてみましょう。

ステップ1:入所期・適応期

患者が施設に入所したり、看取り介護に移行するために病室を変更したりする時期。患者にとっては、環境の変化と周囲の対応の変化によって、不安に駆られやすい状況です。

担当するスタッフが患者とその家族に状況を説明して、その後の介護サービスのあり方や患者の希望について聞いていく中で、不安を取り除いてあげる必要があります。

ステップ2:安定期

患者が病室での生活に適応して、心に余裕を感じはじめる時期です。患者が希望する最期を迎えるための準備や、介護サービスに対する希望のすり合わせを行います。

ステップ3:不安定期

病状のステージが進行すると、心身に異変が見られるようになることも。体重の減少や顔つきの変化があったり、精神的に不安定な時期が増えたりなど、患者が自分自身の変化に動揺しがちな時期なので、スタッフがそばに寄り添ってフォローする必要があります。

ステップ4:終末期

衰弱が進み、心身が弱りきった状態が終末期です。この段階になると回復が完全に見込めないので、どのような最期を迎えたいのかを患者・家族と一緒に確認しながら、患者が満足して最期を迎えられるように、最大限のフォローをしていきましょう。

看取り介護で大切なことをおさえて、後悔のなくサービスを提供していこう

この記事では、看取り介護の概要や介護で大切な5つのポイント、ステップ別のあるべき介護のあり方について解説しました。

看取り介護は、病気などで回復の見込みがない患者に対して、希望する最期を迎えられるように介護・介助サービスを行っていく業務です。

清潔な環境を維持することは大前提で、病気の進行による患者の身体的・精神的な苦痛を和らげ、あくまでも患者と家族が望む形での介護・介助をしていくことが重要です。

看取り介護で大切なポイントや段階ごとの介護の内容について知って、看取り介護を担当した際に後悔しないように準備しておきましょう。

引用元
日本老年医学会:「高齢者の終末期の医療およびケア」に関する日本老年医学会の「立場表明」

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