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特集・コラム 2022-12-08

看取り看護とは?看取りの定義や介護施設でおこなうケアの解説

看取り介護とは、これから死を迎える人に対して限られた時間を自分らしく過ごせるよう、家族を含めて心身面や社会的なサポートをおこなう介護のことです。

今回は超高齢社会が到来し、ますますニーズが高まっている看取り介護について、言葉の定義や介護施設でおこなうケアについて解説します。

看取りとは?

「看取り」という言葉の意味は、辞書には「病人のそばにいて、いろいろと世話をすること。看病。また、その人の臨終に付き添うこと。」と記されています。つまり、死期が近い人が自分らしい最期を迎えられるよう、身体的・精神的なケアを施すということです。

また、介護施設や自宅など、本人が過ごす場所によって看取る場所も変わります。死の瞬間に立ち会うことだけというよりも、本人が亡くなるまでの時間を見守り、ともに過ごすことを意味することが多いです。

介護における「看取り」とは?

施設など介護における「看取り」とは、医療現場でおこなわれる延命処置や治療とは一線を画し、利用者や家族の意向、希望に沿ってケアを提供することです。

無理な治療はおこなわず、身体的・精神的な自然な変化を受け入れられるよう支援します。人としての尊厳を重んじ、利用者や家族が望む最期の形が叶うよう、コミュニケーションを図りながら不足なところをサポーするのが特徴です。たとえば、日常生活を自分らしく送れるよう身体的なサポート、死を受容できるよう精神的なサポート、利用者の家族に対するサポートなどがあります。

看取りでは、利用者や家族は少なからず、見えない恐怖や不安を抱いていることが多いです。その思いに寄り添い、限られた時間を本人らしく過ごせるような環境整備、他職種との連携も看取りでのケアに含まれます。

ターミナルケア(終末医療)との違い

ターミナルケアは別名終末医療といい、死に向かう限られた時間を穏やかに過ごせるようにする点は、看取り介護と共通しているものです。しかし、病院で実施され、日常生活支援の中に点滴や酸素投与などの医療行為が含まれる点が大きく異なります。

また、がんによる疼痛を緩和するために、薬を使って治療する行為も含まれるのが特徴。積極的な治療や延命処置はせず、日常生活を送るために必要最低限の医療行為をおこないます。

看取り介護でおこなわれるおもな3つの介護

看取り介護では、おもにどんな介護がおこなわれるのでしょうか。ここでは、看取り介護で実施される3つの介護について解説します。

身体的介護

看取り介護では、ほかの介護と同じように身体的介護をおこないます。利用者やその家族の意思・意向にもとづいて快適に日常生活を送れるよう、食事・排せつ・入浴・移動などの動作をサポートするのが特徴です。利用者の気分や体調に合わせて、入浴が難しい場合には相談しながら清拭に変更するなどの臨機応変な対応も求められるでしょう。

このほか、寝たきりの状態が長く続くことによる褥瘡などの皮膚トラブルの発生の予防のため、皮膚状態の観察、定期的な体位変換なども含まれます。さらに利用者や家族が健やかに快適に過ごせるよう、清掃や採光などの環境整備も重要です。

精神的介護

死に向かい、限られた時間を過ごす利用者の中には、死に対する恐怖や不安で精神的に不安定になる、不眠になる人もいるはずです。また、体の痛みを我慢することによる辛さを感じている場合もあります。

そんなときにおこなうのが精神的介護で、利用者や家族とコミュニケーションを図りながら、話をよく傾聴する場を持つことが大切です。会話だけでなく、利用者の身体に触れるスキンシップで生活を充実させ、生命や生活の質を保つことも忘れてはいけません。そして、利用者のプライバシーへ配慮し、人としての尊厳が守られるような気配りやケアも求められます。

ご家族のサポート

看取り介護では、利用者だけでなく、家族へのサポートも重要です。看取る側である家族は、死期が近づいている現実を受け入れられず、精神的に不安定になることも少なくありません。そのため、家族の話をよく聞きながら、どのような支援を優先すべきか見極めることも大切です。傾聴することで、家族の不安な思いが軽減されることもあるでしょう。

また、不安や恐怖だけでなく、看取り介護が続くことによる医療費への心配を抱えているケースもあります。その場合はソーシャルワーカーを紹介し、医療費を軽減できる策についてアドバイスを受けられるような場を提供することも必要です。ほかにも、利用者と死別したあとの精神的フォローやケアもおこないます。

看取り介護の流れ

施設における看取り介護では、利用者が入所後、看取り後まで各ステージによって、本人と家族に対する関り方が異なります。

このことから、利用者や家族の心身の状態に合わせて、よくコミュニケーションを図りながら、提供するケアを随時見直すことが重要です。ここでは、看取り介護の流れをご紹介します。

入所・適応期

入所から約1カ月頃までを「適応期」といいます。この時期は、施設での暮らしに利用者が慣れることが重要です。利用者や家族の希望や看取りに対する意向を把握し、施設側の医療体制や急変時の対応、看取りの際の流れなどをきちんと説明して、理解を得ます。

また、利用者の中は環境の変化で不眠になる、精神状態が不安定になることもあるようです。施設での暮らしに徐々に慣れていけるよう、身体的・精神的な関りが重要となります。

安定期

入所後数カ月が経ち、利用者が施設での生活にも慣れた時期が「安定期」です。この時期に改めて、施設での暮らしで思うところや希望、不安や疑問点について再度確認する場を持ちます。変化した内容については施設側で共有し、ケアプランに反映させることが大切です。

利用者や家族の認識や考え、思いについては入所時だけでなく、定期的に確認する場を持ち、必要であればケアプランに反映させ、随時更新していくことで利用者や家族本位のケアの提供に役立てられます。

不安定・低下・回復期

「不安定・低下・回復期」と呼ばれる時期は、心身の衰弱からの低下や回復を通過し、体調が不安定になる時期です。食欲が低下する、体重が減る、活気が減るなど、さまざまな症状が出現します。衰弱傾向が出現したときに施設側としてどのような医療処置が可能なのか、利用者や家族と前もって確認しお互いの考えを共有しておくことが求められるでしょう。

また、衰弱後に心身の機能が回復するとは限らず、そのまま看取りの状態へ移行する可能性も考慮し、万が一の際に備えて対応をよく話し合うことも重要です。

終末期・看取り

「終末期・看取り」と呼ばれる時期は、衰弱後に回復傾向とならず、看取りを待つ状態です。急なことで気持ちの整理がつかず、混乱し心身の状態が不安定になるケースも見受けられます。そのため、利用者や家族が医師の説明をきちんと理解できるようなサポートが求められるでしょう。

また、最期に利用者がやりたいことを叶えられるよう、家族と協力しながらの支援も重要です。最期の瞬間に家族や友人が立ち会えるよう、環境を整えることも施設スタッフの重要な役割といえます。利用者が自分らしい最期を迎えられるようサポートしましょう。

看取り後

看取り後は、家族の心身のケアをおこなわなければなりません。また、家族と相談をしながら、希望があれば葬儀社の手配、手続きなどをサポートします。さらに看取り後、家族だけの時間を持てるように配慮し、エンゼルケアの際は希望があれば、家族が清拭や化粧できるようにやり方を説明し、サポートしなければなりません。

このほか、看取りに携わったスタッフに対し、精神的な面への気配りやフォローも重要です。人の死に直面し、さまざまな感情の段階を通過するため、家族が現実を受け止めて、日常生活を送れるような心理的な支援が求められます。

「看取り介護」は介護の集大成

超高齢社会が到来し、看取りの場面は今後ますます増えていくことが考えられます。看取り介護に携わった際に、利用者や家族主体のケアを提供できるようなケアやサポートが求められるでしょう。

死に直面したときの心理的段階への理解、利用者や家族とのコミュニケーションによって、何を求めて希望しているのかを把握し、よりよいケアにつなげていくことが重要です。

利用者や家族の立場に立って考え、身近でケアを提供できることを誇りに思いながら、いつも心に寄り添い、ていねいなケアを提供することが求められます。

引用元
日本緩和医療学会:看取りのケア

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