柔道整復師の「目」と「耳」を活かし、利用者さんの小さな異変も見逃さない【介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画 機能訓練指導員／柔道整復師 柴田咲月さん】#2
業界のさまざまな職業にフォーカスして、その道で働くプロにお仕事の魅力や経験談を語っていただく連載「介護・看護・リハビリ業界のお仕事企画」。
今回は柔道整復師であり、現在は機能訓練指導員として「あづま家デイサービス亀戸」と「あづま家デイサービス亀戸中央」の2店舗で働く、柴田咲月さんにお話しを伺います。
前編では柴田さんが柔道整復師となった経緯や、介護業界に入ったきっかけについて伺いました。
後編では柴田さんが機能訓練指導員として感じるやりがいや、心がけてきたことについて伺います。柔道整復師としての経験が、利用者さんのリスク管理に大きく役立っているといいます。
お話しを伺ったのは…
機能訓練指導員／柔道整復師
柴田咲月さん
高校時代、身体の治療に興味を持ち、柔道整復師の道に進むことを決意。専門学校を経て、大手接骨院で3年ほど勤務。その後、フリーランスの柔道整復師として各地で働く。そのうちのひとつの業務委託契約先だった「あづま家デイサービス」で機能訓練指導員として2年ほど働いたのち、2025年1月正社員として採用される。現在は事務作業を中心としながら、機能訓練指導員としても現場に立つ。
「通うのが楽しい」がモチベーションに。歩けるようになった利用者さん
「あづま家デイサービス」では楽しく運動をすることを大切にしている
――「あづま家デイサービス」で機能訓練指導員として働くなかで、柔道整復師の資格が活きたと感じたことはありますか。
一番大きいのは利用者さんの身体の変化にすぐに気づくことができて、リスク管理ができることだと思います。実は高齢者の方は、自分では気づかないうちに骨折してしまっているようなケースが多いんです。「この間、転んじゃって」というような会話が聞こえたら、私が飛んでいって身体の状態の確認をしています。
身体の知識がないと「痛みがあるのであれば、今日は無理をしないようにしましょう」とお伝えする程度になり、身体の状態がさらに悪化してしまうということもあると思うのですが、柔道整復師の場合はどこでどのように転んだなど深掘りして聞きながら診察ができるので、病院の受診を勧めることも可能です。
また身体の知識があることや、私が利用者さんとしっかりお話しをするタイプだからか、利用者さんから身体の状態や病気についての相談を受けることも多いです。「柴田さんだから相談できたんだよ」と言ってもらえることや、私を選んで相談してくれる方がいることは大きなやりがいにもつながっています。接骨院に勤務していたときに感じていた、お客様と丁寧に向き合いたいという思いが、ここではしっかりと実現できている気がします。
――「あづま家デイサービス」に通うことで、利用者さんに変化が起きたケースもありますか。
はい、変化はたくさんの方に起こっています。とくに印象的なのが、初めてこのデイサービスに来たときには手を引かないと歩くことができず、手を放してしまうとバランスを崩して倒れそうになっていたある利用者さんが、しっかり歩けるようになったことです。
その方は「スタッフの方が明るいし、親身になって話しを聞いてくれる」とここを気に入って熱心に通ってくださるようになって。どんどん前向きになり、「ひとりで歩いてみたい」と挑戦するようになった結果、今ではひとりでスタスタと歩けるようになったんです。
「あづま家デイサービス」に通ってくださる方に変化が起こりやすい理由は、みなさんがこの場所をとても楽しみにしてくださっているからではないかと思っています。「ここに長く通えるようになるためにも、がんばらなくちゃ」と身体機能を向上させようと努力している方がたくさんいらっしゃいます。
行き着いたのは1人で仕事をするフリーランスではなく、相談できる正社員
柴田さんは2025年から「あづま家デイサービス」で正社員として働くことになった
――フリーランスとして働いてきた柴田さんが、「あづま家デイサービス」で正社員となった理由は？
一番大きな理由はフリーランスとして働いていると、ひとりで仕事をしている感覚というのが強くあったからです。整骨院で働いていたときは、悩みや気になることがあったらすぐ近くに相談できる人がいたのですが、そういった人がいなくなってしまって。
またフリーランスになったこと自体にまったく後悔はないのですが、フリーランスというのは自分が経営者のようなものですから、電卓とにらめっこをするような時間も増えてきて、その生活に少し疲れてしまった部分もありました。生活の変化があったこともあり、固定の収入を得られる正社員で働ければ、と考えるようになったんです。社長に機能訓練指導員だけでなく、事務作業も手伝う形で正社員になれないかと相談したところ、ふたつ返事でOKをしてくれました。
社長はスタッフの要望によく耳を傾け、さまざまな挑戦をさせてくれるので、今の環境がとても気に入っています。
目と耳を使ってアンテナをはり、利用者さんの変化を見逃さない
現場に立つときは、常に利用者さんの変化に気を配るという柴田さん
――機能訓練指導員として心がけてきたことは。
見えている部分はもちろん、自分が見えていない背後にまで常にアンテナを張って、利用者さんの細かい変化に気づくことです。利用者さんとお話しをしていても、ほかの利用者さんのちょっとした会話に身体の情報が隠れていることがあるので聞き逃さないようにしたり、利用者さんの痛みを隠している表情を見落とさないようにしたりしています。
利用者さんが安心して、楽しく通えるように、リスク管理は一番に考えていきたいと思っていますね。
――今後の目標を教えてください。
利用者さんにもっと寄り添えるようにしていきたいということは、第一に考えています。その一環として、自分の学んできた知識や働いてきた経験を周りのスタッフにも伝えていきたいと。今後スタッフと私が定期的にミーティングを行うことにもなっているので、スタッフに寄り添って、チーム一丸となれるように働きかけていきたいです。
この面談も私が社長に提案して実現させることができたのですが、自分がやってみたいことを常に叶えてくれるので、毎日がとても充実しています。利用者さんもスタッフも、関わった人に少しでもいい影響を与えられたらと思っています。
取材に伺った際、柴田さんと利用者さんが本当に楽しそうに話している姿が印象的でした。柴田さんの、利用者さんとしっかり向き合い、きちんと話しを聞く姿勢が、利用者さんとの間に信頼関係を築いているのだと感じました。
また柔道整復師が介護業界でも活躍できるということが分かり、大きな可能性を感じた取材となりました。
