機能訓練指導員とは?どんな資格が必要なの?|機能訓練指導員が活躍できる職場ややりがい・魅力を紹介
介護福祉施設や医療施設では、機能訓練指導員の配置が義務づけられています。これからの少子高齢社会では、より一層介護分野の人材が求められるでしょう。
機能訓練指導員になるためには、専門的な知識、技術を有する資格が必要です。ここでは、必要な資格や活躍できる職場について、具体例をまじえてご紹介します。
機能訓練指導員とは?
まずはじめに、機能訓練指導員とはどういうものなのかについて、見ていきましょう。
機能訓練指導員は、介護保険法で定められている職種のひとつで、機能訓練やリハビリの専門家です。厚生労働省の定義によると、通所介護事業所等において「日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する者」とされています。
機能訓練指導員は、介護事業所に1名以上の配置が義務付けられていますが、「機能訓練指導員」という資格があるわけではありません。機能訓練指導員の職に就くための条件には、いくつかの国家資格の所持者であることが定められています。
機能訓練指導員の職に就くために必要な国家資格は、次項で紹介します。
機能訓練指導員に必要な7つの資格と仕事内容を紹介!
機能訓練指導員は、介護施設などで利用者の心や身体の状態に合ったリハビリプランをたて、実施する介護職です。デイサービスや介護老人福祉施設には、必ず1名以上配置することが義務づけられています。
機能訓練指導員の職に就くことができる7つの資格と、仕事内容を確認しておきましょう。
1. 看護師・准看護師
医学的な知識と技術を用いて、体調管理、病気、ケガの処置などを施します。看護師は国家資格を必要とし、准看護師は都道府県知事が認定する免許が必要です。
機能訓練指導員としては、専門的な知識と技術を活かし、利用者へ医学的なサポートをします。ただし、資格取得時にリハビリに対する知識、技術が足りないため、実務経験を積みながら働くことになるでしょう。
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2. 理学療法士
身体に障害がある方の運動機能の回復、維持、向上を図り、自立した日常生活が送れるよう、医師の指示のもと物理療法などを用いてサポートする医療技術者です。
理学療法士になるためには国家試験に合格して免許を取得する必要があります。活躍できる場所はおもに、病院、リハビリテーションセンター、老人保健施設、障害者福祉センターなどです。
機能訓練指導員としての仕事は、理学療法士と重なる部分が多いのが特徴。運動療法、物理療法を用いて、利用者のリハビリプログラムの作成など、大いに活躍することができます。
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3. 作業療法士
身体や精神に障害がある方が、その機能を回復し自立した日常生活が送れるよう、家事、芸術活動などや遊び、スポーツといった日常生活における作業や動作を用いてリハビリするのをサポートする医療技術者です。
作業療法士になるためには国家試験に合格し免許を取得する必要があります。活躍できる場はおもに、病院、障がい者施設、児童福祉施設、デイケア施設、老人保健施設などです。
機能訓練指導員としては、心理的リハビリ、応用動作のリハビリなど、利用者の心身をケアする仕事となります。
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4. 言語聴覚士
言葉によるコミュニケーションや、口のなかで食べものを咀嚼して飲み込むこと(嚥下)が困難な方を対象に、機能回復訓練やその指導、支援をします。とくに高齢者に向け、体力を維持するために不可欠な「食べる力」を支援する仕事として注目されている職種です。
言語聴覚士になるためには国家試験に合格する必要があります。活躍できる場はおもに、病院、リハビリテーションセンター、老人保健施設、福祉施設などです。
機能訓練指導員としては、利用者の嚥下障害や口腔機能など、食べる力の低下を防ぐ、または改善させるサポートをします。
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5. 柔道整復師
打撲、捻挫、脱臼、骨折など骨や関節、筋肉などの損傷に外科手術や投薬ではなく、「手」を用いた応急的、医療補助的方法で回復をはかる医療技術者です。
柔道整復師になるためには、養成施設で専門的な知識、技術を学び、国家試験に合格して資格を取得する必要があります。活躍できる場は、おもに接骨院などです。
機能訓練指導員としては、身体的機能回復をサポートします。ただし、資格取得時は介護経験が不足しているので、実務経験を積んで学ぶケースが多いようです。
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6. あん摩マッサージ指圧師
「あん摩マッサージ指圧師」とは、身体のコリや痛みを訴える方に、手、指などを用いて揉む、押す、ほぐすなどのマッサージ・指圧によって症状の改善回復を図る医療技術者です。
厚生労働大臣による免許が必要で、文部科学大臣または厚生労働大臣が認定する学校・養成施設で学習し、国家試験に合格しなければなりません。活躍できる場は、おもにマッサージ治療院などです。
機能訓練指導員としては、あん摩・マッサージ・指圧によって利用者のコリや筋肉の痛み、固さなどを軽減させる役割があります。資格取得時には介護の経験が不足しているので、実務経験を積みながら学びましょう。
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7. はり師・きゅう師|2018年度改定から
2018年より「はり師・きゅう師」も新たに、対象資格者として追加されました。はり師は身体のツボを鍼(はり)で刺激、きゅう師とは同じく身体のツボにお灸を使用して刺激(暖める)ことで、人間が本来持っている自然治癒力を活性化させ、痛みを緩和させます。
認定された専門学校、大学、短大で技術と知識を学び、国家試験を受けて合格すると資格を得ることが可能です。活躍できる場は、はり・きゅう治療院、病院など。
機能訓練指導員としては、鍼灸を用いて利用者の身体の痛みの緩和や、機能回復をサポートする役割を担います。しかし、資格取得時は介護の知識や経験が不足しているため、実務経験を積みながら学ぶことになるでしょう。
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鍼灸師には資格要件がある|半年以上の実務経験
上述したとおり2018年より、はり師・きゅう師も対象資格者として追加されました。しかし、資格を持っているだけでは対象とはならず、機能訓練指導員がいる介護施設などで半年以上の実務経験を積まなければなりません。
実務時間や日数、実務内容にこまかい規定はありませんが、施設の管理者がじゅうぶんな経験を得たと判断できる業務の頻度・内容である必要があります。
また、従事した事業所の管理者に書面にしてもらうことによって、半年以上の実務経験があることを証明できます。
機能訓練指導員はどんな職場で活躍しているの?
機能訓練指導員は、どのような職場で活躍しているのでしょうか。活躍できる場は、大きくわけて「介護福祉施設」と「医療施設」のふたつです。介護福祉施設と医療施設とでは、役割が異なります。
機能訓練指導員を目指す方は、将来どのような仕事をしたいかによって、介護福祉施設系、または医療施設系のどちらかを選ぶことになるのが特徴です。ここからは、活躍できる職場と仕事内容について、具体的にご紹介します。
介護福祉施設|デイサービス・特別養護老人ホームなど
介護福祉施設とは、おもにデイサービス、特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、ケアハウスなど。ここでの仕事は、利用者の機能回復訓練をサポートすることです。
このような介護福祉施設を利用されている方々は、高齢者がほとんどです。利用者への積極的な運動機能の向上を目指すわけではなく、ふだんの日常生活をきちんと送れるようにサポートします。
そのため、施設によっては身体介護、レクリエーションなど、介護スタッフに近い業務をおこなう場合もあるでしょう。利用者に適したレクリエーションを提案したり、ほかのスタッフへの指導をおこなったり、幅広い活躍が期待されます。
医療施設|介護療養型医療施設など
医療施設は介護福祉施設とちがって、医師や看護師が配置されているので、より医療色が強い職場となります。医療施設とはおもに、介護老人保健施設、病院併設型リハビリテーション、介護療養型医療施設です。
なかでも介護老人保健施設では、リハビリ専門職を配置しなければなりません。より専門的なリハビリの指導や医師・医療従事者と連携したサポートを提供します。
機能訓練指導員を目指す方で、より専門色の強い仕事をされたい方は、介護福祉施設より、医療施設で働くことをおすすめします。
機能訓練指導員の配置基準はある?
施設によって、配置基準が定められています。配置しなければならない施設は以下のとおりです。
・デイサービス(地域密着型を含む)
・ショートステイ
・認知症対応型通所介護
・特定施設入居者生活介護(地域密着型を含む)
・介護老人福祉施設 など
ちなみに東京都の場合、通所介護事業所(デイサービス)や特定施設入居者生活介護には、1人以上配置することが義務づけられています。
配置基準が満たされないと、質のよい適切な介護サービスを提供できないとみなされ、「人員基準欠如」として指導の対象となります。
機能訓練指導員の給与はどれくらい?
機能訓練指導員の給与は、どれくらいなのかを見ていきましょう。
ハローワークの求人票やリジョブの求人を見てみると、正社員は月給で19万~40万ほど、パートタイマーは時給で1,200円~1,700円ほどの応募が多いです。とくに月給は幅がありますが、地域差が大きいと考えられます。
求人票に昇給や賞与が明記されている施設もあり、資格なしの一般介護職と比較すると、高い給与水準が期待できるといえるでしょう。
機能訓練指導員の魅力・やりがいはどんな点?
機能訓練指導員という仕事は、つらいこともありますが、それが報われるような魅力ややりがいもたくさんあります。ここからは、機能訓練指導員の魅力ややりがいを紹介します。
安定した給与とライフワークバランス
機能訓練指導員が働く介護事業所は、社会福祉法人・医療法人や大手企業などが経営する施設が多く、比較的経営状況が安定しています。そのため、経営悪化による解雇などはあまりない、と考えられるでしょう。
また、リハビリ専門は日勤のみのということが多いため、仕事とプライベートの両立がしやすいのも、魅力のひとつです。実際、ハローワークやリジョブの求人を見てみると、多くが日勤のみとなっていることがわかります。
高い将来性とニーズ
現在、日本では高齢者の増加が社会問題となっています。厚生労働省や総務省のデータをもとにした予測では、この先高齢者はますます増えると考えられているため、機能訓練相談員をはじめとした介護職の需要は高まる一方と考えられます。
とくに機能訓練相談員の場合は各事業所に1人以上の人員配置が定められているため、事業所数が増えるにつれ需要が高まります。さらに、国家資格が必要な専門的な職種のため、需要に対する人員不足も考えられ、高い将来性があるといえるのではないでしょうか。
利用者一人ひとりと向き合える
リハビリは長期的な計画ですすめられるため、利用者一人ひとりとも、長期間関わる必要があります。とくに、病院などの医療施設と比較すると、利用者側もひとつの施設を長く継続して利用する傾向にあります。
利用者一人ひとりと向き合い、それぞれ違う悩みや問題に合わせてリハビリ計画を立て、すすめていくうちに、少しずつできることが増えていく利用者の笑顔を見たり、感謝されたりすることは、大きなやりがいになるといえるのではないでしょうか。
知識や技術を磨くことができる
利用者によって症状やリハビリ方法が違い、合わせてリハビリ計画の作成・指導をおこなう必要があります。さまざまな症状と向き合い、その都度最適なリハビリ計画を立て対応していくことで、日々学習し、知識や技術をさらに磨くことができるのも、機能訓練指導員の魅力といえるでしょう。
機能訓練相談員に向いているのはこんな人
さまざまな魅力ややりがいがある機能訓練相談員ですが、その分大きな責任もともないます。そんな機能訓練相談員には、どんな人が向いているのでしょうか?いくつかの例を見ていきましょう。
大勢の利用者よりも一人ひとりとしっかり向き合いたい人
やりがい・魅力で前述したように、長期的なリハビリ計画のなかで、利用者と長く関わっていく必要があるのが特徴です。たとえば、同じ看護師でも、総合病院で働く看護師よりも、より深く一人の利用者と関わっていきます。
そのため、目の前の利用者一人ひとりと向き合って支えていきたいと考える人は、機能訓練相談員に向いているといえるでしょう。
人とコミュニケーションを取るのが好きな人
利用者の不安や悩みを聞き取り、適切なリハビリ計画を立てる必要があるため、人とコミュニケーションを取るのが好きな人も、機能訓練指導員に向いています。
利用者だけでなく、施設内の介護職員と情報を共有し、必要があればほかの施設とも連携して利用者の機能訓練をおこなうため、高いコミュニケーション能力が求められることもあります。
臨機応変に判断できる人
機能訓練には、その場その場で迅速な判断や新しいアイデアを求められることがあります。たとえ同じ症状であっても、利用者によって適切なリハビリは違います。ときには、過去の症例や資料にない状況に直面することもあるでしょう。
そのため、基礎にとらわれず、臨機応変に柔軟な対応ができる人は、機能訓練指導員に適正があるでしょう。
機能訓練指導員は資格が活かせるお仕事!
機能訓練指導員は、介護やリハビリを必要とする方の機能の減退を防ぐため、適切なサポートをするための訓練をおこなう能力を有しています。
看護師・准看護師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、あん摩マッサージ指圧師、はり師・きゅう師という、より専門的な技術と知識を持った人材が求められているのです。すでにこれらの資格をお持ちの方は、機能訓練指導員を目指してみてはいかがでしょうか。
引用元サイト
職業情報提供サイト(日本版O-NET):あんまマッサージ指圧師
厚生労働省:リハビリテーションと機能訓練の機能分化とその在り方に関する調査研究事業
厚生労働省老健局:「令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)(令和3年3月26日)」の送付について