【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.33】家事援助中に汚れた下着を発見! 介護職としてどう対応する?
当企画では、介護現場で直面する「こんなとき、介護職としてどうすれば?」というときの対処法をご紹介します。今回は、ヘルパーとして家事援助中に「粗相」の痕跡を見つけたときについて取り上げます
家事援助で掃除をしていたら…。隠してあった汚れた下着を見つけた!
夫と二人暮らしのKさん(80代)は、週に2回、家事援助の介護サービスを利用しています。ある日、訪問したヘルパーが部屋の掃除をしていると、寝室の鏡台の下に、隠すように丸め込まれた女性物の下着を見つけました。自分でできることは進んでやろうとするしっかり者のKさんなので、珍しいな…と思いながら拾い上げると、下着は汚れていました。
こんな時はどうするのがいいのでしょうか。
とっさに「Kさん、汚れた下着……」と言いたい気持ちも分かりますが、ちょっと待って! これはきっと〈おもらし〉です。高齢者にとっては、とてもデリケートなことであり、KさんのQOLの質にも関わってくることです。今後のKさんの生活のためには、介護職としてどう動くといいのでしょうか。そのポイントは2つ。「その場は知らぬふりで、汚れた下着を処理」することと、「後日、「リハビリパンツ」を案内してみる」ことです。
ポイント1:その場は知らぬふりで、汚れた下着を処理
Kさんは汚れた下着を隠していました。つまり、Kさん自身が下着を汚したことを「恥ずかしい」と感じているということです。そんな彼女に真正面から指摘するのは、彼女の自尊心を傷つけてしまうことになりかねません。
まずは、Kさんを傷つけないために、気がつかなかったフリをして、汚れた下着は黙って洗濯、もしくは処分しましょう。サポートの必要性を考えるのはその後です。
ポイント2:後日、『リハビリパンツ』を案内してみる
利用者の中には、排泄トラブルを抱えていても「自分はまだ大丈夫」と認めない人も少なくありません。そういうときは、『リハビリパンツ』という選択肢がまだ頭にないことも多いでしょう。強い抵抗感を持っている方もいるかもしれません。
だからといって、『リハビリパンツ』の使用を強要するのではNGです。本人自らが納得して受け入れることが大切です。
『リハビリパンツ』をすすめるときには、どんな人柄かを見極めて事を運ぶ必要があります。直接話をしてもきちんと話を聞いてくれそうな人ならば、「最近はリハビリパンツを利用する人、多いんですよ」「あまり目立たなくて優秀なんですよ。お試しでひとつ置いておきますね」というように、利点を伝えて使うきっかけを与えてあげるのが一つの方法です。
逆に、『リハビリパンツ』という言葉に拒絶反応を示しそうな人ならば、何も言わずにそっと置いておくという方法も。案内はあくまでもさりげない程度に収めましょう。
『リハビリパンツ』をトラブルなくすすめるための2つのポイント
1. きっかけを与える
2.強要はせず、見守る
「下」に関することは、高齢者と常に接する介護職にとっては何でもないことかもしれません。ですが、当の本人にとっては、「情けない」「恥ずかしい」という感情を抱えているデリケートな悩みであることがほとんどです。
無神経に「みんなそうなんだから!」と強引に話を進めるのはNGです。介護職として利用者・入所者の思いを尊重しながら、本人が『リハビリパンツ』を受け入れるきっかけをさりげなく与えてあげましょう。
そして気持ちの変化を見守り、思いに寄り添って、排泄トラブルと上手に付き合えるようにサポートできるといいですね。
文:細川光恵
参考:「こんなときにはどう言葉をかけたらいい? 介護の言葉かけタブー集」誠文堂新光社
監修
中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役
1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。