歯科技工士に必要な資格とは|向いている人の特徴やおもな就職先・年収・やりがいもまとめて紹介!
歯科医療を支える職業のひとつに、歯科技工士があります。歯科技工士は、被せ物や詰め物・入れ歯など、歯の代わりになるものなどをつくる専門職です。
歯科医師や歯科衛生士・歯科助手などと比べると、患者と接する機会は少ないものの、歯科医療には欠かせません。
この記事ではそんな歯科技工士に焦点をあて、必要な資格や詳しい仕事内容・向いている人の特徴などを紹介します。おもな就職先や年収・やりがいについてもお伝えしますので、最後までチェックしてみてください。
歯科技工士は国家資格が必要な専門職
歯科技工士になるには、国家試験に合格し、資格の取得が必要です。高校卒業後、専門学校や4年制大学・短大など歯科技工士の養成機関で2年以上学び、必要な知識や技術を習得することで、国家試験の受験資格が得られます。
国家試験合格後に免許申請を行い、免許証が交付されれば、晴れて歯科技工士として働くことが可能です。
ここからは、各養成機関の特徴や、歯科技工士国家試験について詳しく見ていきましょう。
引用元
job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))|歯科技工士 – 職業詳細
各養成機関の特徴
歯科技工士の養成機関は、全国に48カ所あります。ここでは、専門学校や大学・短大の特徴について紹介しますので、自分に合った養成機関を探すときの参考にしてください。
歯科技工士の養成機関は、以下のホームページで一覧を確認できます。
日本歯科技工士会|歯科技工士教育機関一覧
専門学校|2年制・3年制
専門学校は、歯科技工士になるための知識や技術を重点的に学べるのが特徴です。最短ルートで歯科技工士になれる2年制の学校が大半で、就職支援を行っているところも多くあります。
また、数は少ないものの夜間課程があるところや、より高度な知識や技術を学べるところも。そういった専門学校は3年制です。
大学・短大
4年制大学や短大は、歯科技工士の知識や技術に加えて、一般教養やその他の資格に関する学習ができます。とくに4年制大学では、語学や情報学・キャリア教育なども基礎科目として学べるため、卒業後の選択肢が広がる可能性があるでしょう。
ただし4年制は3校、短大は2校と数が少なく、各学校の募集人数もそれほど多くないため、倍率が高くなっています。入試に向けてしっかりと対策をしておくことが大切です。
歯科技工士国家試験の概要
歯科技工士の国家試験は年1回で、毎年2月に行われます。養成機関の卒業生のほか、試験が行われる年の3月に養成機関の卒業見込みの人も受験が可能です。
試験内容は学説試験と実地試験の2種類で、試験時間はそれぞれ2時間ずつ。学説試験は四肢択一のマークシート方式で、以下の科目が出題されます。
・歯科理工学
・歯の解剖学
・顎口腔機能学
・有床義歯技工学
・歯冠修復技工学
・矯正歯科技工学
・小児歯科技工学および関係法規
実地試験では、歯科技工技術が問われます。
引用元
厚生労働省|歯科技工士国家試験の施行
一般財団法人 歯科医療振興財団|歯科技工士国家試験出題基準
令和5年度歯科技工士国家試験の合格基準と合格率
令和5年度に行われた歯科技工士国家試験の合格基準は以下の通りです。
学説試験 | 1問1点の配点
80満点中48点以上で合格 ただし各科目における総得点が30%未満の場合は不合格 |
実地試験 | 1課題につき30点の配点
90点満点中54点以上で合格 |
なお、学説試験・実地試験の両方に合格しなければ免許申請はできません。
令和5年度の受験者835人のうち799人が合格で、合格率は95.7%です。令和4年度の合格率は90.7%、令和3年度は94.8%と、合格率は毎年90%を超えているため、養成機関で学んだことをもとに対策をしっかりと行えば、試験を突破できるでしょう。
引用元
厚生労働省|令和5年度歯科技工士国家試験の合格発表について
歯科医療振興財団|歯科技工士国家試験
歯科技工士の仕事内容
歯科技工士の仕事内容は、歯科医師の指示に基づいて、歯科技工物をつくったり、修繕したりすることです。歯科技工士が製作する歯科技工物は、欠けた歯や失ってしまった歯を補い、機能の回復や見た目をよくすることに役立ちます。
歯科技工物は、以前は設計から製作まですべて手作業で行われていました。しかし近年は、IT化が進んだことにより、CAD・CAMなどのシステムや3Dプリンターを使って設計や製作を行うことも増えています。
ただし、患者の歯や歯科医師の削り方に合わせた細かな調整は機械ではできないため、歯科技工士による仕上げが必要です。
歯科技工士が製作・修繕する歯科技工物の種類
歯科技工士が製作・修繕する歯科技工物には、以下のようなものがあります。
補綴(ほてつ)装置 | 歯の欠損を補う装置
(欠損した歯の両端の歯を支えにして被せる人工歯)
|
矯正装置 | 歯列矯正用の装置
|
マウスガード | スポーツ中の衝撃や歯ぎしりによる口腔内・歯へのダメージを予防・軽減するための防護用具 |
歯科技工士に向いている人の特徴
ここからは、歯科技工士の仕事内容や製作する歯科技工物を踏まえて、歯科技工士に向いている人の特徴について見ていきましょう。
根気強さがある
歯科技工士は、患者の歯型に合わせて微調整を繰り返すといった細かい作業を行うため、集中力を維持し、コツコツと作業を続けられる根気強さがある人に適しています。
歯の色や形はひとりひとり異なるため、それぞれに最適な歯科技工物を製作するのが歯科技工士の役目です。噛み合わせのズレや、歯科技工物の形が元の歯と少しでも異なることは患者の違和感や不快感につながるため、ミスが許されません。
手先が器用
さきほどお伝えしたように、設計や加工の一部にシステムを使うことはあるものの、仕上げは歯科技工士の手作業です。上述したようにミスが許されず、精巧な技術が必要となるため、手先の器用な人や細かい作業が得意な人には向いているといえます。
機械ではできない作業こそ歯科技工士の技量が重要になるので、患者の歯の特徴をしっかりと把握したうえで、精密な作業を行うことが大切です。
向上心や探究心を持って取り組める
歯科医療は、日々進化するものです。使用する素材は、審美性のあるものや耐久性のあるものなどどんどん新しくなっているほか、今後は設計や製作に使われるシステムがさらに更新されていくことも、想像にかたくありません。
そういった新しい技術を吸収し、現場で活かせるようにするためには、向上心や探究心を持って仕事に取り組める人が適しています。
資格取得後も学び続ける姿勢で、経験を積んだり努力を重ねたりすれば、新しい技術を習得することもできるでしょう。
コミュニケーション能力が高い
歯科技工士は、ひとりで黙々と作業をするイメージもあるかもしれませんが、歯科医師や同僚と連携を図る機会も多いため、コミュニケーション能力が高い人にも適しています。
たとえば、歯科技工物は歯科医師の指示に基づいて製作するため、歯科医師の要望をくみ取ったり、よりよいものを提案をしたりするといった、コミュニケーションが欠かせません。
また、作業によっては同僚と分担することもあります。そういった場面では、コミュニケーションを取りながら円滑に進めることが大切です。
さらに、独立する場合は、自分の技術を売り込めるような会話術や営業トークも必要になるでしょう。
歯科技工士のおもな就職先
歯科技工士のおもな就職先は、歯科技工所や歯科医院・病院などです。
厚生労働省がまとめた、令和4年の衛生行政報告例(就業医療関係者)によると、歯科技工士の72.9%(24,012人)が歯科技工所で働いています。なかには、ある程度経験を積んでから、独立・開業して自分の歯科技工所を構えている人もいるようです。
また、24.8%(8,159人)の歯科技工士は、歯科医院や病院などに勤めています。
のこりの2.3%(771人)は、歯科技工士の養成機関や歯科器材・材料に関連する企業などで働いているようです。
ここからは、歯科技工士のおもな就職先である、歯科技工所・歯科医院・病院の特徴について紹介します。
引用元
厚生労働省|令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
厚生労働省|2 就業歯科衛生士・歯科技工士及び歯科技工所
歯科技工所
歯科診療所や病院から注文を受け、送られてきた指示書や患者の口腔内データをもとに、歯科技工物の設計・製作・納品するのが歯科技工所です。
仕事の仕方は、患者ごとに一連の作業を任されるところもあれば、特定の分野で専門的に作業を行うところもあり、歯科技工所によってさまざま。
はじめのうちは、比較的簡単な歯科技工物の製作を任されステップアップしていくことが多いため、技術を確立していけるでしょう。
また、さきほどお伝えしたように、経験を積んでから自分で歯科技工所を開く人もいます。開業した際には、技術だけでなく経営や営業の手腕が試されるでしょう。
歯科医院
歯科医院によっては、独自で歯科技工室を構えているところがあります。そこで働く歯科技工士は、歯科医師から直接オーダーを受けることが多いです。また、患者の口腔内を自分の目で確かめてから設計を行うこともあります。
歯科医師と細やかなコミュニケーションを取ったり、最適なものを提案したりしながら設計・製作ができるため、より精度の高い歯科技工物をつくれる環境が整っているといえるでしょう。
製作した歯科技工物が、どんな患者にどのように装着されるかや、装着された患者の反応を直接見られるというのも、歯科技工士にとっては魅力かもしれません。
総合病院|歯科技工室
歯学部附属病院や歯科診療を行っている総合病院などには、歯科技工室が設けられており、歯科技工士はそこで歯科技工物の設計や製作を行います。
病院は歯科医院に比べて患者数が多く、高度な治療を要する人も少なくありません。そのため、特殊な歯科技工物を製作する機会も多く、幅広い知識と高い技術力が必要とされます。
また、最新の技術や機器を用いることも多いため、それらを使いこなせるよう勉強しなければなりません。
歯科技工士の年収や給与はどれくらい?
歯科技工士として働くうえで、年収や給与は誰もが気になることでしょう。
厚生労働省が運営するjob tagによると、令和5年賃金構造基本統計調査に基づく歯科技工士の平均年収は464.9万円です。また、同サイト内に掲載されているハローワークの求人賃金(月給)は27.4万円となっています。
年齢や経験年数のほか、地域によっても収入が異なるため、目安として考えておきましょう。
引用元
job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))|歯科技工士 – 職業詳細
歯科技工士のやりがいや魅力は?
ここからは、歯科技工士のやりがいや魅力を紹介します。
自身の技術で患者の健康をサポートできる
高度な知識や技術を活かして、患者の健康をサポートできることにやりがいを感じる歯科技工士はたくさんいます。ときには直接感謝の言葉をもらえることもあり、喜びを感じられるでしょう。
永久歯は、一度欠けたり失ってしまったりすると二度と生え変わりません。また、歯を損傷すると食事に支障が出たり、見た目に影響したりすることがあります。
さらに、噛み合わせが悪くなってしまい、頭痛や胃腸の不調などを引き起こすこともあり、歯以外の健康も阻害してしまうため、歯科技工物はなくてはならないものです。
そんな人々の健康に欠かせない歯科技工物をつくることで、人の役に立っているという実感も得られます。
歯科技工物をつくる職人としての誇りが持てる
歯科技工物は、歯科技工士と歯科医師しかつくることができません。しかし、歯科医師には歯科技工物の知識はあっても、それを製作する技術を磨く機会はそれほどないのが現実です。
そのため、製作や修繕に関しては歯科技工士が大きな役割を担っており、代わりになる職業はないといえます。
精巧な技術や、患者ひとりひとりの歯の特徴を捉える繊細な感覚を持つ歯科技工士は、まさに職人であり、誇りを持てるでしょう。
資格を取ったあとも学び続けられる
より患者に適した歯科技工物を提供するため、自分自身の技術を磨くことが求められます。
また、さきほどお伝えしたとおり歯科医療の進歩は著しく、つぎつぎと新しい技術・機材・素材が導入されるため、そういった新しいことを吸収していくことも必要です。
資格を取ったあとも、成長が求められる環境に身を置けるため、学び続けられるという点は魅力といえるでしょう。
性別・年齢関係なく長く働くことができる
歯科技工士は、経験を積むことで技術が高められ、身につけた技術はその後も活かすことができます。技術があれば一度離職しても復帰しやすく、長期的に働けるというのも魅力です。
実際、令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)によれば、歯科技工士として働く人の割合は65歳以上がもっとも多く、16.9%を占めています。歯科技工士が高齢化しているともいわれているため、今後若い歯科技工士はさらに重宝されるでしょう。
なお、千葉歯科技工士会によると、令和2年時点では男性が79.2%、女性は20.8%と、男性歯科技工士のほうが圧倒的に多いです。しかし、25歳以下の歯科技工士は男性が44%、女性が56%となっています。
女性の歯科技工士は年々増加傾向にあるため、男女問わず十分に活躍できるでしょう。
引用元
厚生労働省|令和4年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況
厚生労働省|2 就業歯科衛生士・歯科技工士及び歯科技工所
千葉歯科技工士会|衛生行政報告例からみえる歯科技工士の現状
高齢化によって今後も需要が高まる見込み
年齢を重ねるにつれて、歯や口腔内の不調が出やすいです。そのため、高齢化によって今後歯科医療はさらにニーズが拡大し、歯科技工物をつくる歯科技工士の需要も高まることが見込まれます。
さまざまな就職先がある|働き方も多様
おもな就職先でも紹介したように、歯科技工士は歯科技工所や歯科医院、病院などの働き口があります。歯科技工所だけでも全国に20,879カ所(令和2年時点)あるため、就職先の選択肢は幅広いです。
ほかにも、歯科器材・材料に関連する企業や、歯科技工士養成機関で働ける可能性もゼロではありません。
また、正社員・パート・アルバイト・派遣社員といった多様な雇用形態があるほか、技術があれば自身で開業して歯科技工所を構えたり、海外で活躍したりすることもできるため、自分に合った働き方ができるでしょう。
引用元
厚生労働省|2 就業歯科衛生士・歯科技工士及び歯科技工所
歯科技工士が自分に合った職場を探すには?
さまざまな就職先と働き方がある歯科技工士ですが、自分に合った職場を探すにはどうしたらよいのか分からないという人もいるかもしれません。そこで、おすすめの求人の探し方について紹介します。
就職・転職エージェントを活用する
就職・転職先を探すにあたって、自分で探すことに不安がある人におすすめなのが、就職・転職エージェントを活用する方法です。
エージェントに登録すると、担当アドバイザーがつき、希望条件を相談したり、自分の強みや特性を分析してもらったりしたうえで、マッチする求人を紹介してもらうことができます。就職・転職に向けたさまざまなサポートが受けられるのも特徴です。
エージェントによって扱う求人のジャンルには違いがあるため、歯科医療業界に強いエージェントを探しましょう。
求人サイトを利用する
自分のペースで求人を探したいという人におすすめなのが、求人サイトです。スマホやパソコンから、好きな時間に求人情報を検索・閲覧できます。気になる求人が見つかれば、サイト上から気軽に応募できるのも特徴です。
給与や福利厚生・働く日数など希望条件に当てはまる求人に限定して探すことができるため、自分に合った求人を探しやすいでしょう。
求人サイトにもさまざまな種類があり、特定の業種や業界に特化した求人サイトもあるため、ヘルスケアや歯科医療に特化した求人サイトを利用するとよいでしょう。
歯科技工士の求人を探すならリジョブがおすすめ!
求人サイト「リジョブ」でも、歯科技工士の求人を扱っています。より自分に合った職場が見つかりやすいよう、豊富な選択肢を用意しているのが特徴です。
掲載している求人のページには、仕事内容や給与・福利厚生などの基本的な情報をはじめ、求める人物像やPRポイント・こだわりなど、その事業所の風土や職場環境が分かる情報も満載。
また、プロフィール登録をしておけば、求人を出しているところからスカウトがもらえる可能性もあります。
歯科技工士の国家資格を取得して自分に合った職場で活躍しよう
歯科技工士は損なった歯を補い、機能や見た目を回復させるために、歯科技工物を製作・修繕する専門性の高い仕事です。歯科技工士になるには、歯科技工士の養成機関で2年以上学び、国家試験に合格して国家資格を取得する必要があります。
歯科技工士の資格があれば、歯科技工所や歯科医院・歯科がある病院などで働くことができるため、就職の選択肢が豊富です。それぞれの職場の特徴や自身の希望条件を踏まえて、求人を探してみましょう。
歯科技工士の求人を探す際は、求人サイト「リジョブ」がおすすめです。リジョブは、ヘルスケア業界に特化した求人サイトで、転職満足度が非常に高い※ため、自分に合った職場での活躍が目指せるでしょう。
※リジョブ経由で採用された1,242名を対象に実施した満足度自社調査より(実施期間:2023年2月8日〜2023年3月)