木村雅浩 interview:復帰に悩む全ての足リートのために学び、仕事の辛さと喜びを感じる日々

フィギュアスケートの町田樹選手のトレーナーとして各メディアでも紹介されるスポーツトレーナー木村さん。野球選手時代、怪我から復帰に悩んだ自らの経験を活かし、その人生を身体作りに悩む全てのアスリートのために捧げる決心をした木村さんの『スポーツトレーナー』という仕事への熱い思いを語っていただきました。

リハビリに行ったジムで、トレーナー職と出会う

木村 雅浩さん

「もともと僕は野球選手だったんです。当時はスポーツトレーニングという考え方が全くなかった時代で、ウェイトトレーニングはおろか、ほとんどが根性で何とかなるという風潮でしたね。せいぜい肘を冷やさないよう寝る時も長袖を着るという程度でした。高校・大学・実業団とずっと野球をやってきたのですが、中学生の時に肘を痛めて、高校生、大学生、そして実業団入団後の計3回、肘の手術をしたのです。

3回目の手術をした時に、鳥取のスポーツジムにリハビリに行きました。そこは日本で唯一のスポーツ理論を元にしたトレーニング法を実施しているジムで、イチロー選手も行っていたところなのですが、そこで『トレーナー』という仕事があることを知りました。

自分と同じように身体を痛めつつ、それでもやりたいという悩みを抱えた選手をまたマウンドに立てるように導くことを仕事にする。それが自分の天職ではないかと思えて、トレーナーの勉強を始めることにしました」

様々なご縁で、プロのスポーツトレーナーへ

「スポーツトレーナーという職種はまだ知られていませんでしたし、必要だとも考えられてはいなかった時代です。ほとんどの人に反対されましたが、JR西日本野球部を退部した後、会社も辞め、トレーナーへの道を歩み始めました。

どうしてもトレーナーになりたい! といろいろな人に伝えたところ、スポーツ選手が行く病院のドクターや野球チームのコンディショニングコーチなど、いろいろとご紹介をいただいて、勉強をさせていただきました。そうこうしているうちに、ある実業団野球部のトレーナーが離任されるということで、その後任の話がきました。まだトレーナーとしては実務経験が全くなかったので躊躇したのですが、その時に支えてくれていた人たちが『手伝ってやるから!』『やってみろ!!』と後押ししてくれて、やることに決めました。この時期は、本当に周りの人に支えられました。

そうして週2回トレーナーとして働いていたのですが、ある日の大会でばったりと大学の先輩に遭遇し、その先輩が入団していたチームで専属トレーナーになってみないか、と誘われました。トレーナーとしては、毎日選手の状況が見られるというのは願ってもない環境なので、ぜひやらせてください! と快諾したのです」

スポーツトレーナーの仕事とは

木村 雅浩さん

「実業団チームのトレーナーの業務をこなしているうちに、やはり人の紹介やご縁でプロアスリートからもパーソナルトレーナーの依頼が来るようになりました。アスリートのトレーニングというのは、例えばスポーツジムで行うようなマニュアル通りのトレーニングだけでは絶対にうまくいきません。その人が持っているものと、さらにその人がどう動きたいかを考えながらプログラムしていきます。選手それぞれで身体の使い方が全く違います。いかにきめ細かく選手を見るか。それが、この仕事の一番大切な部分です。

あるプロ野球選手の場合、いわゆる“ルーズショルダー”という肩の関節が普通よりも大きく動くタイプでした。なので、肩しか見ない医師には『関節に負担がかかるから手術しなくちゃいけない』と言われる。けれど関節が大きく動くから最速150km/hものボールが投げられるとも言えるんです。肩の関節だけではなく、他の関節…特に股関節を上手に使うことによって、肩の負担を他に分散することができる。そういう動きを作っていったら、手術をしなくても全く問題なく投げられるようになったんですよ!」

鍼灸と運動学を組み合わせ、治療法の幅が広がる

「怪我をした選手をもっと早くチームに復帰させることができないかと考え、鍼灸の資格を取ることにしました。実は僕、肘を痛めた時に鍼灸では治らなかった経験があるんです。なので鍼灸については懐疑的で、人の身体を触ることができる資格を一応取っておいた方がいいな、くらいの軽い気持ちで勉強し始めたのですが、先生に『せっかく来たんだからどっぷり中医学の勉強をしてみて、それでも納得できなかったらやめればいい』と言われて。それもそうだと思って徹底的に勉強したんですよ。そうしたら、まんまとハマりました(笑)。考え方が西洋医学とぜんぜん違っていて、すごく面白かったんです! そして、きちんと対応すれば効果が出ることも分かりました。

鍼灸では、運動学や解剖学は少ししか勉強しないので、身体全体がどう連動しているかということを知っている鍼灸師は少ないんですね。僕は運動学から入って鍼灸の勉強をしたので人間の身体に対しての理解度が高まったし、アスリートの治療ついては、身体の異変や怪我の要因は1つではないので、西洋医学と東洋医学を組み合わせた治療をすることで怪我からの復帰が早くなりました。そういう意味では、すごく恵まれたと思いますね」

トレーナーの仕事の辛さ、そして喜び

木村 雅浩さん

「仕事は常に24時間体制です。実業団のトレーナーをしていた時は日曜休みだったのですが、リハビリの選手がいたら絶対出て行きますし夜中でも電話がかかってきたりします。でもそれが大変だと思ったことはないですね。仕事上辛いことと言えば、やはり結果が出なかった時ですね。勝負の世界ですから、当然試合に負ける時もある。次の試合に気持ちを切り替え、負けた原因をどれだけつぶしていけるかが鍵だと思います。監督やコーチが作ろうとしているチームをスタッフが納得し、いかに選手の意識を上げていけるか。最終的にはコミュニケーションだと思いますね。

逆に嬉しいのは、選手が活躍した時ですね。もちろんチームが勝てた時もすごく嬉しいです。が、それ以上に、怪我した選手が復帰して試合に出られた、マウンドに立てた時の喜びは、勝ったとか負けたとかはどうでもよくなってしまう程ですよ(笑)」

刺さない鍼『レインボー療法』など、新しい治療法も

「身体は精神面にもすごく影響を与えます。例えば、アスリートに限らず一般の方もですが、背骨から出ている自律神経が通っている筋肉がガチガチに固まっている方がおられます。ということは、自律神経を圧迫しているんです。自律神経には交感神経と副交感神経があり、通常は、起きている時は交感神経、夜の12時くらいになったら副交感神経が優位になって睡眠に入る、というプロセスとなります。自律神経が固まっているとその切り替えがうまくいかなくなり、睡眠障害などの影響が出る場合があります。そういう身体には鍼は有効です。女性は鍼が怖いという方が多いのですが、刺さない鍼というものもあるんですよ。7色のシールとツボ押しのようなものなのですが、シールを貼って、目で見て色を感じることで良い反応が出る。そして、重みで刺激を与えていきます。こういうもので筋肉にも内臓にもアプローチしていくことができます。筋肉と内蔵は密接に関係しています。五臓六腑を整えることで、自然に痛みを和らげることができます。

今までスポーツトレーニングが中心でしたが、現在はダイエットを希望する女性の方や高齢者のリハビリなどの仕事も増えていますから、お客さまそれぞれに合ったトレーニング法や治療法で対応していきたいですね」

トレーナーを目指す人に向けて

木村 雅浩さん

「これからトレーナーになりたい、という方は、まずいろいろな勉強会やセミナーへ出てみることをお薦めします。これは勉強することよりも人と会うことが重要です。さまざまな人と積極的に会って、この人! という人に会ったらその人の仕事場へ見学に行かせてもらいましょう。教科書ではない生きた人を見て、どういうふうに治療をするのか、どういうトレーニングをしたら効果的なのか、実際の現場をたくさん見ることが、一番の勉強だと思います。

また、その中で方向性を決めるといいと思います。トレーナーといっても治療をメインにしたいのか、トレーニングをメインにしたいのか、両方を勉強していくのか、それぞれの分野によって勉強の仕方が違いますし、自分の進みたい分野がピシっと決まることによって人脈の広がり方が変わってきて、非常に効率良く前へ進むことができますよ。僕が学生さんと話していても、何がしたいのかってきちんと言ってくれる人は紹介がしやすくて、好感が持てますしね」

本気で踏み出せば、必ずチャンスは訪れる

「今後の目標は、総合的なケアができる施設を作りたいと思っています。1階はできればドクター完備で治療院、2階はトレーニング、3階は美容系でジャグジーなどもあって、その上にスタッフが住めるような部屋があって、宿泊もできるといいですね。そういう身体マネージメントができる複合施設を作りたくて、そのキャリアプランもスタッフに話しています。個人的には、今まで僕が培ってきたことを皆さんに知ってほしいと思っています。そのためにラジオのコーナーを持たせてもらったり、TVや行政などにアプローチをかけています。アスリートのバランス体幹トレーニングやダイエット、腰痛で困っている方など、今まで教科書通りにしかやってこなかった方に、その人に合う練習方法があるということを伝えていきたいです。もちろん治療に関しても、怪我をした選手やリハビリで困っている方も、東洋医学だけでもなく西洋医学だけでもない、二つを兼ね備えた治療によってまた現場復帰していただければ、と願っています。

今、適職について悩んでいる方に必要なのは、一歩を踏み出す勇気です。本当にやる気にさえなればいろいろな方が手を差し伸べてくれます。僕の座右の銘は『チャンスは動いている人にやってくる』。自分がやりたいことを本気でアピールしたら、その都度導いてくれる人が現れて、チャンスが訪れますから、ぜひ、まず第一歩を踏み出して欲しいと思います。世界はきっと、本気で挑戦する人を待っていると思うんですよ」

Profile

木村 雅浩さん

木村 雅浩(きむら まさひろ)さん

ひまわり鍼灸整骨院&トレーニングスタジオソレイユ代表
町田樹選手(フィギュアスケート)専属トレーナー

自身の野球選手時代に肘の故障と手術を経験し、治療・リハビリ・トレーニングを相対的に考えた「理想の身体を作りだす」スポーツトレーニングを構築。NTT西日本野球部、三菱重工広島などの実業団野球専属トレーナーやプロ野球選手・競輪選手などのパーソナルトレーナーを経て、2012年に独立。身体だけではなく、選手のメンタルケアまで考えたトレーニング法で、各アスリートから絶大な信頼を得ている。

Profile

トレーニングスタジオ ソレイユ

ひまわり鍼灸整骨院&加圧トレーニングスタジオ ソレイユ

プロスポーツ選手や全日本チームのトレーナーだった木村さんが代表を務める、鍼灸整骨院と加圧トレーニングの複合施設。ギックリ腰、ねんざや慢性的な肩の痛み、スポーツ障害などの治療から、ダイエットや健康維持のためのトレーニングまで、身体に関する幅広いアプローチを行っている。

〒617-0002 京都府向日市寺戸町辰巳3番地 ユングフラウマイ
1F:ひまわり鍼灸整骨院 2F:加圧トレーニングスタジオ ソレイユ

ご予約・お問合わせ 075-555-9342
HP:http://tbm-soleil.com/
木村雅浩 オフィシャルサイト:http://www.spptkimura.com/

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