北原孝彦 interview #2:人との繋がりを大切にする独自のサロン運営法
顧客のリピート率は90%以上、スタッフの離職0、入社希望の美容師が順番待ちになるなど、驚異的な成果を上げているのが全国に45店舗展開しているヘアサロン『Dears』。「店長を作らず個が責任者」、「仕事が終わったスタッフから帰宅」、「週休3日制」といった、新しい美容室の形が注目を集めています。
今回はオーナーの北原孝彦さんにインタビュー。起業に至った経緯や、独自のサロン運営術について語っていただきました。中編では、独自のサロン運営法について伺います。
スタッフの理想を叶えるフレキシブルな労働環境
――『Dears』のこだわりを教えてください。
「『Dears』では、キャンセルが入れば空き時間を自由に使うことができますし、夜に予約が入っていなければサロンのクローズを待たずに帰ることもできます。アシスタントを使わずに、マンツーマンで営業しているためお客さまが来なければスタッフの生産性は1円にもなりませんから、空き時間はスタッフを開放して自由時間にしたほうがいいんです。スタッフは隙間時間でランチに行ったり、ネイルに行ったり、お風呂に行くスタッフもいます。その他、時間の使い方で言えば朝礼と終礼を行ったことは一度もなく、空いた時間にDMも書きません。空き時間の掃除もとくに必要がないと思っています。すきま時間に行うサービスは忙しくなったら手が回りませんから、サロンが繁盛しているときに提供できないサービスでは意味がないと思いますね」
アシスタントをつけないマンツーマンの接客が、スタッフの自信に繋がる
――なぜ、アシスタントを使わないマンツーマンスタイルなのでしょうか?
「スタッフに自信をつけてほしいからですね。中途で入社してくる美容師の多くは、技術を持っているにも関わらず以前の職場で成果を残せていません。というのは、そもそもお客さまの髪を切るチャンスが少ないんです。たとえば、7席ある美容室でも4席をオーナーが使い、2席を店長が使い、残った1席を数人のスタッフで回すといったサロンが珍しくありません。そこで、僕はスタッフに必ず1席を用意し、お客さまをカットする機会を増やしています。また、アシスタントを使わずに自らの力で結果を残すことで自信がつき、仕事の意欲も高まるんです」
サロンに店長を置かないメリットとは
――他には、どのようなこだわりがありますか?
「店長がおらず、個が責任者として働いています。人間関係のストレスは、上下関係ができた瞬間に耐え続けなければなりませんから。上司から指摘されても、その人自身がきちんとできていないことはたびたびあります。はじめは耐えられるかもしれませんが、1年経つと我慢できなくなり、離職に繋がるんです。そのため『Dears』では年齢の上下はあってもサロンでは敬語で話をしていますし、タオルを畳む枚数も決まっています。全員が平等に働けるルールを決めれば、管理者はとくに必要ないんです。サロンも平和になります(笑)」
「たとえ儲かったとしても、周りから人が去っていく経営はしてはいけない」と言う北原さん。人との繋がりが何よりも大切にされています。後編では、これからの目標や美容師の魅力について伺います。
Profile
北原孝彦さん
2015年、美容サロン『Dears(ディアーズ)』を地元長野に開業。翌年には2店舗目を展開。アフィリエイトで培ったスキルとリアル店舗を融合させた独自のweb戦略とでお客様が集まる空間を形に。入社したスタイリストは6ヵ月で予約が1ヵ月先まで埋まるプレイヤーに成長、自身も独立から1年7ヵ月でハサミを置き完全経営者にシフト。現在Dearsは全国45店舗まで拡大。将来の夢は、若者に勇気と笑いを与え「失敗してもいい」を伝えられる講演家になること。
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