柔道整復師とは? どんな資格が必要? 国家試験の概要と難易度について解説
最近人気の高い職業のひとつに、柔道整復師があります。柔道整復師とは、打撲、捻挫、脱臼、骨折などの損傷に対して、外科的な手術や投薬などの医療的な方法を使わない施術によって、回復させる人のことです。
柔道整復師は、損傷状態を良く見てどんな療法で回復させるかを判断し、適切な施術を行います。固定したりマッサージしたり、また運動療法や温熱療法も行います。
判例によれば、柔道整復師の施術は「医業類似行為」に分類されます。法定4種の「医業類似行為」(あん摩・はり・きゅう・柔道整復)の1つとされています。
骨折や脱臼の処置の場合は、緊急の場合をのぞいて医師の同意が必要とされていて、レントゲン装置を使用することはできません。
あん摩や灸が主に慢性的な症状を対象としているのに対して、整復は主に、骨折、脱臼、打撲、捻挫等の「急性期の新鮮な状態」に対する施術になります。
したがって緊急時に施術をすることも多く、お客様に頼りにされる仕事ですから、信頼を持ってもらえるよう、知識や技術はできるだけ多く身につけておかなければなりません。
事故やスポーツで起こる身体の損傷はもちろんですが、ストレスが引き起こす腰痛や首の痛みなど、手術で治すことができない症状を回復させる柔道整復師は、今やなくてはならない存在です。
そんな柔道整復師になるためには、国家試験に合格しなければなりません。どんな試験なのでしょう。どうすれば合格できるのでしょう。今回はそのあたりを解説していきます。
柔道整復師とは? 必要な資格
柔道整復師は、整体師とも呼ばれます。昔は「ほねつぎ」という看板を良く見かけましたが、骨折や捻挫、脱臼をしたとき、骨を正しい位置に戻して固定してくれる、医者にかなり近い人ですね。
柔道整復師は、勤務先の研修などを受ければできる、いわゆるマッサージ師とは違って、国家試験を受験し、合格しなければなりません。資格を持っていれば開業もできますし、信用も得られますね。
国家資格 柔道整復師
「柔道整復師」という国家資格は、2002年にジュネーブのWHO(世界保健機関)にて正式に認知されました。それ以降、アジアやヨーロッパの各国でも興味を持たれるようになり、世界の国々で施術ができるようになってきています。柔道整復師は、もはや国際的な資格と言えます。外国人の受験者数も増えています。
柔道は世界的なスポーツになりましたから、柔道から発祥したこの施術師という仕事が必要とされないわけがありませんね。今後は外国でも資格を取ることができるようになり、外国人の柔道整復師が増えていくことでしょう。
関連法律 柔道整復師法
ウィキペディアによれば、柔道整復師法は、昭和24年に「あん摩、はり、灸、柔道整復等営業法」として制定されました。昭和45年に単独の柔道整復師法が制定されました。
内容は、主に柔道整復師の業務、義務に関して規定しています。
また関連法案として、昭和47年には柔道整復師学校養成施設指定規則が施行され、養成施設の教育内容が指定されました。
柔道整復師になるには① 養成施設で専門の勉強をする
柔道整復師になるには、高校卒業後、柔道整復師養成施設として厚生労働大臣が認定した専門学校(3年制以上)、または文部科学大臣が認定した大学や3年以上の短期大学へ入学し、3年間をかけて柔道整復師としての知識及び技能の修得をしなければなりません。
養成施設に認定されている教育機関は、全国に109校(2015年度)あります。社会人のために夜間部を設けている施設もありますので、自分に合った学び方のできる養成施設を選びましょう。
養成施設では、まったくの基礎から勉強がスタートします。高校卒業後と言いましたが、学生の年齢は幅広く、18歳から50代の方まで一緒に勉強しています。高校時代に生物を習っていなくても問題ありません。どんな人にも門戸が開かれているのです。
養成施設では、解剖学や生理学、運動学などの基礎科目、柔道整復実技などの専門科目について履修し、柔道と整復の認定実技試験に通過して国家試験の受験資格を得るために勉強します。
もちろん柔道の授業もありますが、こちらも初心者の方でも大丈夫です。柔道の実技だけでなく、所作や礼法も学びます。
柔道整復実技では、指定された症例の対処、骨折の整復、脱臼の固定も学びます。
柔道整復師になるには② 国家試験を受験する
学校で必要な知識と技能を身に着け、国家試験の受験資格を得たら、いよいよ受験です。
試験は筆記テストのみで行われます。科目は後述する科目からまんべんなく幅広く出題され、全230問、四肢択一の問題をマークシートで解答します。失点が、必修問題30問中20%未満で、残りの200点中120点正解することが合格ラインとなります。
合格して免許をもらえば、正式に「柔道整復師」としてさまざまな分野で活躍をしていくことができます。
受験資格
受験資格は、文部科学大臣が指定した学校または都道府県知事が指定した柔道整復師養成施設等で最低3年間以上のカリキュラムを受講し、卒業または卒業見込みであることです。
また、柔道整復師として働くことが難しい心身の障害、麻薬の中毒者、罰金以上の刑に処せられたことがある者等は欠格事由として資格は与えられません。
試験日・試験地
1989年(平成元年)までは、当道府県知事が認定試験を行っていました。今は毎年1回、3月に全国10カ所の会場で実施されています。
会場の場所は、北海道・宮城県・東京都・石川県・愛知県・大阪府・広島県・香川県・福岡県・沖縄県となっています。
試験内容
試験科目は、解剖学・運動学・生理学・衛生学・公衆衛生学・病理学概論・一般臨床医学・外科学概論・整形外科学・リハビリテーション医学・柔道整復理論・関係法規です。
受験料
受験手数料は16,500円です。
柔道整復師になるには③ 免許を登録する
柔道整復師の免許は、柔道整復師法第8条のⅡ第1項にもとづいて、柔道整復師名簿に登録することによって交付されます。平成30年3月31日現在の登録者数は106,126名です。
名簿への登録手続きは、申請書用紙を郵送またはPDFで取り寄せ、記入して東京都港区にある公益財団法人 柔道整復研修試験財団・登録担当へ申請をします。国家試験の合格発表後に諸手続きをしましょう。
柔道整復師の国家試験の難易度・合格率は?
合格率は低下していて、1998年には85.6%でしたが2015年には65.7%まで減少しています。
学校でしっかりと学んでいれば合格できる難易度ではありますが、今後は難しくなることが予想されます。
就職には困らない? 柔道整復師の需要
かつては接骨院を設立して、独立開業する人が圧倒的に多かったのですが、最近は20%しかいません。残りの80%の柔道整復師は、接骨院をはじめ病院・診療所・介護関連事業所・スポーツジム等で雇用されています。
どこでも人手不足のため、この資格を持てば就職には困らないと言えそうです。実際に求人情報を見てみると、募集人数が他の求人と比べて桁違いに多いことがわかります。
開業をするのでなく雇用されて働きたいと思うなら、また開業する前に雇用されて修行を積みたいと思うなら、たくさんの受け皿がありますから、自分に合ったやりたいことができる施設を探すことが大切です。
整骨院
柔道整復師の就職先としてもっとも多いのが整骨院です。複数の整骨院を展開している運営会社でしたら、社員教育が充実していたり、独立を支援してくれるシステムがあるところもあります。
実践を積むためにも、規模の大きい整骨院はおすすめです。施設の設備が整っていたり、最新の機器が取り入れてあれば、働きながらさらに学ぶことができるからです。柔道整復師としてスキルアップするには、いかに多くのお客様に施術をするかが勝負になります!
介護施設
柔道整復師は講習を受けて機能訓練指導員になることができますが、介護施設ではひとり以上の機能訓練指導員の配置が義務付けられていますから、特別養護老人ホーム・デイサービスでは常に募集しているような状態です。
高齢者が多い介護施設は、技術を磨く格好の場所です。身体のいろいろな部位に不調をきたしているお客様が数多くいるので、ひとりとして同じ症状、同じ施術で良いはずはありません。一番需要があり一番勉強になるのは介護施設かも知れません。
整形外科
整形外科では医師のお手伝いをする仕事をすることになります。お客様(患者さん)から見たら同じ「先生」ですから、責任を持って許された施術行為を行いましょう。
また、医師とは異なる立場でお客様(患者さん)に接するメリットを生かして、お客様とのコミュニケーションから症状を把握する手腕を身に着けることもできます。
ただし、深刻な症状のお客様も多いですから、医療従事者としての自覚をいっそうしっかり持って働きたいところです。
スポーツジム
スポーツジムでは、トレーナーとしてお客様の身体についてのアドバイスをすることになります。選手のマッサージや生活上の注意・運動について提案をすることもあります。
プロスポーツ選手には担当のトレーナーが付いて、日々のトレーニングのアドバイスをしたりマッサージを施したりするのが普通です。個別に担当する場合は、そのお客様の細かい症状や情報を把握し、朝から晩まで気を遣いましょう。
また、ジムで身体の部位を傷めてしまったお客様には応急処置をして、医師に診てもらうよう適切なアドバイスをすることも仕事として大切なことです。
柔道整復師は将来性のある仕事!
柔道整復師はこれからますます需要が高まると見られています。
機能訓練指導員の資格も取っておけば、高齢化社会においては欠かせない人材となるでしょう。
そしてすぐには難しくてもいずれ独立開業することを考えてみましょう。身近に整骨のプロがいる社会は今後絶対に必要です。
柔道整復師は医者ではありませんが、その代わり医者よりも親身にお客様のニーズを聞き、汲み取り、ひとりひとりが健康に動ける身体で年齢を重ねるためにどういう施術をし、運動をし、どんなことを心がけたらいいかアドバイスをしてあげる存在になれるはずです。
少し足腰を傷めたくらいで、いちいち医者にかかるお客様はいません。時間もかかるし痛み止めをもらう程度の治療しかしてもらえないとわかっているからです。ですから、身近にかかりやすく親身になってくれる柔道整復師がいれば、今より高齢者が安心して動ける社会になるでしょう。
ぜひ柔道整復師となって、さまざまな場面で実力を発揮してください!