美容室を開業するのに資金はどれくらい必要?内訳や調達方法・開業までの流れを解説

美容室を新規開業するにあたって、気になるポイントのひとつが開業資金です。必要な設備や道具などを揃えるには、やはり高額の費用がかかります。しかし、実際のところどの程度の資金が必要なのでしょうか。

そこで、今回は美容室の開業資金の目安や、どんなことにいくらかかるかという内訳を解説します。さらに、自己資金が足りないときの調達方法や、美容室を開業する際の注意点もあわせて紹介するので、美容室開業を目指す人はぜひ参考にしてみてください。

美容室の開業資金|目安は1,000万円~

美容室を新たに開く場合、都会か地方かという違いや店の規模などにもよりますが、1,000~2,000万円程度の開業資金が必要です。意外に高額で、衝撃を受けた人もいるのではないでしょうか。

1,000万円以上という高額な資金のうち、どんなものにどの程度の費用がかかるのかという内訳の詳細は、次章でお伝えします。

美容室の開業にかかる費用の内訳

ここでは、一般的な規模の店舗をスケルトン物件から開業する場合を想定した、費用の内訳を見ていきましょう。

1. 物件取得費

物件を借りるための初期費用で、敷金(保証金)・礼金・仲介手数料・前家賃などが含まれます。立地や広さによりますが、100~200万円前後は見ておきましょう。

2. 内外装工事費

開業資金の大部分を占めるのが、内外装の工事費です。床・壁・天井の内装から、電気、ガス、水道、空調などの設備工事、看板などの外装工事に費用がかかります。スケルトン物件の場合、500万円~1,000万円近くかかることもあります。

3. 設備費・備品代

シャンプー台・スタイリングチェア・鏡・促進器(パーマ機材など)・洗濯機・パソコン・レジといった施術や運営に必要な設備・備品です。合計で200万円ほど見ておくと安心です。

詳しくは下記の記事も参考にしながら、準備してみてください。
▼あわせて読みたい
美容室の開業に必要な備品は?オープンに向けてリストを作って準備をしよう

4. 美容品・材料費

シャンプー、トリートメント、カラー剤、パーマ液といったお客様への施術に直接使用する消耗品です。取り扱うブランドやメニュー数によりますが、30万円~50万円程度を見込んでおきましょう。

5. 広告宣伝費

ホームページ作成、予約サイトへの掲載、SNS広告、チラシ制作など、お店を知ってもらうための費用です。50万円前後は用意しておきたいところです。

6. 開業後の運転資金(3〜6ヶ月分)

売上がなくても事業を継続できるよう、家賃、光熱費、人件費、材料費などのランニングコストを事前に準備しておく必要があります。最低でも3ヶ月分、できれば6ヶ月分の運転資金として150万円~250万円ほどを確保しておきましょう。

物件の種類を知ろう:「居抜き」と「スケルトン」

開業する物件には大きく分けて2種類あり、どちらを選ぶかによってお店づくりのスタイルが大きく変わります。それぞれの特徴を理解し、ご自身の計画の参考にしてください。

居抜き物件の特徴

「居抜き物件」とは、前のテナントが使用していた内装や設備が残された状態の物件です。特に前の店舗が美容室だった場合、シャンプー台や空調などをそのまま活用できることもあります。

準備期間を短縮し、スピーディーに開業したい場合に適しています。ただし、既にある内装やレイアウトを活かす形になるため、デザインの自由度は限られます。

スケルトン物件の特徴

「スケルトン物件」は、内装が何もない、建物の骨組みだけの状態の物件です。壁紙や床、間仕切りなどをゼロから作り上げるため、理想のデザインやコンセプトを細部まで表現した、オリジナルの空間づくりが可能です。

こだわりのお店をじっくりと創り上げたい場合に向いていますが、その分、開業までの準備には時間がかかる傾向があります。

美容室の開業資金を調達する方法

開業資金が1,000~2,000万円かかるとなると、すべてを自己資金で工面するのは難しいといえます。実際のところ、一般的に開業資金のうち自己資金は1/4~1/3程度とされ、目安は200~300万円です。

1. 融資を受ける方法と注意点

日本政策金融公庫からの「公的融資」

新規開業者にとって最も一般的な資金調達方法が、国が100%出資する日本政策金融公庫からの融資です。民間の金融機関に比べて新規事業者への融資に積極的で、低金利・固定金利で借り入れできるのが特徴です。特に「新規開業資金」や「女性、若者/シニア起業家支援資金」などの制度が利用できます。

引用元:日本政策金融公庫

審査のポイントと事業計画の書き方

融資の審査では、自己資金の額、個人の信用情報、そして事業の実現可能性を示す事業計画書が重視されます。事業計画書には、主に以下の項目を具体的かつ客観的な数字で記載します。

・創業の動機: なぜこの事業を始めたいのか。
・経営者の略歴: これまでの美容師としての経験や実績。
・取扱商品・サービス: メニュー、料金設定、強みや特徴。
・必要な資金と調達方法: 開業にいくら必要で、自己資金と借入金をどう分けるか。
・事業の見通し(収支計画): 開業後の売上、経費、利益の予測。希望的観測ではなく、客単価や想定客数から算出した現実的な数字を示します。

2. 補助金・助成金を申請する

国や地方公共団体が提供する、返済不要の支援金です。公募期間や要件が定められており、必ず受給できるわけではありませんが、活用できれば大きな助けとなります。

※補助金・助成金は公募期間が限られており、制度内容も頻繁に変わります。利用を検討する際は、必ず公式サイトで最新の情報を確認してください。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者(美容室では常勤従業員が5人以下の場合)に対して、機械の購入や宣伝活動、サービスの開拓などにかかる費用を支給してもらえるという補助金。

業務の効率化や販路の開拓などの取り組みに対して認められるもので、申請したのちに審査で採択されると受け取ることができます。

全国商工会連合会|小規模事業者持続化補助金

IT導入補助金

POSレジの導入やホームページ制作など、IT関連の開業資金を補助してもらえます。「通常枠」や「セキュリティ対策推進枠」などに分かれており、補助額・補助率は内容などによって異なるので、自分に合うものを確認しましょう。

なお、受付の開始や締切などのスケジュールは、IT導入補助金のホームページに掲載されています。

IT導入補助金

創業支援助成金

家賃・備品代・広告宣伝費など、開業にかかる費用の一部を支援してもらえる助成金。支給元である地方自治体ごとに一定の受給条件が定められており、助成額も違うため、該当するかどうかも含めて確認することが大切です。

引用元
伊丹市|創業支援等事業について
伊丹市|創業支援補助金

美容室を開業するまでの流れと必要な手続き

美容室の開業準備は、半年前~1年前から始めるのが一般的です。

1. コンセプト・事業計画の策定(12ヶ月前~)

「どんなお客様に、どんな価値を提供したいか」というお店の軸(コンセプト)を固めます。これを基に、メニュー、料金、資金計画などを盛り込んだ事業計画書を作成します。これは融資を受ける際にも必須となる、最も重要な工程です。

2. 物件探し・契約(6~8ヶ月前)

コンセプトと予算に合った物件を探します。この時、初期費用を抑えられる「居抜き」にするか、内装を自由にデザインできる「スケルトン」にするかで、後の費用とスケジュールが大きく変わります。

3. 資金調達の申請・手続き(5~7ヶ月前)

作成した事業計画書をもとに、自己資金で不足する分を日本政策金融公庫などに融資申請します。審査には1ヶ月以上かかることもあるため、物件契約と並行して早めに動き出すことが大切です。

4. 内外装・設備工事(3~5ヶ月前)

融資の目処が立ち、物件の引き渡しが完了したら、内外装の工事に着手します。シャンプー台やスタイリングチェアといった大型設備の搬入・設置もこの期間に行います。

5. 開業に必要な資格の確認と行政手続き(1~2ヶ月前)

保健所への「美容所開設届」や、税務署への「開業届」など、法的に定められた手続きを進めます。特に保健所の検査は、クリアしないと営業を開始できません。


6. 広告宣伝・スタッフの最終準備(1ヶ月前~)

オープンに向けて、SNSやウェブサイトでの告知、チラシの配布、予約受付の開始といった集客活動を本格化させます。スタッフを雇用する場合は、接客や技術の最終トレーニングも行いましょう。

開業に必要な資格と行政手続きの詳細

美容室の開業には、美容師免許の他に、以下の資格や手続きが必須です。

管理美容師資格

美容師が常時2名以上いる店舗では、従業員のうち1名が「管理美容師」の資格を取得している必要があります。免許取得後3年以上の実務経験を積み、指定の講習会を修了することで取得できます。

美容所開設届

店舗の所在地を管轄する保健所に提出します。施設の構造や衛生管理が基準を満たしているか、保健所の担当者による実地検査が行われます。この検査に合格しないと営業できません。

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)

店舗の所在地を管轄する税務署に提出します。事業を開始したことを税務署に申告するための書類です。

青色申告承認申請書

開業届と一緒に提出することで、税制上の優遇措置(最大65万円の特別控除など)が受けられる青色申告が可能になります。節税効果が大きいため、必ず提出しましょう。

美容室開業で失敗しないためのポイント

せっかくお金をかけて開業するのなら、失敗は避けたいものです。ここでは、開業を失敗に終わらせないためのコツをお伝えします。

コンセプトに合った物件を選ぶ

美容室やサロンの開業を成功させるには、物件選びが重要です。まずはお店のコンセプトやターゲットとなる客層を明確にしてから、コンセプトに合った物件を選びましょう。

例えば、「高単価で落ち着いた時間を過ごしてほしい」というコンセプトなのに、若者で賑わう雑居ビルの中では、本来のターゲット層のお客様が来店しにくい可能性があります。コンセプトと立地・物件のイメージを一致させることが成功の第一歩です。

資金計画をしっかりと練る|相談窓口の活用もおすすめ

サロン開業でよくある失敗が、内外装や備品へのこだわりによる予算オーバーです。開店後は売上がなくても家賃や光熱費などのランニングコストが毎月発生するため、これらも計算に入れた綿密な資金計画が不可欠。「いくらまで内外装や設備に回せるか」を明確にしておきましょう。

もし資金計画に不安があれば、日本政策金融公告の相談窓口や地域の商工会議所、税理士といった専門家への相談もおすすめです。

サロンに合った人材を採用する

開業するお店でスタッフを雇う場合は、慎重に採用活動を行いましょう。最近は、在籍する美容師でサロンを選ぶお客様も増えているため、採用するスタッフのスキルや人柄はお店の評判に直結します。 以下の点などを基準に、慎重に判断しましょう。

サロンの技術レベルやコンセプトに合っているか
他のスタッフやお客様と円滑なコミュニケーションが取れるか
お店を一緒に盛り上げていこうという意欲があるか

また、採用した美容師たちが気持ちよく長く働けるよう、適切な労働環境や待遇を整えることも、離職を防ぎ、安定した経営を行う上で非常に重要です。

美容室を開業する際の注意点

美容室の開業には、注意すべき点もあります。開業後に慌てずに済むよう、しっかりと確認しておきましょう。

集客に苦戦する可能性がある

厚生労働省の資料によると、美容室はここ5年間毎年増加しており、令和5年度末時点でその施設数は27万軒を超えています。すでに相当数のお店があるなか、オープンしたての美容室に来てもらうのは容易ではなく、開業直後は、お客様が思うように来店しないおそれがあります。

コンセプトやメニュー・優れた技術など、他店との明確な差別化ができていなければ、苦しい状況が続くことも。 しかし、開業前から集客活動に力を入れておくと、開店時に予約が入った状態でスタートできる可能性が高まります。集客方法には、SNS・ホームページ・ブログ・予約サイト・チラシなどがあるので、複数の媒体を併用して積極的なアプローチを行いましょう。

引用元
厚生労働省|令和5年度衛生行政報告例の概況
厚生労働省|令和5年度衛生行政報告例-3 生活衛生関係

美容師のスキルだけでなく経営の知識が必要

美容師として独立開業することは大きな夢ですが、単に美容師としての技術が高いだけではお店を長く続けることはできません。お店のオーナーとして、スタッフの労務管理、資金繰り、集客マーケティングといった経営全般の知識が不可欠になります。

どんぶり勘定で経営していると、気づいた時には資金がショートしていたという事態にもなりかねません。日々の売上や経費をしっかり管理し、事業を継続的に成長させていくための経営ノウハウを、開業前から学んでおくことが重要です。

開業前のステップとして、好条件のサロンで経験を積む選択肢も

開業前にサロン経験を積みたい人や、まずは安定した収入を得ながら準備を進めたい人は、より条件の良いサロンへの転職を検討するのも一つの方法です。

独立・開業支援制度のあるサロンや、高収入が目指せるサロン探しには、美容業界に特化した求人サイト「リジョブ」がおすすめです。会員登録をすれば、希望の条件に合う職場からスカウトが届くこともあります。理想の働き方を見つけるために、ぜひご活用ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 自己資金は、最低いくら必要ですか?
A. 開業資金全体の1/4~1/3が目安です。1,000万円の開業なら250万円以上あると、融資の審査で有利になります。自己資金ゼロでの開業は非常に困難です。

Q. 開業資金をできるだけ安く抑えるコツはありますか?
A. 「居抜き物件」を選ぶのが最も効果的です。また、中古の美容器具を活用したり、複数の業者から見積もりを取って比較したりすることも重要です。

Q. 開業届はいつまでに出せばいいですか?
A. 事業を開始してから1ヶ月以内に税務署へ提出します。節税メリットの大きい「青色申告承認申請書」も一緒に提出するのがおすすめです。

Q. 結局、何から始めたらいいですか?
A. まずは「どんなお店にしたいか」というコンセプトを具体的に決めることから始めましょう。コンセプトが決まれば、必要な資金や行動計画が見えてきます。


この記事をシェアする

編集部のおすすめ

関連記事

近くの美容師求人をリジョブで探す

株式会社リジョブでは、美容・リラクゼーション・治療業界に特化した「リジョブ」も運営しております。
転職をご検討中の場合は、以下の地域からぜひ求人をお探しください。

関東
関西
東海
北海道
東北
甲信越・北陸
中国・四国
九州・沖縄