小規模多機能型居宅介護とは? 勤める前に知っておきたいデメリットと注意点
日本にはさまざまな介護サービスがありますが、そのなかでも利用者やそのご家族に柔軟に対応したものが小規模多機能型居宅介護です。
今回は、小規模多機能型居宅介護の概要にあわせて、勤める前に知っておきたいデメリットについて解説します。
小規模多機能型居宅介護とは?
ここでは、小規模多機能型居宅介護とはなにかについて紹介します。サービス内容や利用者の特徴、1事業所あたりの定員について解説するので、勤める前に押さえておきましょう。
サービス内容|通い・訪問・宿泊
小規模多機能型居宅介護で提供するサービスは以下の3つです。
・通い
・訪問
・宿泊
ここではそれぞれの詳細について紹介します。
通い
通いは、利用者の自宅から事業所までの送迎をはじめ、健康状態の管理・入浴介助・リハビリ、レクリエーションなどのサービスを提供するもの。
1日の定員はおおむね15名以下と少人数の対応に限られるので、「家族がいない時間だけ利用したい」といった要望にも柔軟に対応します。
訪問
訪問は、スタッフが利用者の自宅に訪問し、食事や入浴の介助のほか、排泄や服薬の介護までを提供するもの。
通いや宿泊で担当した顔なじみのスタッフが訪問するのが一般的なので、利用者やご家族も安心して受けられるサービスです。
泊まり
泊まりは、一泊の利用はもちろん、事業所に空きがあれば利用者に連泊していただくことも可能で、さまざまな介護を提供するもの。
利用者やご家族の希望に沿って利用しやすく、通いと同様のサービスを提供します。泊まりでは夜間の見守りや体位変換など、体調のサポートも行います。
対象者|要介護認定を受けた方
小規模多機能型居宅介護の対象者は、介護保険サービスの一つに分類されるため、居住市区町村で要介護認定を受けた方です。
地域密着型サービスに位置する小規模多機能型居宅介護を利用するには、事業所と同じ市区町村に居住していなければなりません。
さらに、医療行為を伴う訪問看護はできないので、小規模多機能型居宅介護によるサービスのほか、医療系サービスを必要とする利用者にはきちんと説明する必要があります。
定員|1事業所あたり29名以下
小規模多機能型居宅介護の定員は、1事業所あたり29名以下。通いがおおむね15名以下(一定の要件を満たす場合は最大18名)、泊まりがおおむね9名以下(通いの利用定員の3分の1~9名の範囲内)と定められています。
一日あたりの定員も決められていることから、利用者やご家族には定員超えの可能性についても説明する必要があります。
費用|定額制
小規模多機能型居宅介護では、どのサービスを利用しても利用料は定額です。ただし、要支援・要介護認定度合いによって月々の料金が変動するほか、食費・おむつ代などの実費分は介護保険適用外のため、利用者側の自己負担となります。また、各事業所や利用回数によっても異なります。
下表はあくまで例になりますが、月の利用料を表したものです。利用を検討する利用者やご家族に共有する際の参考としてご活用ください。
要支援の場合 | 利用者の負担(1割かつひと月あたりの計算) | |
同じ建物に住む方以外のご家族に行われる介護の場合 | 同じ建物に住む家族に行われる介護の場合 | |
要支援1 | 3,403円 | 3,066円 |
要支援2 | 6,877円 | 6,196円 |
要介護の場合 | 利用者の負担(1割かつひと月あたりの計算) | |
同じ建物に住む方以外のご家族に行われる介護の場合 | 同じ建物に住む家族に行われる介護の場合 | |
要介護1 | 10,320円 | 9,298円 |
要介護2 | 15,167円 | 13,665円 |
要介護3 | 22,062円 | 19,878円 |
要介護4 | 24,350円 | 21,939円 |
要介護5 | 26,849円 | 24,191円 |
引用元
小規模多機能型居宅介護|介護事業所・生活関連情報検索
小規模多機能型居宅介護を選ぶメリット・デメリット
利用者やご家族が小規模多機能型居宅介護を利用するには、目的に沿ったものかを判断する必要があり、そのためにはメリットとデメリットについて押さえておくことが大切です。
ここでは利用者の視点から見たメリットとデメリットを紹介します。利用を検討する利用者やご家族への説明の参考にしてください。
小規模多機能型居宅介護のメリットとは?
小規模多機能型居宅介護のメリットは4つあります。
・1回の契約で3つのサービスが利用できる
・月額料金が定額なので、介護保険支給限度額からはみ出す心配が不要
・24時間365日利用制限を気にせず利用できる
・利用者と顔なじみのスタッフがそれぞれのサービスに対応
詳細については後述しますが、1回の契約で「通い」「訪問」「宿泊」のサービスがまるごと受けられるのは、小規模多機能型居宅介護の最大のメリットです。
また、ほかの介護サービスとは違って、どのサービスを利用しても同じスタッフが担当することも、利用者やご家族の安心と信頼につながることから、メリットのひとつと言えるでしょう。
小規模多機能型居宅介護のデメリットとは?
小規模多機能型居宅介護のデメリットは3つあります。
・定員数が少なく設定されているため、柔軟に利用できない可能性がある
・ほかの介護サービスとの併用が難しい
・サービス利用回数が少ないと割高に感じる場合がある
小規模多機能型居宅介護の利用を検討する利用者やご家族には、あらかじめ受けたいサービスや、利用頻度を明確にすることをおすすめしましょう。
ほかの介護サービスとはどこが違うの?
小規模多機能型居宅介護は、ほかの介護サービスと大きな違いが3つあります。利用を検討する利用者やご家族へ正しい説明ができるよう、しっかり押さえておきましょう。
グループホームとの違い
グループホームは、知的障害や精神障害、認知症をわずらう高齢者などを中心に、スタッフやヘルパーの支援を受けて集団生活を行う施設。
入居者の自立に向けた支援を中心としたサービスなので、短期的な宿泊が可能なサービスを提供する小規模多機能型居宅介護とは違い、居住型がメインとなります。ただし、小規模のグループホームであれば、5~9人程度のユニットが主であることから、宿泊も可能です。
訪問介護との違い
訪問介護は、規定のサービス枠に沿った介護が受けられるほか、決められた時間にスタッフが自宅を訪問し、必要な介護が受けられるものです。
小規模多機能型居宅介護は、利用者の状態に合わせた介護が受けられるほか、夜間でも緊急対応が可能なので、サービスの順応性に大きな違いがあります。
デイサービスと違い
デイサービスは、施設や事業所が決めた時間に沿ってレクリエーションや食事、入浴などを行うものです。小規模多機能型居宅介護は、通いのなかで利用者の生活に合わせた時間の過ごし方ができるので、生活スタイルに大きな違いがあります。
ショートステイとの違い
ショートステイは、予約したうえで各種サービスを利用する施設です。利用時間や受けられるサービスが決まっているので、「通い」「訪問」「泊まり」の3つを一つの施設で受けられる小規模多機能型居宅介護とでは、柔軟性に大きな違いがあります。
勤める前に知っておきたいデメリットと注意点
小規模多機能型居宅介護に勤めるうえでは、デメリットや注意点について押さえておきましょう。入社後のトラブルにつなげないよう、今後の参考にしてください。
3つのサービス全てに対応しなくてはならない
小規模多機能型居宅介護には、「通い」「訪問」「泊まり」の3つのサービスがあります。いずれもひとつの事業所に在籍するスタッフが全て対応しなければならないので、入社直後は覚えることが多く、たいへんに思うことも。
3つのサービスを同じ事業所で受けられる特徴は、利用者やご家族にとっては安心して任せられるという安心材料のひとつになります。反面、覚えることが多く、たいへんに思う時期もあるかもしれませんが、乗り越えればやりがいを感じられる職場となるでしょう。
アットホームさが裏目に出ることも
小規模多機能型居宅介護は、小規模ならではのアットホームさがあります。その一方で、利用者やほかのスタッフとの密接な関係性が裏目に出て、無理を押し付けられたり、関係がこじれて異動が難しかったりする場合も。
利用者やほかのスタッフの立場で考えれば、信頼しているからこそ起こりえる問題ですが、状況や内容によっては、利用者のご家族や事業所の上司と連携して対策する必要があります。
小規模多機能型居宅介護で働くメリットとは?
小規模多機能型居宅介護で働くメリットは、「通い」「訪問」「泊まり」の3つのスキルをひとつの事業所で磨けることです。介護サービスによっては対応していないサービスもあるので、すべて覚えてしまえば訪問介護サービスやデイサービスなど、幅広い職場でスキルを活かせます。
働くうえではデメリットもありますが、ひとつひとつ丁寧に取り組むことで、高齢者が増加し続ける日本を支える頼もしい人材に成長できるでしょう。
小規模多機能型居宅介護は「通い」「訪問」「泊まり」を提供するサービス
小規模多機能型居宅介護は、「通い」「訪問」「泊まり」の3つをすべて利用できる柔軟性に長けた介護サービスです。利用者にとっては柔軟性がメリットに感じられる一方、働き手にとっては覚えることややるべきことが多く、デメリットになる場合も。
小規模多機能型居宅介護での就職や転職を検討中の方は、特徴やデメリットを押さえたうえで、自分に合った職場を選びましょう。
引用元
厚生労働省:小規模多機能型居宅介護
厚生労働省:どんなサービスがあるの? – 小規模多機能型居宅介護