高齢になった知的障がい者のサポートが将来の夢【介護リレーインタビューvol.58/社会福祉士 横田康太さん】#2
介護業界に携わる皆様のインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。
お話を伺ったのは…
介護老人福祉施設 大樹の里
社会福祉士
横田康太さん
日本社会事業大学社会福祉学部福祉計画学科卒業後、知的障がい者入所施設に約6年間勤務する。平成30年、社会福祉法人 緑樹会に転職し、介護老人福祉施設 ラペ日野で介護リーダーを務める。令和6年には同法人内の大樹の里に介護係長として赴任し、現在に至る。
弟さんの助けになりたくて福祉の道を歩み始めた横田さん。前編では知的障がい者が入所する施設で働き始めましたが、次なる課題が見えてきたことをご紹介しました。
後編では、介護老人福祉施設に転職を決めるまでのいきさつ、社会福祉士として勤務する悩み、仕事で辛いと感じること、これからの夢について伺います。
大学の友人たちのアドバイスを参考に転職先を決定!

福祉関連の会社や施設に就職している日本社会事業大学の卒業生たち。卒業後もたびたび集まって交流しているそう。
――緑樹会にはどのような経緯でお勤めになったんですか?
「高齢者に関わる施設に勤めたい」と思っていましたが、特別養護老人ホームがいいのか、介護老人保険施設がいいのか、グループホームなのかデイサービスを中心にしたところがいいのか、いっぱい選択肢があったので迷っていました。
――それだけあると迷いますね。
大学時代の友人たちが、いろいろなところで仕事をしているのでアドバイスをもらいました。
――日本社会事業大学の卒業生ですね?
高齢者に関わる施設に勤めている人もいますし、介護用ベッドを扱うメーカーに勤務している人、公務員もいます。彼らに老人福祉の実情を聞いて、この社会福祉法人 緑樹会に勤めることに決めました。
――いろいろな情報が手に入る理想的な環境だったんですね。
そうですね。何ヶ月かに1回のペースで集まって情報交換をしています。職場や職種は違っても同じ福祉関係なので相談しやすいですね。情報交換というと堅苦しいですけれど、気心の知れた仲間ですね。
――知的障がいの施設と高齢者の施設の違いは何ですか?
高齢者の施設は、入所なさる前の暮らしをできるだけ継続できるようにしています。この施設でもインテリアが整っていたり、食事を楽しむ観点から食器にこだわっていたりします。知的障がい者の場合、安全であることが優先されるので、しつらえの目的や意図が異なります。
――知的障がいとは違いますが、高齢になると認知症になる方もいます。対応の仕方はまた違うんですか?
対応の面で似ている部分もありますが、まったく違いますね。専門的な支援ができる施設がまだまだ少ない。総合的な支援ができる仕組みがこれから必要になってくると思います。
知的障がいの方に対するノウハウがしっかり理解されるようになれば、高齢者施設でも知的障がい者の受け入れができます。少しでも交わってくればいいな、というのが私の目標です。
――交わっている所は増えていますか?
増えていないですね。肌感ですが。まだこの交わりの必要性を感じている方が少ないと思います。
高齢者支援と知的障がい支援。この2つを同時に考えていくのが夢

オンとオフのスイッチを切り替えることがストレスを溜めない秘訣とか。
――社会福祉士の資格をお取りになったのはどのタイミングで?
昨年です。大学を卒業すると社会福祉士の受験資格があったんですが、介護の現場に出るからには持っていた方が良いだろうと思って受験しました。実は卒業してからすぐチャレンジしたんですが、まったく勉強しないで受けたら案の定、落ちてしまったんです(笑)。今回はしっかり勉強したので、大丈夫でした。
――社会福祉士の資格があるとやはりメリットは大きいですか?
介護の現場にいると介護福祉士の資格を取って、ゆくゆくはケアマネージャーになる…というキャリアアップが一般的なんです。社会福祉士はオールラウンダーなイメージですね。医学的なことも知っていなければならないし、福祉法の制度、介護保険の制度にも詳しくないといけない。福祉に関する法律もある程度分かっていないといけません。
今、私の役職は介護係長として介護現場を見ながら、新人で配属された生活相談員の指導もしています。
――指導は難しいですか?
後輩には苦労を乗り越えた先にやりがいを感じてほしいと思っていますが、そういう風に感じてもらえるように指導するのは難しいですね。目の前に障害物があると、つい手を出したくなるじゃないですか(笑)。でも出してはいけないんですよね。「やってみろ!」って構えていないと(笑)。もちろん、「この方法じゃなくて、あの方法の方がおすすめだよ」風なアドバイスはしています。
――介護関連の資格は何か取ったんですか?
介護福祉士の資格を取りました。ゆくゆくはケアマネージャーの資格も取るつもりです。
――横田さんは、すごく仕事に前向きでいらっしゃいます。辛いことや壁に当たったときはどうしているんですか?
「辛いから仕事を辞めよう」とは思ったことはないですね。たぶん、知的障がい者と高齢者の総合的に支援したいという目標があるからだと思います。辛さを引きずらないのは、オンとオフの切り替えがハッキリしているからじゃないかと。家に帰ったら仕事のことはまったく考えません。子どもがまだ小さいので、家の中が子ども優先なのもありますけど(笑)。
――横田さんのこれからの夢は何ですか?
障がい者福祉の業界はまだ多くの課題を抱えていて、内側から問題を解決するのは難しい。それならば、高齢者福祉業界から障がい者福祉業界に手を伸ばす方が現実的ではないかと思っています。理想論だけではなく、サービスの総合化が図れるようにしたいです。そのために勉強をして働いていくつもりです。
――この業界を目指す方にメッセージをお願いします。
介護福祉士や管理栄養士などとは違って、社会福祉士は具体的な目標を立てづらいように感じます。社会福祉士になったら「こういう仕事がしたい」「こんな課題を抱えた人にアプローチしたい」といったビジョンを明確に持ってください。よく「初心、忘れるべからず」って言いますよね。まずは「初心を持つこと」。そして忘れないことが何よりも重要だと思います。
横田さん流! 社会福祉士の心得三か条
1.職場や環境が違う人たちとの情報交換を積極的に行う。
2.オンとオフをしっかり切り替えて、ストレスを抱えない。
3.「初心」を目標に定めて、達成に向けて努力すること。
撮影/森 浩司