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介護・看護・リハビリ 2021-05-02

【今さら聞けない!? 介護のお仕事の基本vol.32】『脱健着患』って? 衣類の着脱支援、基本の「キ」

介護現場での様々な困りごとの対処法をご紹介する当企画。今回は、衣類の着脱支援のときによく耳にする『脱健着患(ダッケンチャッカン)』という言葉を取り上げます。

「『脱健着患』が基本よ」手間取る私への先輩からの一言。『ダッケンチャッカン』ってなんだっけ?

介護職として働きだして間もないAさん。朝晩の着替えや入浴介助のときに、衣類の着脱支援がいつもスムーズにできなくて悩んでいます。そんなAさんに先輩が「『脱健着患』が基本」だと助言してくれました。

では、先輩の言う『脱健着患』とはどういうことなのかをみていきましょう。また、衣類の着脱の支援で大切にしたいことも合わせてご紹介します。

ポイント1:着るときは『患側(かんそく)』から。脱ぐときは『健側(けんそく)』から

高齢者にとって衣類の着脱は、痛みや苦痛を伴うことがあります。麻痺などで関節の可動域に制限がある場合には脱臼することも。こういった不安から着替えを嫌いになってしまう人もいるため、衣類の着脱支援で大切なことは、本人の痛みや不安な思いを最小限にすることです。

そのための鉄則が、「着るときは『患側』から。脱ぐときは『健側』から」を意味する『脱健着患』です。脱ぎ着のときに動かす範囲が小さくてすむ動作を、可動域が制限されている側(患側)にあてることで、患部への負担を極力避けることができます。

基本中の基本なので、衣類の着脱支援のときには徹底して行いましょう。

ポイント2:衣服と着替えは生活意欲の向上にもつながる

衣服は、自分らしさを表現するもの。それは介護される身となっても同じです。好きな衣服、その場に応じた衣服を身につけることで、気持ちが上がり、生活にハリがでることも。朝晩、きちんと着替えをすることで生活にメリハリがつき、生活リズムを整えることにもつながります。

つまり、衣類と着替えは、単にからだを保護して清潔を保つだけのものではないのです。要介護者の生活意欲の向上にもつながる大切なことだと心得ておきましょう。

衣類の着脱の支援をよりよくする2つのこと

1. 環境を整える
2. 福祉用具を取り入れる

「着替え」はプライバシーに関わる行動です。人に見られたくない、見られるのは恥ずかしいと思うのは当たり前。衣類の着脱を支援するときには、周りから見えないようカーテンを閉めるなどの配慮を忘れないようにしましょう。

また、本人が着たい衣類を選べるような収納環境に整えたり、快適な室温に調整したり、介護者の手を温めておくことも、「着替え」での不快感や不安を軽減するポイントです。直接的な支援だけでなく、周りの環境へも目を向けてみるといいでしょう。

要介護者の身体状況によっては、『脱健着患』だけでは痛みや不安を解消できないこともあります。その場合は、「ボタンかけアシスト」のような福祉用具や、脱ぎ着しやすいように作られた多機能型衣類などを使うことを提案してみるのはどうでしょうか。

たかが衣類、たかが着替えと思うことなかれ。生活にハリを見出せなくなっている利用者・入所者の生活意欲を刺激するきっかけにできるかもしれません。

文:細川光恵
参考:「本人の視点に基づく介護技術ハンドブック」中央法規

監修

中浜 崇之さん
介護ラボしゅう 代表/株式会社Salud代表取締役/NPO法人 Ubdobe(医療福祉エンターテイメント) 理事/株式会社介護コネクション 執行役

1983年東京生まれ。ヘルパー2級を取得後、アルバイト先の特別養護老人ホームにて正規職員へ。約10年、特別養護老人ホームとデイサービスで勤務。その後、デイサービスや入居施設などの立ち上げから携わる。現在は、介護現場で勤務しながらNPO法人Ubdobe理事、株式会社介護コネクション執行役なども務める。2010年に「介護を文化へ」をテーマに『介護ラボしゅう』を立ち上げ、毎月の定例勉強会などを通じて、介護事業者のネットワーク作りに尽力している。

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