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介護・看護・リハビリ 2020-01-30

介護施設を知る!『特別養護老人ホーム』

寝たきりなど重度の要介護者が、少ない費用で長期の入所ができる「特別養護老人ホーム」。ここでは、その「特別養護老人ホーム」を利用するにあたっての注意点、手続き方法、サービス内容などの利用者が求める情報の他、「特別養護老人ホーム」の人員基準、設備基準、職種別の仕事内容など、求職者にとって役に立つ情報をご紹介いたします。

特別養護老人ホームとは? どんな施設?

「特別養護老人ホーム」とは、社会福祉法人や地方自治体が運営する公的な介護施設です。「介護老人福祉施設」「特養(とくよう)」と呼ばれることもあります。

特別養護老人ホームは、入所者が余生を過ごす「終の棲家」として利用されることが多く、平成26年3月時点で7982カ所の施設と、約52万人の利用者を抱えています。

民間施設に比べて利用料が安い特別養護老人ホームは、入所の条件も厳しく設けられています。対象は寝たきりや認知症など、比較的重度の障害を持つ方が対象となります。

「特別養護老人ホーム」と「介護老人福祉施設」

特別養護老人ホームは、介護保険法の下では「介護老人福祉施設」という名称で記されていますが、1963年以前は「養老院」と呼ばれていました。1963年の老人福祉法制定以降は「特別養護老人ホーム」と呼ばれるようになり、更に2000年の介護保険法により「特別養護老人ホーム」から「介護老人福祉施設」と名前を変えることとなりました。
ただし、呼び方としては「介護老人保健施設」よりも「特別養護老人ホーム」の方が現在でも一般的です。

有料老人ホームとの違い

特別養護老人ホームと有料老人ホーム、どちらも高齢者のための介護施設であり、介護が必要になった高齢者にとっては「何が違うの?」と悩むことが多い2つです。
では、それぞれにどのような特徴があるのでしょうか。比較してみました。

[有料老人ホーム]
運営主体:主に民間企業
目的:介護サービスを受けながら生活をする。
入居条件:65歳以上(60歳以上の施設もあり)で、要支援・要介護認定者が入居対象。施設によっては“要介護以上”限定や“自立”でも入居可能なところもある。
空室状況:施設に空室があれば入居可能。
入居費用:15~25万円/月(高額)
建物:新築の施設が多く、基本的には個室。
提供サービス:常時看護職員が配置されており、サービスが豊富。

[特別養護老人ホーム]
運営主体:社会福祉法人・地方公共団体
目的:介護、介助
入居条件:65歳以上で、要介護3以上の認定を受けている人。
空室状況:入居待機者多数のため、即時入居はできない。
入居費用:5~15万円/月(安価)
建物:築年数が長く、相部屋の施設が多い。
提供サービス:医療サービスを始め、サービスが限定的。

グループホームとの違い

更に、質問が多い特別養護老人ホームとグループホームの違いについてまとめてみました。

[グループホーム]
生活:共同生活を送りながら、認知症の進行を抑える。出来る限りのことは自分たちで行う。
入居条件:要支援2以上の介護認定。認知症であること。
入居人数:1ユニット5~9人。1施設2ユニットまで(最大でも18人)。
地域:自分の住民票がある地域。

[特別養護老人ホーム]
生活:必要な介護やリハビリの提供を受けながら生活をする。
入居条件:要介護3以上の介護認定。
入居人数:制限なし。
地域:制限なし。

特別養護老人ホームのサービス内容

特別養護老人ホームで提供されるサービスとしては、介護職員や看護職員による入浴・食事・排泄の介助、機能訓練指導員によるリハビリ、生活相談員によるカウンセリング・生活援助サービスなどがあります。
医療処置や重度の認知症への対応は施設によって異なります。

特別養護老人ホームの人員基準

特別養護老人ホームは、他の公的介護保険施設である老健(介護老人保健施設)や介護療養型医療施設と比べると、医療よりも介護に重点を置いた施設であり、人員基準の面から見てもそれがわかります。老健や介護療養型医療施設に比べて、特別養護老人ホームの方が医師や看護師の配置基準が少ないのです。

職種 人員基準
医師 1人以上(入所者の健康管理及び療養上の指導を行うのに必要な人数)
生活相談員 入所者100人に対して1人以上
看護職員と介護職員 入所者3人に対して、看護職員または介護職員を常勤換算で1人以上
看護職員の配置人数は以下の通りです。
・入所者が30人以下の場合は、常勤換算で1人以上配置
・入所者が31~50人の場合は、常勤換算で2人以上配置
・入所者が51~130人の場合は、常勤換算で3人以上配置
・入所者が131人以上の場合は、常勤換算で4人以上配置
(入所者130人を超過する人数が50人を超える毎に更に1人以上加算)
栄養士 1人以上
機能訓練指導員 機能訓練指導員として、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、看護師、准看護師、柔道整復師、按摩マッサージ指圧師のいずれかを1人以上
ケアマネジャー
(介護支援専門員)
入所者100人に対して、1人以上(常勤)

特別養護老人ホームの設備基準は、広域型特別養護老人ホームと地域密着型特別養護老人ホームでは若干異なります。

必要設備 詳細
居室 ・原則1室4人以下で、地上2階以上にあること
(ユニット型の場合は1室1人)
・部屋にはベッドと収納、またはその代替設備があること
・出入口がひとつ以上あり、避難上有効な廊下または広間に直面していること
・1人あたりの床面積が10.65㎡以上あること
(ユニット型の場合は13.2㎡以上)
医務室 地域密着型特別養護老人ホームのサテライト型居住施設では、医務室は不要。入居者診察のための医薬品・医療機器臨床検査設備があれば可。
浴室 要介護者の入浴に適した浴槽
食堂・機能訓練室 2つの合計面積が「3㎡×入所定員」以上であること
(食事提供と機能訓練に支障がない広さがあれば同じ場所でも可)
廊下 ・常夜灯、両側に手すり設置
・廊下幅は原則1.8m以上、中廊下は2.7m以上
地域密着型特別養護老人ホームのサテライト型居住施設では、
廊下幅は1.5m以上、中廊下は1.8m以上
洗面・寮母室・男女別トイレ ・居室フロアごとに設置
・トイレには緊急対応装置の設置要
調理室 地域密着型特別養護老人ホームのサテライト型居住施設の場合、本体施設の調理室で、調理且つ運搬上適切な衛生配慮がされていれば簡易型でも可
汚物処理室
介護材料室
事務室

 

特別養護老人ホームの特徴は

メリット

特別養護老人ホームは、社会福祉法人や地方自治体などにより運営される、公的な介護施設です。以下のような点が特別養護老人ホームを利用するメリットとして考えられます。

・利用料が安い
・長期入所が可能
・レクリエーションが充実している
・入居一時金が必要ない

デメリット

一方、公的施設である特別養護老人ホームは、サービスや設備の充実度において一部の民間施設に劣ってしまうことも否めません。デメリットとしては以下のようなものが挙げられるでしょう。

・常勤の医師がいないため、医学的なケアが限定的
・多床室(4人以下の相部屋)が多い
・回復期のリハビリテーションが少ない
・入居難易度が高い

入所基準

先に紹介した通り、特別養護老人ホームの最大のメリットは安価かつ長期入所が可能(一度入所したら退所を求められることはほぼありません)な点です。そのため、特別養護老人ホームの入所には以下のような条件が設定されています。

①介護保険法に基づく要介護1以上の認定を受けている
②65歳以上である
③身体上または精神上の著しい障害により常に介護が必要な状態である
④居宅において適切な介護を受けることが困難である

その他、施設によっては長期的な入院を必要とする病気や伝染病にかかっていないこと、施設の所在地に住んでいる(住民票がある)ことなどを条件にしているところもあります。

なかなか厳しい条件にも関わらず、特別養護老人ホームは現在約52万人の入所待機者を抱えています。経済的な余裕がある場合は、民間施設の利用も検討してみてはいかがでしょう。

<入所手続き>
特別養護老人ホームの入所手続きをするためには、まずは担当のケアマネジャーに入所を希望する施設の申し込み書を記入してもらう必要があります。記入した申し込み書を施設、もしくは自治体の窓口に提出し、審査の結果を待つこととなります。

審査は要介護度、介護の必要性、介護者の状況、待機期間、資産・収入額などの観点から行われます。また、申し込み書は複数施設のものを記入して構いません。

<入所費用と入所後の費用>
特別養護老人ホームには入所金などの初期費用はかかりません。利用者は月額利用料を支払うこととなります。月額利用料は世帯収入や部屋のタイプ(相部屋か個室か)、ケアのシステムによって差がありますが、食費や生活費を含めて7万円~15万円が相場です。

<設備>
特別養護老人ホームの設備は、その施設が従来型かユニット型かによって若干の差異があります。施設全体で介護を行う従来型では、浴室や食堂などは施設全体で1,2個が基本。一方、10人程度の少人数をケアするユニット型ではこれらの設備はユニットごとに設置されています。どちらにせよ、リハビリを行う機能訓練室や医務室、寝たきりの利用者にも対応可能な浴室は完備されている施設が多いです。

<受けられるサービスなど>
特別養護老人ホームでは、食事、レクリエーション、入浴(1週間に数回)、排せつなど、利用者の生活に関わるすべての要素を介護職員や看護職員が24時間体制でケアします。ただ医師や理学療法士が常勤する施設は少なく、あくまで寝たきり状態の高齢者の生活をケアするサービスとなります。

<入所難易度>
特別養護老人ホームに入所するのは非常に難しく、入所できるまでに数か月から数年かかると言われています。
その一番の理由としては、現在都市部では満室の施設がほとんどで、2014年に厚生労働省
は「全国で52万人以上が待機している」と発表しているのです。しかも、国や地方自治体は財源不足のため、現在特別養護老人ホームの新設を制限しているのです。
他にも、「入所希望者が多い」や「平均在所日数が長い(4年以上)」などの原因から、現状、特別養護老人ホームに入居するのは難しい状況です。
入居を希望する場合には、施設や自治体、ケアマネジャーに状況を確認することをおすすめします。

特別養護老人ホームを探すときのポイント

ここでは特別養護老人ホームの申し込み方法や、施設を探すときの注意点を説明します。

<申し込みは各施設または行政の窓口>
特別養護老人ホームの入居申し込みは、施設もしくは行政の窓口で行います。自治体指定の「特別養護老人ホーム入所申込書」に必要事項を記載しますが、申込書の作成は担当のケアマネジャーに依頼します。そのため、特別養護老人ホームに入所したいと思ったら、まずは担当のケアマネジャーに相談しましょう。

<施設の希望を明確にする>
ケアマネジャーに相談する際、もしくは相談する前に施設の希望条件を考えておきましょう。具体的な希望を明確にすることで、ケアマネジャーもアドバイスをしやすくなり、施設自体を探しやすくもなります。
ではここで、「施設を選ぶにあたって重視するポイント」の上位をご紹介します。
・立地条件
・利用料金
・医療体制
・施設の設備、雰囲気
・スタッフの雰囲気
・食事の内容
こういったポイントの中に具体的な希望があれば、ケアマネジャーに報告するようにしましょう。

<ある程度待ちの期間が発生することは想定しておく>
前述したように、現状多くの待機老人がいるため、申し込みをしてもすぐに入居できるわけではありません。長い人では10年以上待ってから入居できたという話も聞きます。
入居の優先順位もありますので、待機中の高齢者が全員入居しないと自分の順番が回ってこないわけではありませんが、希望の特別養護老人ホームに入所できるまでの間の生活方法(訪問介護を利用するなど)を考えておかなければいけません。

特別養護老人ホームで働く人の仕事内容

特別養護老人ホームではいろんな職種の人が働いています。ここでは、特別養護老人ホームにおける「看護師」「栄養士」「介護職員」の仕事内容について説明します。

看護師

・仕事内容
特別養護老人ホームにおける看護師の役割としては以下のようなものが挙げられます。

○入居者の健康管理
○利用者の経過観察
○医師との連携

具体的な仕事内容としては、バイタルチェックや血糖値測定、インシュリン注射、服薬管理、胃ろうの管理、留置バルーンの洗浄・交換などの医療行為の他、介護スタッフからの相談に応じたり、医師への連絡業務などがあります。

・給料
特養で働く看護師の大半は夜勤がありませんが、夜勤を必要とする施設もあります。そして、特養で働く看護師の給料は夜勤がある場合とない場合で大きく異なります。

○夜勤なし:年収380万円~500万円(平均年収440万円程度)
○夜勤あり:年収600万円~700万円(平均年収650万円程度)

夜勤がない場合は、病院勤務の看護師と比較する低くなってしまいますが、夜勤がある場合は病院勤務など他の看護師よりも稼げる場合が多いのです。

・やりがい・メリット
特別養護老人ホームでは、亡くなるまで施設で生活する入居者がほとんどであり、利用者一人ひとりとじっくり向き合えます。
また、看護師の夜勤が必要ない施設が多く残業も少ないので、規則正しい生活ができ、既婚者や育児中の母親も働ける環境と言えます。
さらに、急性期の患者がほとんどである病院に比べて、緊急の対応を要することが少ないため、病院よりもゆったりとした流れで働くことができます。

栄養士

・仕事内容
特別養護老人ホームで働く栄養士の仕事のメインは、食事のメニューを作ることです。
一番大切なことは、栄養のバランスを考えてメニュー作りをすることですが、食事の彩りや飽きのこないメニューを考えることも必要です。
また、食べやすさに関しても工夫する必要があります。入居者の中には、歯がない人や飲み込む力が弱い人もいます。キザミ食や流動力など、入居者の身体状況や健康状態によっても変える必要があるのです。
入居者にとっての一番の楽しみは食事です。入居者のことを考えてメニューを作る栄養士は、同時に入居者の心のケアもしているのです。

・給料
残念ながら栄養士の給料は高いとは言えません。その中でも職種によって、給料は異なります。以下はあくまでのおおよその月給ですが、
○病院勤務の栄養士:月給19万~28万円
○特養勤務の栄養士:月給18万~26万円
○給食会社の栄養士:月給18万~23万円
と、特養勤務の場合は病院勤務に比べて低くなっています。もちろん給料は勤務地域によっても異なりますが、年収では280万~420万円程度と換算できます。

・やりがい・メリット
食事提供を通して、入居者と深く関われることをやりがいとしている栄養士は少なくありません。また、食事に関係する入居者の障害が軽減していくこともやりがいに繋がるでしょう。例えば、嚥下障害を持っている人が、栄養士の考えたメニューによる嚥下訓練によって改善されると大きな喜びを感じるものです。
前述したように給与面でのメリットは期待しにくい職種ですが、高齢化が進む日本では今後のニーズも高く、職に困ることは少ない職業と言えるでしょう。

介護職員

・仕事内容
特別養護老人ホームの入居者は寝たきりの方や重度の認知症の方が多く、そこで行う業務と言えば身体介護がほとんどです。具体的には入居者の食事介助や入浴介助、排泄介助、起床・就寝介助など様々です。身体介護以外には、レクリエーションや季節のイベント企画などの仕事もあります。

・給料
特別養護老人ホームで働く介護スタッフの給料は他の介護施設に比べて、少し低いようです。以下の表はリジョブで求人募集している東京の施設別時給(未経験で必要最低限の資格を所持している場合の入社直後の時給)を示したものです。

順位 施設の種類 平均時給 最低時給~最高時給
1位 訪問介護(身体介護) 1,801円 1,200円~2,100円
2位 訪問介護(生活援助) 1,353円 1,050円~1,680円
3位 介護老人保健施設 1,185円 907円~1,700円
4位 有料老人ホーム 1,089円 910円~1,600円
5位 特別養護老人ホーム 1,025円 910円~1,250円
6位 グループホーム 1,022円 907円~1,250円
7位 デイサービス 922円 910円~1,200円
※調査元:リジョブ 調査日:2016年2月19日

 

上表のように、特別養護老人ホームの時給は調査した7種中5位と少し低めです。ただし、前述したように、上表は「未経験で無資格」の場合の時給です。資格を取得することにより手当が付き時給は高くなるので、介護職員初任者研修の修了や介護福祉士の資格取得をおすすめします。

・やりがい・メリット
介護スタッフは他のスタッフと比較して、入居者に触れる機会が多いため、入居者と仲良くなりやすいのも介護スタッフです。そのため、入居者から「ありがとう」など、感謝の声も一番多くいただきます。介護スタッフの多くはその感謝の言葉にやりがいを感じるようです。
特別養護老人ホームの入居者は「終の棲家」として利用する人がほとんどです。そのため、特養のスタッフは終身介護など、他の介護施設ではできない経験をすることができ、転職する際も経験を優遇されることが仕事上でのメリットと言えます。

特別養護老人ホームの求人について

ここでは特別養護老人ホームで働く上でのメリットとデメリットについて説明します。

<特別養護老人ホームで働くメリット>
・他の介護施設でも通用する技術を得られる
特養では介護の基礎から勉強することができ、特に身体介護に技術を身につけるには最高の場所と言えるでしょう。

・介護の仕事に対する自信がつく
特別養護老人ホームはたくさんある介護施設の中でも忙しいことが多い施設で、介護量の観点から見ても大変です。その仕事がきつい特養を経験することで、他の施設でも働けるという自信がつきます。

・事務作業も勉強できる
特別養護老人ホームでは介護スタッフがケアプランを作成することが多く、ケアマネジャーの指導を仰ぎながら、ケアプランの作成などの事務作業を勉強することができます。

<特別養護老人ホームで働くデメリット>
・身体の負担が大きい
特別養護老人ホームの入居者は要介護度の高い方が多いので、介護スタッフは「身体的負担が大きい」「仕事が辛い」と感じることが多いようです。

・ルーティンワークになりがち
特養での仕事は忙しく、そのため画一的や機械的なケアになってしまい、ルーティンワークに陥りやすい傾向にあります。そのため、介護の理念や接遇に関して疎かな介護になってしまうことがあります。

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