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介護・看護・リハビリ 2025-03-13

広告代理店の営業職から介護美容セラピストに転身!【介護リレーインタビュー Vol.53】介護美容まき家 代表 長内麻紀穂さん#1

介護業界に携わる皆さまのインタビューを通して、業界の魅力、多様な働き方をご紹介する本連載。

お話を伺ったのは…
介護美容 まき家
代表 長内麻紀穂さん

青森県出身。大学卒業後、千葉県の広告代理店に営業担当として6年間勤務。在職中に介護美容と出会い、専門学校でスキルを学ぶ。2022年に退職し、介護施設で働きながら介護職員初任者研修を取得。同年9月に『介護美容まき家』を開業する。

今回ご紹介するのは、介護美容まき家の代表、長内麻紀穂さん。長内さんは介護美容セラピストとして介護施設で施術をするほか、介護美容に携わる人たちのオンラインコミュニティ『介護美容DAO』の運営にも関わるなど、その活動は多岐にわたっています。

前編では、広告代理店勤務から介護美容に転職したいきさつ、介護美容の勉強を進めるうちに気づいたこと、実際に介護美容セラピストになってもなかなか仕事に結びつかなかったことについてお話を伺いました。

広告代理店で働きながら、介護美容のスキルが学べる専門学校へ!

介護美容の道に進むきっかけとなった、スカーフを巻いたおばあさまと。

――長内さんは、もともと介護のお仕事に興味があったんですか?

特にありませんでした。ただ、両親が共働きだったこともあって、おばあちゃん子だったんですね。それで、お年寄りに「やさしくしたい」という思いはあったかもしれません。

――では美容に興味が?

それもありません(笑)。高校生のときは大学では心理学を勉強して人の気持ちに寄り添えるような仕事をしたいと思っていました。希望通りに心理学部へ進みましたが、卒業後はまったく関係のない広告代理店に就職しました。

――広告代理店ですか!?

JRの駅にはよく京都や東北など観光地のポスターが貼ってありますよね。きれいな写真とキャッチコピーを見て、「私もこんな広告を作りたい!」と思ったんですね(笑)。それで代理店に就職しました。

――念願は叶いましたか?

残念ながら(笑)。千葉にある小さな広告代理店だったので、広告をいただく営業をして、原稿を書いて写真を撮って記事にまとめる仕事をしていました。

――介護美容に目覚めたのはどのタイミングだったんですか?

そろそろ次のステップに進もうかな…と考えていたとき、介護美容の専門学校の広告が目に留まったんです。それまで介護も美容もまったく頭になかったのですが、このタイミングで目に留まるというのは、「何か意味があるのかもしれない」と思って、進学を決めました。

――介護と美容というのはなかなか結びつかないですよね。

実は「きれいになる」だけで、すごく効果があることを実感した経験があるんです。
私の祖母は毎月のように美容室に行って髪を染めるなど、おしゃれにも気を遣う人でした。それが介護施設に入ったら、みるみるしょぼくれてしまって。その様子がとてもいたたまれなくて、デパートで明るい色のスカーフを買ってプレゼントしたんです。そのスカーフを首に巻いた途端、祖母に笑顔が戻って、とても喜んでくれました。きれいになるって、見た目だけじゃなくて、心も元気にするんですよね。

――そんな経験があったんですね。学校に通うために会社を辞めたんですか?

普段通りに働きながら、日曜だけ学校に通っていました。週一回とは言え授業がとても充実していて、エステ、ネイル、メイクの技術や、介護施設でよく実施されているレクリエーションの方法、高齢者とのコミュニケーション法なども学びました。最後にはアセスメントもあったんでよ。数名の生徒がグループになって、一人の高齢者に対していろいろなケアをするんです。それによってその方にどんな変化があったのかを考察しました。

――すぐ実践に生かせる内容だったんですね。

高齢者と言ってもひとりひとり性格は違うし、介護度も抱えていらっしゃるお悩みも違います。いろいろなケースを体験できたので勉強になることばかりでした。

「介護美容」が理解されず、卒業しても仕事を探す日々…

専門学校のクラスメイトたちと、シニアを対象にした美容イベントを企画。イベントを通じて高齢者のニーズを探ったとか。

――学校を卒業なさって、その後はどうしましたか?

介護美容については学びましたが、介護そのものについても勉強したくて「介護職員初任者研修」を取得して、夜勤専任の介護士として働き始めました。

――日中は介護美容のお仕事をするため?

そうです。同じ年に「介護美容まき家」を開業しました。
でも、なかなか「介護美容」のメリットを分かっていただけなくて。介護施設に「介護美容をやりませんか?」ってお話をしに行くと、「ここは介護度の高い人ばかりなので、みなさん美容には興味がないと思います」って断られてしまうんです。介護度が高い方でも認知症が進んでいる方でも、きれいになるだけで変わるのに。メリットを分かっていただけないのが悔しかったですね。

――高齢者と美容が、なかなか結びつかないんですね。

それでクラスメイトたちと、「まずは高齢者にも美容が必要!」ということを認知してもらおうと、イベントを企画しました。東京都清瀬市に高齢者の割合が多い集合住宅があって、そこでシニア向けのメイク講座やエステをやったんです。

――よく思いつきましたね!

みんな卒業しても仕事がなかったので(笑)。お客さまとお話をしながら、メイクで困っていることや美容で知りたいこと、どんなことをやりたいかなどを聞けたのもよかったですね。イベント活動や介護美容に活かせたので。場数を踏むことで、美容技術もコミュニケーションスキルも磨けたのでいい経験ができました。

――介護の現場も変わってきていると思いますが、介護美容の考え方は変わってきていますか?

少しずつ変わってきていると思います。今は介護施設に入ったりデイサービスに通ったりしている方でも、自分にお金をかけられる方が増えてきました。施設側も「入居すると介護美容が受けられる」のを、ウリというか特徴のひとつにしているところもあります。そうは言っても、まだまだ認知度は高くない。介護美容のことをもっともっとみなさんに知ってほしいです。

介護美容まき家を立ち上げ、高齢者を美しくするための事業を始めた長内さん。
後編では、オンラインコミュニティ「介護美容DAO」に参加し運営にも携わるようになったこと、介護美容を実践する中で感じたこと、これからの展望についてのお話をお届けします。

撮影協力/シェフズデイサービス茅ヶ崎(シェフズデイサービス 茅ヶ崎 |地域密着型通所介護 シェフズデイサービス)
撮影/森 浩司

Information

介護美容まき家
介護美容DAO
住所:神奈川県茅ヶ崎市共恵1-1-5 BLD NAGASHIMA 301

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